80年代に製作されたホラー映画の中でも、その知名度、人気度が図抜けて高い
『13日の金曜日』シリーズ。ホラー映画をよく知らない、全く観ないという人でも、ジェイソンというキャラクターや『13日の金曜日』というシリーズ名は知っているのではないでしょうか? クリスタルレイク湖のキャンプ場にて次々繰り広げられる惨劇と「殺人鬼は一体何者なのか?」という謎解き要素が含まれたシリーズ第1作は、スプラッター映画という側面だけでは計れないのが特徴で、後に次々と登場するスラッシャー映画の雛形を築いたといっても過言ではない作品。リメイクされたことに喜びの声を上げたホラー映画ファンも多いのではないでしょうか? そんな『13日の金曜日』の他にも、リメイクされたホラー映画はまだまだたくさんあります。オリジナルを知れば知るほど楽しめるリメイク作品の数々を、ジャンル別に分けてご紹介。オリジナル作品と比較しながら、ぜひご鑑賞あれ!
† カルト・ホラーのリメイク作品
シューゲイザーを代表するバンド、
マイ・ブラッディ・ヴァレンタインのバンド名の由来と言われ、あの
クエンティン・タランティーノがお気に入りの映画のひとつとして挙げる『血のバレンタイン』。カルト的な人気を誇るこの映画が、なんと3D仕様にてリメイクされ、 『ブラッディ・バレンタイン3D』として2月14日のバレンタイン・デーから劇場公開されます。つるはしを持ったガスマスク姿の殺人鬼による惨劇が3D映像で描かれるだけに、やはりその恐怖は劇場で味わいたいところ。ホラー映画として楽しめるのはもちろんですが、遊園地のアトラクションに参加しているようなパーティー感覚で鑑賞できるのも今作の特徴でしょうか。参加型アトラクション・ホラーというホラー映画の新たなジャンルを生み出した作品として、その名が映画史に残るかもしれませんね。余談ですが、マイ・ブラッディ・ヴァレンタインの
ケヴィン・シールズは『血のバレンタイン』は大嫌いな映画なんだとか。
『13日の金曜日』の
ショーン・S.カニンガムと
ウェス・クレイヴン監督のコンビによる壮絶なバイオレンス・ホラー
『鮮血の美学』もリメイクされ、『The Last House On The Left(原題)』としてアメリカで3月13日から公開。
イングマール・ベルイマン監督の
『処女の泉』を下敷きにしたというオリジナル版は、目を覆いたくなる残酷描写のオンパレードでホラー映画ファンの間で語り継がれる伝説の作品(ホラー映画のドキュメンタリー
『アメリカン・ナイトメア』でもその倒錯的な描写について、多くの映画監督が語っています)。そのリメイク作の予告編が、現在、海外公式サイトやiTunes Store(海外)にて公開中。サスペンス要素やアクション・シーンなども強まった作風に仕上がっている予告編を観ると、不快感だけを色濃く残すオリジナル版とは違う仕上がりになっているように感じます。
カルト的な人気を誇るだけに、コアなファンからは賛否両論が巻き起こるだろうこの2作。現在、オリジナル版の入手は非常に困難ですが、このリメイク作でオリジナルに思いを馳せてみるのも良いのでは?
†† 名作ホラーのリメイク作品
ホラー映画の金字塔といっても過言ではない『悪魔のいけにえ』をリメイクしたのが
『テキサス・チェーンソー』。スプラッター描写が少ない代わりに殺人鬼・レザーフェイスが持つチェーンソーの音とヒロインの叫び声、ざらついた質感の映像が狂気の世界を生み出したオリジナル版と比べて、ハードな描写が多く、きれいな映像で描かれるリメイク版。現代風ホラーとして作られた正統派のリメイク作品として挙げることができるでしょう。ちなみにこの作品で監督デビューを果たした
マーカス・ニスペルは、『13日の金曜日』のリメイク版も手掛けています。
次に
ジョン・カーペンターによる傑作ホラー
『ハロウィン』をさらに深く、さらに激しく描いたのが
ロブ・ゾンビ監督による
『ハロウィン』。展開などは忠実に再現しながらも、オリジナル版では謎の存在のように描かれた殺人鬼マイケルの少年期を詳細に描き、なぜマイケルが殺人鬼になったのかという点を明確にしたことでストーリーに深みを持たせています。また、その執拗なまでに描かれる壮絶な描写によるショック度の高さは尋常ではなく、スプラッター・ホラーの真髄を味わせてくれます。ちなみにこのリメイク版『ハロウィン』は続編の製作が決定しており、ロブ・ゾンビが引き続き監督を行なうそうです。
不朽の名作として語られることが多いオリジナル版なだけに、新たな解釈、違った描写で製作されたリメイク版は大きな批判を受けることも多いですが、当時の空気感をただ再現するのではなく、現代の要素を盛り込んだ今の時代のホラー映画として描ききったところに良さがあるのではないでしょうか?
††† 完全コピーのリメイク作品
こちらはオリジナルを忠実にそっくりそのまま再現したリメイク版。
ヒッチコック監督の代表作であり、サスペンス・ホラーの傑作
『サイコ』のリメイク作
『サイコ』(
ガス・ヴァン・サント監督)は、セリフ、アングル、カット割り、音楽など細かい描写までオリジナルを忠実に再現(コピー)した作品。モノクロ映像がカラーに変わるだけでその恐怖感は大きく変わりますが、何より監督や演じる俳優によって恐怖感も変わるということを教えてくれます。
また、日本では昨年12月に公開された、
ナオミ・ワッツ、
ティム・ロス主演のサスペンス・ホラー『ファニー・ゲームUSA』。こちらはオリジナル版
『ファニー・ゲーム』を手掛けた
ミヒャエル・ハネケ監督自身がキャストを一新し、アングルや展開などすべてを完全再現した作品。オリジナル版の持つ強烈な不快感や後味の悪さもそのままにリメイクしています。
これら完全コピーによる作品は、監督の作風や役者のカラーの違いを楽しむことができるのがいいところ。映画監督や俳優を目指す方は、その違いに深く注目しながらご覧になってみてはいかがでしょうか?
タランティーノが
『デス・プルーフ』にてスラッシャー映画を復活させたからか、ホラー映画の新作が次々と製作されるようになってきた近年の映画界。その中でもリメイク作品が数多く製作されるのは、やはりその設定やストーリーなどに大きな魅力があるからではないでしょうか? ファンの間で語り継がれる傑作ホラーを超える新たな作品の誕生を願いながら、リメイク・ホラー映画の今を楽しんでみてはいかがでしょうか?