――新曲「Perfect World」はアニメ『狼と香辛料II』のエンディング・テーマ。やはり、アニメの世界観を元にして作られた曲なんでしょうか?
noe 「そうですね。“恋愛の切ない感じがほしい”っていう話があったから、最初はそのイメージで作り始めて。ちょうどその頃、女の子を主人公にした曲を作ろうと思ってて、そこはうまくフィットした感じですね」
noe 「他の方が書いた日本語の歌詞を歌うのは初めてだったから、最初はちょっと不安だったんです。でも、ホントにすごい歌詞で」
山下太郎(以下、山下) 「歌詞が出来上がっていく過程も見ることができたし、勉強になりましたよ。2年くらい学校に通うのと同じくらい(笑)」
noe 「恋愛をしているときって、“自分だけの世界”になったりもすると思うんです。そういう閉じた感じだったり、決して楽しいだけじゃない雰囲気もちゃんと残っていて」
――完全なハッピー・エンドじゃないですよね、確かに。
noe 「そうなんですよね。このアニメは経済のことも扱ってるんですけど、今の世の中もどちらかというと閉じてるというか、窒息しそうな感じがあると思うんです。そういう状態のときって、どうしても意識が自分のほうに向きがちだし――そういう状況のときって、のんきな曲を作ってる場合じゃないというか」
――いまの社会と重なる部分もある、と。
noe 「この曲も最初の段階ではもう少し暗かったんですよ(笑)。保刈(久明/『創聖のアクエリオン』などのアニメ音楽、
新居昭乃のサウンド・プロデュースなどを手掛けるクリエイター)さんのアレンジで軽やかに歩き出す感じが加わって」
山下 「でも、“こうしたい、ああしたい”っていう話はほとんどしてないんですよね。偶然の産物というか、大きな意思を感じるというか、流れのなかで生まれた曲なので。やっぱり、言葉で説明するのは良くないんですよね。どうしても限定されちゃうから」
noe 「自分たちの意思表示は最初のデモ・テープのなかに込めてるし。保刈さんのアレンジは“リミックス”っていう感覚だったんですよ、私たちにとっては。それが面白かったんですよね。こういう捉え方をしてくれたんだ、っていう」
――こういうエレクトロ・サウンドって、結成当初のROCKY CHACKにはなかった要素ですよね?
noe 「初めの頃はギター・ポップが中心だったので。でも、エレクトロやテクノも好きだったし、ずっと聴いてましたけどね」
山下 「やっぱり保刈さんとの出会いが大きいんじゃないかな。初めて保刈さんと一緒にやったとき、僕が入れたコーラスとテクノっぽいアレンジの相性がすごく良かったんですよね。ニューウェイヴに近いサウンドというか」
noe 「そう、テクノというよりニューウェイヴだよね」
山下 「〈Perfect World〉の場合は、弦もすごく重要なポイントになってて」
noe 「関わっている人が、それぞれの思いでいろんなことをやってくれて。バンドっぽい雰囲気なんですよね」
山下 「いろんな人との出会いのなかで、たくさん刺激があって」
――いい環境ですよね。カップリングの「君と僕」は初期のROCKY CHACKのムードがありますね。
noe 「それは結成当初からあった曲なんですよ。なぜか今までレコーディングしてなくて」
――やっぱり、ベースにあるのはフレンチ・ポップ?
noe 「フレンチ・ポップばっかり聴いてた時期ですからね(笑)」
山下 「ヨーロッパが大好きなんで」
noe 「
ピチカート・ファイヴが好きで、小西さんが紹介する音楽も聴いてきて」
山下 「映画音楽とかね」
noe 「そういう“始まり”って大事ですよね、やっぱり」
――この先、ROCKY CHACKの音楽はどういう方向に向かいそうですか?
山下 「とにかく曲を作っていって、“いいね”って言ってくれる人が集まってくる。そういう状況が作っていければ最高ですね。考えてるのはそれくらいかな」
取材・文/森 朋之(2009年7月)