特別対談:UNITY〜ピエール中野(凛として時雨)×杉作J太郎

ピエール中野   2014/08/08掲載
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 初のソロ作品『Chaotic Vibes Orchestra』を堂々完成させた凛として時雨のドラマー、ピエール中野。そんな彼が時雨と並行して活動を行なっているのが、バイブス・オブ・下ネタ系を駆使したスラックネスDJユニット、玉筋クールJ太郎。今回はソロ作品の発表を記念して、下ネタラップの大先輩にして、グループ名のサンプリング元(?)でもある杉作J太郎(a.k.a L.L. COOL J太郎)をゲストに招き、下ネタをテーマにドープに語り合ってもらいました。“Win‐Winの関係”ならぬ“ウィ〜ンウィ〜ンの関係”ともいうべき絶妙な共鳴ぶりをみせたバイブス全開の対談をお楽しみください!
「杉作さんが、せいこうさんに向かって、“実はそんなにヒップホップが好きじゃないんです”とか話してるのを観て、“この人、凄え!”って衝撃を受けて(笑)」(中野)
中野 「割と長い間、玉筋クールJ太郎という名前で活動してまして。挨拶が遅れてすいませんでした。今日はちゃんとお詫びを言いたいなと思っていたんです」
杉作 「いやいや(笑)。もちろん、中野さんがこの名前でやってらっしゃるのは知ってましたよ」
中野 「まあ、名前を見かけたら“これは?”って思っちゃいますよね(笑)」
杉作 「僕は今、日常生活では音楽から遠ざかったところにいますから、失礼ながら中野さんの音楽を聴いたことなかったんですよ。それで今回、対談のお話を頂いて作品を聴いてみたら、僕が想像していたものとは全然違ってまして」
中野 「どういう音楽を想像してたんですか?」
杉作 「下ネタをラップしてるっていうから、もっとバラクーダーみたいな感じを想像してたんですよ」
――「演歌・血液ガッタガタ」みたいな(笑)。
杉作 「そうですそうです。もっとコミックソングっぽい感じを想像してて」
中野 「あー、名前から(笑)」
杉作 「そしたら1曲目から、物凄く本格派だったんでビックリして」
中野 「ありがとうございます」
杉作 「しかし、玉筋クールJ太郎っていうのは、すごく幅広い音楽をやってるんですね。壮大なドラムの曲から、ラップまで」
中野 「えっ? いや、今回の作品は全編、玉筋クールJ太郎じゃないんですよ(笑)」
杉作 「そうなんですか?」
中野 「はい(笑)。最後の5曲目だけが玉筋クールJ太郎で」
杉作 「そうだったんですね! 僕は、てっきり中野さんがソロ活動する時の名前が、玉筋クールJ太郎だと思ってました」
中野 「違います(笑)。玉筋クールJ太郎っていうのは僕がやってるDJユニットの名前で、今回のアルバムはピエール中野名義で出してます」
杉作 「なるほど。そういうことでしたか」
――補足すると中野さんは、凛として時雨というバンドでドラムを叩いてます。
杉作 「凛として時雨という名前は聞いたことありました。アニメの曲をやってますよね?」
中野 「『PSYCHO-PASS』というアニメの主題歌をやらせてもらってます」
杉作 「今期もやってません?」
中野 「はい。うちのギターのTKがソロで『東京喰種 トーキョーグール』というアニメの主題歌をやらせてもらっていて」
杉作 「あれはソロなんですか」
中野 「はい」
杉作 「凛として時雨のCDも一緒に送ってもらったんで聴かせていただきましたけど、こちらも凄く良かったです。なんというか激しくてロックな感じで。中野さんのソロは全体的に力強さがありますよね」
中野 「ありがとうございます」
杉作 「ちなみに中野さんは、玉筋クールJ太郎のリーダーなんですか?」
