“不安のなかで足を踏ん張って生きようとする姿” 大知正紘の2ndシングル「明日の花」が登場

大知正紘   2011/03/01掲載
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 若干19歳にして小林武史に才能を見いだされ、昨年デビューしたシンガー・ソングライター、大知正紘。彼がこの春リリースする2ndシングル「明日の花」は、冒頭から声を振り絞り、不安のなかで足を踏ん張って生きようとする姿を伝える決意表明ソングだ。今年1月にハタチの誕生日を迎えたばかりの新世代シンガーが、この歌で声を大にして伝えたかったこととは?


――ハタチになって、改めて思うことはありますか?
大知正紘(以下、同)「曲を書くうえで意識の変化がすごくありましたね。最近、自分の劣等感や情けなさ、思うとおりにいかへん自分を曲に出せるようになってきたように思うんです。より自分自身に近い歌を書けるようになったというか」
――ブログに「10代を振り返るとカッコつけてる自分がいた」と書かれてましたね。
「あはは、そんなこと書いてましたね(笑)。なんか今までは、自分の弱い部分が視界の端っこに映っても、絶対振りむかへんと思ってたんです。でも、あるときふと内向きになってる自分が見えた瞬間があって。そういう内向きな気持ちってきっと誰にでもあるもので、人と人って内向き同士が向かい合ってるんだよなーって思えたら、視界が広くなった気がしたんですよね」
――そう思えるきっかけがあったんですか?
「上京して家族と離れて暮らすことで、家庭内のことを話すようになったんですよ。長男の僕がなんとなく家族を取り持つ役割なんですけど、おじいちゃんやおとん、おかん、それぞれの話を聞いて、今うちにはこういう問題があるのかって知るようになった。でもそこに対して自分が何をできるわけでもないんですよね、それぞれの人生があるから。そのとき、ああ、ほんまに逆立ちしても変わらへんものがあるんだなあってすごく悲しくなって……。ちょうどそのころに付き合ってた彼女のことや、いろんな出来事が重なって生まれたのが<明日の花>の原曲になった<ハナレバナレ>という曲だったんです。もともとは2009年の夏頃に作った曲ですね」
――じゃあ原曲を作ってから1年半くらい経ってるんですね。
「そう、当時は自暴自棄になりつつも前を向こうとした曲でした。今はそこからちょっと抜け出した自分がいて。ちょうどレコーディングの前日に成人式があって、帰省して友達からいろんな話を聞いたんですよ。大学生活がぬるいとか、就職が思うようにいかへんとか。そこから自分らはどこへ向かっていけばいいのかを考えながら、ギリギリまで何度も歌詞を書き直しました。結局、歌入れを4時間待っていただくという事態になりましたけど(笑)」




――そうか、同世代のみんなはこれから社会に出るのに空前の就職難だし、明るくなろうったってなかなか難しいですよね。
「だから<明日の花>で歌ってる“泣いて笑って繋ぎ合わせて 僕らは明日を信じていこう”、それしかないなって思うんです。いま八方ふさがりに見える自分たちの状況を誰かが変えてくれるわけでもないから、自分たちの世代で変えていこうと。そのために腹をくくらなあかん、それぞれ明日を投げださずに闘っていかなあかんっていう想いを込めたんです」
――同世代を見渡して、そう思ってる人が多いなと思います?
「いや、わりと少ないんで、ヤバイなと思ってます。だからハタチ代表として、そういう想いを歌にしていきたい。自分の作る歌って叫びみたいなもんやなと思うんです」
――そのパワーってどこから生まれるんでしょうね。
「なんか僕、極端に悲しいことがあるとブチギレそうになるんですよ。高校生の頃、家族でご飯食べてるときにテレビでベトナムの内戦の話を聞いて、突然“ふざけんなー!!”って食卓をバコーンと殴って、おとんにものすごい怒られたことがあるんですけど(笑)。どうにもならない悲しいことがあると、それが他人事であっても、いてもたってもいられなくなる。でもよく考えてみれば自分の家族だって恋愛だって、いつ破綻してもおかしくないような脆いものなんですよね。そのなかで何を大事にしていくのかを、ずっと考えてる自分がいます」
――地に足がついてるなあ、二十歳なのに(笑)。
「あはは。僕は人生で一番大事なことは、大切な人ひとりのために生きていくことやと思うんです。僕は音楽を志してやってるけど、どんな仕事したとしてもそこは変わらへん。根本はすごくシンプルなことなんやなと思います」
――これから4月に1stアルバム『ONE』が出て、6月に初のワンマン・ツアーも始まりますが、こうして話を聞くと、大知さんにとってはライヴが一番大事なのかなって思いますね。目の前の相手に伝えていくということが。
「そうですね、ライヴやってないとおかしくなりそうです(笑)。以前、曲を作らなきゃいけなくてライヴができなかったときに、僕は一体何がしたいんや! と思って、我慢できなくなったことがあって。そのときは路上で歌ってました、チャッピーっていう偽名で(笑)」
取材・文/廿楽玲子(2011年2月)
大知正紘 TOUR 2011「ONE」
●6月11日(土)大阪 心斎橋 JANUS
※キョードーインフォメーション[Tel]06-7732-8888 (10:00〜19:00)
●6月17日(金) 愛知 名古屋 ハートランド
※SUNDAY FOLK PROMOTION[Tel]052-320-9100 (10:00〜18:00)
●6月19日(日) 福岡 福岡 ROOMS
※キョードー西日本[Tel]092-714-0159
●6月26日(日) 東京 原宿 アストロホール
※DISK GARAGE[Tel]03-5436-9600 (平日12:00〜19:00)

■大知正紘 オフィシャル・サイト
http://www.oochim.jp/
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