パッション・ピットや
クラクソンズらのオープニング・アクトに抜擢されるなど、いま高い注目を集める
パレーズは、オーストラリアはシドニー出身の4人組だ。推進力抜群のドラムス、ヘヴィかつグルーヴィにリズムを刻むベース・ライン、どこか捩れたセンスを持つ個性的なギター・プレイ、そして繊細で透明感あふれるヴォーカル。実験精神とポップさを見事に融合し、パンキッシュな疾走感と壮大な叙情性を兼ね備えたデビュー・アルバム
『フォーリン・テープス』は、多様な音楽がひしめく2010年にもじつにオリジナルに響く。どのようにして彼らはかように独自の音楽を生み出しているのか、話を聞いた。
――まず、それぞれの音楽的バックボーンを教えてください。
ダニエル・カニングハム(g、vo、effect)「兄や姉からの影響をたくさん受けたね。スマッシング・パンプキンズに始まって、その後すぐパンク・ミュージック全般にはまっていった。そこからは自分でどんどん新しい音楽を見つけるようになったよ」
ティム・ジェンキンズ(g、vo/以下、ティム)「
オフスプリングの
『スマッシュ』は僕にとってのパンクへの入り口で、よく聴いたな。そこからパンクをもっと深く掘り下げるようになって、Refusedにも大きな影響を受けた。彼らの『The Shape Of Punk To Come』はCDプレーヤーから取り出せなくなったくらい聴いたよ。そして、
エイフェックス・ツインに出会った瞬間、また新たな扉が開いた感じだったね」
――デビュー作『フォーリン・テープス』のタイトルが意味するものは何なのでしょう?
マイケル「このアルバムの曲は一度とか二度のセッションで書かれたものではなく、けっこう長い間かけて作り上げられた作品なんだ。だから一曲一曲が違う質感や雰囲気を持っていて、録音の仕方もそれぞれ違っている。だから一つの曲は次の曲と比べると異質(フォーリン)な感じで、題名はそこから付けたんだ」
――ではアルバム自体は具体的な方向性が決められていたというより、それぞれが作ってきた曲の寄せ集めのような感じなのでしょうか?
マイケル「最初はEP一枚分くらいの曲を書こうと思っていたんだけど、やはりもっと頑張って曲を増やそうって決めたんだ。このバンドには“好きなように曲をかけ”というルールだけがあって、何をやっても自由なんだ。とにかく曲を作る上で自分たちに制限をかけないようにしている。唯一の方向性は、よいものでなければならない、ということだけだね」
――曲によっては驚くような展開や、複雑な構成があったりしますよね。とてもプログレッシヴというか。それは意図的に部分部分をくっつけ合わせたりしているからですか? それとも単純にそのように曲が生まれたからなんでしょうか?
マイケル「自然と曲がそうなったんだよね。不思議さを狙ったとか、そういう意図はないよ」
――女性のヴォーカル使いがじつに印象的です。アルバム全体にアクセントを加えているとともに、歌声にバランスを与えていますが、あえて女性ヴォーカルを使った理由は?
ティム「アルバムを作っている時、男女のヴォーカルのバランス、アンバランスの部分に凄く興味があったんだ。だから自分たちの声では出せない声が、時に絡まるように、時には全てを包み込むような感じで入ってきたら面白いだろうなと思ってね。つねに質感が変わるから、曲にも展開を持たせられるし。しかもその声はメンバーのダメダメな男性ヴォーカルじゃ出せないしね(笑)」
――アルバム全体にも統一した雰囲気があって、全体を聴くと、すごく不思議な、浮遊感みたいなものを味わえます。聴き手にはどんな感情や雰囲気を感じ取ってもらいたいですか?
ティム「そのように感じてもらえるのは嬉しいね。でも正直聴き手がどう思ってくれてもかまわないんだ。何か感じてさえくれれば」
――サウンドもバラエティに富んでいますが、どこかパンクな精神というか反骨魂みたいなものが感じられました。
ティム「パンクとかハードコアはメンバーみんなが成長する時に通った道なんだ。音楽をやり始めたのもそこだし、そこを通して共感しあった部分が強かったし。だから根っこにはつねにその魂みたいなものは残ると思うよ。ライヴで演奏する時も、多くのエネルギーを出したいと思ってるし、それが多ければ多いほどいいし、だから自然と激しさみたいなものも出てくるんだろうね」
構成・文/房賀辰男(2010年11月)