中野 「リーダーは僕じゃないんですよ。一応、タマキン・スカイウォーカー(a.k.a 玉木さん)という人がリーダーなんですけど」
杉作 「玉筋クールJ太郎は、どんな感じで始まったんですか?」
中野 「玉木さんはもともと池袋・手刀というライヴハウスのブッキングマネージャーで、そこは凛として時雨が一番最初にライヴしたお店なんです。で、全国ツアーを回るときに、いろいろブッキングを切ってくれて一緒に回ってくれたんですよ。そのときに遊びで自分たちの曲にラップを入れてたら、面白いからラップのユニットをやろうっていう話になって。それでMCのケーナルさんを誘ってスタートしたんです」
杉作 「最初から、こういうセクシーな歌詞で行こうって決まってたんですか」
中野 「セクシーな(笑)。そうですね。マクドナルドに集まって歌詞を作って、それを曲に乗っけて。もう8年ぐらいやってるんですけど」
杉作 「そんなに長くやってるんですか? 随分長いんですね。へえ! 8年といえば…………ねえ?」
中野 「ははは。今、適当な例えが思い浮かばなかったんですね(笑)」
杉作 「8年もやってたら、そりゃもう、ね。冗談じゃないレベルですよ」
中野 「いやいや。年数だけ重ねちゃってる感じで」
杉作 「僕もL.L. COOL J太郎を随分長いことやってるんですけど」
中野 「今、何年目ぐらいですか?」
杉作 「『プッチRADIO』というアルバムが出たのが2001年ですから、もう13年以上やってます」
L.L. COOL J太郎『プッチRADIO』
中野 「『プッチRADIO』は参加してるミュージシャンがめちゃくちゃ豪華ですよね。ダースレイダーさんとか宇多丸さんとか」
杉作 「ええ。僕はトラック的なことは僕は全然わからないですから、そこは皆さんにお任せして」
中野 「今は活動を休止しちゃってるんでしたっけ?」
杉作 「一応、歴史的な事実として、表向きには辞めたってことになってるんですけど」
中野 「僕、最初に杉作さんのことを知ったのが、いとうせいこうさんがやってたスペシャの番組だったんですよ」
杉作 「ああ、まさにその番組で辞めたんですよ」
中野 「せいこうさんに向かって、“実はそんなにヒップホップが好きじゃないんです”とか話してるのを観て、“この人、凄え!”って衝撃を受けて(笑)。せいこうさんも引いてましたよね。目が笑ってなかった気がします(笑)」
杉作 「あの番組は、せいこうさんとの取り引きでああいう内容になったんです」
中野 「取り引きですか?」
杉作 「ええ。当時、僕は男の墓場プロダクションという映画制作プロダクションを立ち上げて、その第1弾作品を宣伝するために番組に出演したんです。そしたら、L.L. COOL J太郎を引退するんだったら、話題性もあって企画も通りやすいし、時間もたっぷり取れるということになったんですよ」
中野 「なんですか、その取り引き条件(笑)」
杉作 「引退する場合は番組が丸々使える、でも辞めないんだったらワンコーナーになるってことだったんで、“どっちがいい?”って、せいこうさんに聞かれて。それで “じゃあ辞めます!”って答えたんです」
中野 「そうだったんですね!」
杉作 「だから、“ヒップホップが好きじゃなかった”とか言いたい放題言えたんだと思います」
中野 「もう、辞めるし、みたいな」
杉作 「ええ。でも、いくらテレビとはいえ、思ってもないことは言えないし」
中野 「てことは、やっぱり、あんまりヒップホップ好きじゃなかったんですね(笑)」
杉作 「まあ、そうだったんでしょうね(笑)。中野さんはもともとヒップホップはお好きなんですか?」
中野 「もともと好きで聴いてました。中学生の頃に、スチャダラパーとかEAST ENDとか出てきて」
