類稀な才能を秘めるシンガー・ソングライター 大知正紘の初パッケージ・シングル「手」がリリース

大知正紘   2010/09/07掲載
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 大知正紘は三重県生まれ、19歳のシンガー・ソングライター。テレビ番組「ストリートファイターズ」のオーディション企画「Hジェネ祭り08」で、ソロ・シンガーとして異例の審査員特別賞を受賞した。小林武史プロデュースのデビュー曲「さくら」(配信限定&レンタル)がドラマの主題歌となり、大きな注目を集めるなか、9月8日に初のパッケージ・シングル「手」をリリースする。



――音楽を始めたきっかけを教えてください。
大知正紘(以下、同)「じつは僕、小学校低学年の頃にいじめられていて。その反動で中学生のとき、ものすごいワルになってしまったんですよ」
――ワルに! というと、喧嘩ばっかりしてたとか?
「そう、力で解決しようという方向に行ってしまって。それで内にモヤモヤを秘めてるときにELLEGARDENを聴いて、衝撃を受けたんです。リズムが速くて、ギターが歪んでいて、感情的なヴォーカルで、こういう音楽なら自分の中のモヤモヤを吐き出せるかもしれん、と思った。それでおとんのギターを借りて、好きな曲をコピーしてるときに、もう曲を作り始めてました」


――曲を作るときに影響を受けたアーティストはいますか?
「学校で流れてたカーペンターズや、テレビで聴いたサザンオールスターズMR.CHILDRENBUMP OF CHICKEN。それから読んだ本にも影響受けました。石田衣良さんや伊坂幸太郎さんの小説が好きで、上京した頃に伊坂さんの『ゴールデンスランバー』を読んだんですけど、自分の知らへん深いところで、どれだけ複雑な世界が広がってるんやろうって考えるきっかけになりましたね」
――自分の音楽も、誰かが何かに気づいたり、考えたりするきっかけになるものでありたいと思いますか?
「うん、思いますね。僕はいま19才なんですけど、自分はこの世界で何ができるんやろうって考えてるし、自分が経験したことは曲に込めて伝えていきたい。今回『手』という曲に込めたのは、目の前の人を思う気持ちなんです。いま議論されてる政治にしても、環境問題にしても、目の前の人を思うがゆえにある問題やと思うから。目の前の身近な繋がりが明日なくなってしまうかもしれへんということを、改めて考えてほしい。そういうメッセージを音楽は堅苦しくなく、心地よく伝えられると思うんです」

――人との繋がりって大事だけど、厄介なものでもありますよね。
「うん。なんか今って、みんな自分をよく見せよう、王道からはずれたら叩かれるからみんなと一緒に同じほうへ行こうって、保守的になってる気がするんですよ。僕も上京して、知らない土地で縮こまってた時期もあって。でも自分が信じてるものを嫌う人がいても、それが自分やし、と思えたらちょっとマシになった。そう気づくことで初めて、同じ気持ちで同じ場所へ向かって行ける人も見つかるんだと思うし」
――今回のシングル「手」には同じCDが2枚入っていて、そのうち1枚を誰かにプレゼントできるようになっていますが、大知さんが渡したいのは誰?
「おかんです。でも最近、おとんにも渡したいなと思って(照れ笑い)。おとんにはずっと反発してきたけど、こないだGWに実家に帰って、ゆっくり話したんですよ。そうしたらおとんはいつも、僕ら子供たちが一番いい道を選択できるようにっていう気持ちを持ってくれてて……それをわかってなかった自分がいたなあと思って」
――すでに1枚じゃたりないところがいいですね。
「そうですね。手にしたCDを誰かに渡しに行くっていう行為が、すごくいいと思うんです。この歌を分け合いたい人は誰やろって考えた結果、いっぱいいすぎて決められへんでもいい。なにかアクションが起こって、自分は誰かを大切に思ってるんやなって気づいてもらえればいいなと思う」
――これから挑戦してみたいことは?
「世界を見てまわりたいです。いろんな場所でひとりで歌って、自分の気持ちを話して、日本人の19才がこういうこと思ってる、みんなはどう思ってるのっていう話をしたいですね」
――言葉って、伝わるものだと思いますか。
「言葉だけではまったく意味を持たないけど、行動とともにあることで意味を持つと思う。行動がともなっていて、理にかなった言葉であれば、いろんなものを変えていく力があると思う。それをわかった上で、言葉を大切にしていきたいと思います」


取材・文/廿楽玲子(2010年8月)
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