日向坂46の佐々木美玲がドラマ『ぴーすおぶけーき』に主演する。地方の団地に住む3人のおバカな幼なじみたちが、おせっかいなお悩み相談を始めるコメディで、自信あふれるおバカ・中村氏という役。絶えず体を動かしながら、能天気な発言を繰り出すのが面白い。来年1月には舞台化もされる。この作品への取り組みと女優への想いを聞いた。
ドラマ『ぴーすおぶけーき』10月25日(火)スタート
毎週火曜日 深夜25:29〜25:59
(C)NTV/AXON
舞台『ぴーすおぶけーき』2023年1月20日(金)〜1月29日(日)
東京 天王洲 銀河劇場
ローソンチケット一次先行(抽選)
エントリー期間:10月25日(火)12:00〜10月30日(日)23:59
当落発表:11月3日(木)15:00頃
受付URL:
https://l-tike.com/poc2023/ ――日向坂46で活躍中の美玲さんですが、もともと女優業にも意欲はあったのでしょうか?
「芸能界に入りたいと思ったきっかけは女優さんでした。でも、歌とダンスも好きで、アイドルは20代までしかできないかなと思ってオーディションを受けたんです。日向坂46に入って、いろいろなテレビに出演させていただいて、夢がたくさん叶いましたけど、不思議な気持ちもあります」
――女優に興味を持ったきっかけは何だったのでしょうか?
「小さな頃からテレビが大好きで、ドラマをよく観ていたんです。小学5年生の頃、母に何気なく“そんなに好きなら、出るほうになってみたら?”と言われたんです。それをきっかけに“そういう手もあるのか!”と興味を持ち始めました」
――どんなドラマが好きだったんですか?
「いっぱいありますけど、『ホタルノヒカリ』は家族みんなで観ていて、すごく印象に残っています」
――『ぴーすおぶけーき』のようなコメディはいかがでしたか?
「あまり観たことがなかったかもしれません。いきなり出る側になりました(笑)。視聴者さんを笑わせるのは、すごく難しいことじゃないですか。頑張らないといけないと思いました」
――笑わせる部分という意味ではどんなことを頑張りましたか?
「アイドルを捨てました(笑)。正直、すごい顔もしています。自分で観て“この顔はヤバいな”と思うときもありますけど、あれは私でなくて中村氏なので(笑)。別ものとして楽しんでいただけたらうれしいです」
――そういう振り切り方は、撮影に入って最初からできたのでしょうか?
「アイドルは“ステージのここに立って、こう踊る”と決まっていますけど、演技は自分で動かないといけない。それがすごく難しかったです。とくに中村氏は止まっている時間がないくらいのキャラで。ひたすら動くことをよく台本にメモしていました」
――確かに、中村氏は身振り手振りがうるさいくらいですね(笑)。人の悩みを聞こうと、手繰り寄せるような動作をしたり。
「あれは自分で入れました。中村氏は人の話をあまり聞いてなくて、サルのぬいぐるみと手で遊んでいたり(笑)。カメラに映ってないところでも、“中村氏なら何をしているだろう?”と考えました」
――動作以外に、たとえば話し口調とかで工夫したこともありましたか?
「やっぱり動きがいちばん大きいかもしれないです。話すほうは台詞自体がブッ飛んでいるので(笑)。中村氏としては普通で、ほかの人からしたらズコーッとなるような言葉がよくありました」
――台本を読ませていただくと、中村氏の台詞には“w”がやたら入っていました。
「本当にそうなんです。“w”が入ってない台詞のほうが少なくて、それをどう表すか、最初はすごく迷いました。(幼なじみの)下田くん、上原先輩と違うキャラ付けをして、一人ひとりが目立つようにもしないといけなくて。その中で、中村氏はいつでも明るいんです。不良が来ても、みんなは普通にビビるけど、中村氏は動じない。逆に歯向かったりするので、何でも楽しむ中村氏になればいいなと」
――それで“w”も自然に反映できた?
「私自身に近い役と言われていたので(笑)、テンションの高い自分でいようと、ずっと思っていました」
――上原先輩役の落合モトキさんは「ギアを2段階くらい上げた」そうですが、美玲さんは自分を意識した感じですか?