杉作 「そもそもラップをするのが好きなんですか?」
中野 「自分でラップすることは考えたこともなかったんですけど、遊びでやってたら面白くなってきて」
杉作 「いやらしい言葉を喋りたいっていうのが、まずあるんですか?」
中野 「そうです。いやらしい言葉って、やっぱり口にしたいじゃないですか。あと、他人に言わせたりだとか(笑)」
杉作 「いやらしい言葉って口にしたときに快感があるんですよね」
中野 「そうなんですよ!」
杉作 「僕も、“なんであの人、いやらしい話ばっかりしてるんだろう”って言われるんですけど、別に自分からしたいわけじゃないんですよ」
中野 「別にしたくはない(笑)」
杉作 「ええ。でも、すると気持ちがいいんですよ」
中野 「それは、したいっていうのとは違うんですか?」
杉作 「したいというのとは違うんです。人前で話をするんであれば、ちゃんとした話をしたいんですよ。ただ、ちゃんとした話って、話してても気持ちよくないんですよね」
中野 「ああ、わかります」
杉作 「思わず女性が眉をひそめるような、喫茶店とかの場にそぐわない話。そういう話が気持ちいいんです。そういえば昨日もそんなことがありましたよ」
中野 「昨日もありましたか(笑)」
杉作 「湯浅学さんとの対談で、凄い立派な隠れ家みたいなイタリアンレストランに行ったんです。最初は普通に話してたんですけど、対談が終わってお酒を飲んでるうちに、気がついたらエロ話してたんですよ。そしたら、デートしてる人が嫌そうにチラチラこっちを見てるんです」
中野 「結構な声量だったんでしょうね」
杉作 「結構な声量でかなりのことを言ってたと思います。オナニーとか熟女の話とか。で、あまりにもカップルがチラチラ見るもんだから一瞬、“喧嘩売ってるのかな?”と思ったんですけど、よく考えたら話の内容がマズかったですね」
中野 「でも、わかります。しちゃいけない場所でするエロ話って最高に気持ちいいですもん」
杉作 「そういう快感ってありますよね。ただ人前で話す場合は、どこで折り合いを付けるかっていう問題があるじゃないですか。聞く側が気持ちいいかどうか。玉筋クールJ太郎でもそのあたりは意識してるんじゃないですか?」
中野 「そうですね。でもその点、僕らはライヴでやってるんで。お客さんもそれを観に来てるってことは、まんざらでもないのかなって思います」
杉作 「実際の反応はどうですか?」
中野 「喜んでくれてます。結成した頃は、こんなヒドいことばかり言ってたら帰っちゃう人もいるのかなと思ってたんですけど、意外とみんな喜んでくれて」
杉作 「僕もたまにフェスみたいなところに呼ばれるじゃないですか。で、いやらしい話をするんです。そうすると中野さんがおっしゃるように、みなさん喜んでくれるんですよね。もしかしたら僕らが想定してるよりも、聞き手はエロ話を求めてるのかもしれない」
中野 「意外とそれはありますよね。いわゆる一流ミュージシャンの方々のMCも下ネタが多いですし。T.M. Revolution西川(貴教)さんとか氣志團綾小路 翔さんとかケツメイシRYOさんとか。でもドカンドカン受けてるんですよ」
杉作 「突き抜けてると気持ちがいいんでしょうね。ただそこも難しいところで。要するにエロ話ってセックスと一緒なんですよ。超えちゃいけない一線は絶対にキープしなきゃいけない」
中野 「これ以上言ったら笑えないってレベルですよね」
杉作 「たとえばね、僕はそんなことしませんけど、友達で女の人に首を絞めてもらうのが好きな人がいるんです。それだって限度があると思うんです」
中野 「それこそ死んじゃいますからね(笑)」
