――みなさん、黒い衣装に身を包んで、なんかハードなフェミニストのような感じがするんですが。
フェイ・ミルトン(ds) 「違うわ、私たち男が好きよ(笑)」
ジェマ・トンプソン(g) 「今の女性の地位を作ってくれたフェミニストたちには敬意を表するけど、私たちはフェミニストじゃないわ。私たちは彼女たちが切り開いてくれた世界で自由に活動させてもらっている次の世代だから、あまり男がどうとか女がどうとかと考える世代じゃないのよ」
――よかったです。アホな質問したらムチでシバかれるんじゃないかと怖かったんです。でも、歌詞がフェミニズムぽいなと思ったんですが。
ジェマ 「私はそう思わないわ。私たちが思うことを素直に歌にしているだけよ」
――みんなが黒い服を着ているのも、自然ということなんでしょうか?
フェイ 「白いシャツを着たければ着てもいいんだけど。私たちは
スワンズや
ポーティスヘッドのステージが大好きなの。彼らの演奏を見ていると、黒い服を着て一生懸命ライヴしている感じがするでしょう。そういう感じが私たちもいいなと思うの。そういうのがみんなに伝わればいいなと。私たちの黒い服はアナーキストの黒い服というより、労働者の服という感じね」
――なるほど、「音楽のことで頭が一杯だ。ファッションなんかにかまってられるか、だから俺たちは白と赤の服しか着ない」と言ったホワイト・ストライプスと同じ考えですね。音楽は完全に初期スージー・アンド・ザ・バンシーズを思い出させるんですが、そういった音へのこだわりは? ジェマ 「安易にスージー・アンド・ザ・バンシーズと似ていると言われるのはうれしくないんだけど」
――すいません。でも、ジェマのギターはポスト・パンク・バンドの代名詞のような小さなフェンダーのギターですよね。すごいこだわりがあるのなかと思ってました。
ジェマ 「あのギターはフランスで偶然見つけたの。初めて見たときは、私には高すぎて買えなかったんだけど、その後手に入れたのよ。でも、私はそんなにギターに興味があるわけじゃない。サウンドを作る上で必要かなと思っているくらいで」
――そういうのがポスト・パンク的なんじゃないでしょうか。あなたたちの音を聴くと、ほかのポスト・パンク・フォロワーよりも、とってもリアルに聴こえるんです。音だけじゃなく、姿勢も、79年の音楽が変化していった熱い時代を思い出させてくれるんです。まず最初にフェミニズムの話をしたのも、当時のバンドがフェミニズムなどにすごく影響されていたから、あなたたちはそういうことに興味があるのかなと思って質問したんです。
ジェマ 「そう言われるとうれしいわ。私たちの音がその頃の音と似ているとするなら、それは今の状況が当時と似ているからだと思う」
フェイ 「世の中が袋小路の状況だから、みんな新しいことをしたくなるのよ。ノー・ニューヨークの人たちもそうだったんじゃない? もともとはクラシックをやっていた人たちが、それまで持ったこともなかったエレクトリック・ギターを持って演奏しだしたりした。だから面白い音楽ができた。私ももともとはクラシックでティンパニーを叩いていたのよ。このバンドにはいろいろな要素があるわ」
――ヴォーカルのジェニー・ベスがフランス人というのも変わってますよね。ロンドンはコスモポリタンの街のようで、外国人には成功をなかなか与えない街でもありますよね。ジェニーをフロントマンにすることでうまくやっていけるかなという心配はなかったですか?
ジェマ 「ロンドンが閉鎖的な街? 私はそう思わないわ。ロンドンという街は自分からチャンスを掴もうとしないと掴めない街であるかもしれないけど、でも努力すればちゃんと成功する街でもあるのよ。それにジェニーは7〜8年もロンドンに住んでいるし、誰よりもロンドンのことをよく知っているわよ」
――これは失礼しました。たしかにジェニーはフランス人と言われないとフランス人だと思わないですよね。サヴェージズはイギリスだけではなく、アメリカでも成功を手にしつつありますが、それはなぜでしょうか? ジェマ 「私たちのサウンドはロンドンの暗くてインダストリアルで、ハードな世界の影響があるかもしれないけど、私たちの歌は世界中の人たちが感じていることを歌っているからだと思う」
女性的な自然体な感じがすばらしい
サヴェージズです。かつてのポスト・パンク・バンドは
U2くらいしかアメリカで成功しなかったですが、彼女たちはポスト・パンクな音で成功できるような気がします。