レザー・ジャケットとサングラスで身を固め、ハーレーダビッドソンにまたがり広大な道を爆走する。そんな男の世界を描いたバイカー映画の数々。バイオレンスに満ちあふれた世界を描きながらも、自由を求めて旅に出たり、仲間のためにバイクを走らせたりという青春群像劇としても楽しめるところも魅力の一つ。今回は60年代に数多く製作されたバイカー映画をご紹介いたします。
60年代後半のアメリカで、映画の1ジャンルとして確立するほど数多く製作されたバイカー映画。「バイカー映画を1本だけ挙げなさい」そんな質問があれば、多くの人が真っ先に挙げる作品がやはり
『イージー・ライダー』ではないでしょうか?
ステッペンウルフ「Born To Be Wild(ワイルドで行こう)」などの楽曲にのせて、
ピーター・フォンダと
デニス・ホッパーがハーレーダビッドソンにまたがり、自由を求めてアメリカ南部へと旅をするロード・ムービー。バイカー映画の枠を超えて、アメリカン・ニューシネマの名作として映画史に残るこの作品で、アメリカン・バイクの魅力に取り付かれた人も多いのでは? 実はこの映画に出演するピーター・フォンダ、デニス・ホッパー、
ジャック・ニコルソンの3人は『イージー・ライダー』以前に、それぞれ違うバイカー映画に出演しているのです。
ピーター・フォンダは、アメリカ西海岸を舞台に “ワイルド・エンジェル”なるバイク集団に起きる抗争や警官との戦いを描いた
『ワイルド・エンジェル』に出演。『イージー・ライダー』を製作するきっかけになったとも言われるこの作品は、
ロジャー・コーマンが監督を手掛け、バイカー映画のパイオニア的作品として語り継がれています。世の慣習などに反発し、無法集団の中で暴走する若者の姿は、自由を求める60年代のアメリカだからこそ描けたものかもしれません。
デニス・ホッパーが出演した
『続・地獄の天使』は、暴走族“エンジェルス”の抗争を描いたバイカー・アクション。デニス・ホッパーが出演だけでなく、製作途中で演出も手掛けることになった今作は、対立するグループにさらわれた恋人を助けるために、バイクに乗って追いかけるというストーリー。これら2作品はハードなバイカー映画でありながらも、ストーリーを追えば青春映画そのもの。バイク好きでなくとも楽しめるのでは?
ジャック・ニコルソンが出演した
『爆走!ヘルズ・エンジェルス』は、アメリカに実在するバイク・チーム“ヘルズ・エンジェルス”の姿を細かく正確に描き、実在のヘルズ・エンジェルスのメンバーから支持された作品。この映画で撮影をしたカメラマンのラズロ・コヴァックスは、のちに『イージー・ライダー』の撮影も手掛けています。ちなみにこの作品にはヘルズ・エンジェルスのメンバーも多く出演し、リーダーであったソニー・バージャーが出演していることでも知られています。このソニー・バージャーは、正統派バイカー映画として多くのバイカーから支持される
『大暴走・地獄のライダー』(69年)にも出演(ヘルズ・エンジェルスのメンバーも出演)しています。
“エンジェル”という言葉からもわかるように、ヘルズ・エンジェルスをそのモチーフにして描かれることの多いバイカー映画。その中で異彩を放つ作品が、『血の祝祭日』などのゴア描写満載のスプラッター映画でその名を映画界に刻んだ
ハーシェル・ゴードン・ルイス監督による
『シー・デビルズ・オン・ホイールズ』。女性だけで構成されたバイカー・チームを描いた今作は、バイオレンス描写満載の1本。バイカー映画なのに首が飛ぶというシチュエーションを盛り込んだところは、やはりホラー映画出身の監督だからこそ。
そんなバイカー映画は他ジャンルとの融合を図りながら70年代以降も製作されていくものの、時代の流れからか徐々に衰退していきます。とはいえ、
ミッキー・ロークと
ドン・ジョンソンが出演する
『ハーレーダビッドソン&マルボロマン』や
ジョン・トラヴォルタ主演の
『WILD HOGS/団塊ボーイズ』など、近年でもまだまだ製作されています。そんな近年のバイカー映画の決定打といえるのが、
クエンティン・タランティーノが製作総指揮を手掛けたことでも話題を呼んだ『ヘルライド』。対立するグループに仲間を殺され、復讐のために相手グループのリーダーを追うといった単純明快なストーリーを、バイカー・バイオレンス・アクション映画の世界観で描き、往年のバイカー映画を見事に現代に蘇らせています。60年代に製作されたバイカー映画にも出演し、B級アクション映画の世界で活躍する俳優
ラリー・ビショップが監督・脚本・製作を手掛けているところもポイントが高いですね。
ちなみにこの『ヘルライド』にはデニス・ホッパーが出演。古くからのバイカー映画ファンは、サイドカーに乗るその姿に思わずニヤついてしまうはず。また、『WILD HOGS/団塊ボーイズ』では、ピーター・フォンダがカメオ出演しています。バイカー映画に未だこの2人がキャスティングされるところをみると、『イージー・ライダー』という映画の影響力がいかに大きなものか感じ取れます。
免許を持っていなくてもバイカー気分を味わえる。アメリカの風を浴びながら爆走する気分に浸ることができる。革ジャンに身を包む男の世界を感じ取れる。『イージー・ライダー』を手始めに、そんなバイカー映画の世界に触れてみてはいかがでしょうか? 見終えたあとにハーレーにまたがりたくなったら、それはバイカー映画の魅力にはまったも同然です。