杉作 「これはちょっと例えが悪かったですね(笑)。じゃあ、こうしましょう。“奥まで突いて”と言われたからって、本当に奥の奥まで突いたらダメじゃないですか」
中野 「単純に気持ちよくないし、痛いだけっていう」
杉作 「そう。何事にも限界があると思うんです。だから僕も、いやらしいこととかデタラメなことを喋ってるように見えて」
中野 「実はきちっと線引きしてるわけですね」
杉作 「もちろんです。要するにエロ話の極意って寸止めなんですよね。本当に言っちゃいけないところまで行くと聞く人が嫌悪感を覚えてしまうし、あまりにも手前でやめちゃうと単に度胸のない話になってしまう。だからチキンレースって言うんですか?」
中野 「はははは。崖にいかに近づくか(笑)。ギリギリの勝負なんですね。近づきすぎたら崖から落ちてしまうっていう」
杉作 「でも、玉筋クールJ太郎のライヴでお客さんが喜んでるってことは、かなり崖に近づけてるんじゃないですかね」
中野 「だといいんですけど」
「今は秋元康さんとか、つんく♂さんが女性の気持ちを歌詞で書いてますけど、女性のライターがエロい歌詞を書いて、男に歌わせる時代がやがて来ます!」(杉作)
杉作 「中野さんのお客さんって結構、若い女の子も多いわけですよね。処女丸出しみたいな」
中野 「処女丸出し(笑)。まあ、若い子もいますね」
杉作 「僕のイベントにもたまにそういうお客さんが来るんですけど、そういう子たちがいると、こっちもエロ話を控えなきゃいけないじゃないですか。スカートめくりとか、それぐらいのレベルに」
中野 「それでも、一応トライはするわけですね(笑)」
杉作 「ええ。ただ、処女丸出しの子も難しいですけど、逆に派手な女性も難しいですよね。以前、L.L.COOL J太郎で横浜のクラブの何周年パーティーみたいなのに呼ばれたんですけど、着いたら入り口にMAXみたいな女性がいるわけですよ」
中野 「わかりやすい例えですね(笑)。そういう人いそうですもん」
杉作 「僕とダースレイダーが店に入っていったら、その人たちが氷みたいな目で僕らを見てるわけです。こっちがあまりにオドオドしてるから、ロッカー泥棒ぐらいに思ったのかもしれないですけど。とにかく女性たちが僕らに冷たいんですよ」
中野 「それは厳しいですね」
杉作 「そしたら、そこのクラブの悪そうな店員の人たちが“俺たちは杉作さんの仲間だから今日は思う存分やってください!”って励ましてくれて。まあ、その日に限らず、当時は女性客が全然いなかったんですけど」
中野 「そうだったんですか」
杉作 「皆無です。どこかのお店でサイン会をやったんですけど、並んでた列が全員男性だったこともあります。フロアに女性客はいるのに誰も並ばなかった。たまに女性と目が合うと、こっちを睨んでましたからね」
中野 「睨むんですか(笑)。目を逸らすとかじゃなくて」
杉作 「僕はラップを通してフェミニズムを主張してた部分もあったんですよ。L.L. COOL J太郎の〈すべてまぼろし〉という歌でも、乳首が黒いとか乳首が太いとか歌ってますけど、あの歌詞で僕が何を伝えたかったかといえば、世の中には乳首の色とか大きさで悩んでる女性がたくさんいると思ったんです」
中野 「ああ」
杉作 「その悩みを取り除いてあげたいと思ったんです。みんな違ってていいし、そもそも、すべて幻なんですよって。ところが、まったく逆に取られて女性から大ヒンシュクを食らいましてね」
中野 「相当、わかりずらいメッセージですよね(笑)。僕も今、杉作さんの話を聞いて、あの曲にそんなメッセージが込められてるんだって初めて気づきました(笑)」
杉作 「もしかしたら早すぎたのかもしれないです」
中野 「時代を先取りすぎちゃったわけですね」
