ロンドンをベースに活動する、ブルガリア人とセルビア人からなる3人組コーラス・ユニット、ペルニカ・トリオ(Perunika Trio)。世界中の音楽フェスに出場し、新世代のブルガリアン・コーラスを探究する彼女たちが、日本の唱歌/わらべうたをユニークな手法でカヴァーした
アルバムをリリース。5月19日、20日に行なわれた〈live image 12〉のステージにも登場し、スラブ民族の女神“ペルニカ”もかくやと思わせる爽やかな歌声で日本の聴衆を魅了した。
――日本から本作『ブルガリアン・ワラベウタ』の企画についてオファーがあった時、戸惑いませんでしたか?
エウゲニア 「最初は驚いたわ。そんなことできるのかしらって思ったけれど、すぐにとても興味深いと感じたの。ただ日本語で歌うだけでなく、私たちらしい部分を加えてカヴァーしてみようって」
デシスラヴァ(デシー) 「日本の文化には以前から関心があったの。〈さくらさくら〉のメロディも聴いたことがあったし、とても面白い企画だと思った」
――日本人には馴染みのある曲ばかりです。とても懐かしい。大人が聴いて楽しめるアルバムです。
エウゲニア 「よく知っている曲だと思って聴いていたら、途中にブルガリアの言葉と旋律が出てきて、あれっ? 不思議だな、でもなんかうまく混じり合ってる……なんて思ってもらえたら嬉しい」
――とくに印象に残った曲はありましたか?
エウゲニア 「どの曲も大好きになった。〈さくらさくら〉はロマンティック、〈ずいずいずっころばし〉はリズミカルで楽しい。〈ふるさと〉からはノスタルジックな想いが伝わってきたわ。私たちも故郷を離れてロンドンで暮らしているので、歌詞もまるで自分の気持ちを歌っているのかと思った」
デシー 「〈あめふりくまのこ〉がとてもキュートだわ。私も今は〈ふるさと〉が好き。歌っていると感情が込み上げてくる。それにライヴで客席の皆さんが眼を閉じてじっと聴いてくださっている、その表情を見て、とても感動したの」
――「おかあさん」は子どもの頃好きだったのにずっと忘れていました。またCDで聴くことができて嬉しいです。
エウゲニア 「原曲が短くて、アレンジャーも頭を悩ませていたけれど、ブルガリア語のパートにも親子の対話を作ってもらって、ちょっと芝居がかっているところが歌っていて楽しかった。ほかの曲もそうだけれど、ブルガリア語の歌詞も日本語と同じことを歌っているのよ。だからブルガリア人が聴いても同じ情景が浮かぶはず。ブルガリアのお母さんは“玉子焼き”よりミルクを温めるイメージだから、歌詞をちょっと変えたりはしたけれどね。それに私自身、この1月の末に出産してお母さんになったばかりなので、感慨深いものがあったわ」
――日本人は「グリーンスリーブス」や「ほたるの光」を自国の民謡のように愛しているんですよ。
エウゲニア 「日本人のそういうオープンな姿勢は素敵だと思う。英語の曲に関してはブルガリア語は加えず、ハーモニーだけブルガリア風にしてみた」
――「ペチカ」も日本人の作品ですがとても異国趣味にあふれていて、愛されています。
エウゲニア 「じつはブルガリア語でもペチカはペチカ。だから私たちの思い出も一緒に歌っているの」
――「のばら」といえばダマスク・ローズはヨーグルトと並ぶブルガリアの名産ですね。
エウゲニア 「朝露に濡れる祖国のばらの谷をイメージしたわ。それとこの曲では音階を少しずつ変化させて歌うテクニックを披露してみたの、私たちの声のクオリティを意識してもらいたくて。楽しんでいただけたかしら」
――ブルガリアン・フォークをほかにももっと聴いてみたくなりました。
デシー 「嬉しい。それも今回のアルバムを作った目的のひとつなの」
――ブルガリアのライヴでも、このアルバムを採り上げて、日本の曲を皆さんに広めて下さい。
エウゲニア 「ぜひ、そうしたいわ。ブルガリアン・フォークってメロディアスで、ハーモニーも豊かでバラエティに富んでいるから、いろんなジャンルの音楽とクロスオーヴァーしやすいの。とくにジャズやクラシックとね。でも日本の童謡とは初めての試みだったから、きっとブルガリアでも受けると思う」