「私もずっとあんなテンションではないですけどね(笑)。スイッチを切るときは切りますけど、中村氏はつねに最上級のテンション。現場でごはんを食べると眠くなっちゃったりして、“下がっているよ”と言われることが最初は多かったんです。でもだんだん慣れてくると、“ハイテンション! パワー!”と言って、ずっと上げていました(笑)」
――中村氏の“自信あふれるおバカ”というキャラクターについては、何かイメージしたものはありましたか?
「おバカというより、ハイテンションなところでお手本にしたのは、仲里依紗さんです。仲さんのYouTubeチャンネルを前から好きで観ていて、“これは中村氏っぽいかも”と思う部分があって。何でも楽しんでやるところで、ちょこちょこヒントをいただきました」
――監督からの演出はどんな感じでしたか?
「最初は私が迷いすぎて、たくさんアドバイスをいただきました。さっきの“w”をどう表現するか? 声を低くするのか? 本読みのときは台詞をひとつ言うたびに、しっくりこなくて“?”が自分の中にあって。私はわかりやすいので、監督も気づいて、“こうしたらいいんじゃない?”といろいろ助けてもらいました」
――早い段階でしっくりくるようになったんですか?
「私はメインキャストの3人の中でいちばん遅かったと思います。落合さんは本読みの段階で“ほぼ上原先輩”と言われていましたし、基(俊介)さんも“もうちょっと真面目に”と言われながら、私から見たら下田くんになっていて。私は考えすぎてしまうクセがあるので本読みの段階では“わからない!”という感じでした。撮影は楽しくやりたかったので、いっぱい迷いながら中村氏を見つけて、挑みたいと思っていました」
――クランクインの頃には掴んでいたんですね。
「そうですね。“ここはどう動こう”とか考えるのを楽しめるようになっていました」
――TikTok用の動画を撮って踊るシーンもありました。
「あの振りは自分で付けました。初めてのことでしたけど、普段アイドルをやっている経験が活かせたかなと思っています」
――アドリブも入れていたんですか?
「結構ありました。私がやって楽しかったのは、“けものの匂い?”という台詞があって。けものと言えば『鬼滅の刃』の伊之助を思い出して、“猪突猛進!”と言ってダダダダダと走り出しました(笑)。本当にアットホームな現場で、監督も“どんどんやって”と言ってくださって。3人でダンスをしたり、“会いましょう〜”と言うのにビブラートを掛けたり、本当にやりやすかったです。最初は“中村氏をどう演じれば?”とモヤモヤしていたのですが、挑んでみて本当に良かったです」
――お悩み相談の話ですが、美玲さんは今、悩みごとはありますか?
「最近の悩みは、お買い物に行くと絶対に余計なものを買ってしまうことです(笑)。この前も兄の服を買いに母と行ったのに、2〜3時間、自分用のものを見てしまいました。そっちを買っていて、兄の服は閉店前の10分で選びました(笑)」
――ちなみに、『ぴーすおぶけーき』以前でも、演技に関して壁にぶつかったことはありましたか?
「毎回、壁に当たっています。原作のないオリジナル作品だと、イチから自分で作るので、選択肢がいろいろある中、どっちに行けばいいんだろうと悩みます。でも、それが楽しくもあるんです。全部楽してできたら、つまらない気がします」
――日向坂46を離れた個人仕事では、やはり心持ちは違いますか?
「全然違うかもしれません。何が違うかと言われたら、自分でもよくわかりませんけど、アイドルは極めていくというか。ひとつの曲の見せ方を、どんどん磨いていく感じなんです。ドラマはシーンごとにテイクを何回か重ねても、ひとつのお話を何回もやるわけではないから新鮮で、また違う楽しさがあります。私は演技経験がそこまでないので、学ぶことも多くて。できなくて悔しい気持ちにもなりますが、普段と違うことができるのは嬉しいです」
――今後も女優の仕事は続けていきますか?
「好きなので、できたらいいなと思います。いろいろなドラマに出たいです」
――悪い役もやりたいとか?
「すごくやりたいです!『リアル鬼ごっこ』とか『ミスミソウ』とか『キャラクター』、『哀愁しんでれら』も大好き。私にそういうイメージはないと思いますけど、狂気的な役もいつかやってみたいです」
取材・文/斉藤貴志
撮影/西田周平
スタイリスト/御手洗優
ヘアメイク/箕輪亜希乃、高木美都子