杉作 「ええ、わずか10数年とはいえ。あの頃と今とでは、性に対する女性の意識も全然違いますし」
中野 「杉作さんからご覧になって、当時の女性はどんな感じだったんですか?」
杉作 「今みたいに堂々不倫したりとか浮気したりとか、そういう風潮はなかったですよね。今は女性が性欲をおおっぴらにできる時代じゃないですか」
――肉食系女子みたいな言葉も定着しましたし。
杉作 「そう。好きな男性にガンガン自分からアタックするっていう。女性が性に対して奔放になる時代がついに来ましたよ」
中野 「たしかに割と女性がオープンに下ネタを言うような感じはあります」
杉作 「こんなことして欲しいとかね」
中野 「たとえば顔射とか。友達の女の子たちと飲んでて顔射の話になったんですけど、顔射が嫌だって人がひとりもいなかったんですよ」
杉作 「たぶん昔から顔射が嫌な人はひとりもいなかったんですよ。それが言いやすい世の中になったんでしょうね」
中野 「あと、オナニーしてるとか」
杉作 「今から20年前ぐらいですかね。プロレスラーの金村キンタローと邪道と一緒にイベントやったとき、お客さんの女性にオナニーしてるかどうか聞いたんですよ。そしたら全員トイレに逃げ込んじゃいまして」
中野 「はははは! 分かりやすい反応ですね(笑)」
杉作 「イベントが終わるまで戻ってきませんでしたよ」
中野 「問われるのが怖いって」
杉作 「20年前は女性がオナニーのことを問われるとトイレに逃げ込む時代だったんです。でも、今はそんなことないですもんね」
中野 「逃げはしないでしょうね。だからといって答えもしないと思いますけど(笑)」
杉作 「今は確実に女性が性の話をしやすくなってますよ。“やめてくれ”も含めて」
中野 「いわゆる女子会っていうのも、結構、みんな下ネタを話してるみたいですね。男が引くぐらいエロい話をしてるみたいです」
杉作 「今はむしろ性に対して、女性のほうが積極的なんじゃないですか。日本は江戸時代まで封建社会で、ずっと女性が押さえつけられてましたから。一昔前までは女性が浮気してるっていうと、“え!”っていうのがあったじゃないですか」
中野 「そうですね」
杉作 「どの家でもそうですけど、お父さんがよそで浮気してるとか、ソープに行ったとか聞いても、そんなに驚かなかったけど、お母さんが女性用ソープに行ってるなんて聞いたらびっくりしたと思うんです」
中野 「大変ですよ。ていうか、それって一昔前じゃなくて今でも大変だと思うんですけど(笑)」
杉作 「でも、徐々に世の中が変わりはじめてると思うんです」
中野 「実際、女性向けのAVとかたくさん出てますからね」
杉作 「おそらく今後は女性が性を謳歌するようになると思うんです。女性は長年の怨念がありますから、それを無意識に取り返そうとしてるんじゃないですかね」
中野 「なるほど」
杉作 「たとえば今までは僕らがこういうHな曲を聞きたくもない女性たちに無理矢理聞かせてるような時代でしたけど、今後は僕らが女性たちに歌わされるようになるんじゃないかと思うんです」
中野 「むしろ、望まれる時代が来るわけですか」
杉作 「そうです。女性たちの命令で“歌え”と。今は秋元康さんとか、つんく♂さんが女性の気持ちを歌詞で書いてますけど、もうすぐ逆転しますよ。女性のライターがエロい歌詞を書いて、男に歌わせる時代がやがて来ます! ……って思いつくままに何でも喋ればいいってもんじゃないですね」
中野 「いやいや、いつもの杉作さんのトークじゃないですか(笑)! 僕は今の流れ大好きですよ(笑)。“よく知ってるやつだ!”って思いながら聞いてました。むしろ、これが聞きたかったんです(笑)」
――ちなみに凛として時雨のファンは、玉筋クールJ太郎をどう思ってるんですか?
中野 「どうなんですかね。ただ、時雨のMCの中でも下ネタ言ったりするときもありますけど、そういうときも反応が悪いってことも特にないんで。現場では割と好意的に捉えられてる感じはしますけど」
杉作 「中野さんは凛として時雨のMCでもかなり喋ったりするんですか?」
中野 「喋るときもありますね」
杉作 「結構、Hなこととか言うんですか?」
中野 「そうですね。下ネタを言うこともあります。でも最近はあんまり言わないようにしてるんですけど。玉筋クールJ太郎をやってるんで、下ネタはそっちで言って」
杉作 「さっき僕はガンガン飛ばして喋っちゃいましたけど、冷静に考えますと、エロ話ってサービスなんですよね。さっきも言いましたけど、いやらしいことを言いたくてたまらなくて喋るっていうことは、まずないですから」
中野 「聞いてくれる人が喜んでくれるから喋るっていう。それは大きいですね」
杉作 「ひとりで部屋にいてエロいこと喋ってることなんてないですし、女性と二人でいるときにエロい話をすることもまずないですよ。なぜなら求められてないから」
中野 「結局、求められてるからするんですよね」
杉作 「だから基本的にビジネスではあるんですよ」
中野 「ビジネストークとしてのエロ話ですか?」
杉作 「もちろんお金になるためのビジネスではないですよ。ビジネスっていうと言葉が悪いですよね」
中野 「サービストークとか?」
杉作 「サービスともちょっと違う……なんですかね。言わばコミュニケーショントークというか」
中野 「コミュニケーショントーク(笑)!」
杉作 「人との距離を縮める意味で、エロ話ってかなり効果的だと思うんです。接点がないような人とも、エロ話で一気に仲良くなれたりするじゃないですか」
中野 「ああ、確かに」
「かつては鈴々舎馬風さんとか笑福亭鶴光さんとか、エロ話の名人がいたわけです。我々はその伝統を次の世代に受け継いでいく義務があると思うんです」(杉作)
杉作 「(突然)そうだ! 今日は中野さんに伝えたいことがあるんですよ」
中野 「なんスか(笑)!?」
杉作 「先日、世界セックス連盟というものを立ち上げましてね」
中野 「世界セックス連盟ですか(笑)」
杉作 「ええ。大阪で旗揚げしたんですよ。墓場プロの大阪支部を立ち上げまして。大阪支部っていってもメンバーはほとんど赤犬なんですけど」
中野 「赤犬って、バンドの?」
杉作 「そうです。でも、大阪でわざわざ立ち上げるんなら、何かもうひとつ企画が欲しいなと。でも、普段は大阪の人たちとそれほど接点もないし、いきなり文化的なことを言っても東京と大阪じゃ違う部分もあるだろうし。共通して盛り上がるのは、やはりセックスだろうと」
中野 「間違いないです(笑)。ちなみに世界セックス連盟では、どういう活動をしていこうと思ってるんですか?」
杉作 「セックスの祭典みたいなものを今後、4年に1回、オリンピックみたいな感じで、各国持ち回りでやったらどうだろうかと。そのときだけは、そこに行けば、たいていのエロ本が手に入るとか。セックスについて大っぴらに喋っていい数日間みたいなね。そういう祭典があったほうがいいと思うんです。それはなんでかというと、最近、性的な事件が増えてるじゃないですか」
中野 「たしかに増えてますね」
杉作 「僕はね、これが一番イヤなんです!」
中野 「僕もイヤです」
杉作 「今の時代、女性を弱者というのは語弊があるかもしれないですけど、弱い立場にある女性とか年端もいかない少女たちが性的な被害に逢うわけですよ。なんでそこに男の性欲が向かうのか。要するに性から遠ざかりすぎてるんです。普段からセックスまみれの中で生活してたら、変な事件とか起きないと思うんですよ」
中野 「たしかに一理ありますね」
杉作 「エロ本なんかも死ぬほど読んでれば欲しくなくなりますよ」
中野 「もういいやって」
杉作 「僕もね、たまにアイドルの皆さんとお仕事させていただくことがあるんですけど、事務所によっては危険人物みたいに扱われることがあるんです。“うちの子たちに変なことしないでください”みたいな。そんなとき、僕は心の中でいつもこう言ってるんです。“冗談じゃない! 俺には十分エロが足りてるんだよ!”って」
中野 「はははははは!」
杉作 「間違っても、そんなことするわけないじゃないかと」
中野 「こっちはエロで満ち足りてるんだと(笑)」
杉作 「そうです。普段エロが足りてないから、電車で前に可愛い子がいたら衝動的に手が出てしまったりすると思うんです。中野さんも、そう思いません? 満ち足りてる人が痴漢なんてしますかね?」
中野 「しないと思います。満ち足りてる人は余裕がありますから」
杉作 「1000人とセックスしたと豪語してる松方弘樹さんが下着泥棒とかしますか?」
中野 「しないでしょうね」
杉作 「そういうことだと思うんです。性犯罪を防ぎたければ、みんなが松方弘樹になるべきですよ。でも実際は、なれない人が多い。だからこそのエロ話なんです。松方弘樹になれないんであれば、笑福亭鶴光になる道もあるわけです。あの方も普段はすごく真面目な人らしいんですけど、やっぱりみんなを楽しませたい一心でエロ話をしてると思うんです」
中野 「世の中のためにエロ話をして、結果として自分もエロで満たされるっていう。一石二鳥ですね」
杉作 「かつては鈴々舎馬風さんとか笑福亭鶴光さんとか、エロ話の名人がいたわけです。我々はその伝統を次の世代に受け継いでいく義務があると思うんですよ」
中野 「そんな重大な責任があったんですか(笑)」
杉作 「もちろんです。エロ話は他の芸術とはワケが違うから。一代で終わって、“あの人は素晴らしいエロ話をする人だったな”じゃ困るわけですよ」
中野 「はい(笑)」
杉作 「未来の若者達のためにもね、我々は今後もエロ話を続けていかなきゃいけない。あともうひとつ。これも大事なことなんですけど、エロ話は健康にもいいんですよ」
中野 「どういうことですか?」
杉作 「実は『プッチRADIO』の後に、DJのミズモトアキラさんと組んで〈LESSON SEX!!!〉っていうチャリティ・シングルを出したことがありましてね。浜松に住んでたDJネグリジェっていう人が不治の病になって、売り上げを全部治療費に回したんです。その人が聴いて元気になる内容のラップをしてくれっていうんでね、それで制作を始めたんですよ。ラップの内容とか、なんの縛りもなかったんですけど、気がついたら今までにないぐらい下ネタオンパレードの作品になって。きっと、死にそうだった人を励まそうと思ったときに、性の話が一番効果的だと思ったんでしょうね」
中野 「ああ、なるほど」
杉作 「で、おもしろいことに、エロいことを思いつくまま喋ってるうちに僕も元気になっちゃったんですよ。血行がよくなってくるみたいな」
中野 「活力に繋がるっていう」
杉作 「そういうことないですか?」
中野 「あります、あります」
杉作 「血行がよくなって、身体の中に流れるリズムもよくなってくるような気がしたんです。そういう意味でも、性にまつわる話って大事だと思うんです」
中野 「ある意味、世界共通の話題ですもんね」
杉作 「世界には、いろんな考え方とか、いろんな趣味の人がいますけど、そもそも性にまつわらない人なんて、ひとりもいないですから」
中野 「そう言われれば、全員、性にまつわってますね(笑)!」
杉作 「性にまつわってなければ、自分もこの世に存在してないわけですから。人間社会を未来に残していこうと思ったら絶対性にまつわらないといけないんです」
――というところで残念ながら、そろそろタイムアップです。今日、杉作さんとお話して、中野さんの中で何か掴んだものはありますか?
中野 「自分がやってきたことに間違いはなかったのかなと思いました。このままやり続けていいんだって」
杉作 「むしろ、やり続けてもらわないと。次の世代のためにも」
中野 「頑張ります(笑)」
――これを機に、ゆくゆく両者の共演が実現したらおもしろいですよね。
中野 「いいですね! ぜひお願いします」
杉作 「ただ僕は……」
中野 「あれ? 杉作さんが全然、乗り気じゃない(笑)」
杉作 「いや、もうラップがねえ、とにかくシンドいんですよ」
中野 「何が一番シンドいですか?」
杉作 「汗かくんですよ。汗をかくと不安になるんです。脱水症状になるんじゃないかって。あと着替えなきゃいけないし」
中野 「それって単純な話、こまめに水分補給して、何枚か着替えを用意すればクリアできる話ですよね(笑)」
杉作 「まあ、そうなんですけど(笑)。若い人は汗をかいても楽しいかもしれないですけど、僕ぐらいの年齢になると汗かくと不安になるんです」
――寿命が縮まるんじゃないかって。
杉作 「そう。こないだ関根潤三さんが今期初めてラジオで野球の解説をしたんです」
中野 「はい」
杉作 「で、物凄く試合が盛り上がったとき、アナウンサーが“関根さん今のプレイどうですか?”って訊ねたら、“俺、寒気してきた”って言ったんですよ。その後も、何か聞かれるたびに、“うん、寒気した”って答えてて」
中野 「はははは。全然解説になってない(笑)」
杉作 「歳をとってくると、汗とか寒気に敏感になるんですよ。関根さんなんか、もう90歳近いですから。あれ? なんの話でしたっけ?」
中野 「ラップの話ですよね(笑)」
杉作 「そうそう。僕、去年からL.L. COOL J太郎を口パクでやってるんですよ」
中野 「えー! そうなんですか!」
杉作 「そうしたら意外にも口パクのほうが汗かくんですよ」
中野 「エアーのほうが意外と疲れたりするんですよね」
杉作 「あと口パクを始めたのには、もうひとつ理由があって。AKB48が口パクだって悪口を言われてたから、口パクがどれぐらい大変なのか自分でもやってみようと思ったんですよ。で、やってみたら本当に大変だったんです! “ホラ、皆さん見たことか!”っていうね。“あの子らが楽してると思ったら大間違いだよ!”って」
中野 「身をもって、AKB48の大変さを証明したわけですね(笑)」
杉作 「そうです。そんな感じで去年から口パクでやってるんですけど、まあ不思議なもので口パクでやったほうがお客さんの反応がいいんですよ」
中野 「ラップも安定しますからね」
杉作 「それプラス、動きも面白かったんだと思うんですけど」
中野 「ステージングに集中できますもんね」
杉作 「歌詞を気にしなくていいぶん、MCにも集中できますし」
中野 「いいことづくめじゃないですか。じゃあ、そのスタイルでぜひ一緒にやりましょうよ」
杉作 「そうですね。それならいけるかもしれません。構成も毎回決まってて。頭の3曲はアルバムの曲を曲順どおりに歌いまして、4曲目で吉田拓郎の〈イメージの唄〉を口パクで歌うんですよ」
中野 「ヒップホップでもなくなるっていう(笑)。ヤバいですねそれ!」
杉作 「で、ですね、そのとき客席におりて握手して回るんですよ。それが受けるんですよ。しかも、ここ最近、女性に受けはじめてるんです!」
中野 「おお!」
杉作 「今思い出しました(笑)。そう、最近、女性の受けがいいんですよ!」
中野 「この対談中に思い出してもらえてよかったです(笑)。ていうか杉作さんの時代が来てるんじゃないですか。一緒にやるしかないですよ」
杉作 「そうだ! やりましょう! 女性限定で!」
中野 「いいですね」
杉作 「男には“女だ”って言い張ってもらって。もしくはスカート穿いてきてもらったり、入り口でスカート売るとかね。……すいません、つまんないことを言ってしまいました!」
中野 「ははははは! 最高におもしろいです」
杉作 「最後に僕からもお願いがあるんですけど、男の墓場プロダクションで次の映画を作ってるんですけど、よかったら中野さん、曲書いてくださいよ」
中野 「マジですか! 全然やりますよ」
杉作 「今回のアルバムに入ってる1曲目のドラムの曲。ああいう曲で映画が始まったら最高だなと思うんです」
中野 「オープニングですか?」
杉作 「ええ。挿入歌とエンディング曲は決まってるんですけど、主題歌だけ決まってないんですよ」
中野 「主題歌だけ(笑)。でも、イメージ教えていただければ全然叩きますよ」
杉作 「ぜひよろしくお願いします。エロ話をしてると、こういう素敵な出逢いにも恵まれるというね。実に素晴らしいことですよ。今日は本当に来てよかったです」
取材・文/望月哲(2014年7月)
撮影・相澤心也
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