さらに成長をとげた2nd EPをリリース、鞘師里保

鞘師里保   2022/01/12掲載
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 1st EP『DAYBREAK』から約5ヶ月。鞘師里保が早くも2nd EPを発表する。その名も『Reflection』。“DAYBREAK(=夜明け)”で昇った太陽が、水面、地上を照らす“光の広がり”となる様子を表しているという。宮野弦士ら1stからの作家陣に加えて、NiziUなどへの楽曲提供が話題のKanata OkajimaやMichael Kanekoが初参加した今作について話を聞いた。
New EP
鞘師里保
『Reflection』

初回限定盤B CD + フォトブック SAVR-0005

鞘師里保『Reflection』Linkfire
――デビュー作が昨年の8月リリースで、半年と待たずにセカンドEPのリリースが決まりました。楽曲は以前からあったということでもないんですよね。
 「新たに5曲作りました。ライヴが去年の8月にあって、9月くらいから話し始めて着手したという感じでした」
――リリースやライヴを経て、見えてきたものがあった上で作っていった。
 「ですね。私自身初めてのことばかりでしたし、作家さんたちと前作の経験を踏まえてどうしましょうか、という話し合いをしながら作っていったのが今回の作品です」
――今作も全曲で鞘師さん自身が作詞にクレジットされていますが、2作目はこういうことを書こう、というイメージは当初からあったのでしょうか。僕が『Reflection』を聴いて思うのは、歌詞は前作の延長線上にあるもので、鞘師さんの心のうちが随所に刻まれているなと。
 「そうですね。自分の心が先行じゃなくて、なにか出来事先行で書くとか、対象物先行というのも考えてはいるんですけど、そのタイミングはもうちょっと先にしたいなというのが個人的にあって。もうしばらくは自分から出てきたものをベースに書くほうがナチュラルなんじゃないかと思ったので、今回も内側が滲み出る歌詞が多いんじゃないかなと思います。今回のテーマは“反射”で、前回からの光の広がりみたいなものを表現できるといいなというのがあって、前回よりもスタート地点や着地点が少し前に進んでいるというか。そこは意識した部分でした。世界観の幅をちょっと広げられたらと思って、〈Melt〉のようなロマンス寄りの曲も入ってます」
鞘師里保
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――引き続きパーソナルなところを描いているけれど、もちろん変化した部分もある。
 「前作を作ってるときは自分と対話することへの労力の比率がすごく高かったので。今回も高いは高いんですけど、自分の視野も広がって、どう捉えてもらえるのか、パフォーマンスするときにどういう情景になるか、振り付けをどういうふうにしたいかも頭のなかにありました。歌詞をどうしよう、なにを言おうとかで悩みすぎるのではなく。そこが前回とは違う点かなと思います。前よりもライヴをイメージしやすくなりましたし、前作で一歩を踏み出したからこそ動きやすくなったというのもあります」
――ファーストのときは、自分をさらけ出すことに勇気がいったという話をされていましたが、実際、作品やライヴへのリアクションはどう感じましたか?
 「本当に人それぞれで、歌詞を深読みしてくれる方もいるし、音で楽しむ方もいらっしゃって。それはいいことで、曲自体にも感情が乗っているので、そこまで歌詞のことを考えずに空気感で楽しんでいただくのにも合う音楽ができたかなと思っていて。重たくなりすぎないというか。そういうふうになったらいいなと想像しながら自分の思いをぶつけたつもりなので、それぞれの方法で楽しんでいただけるのが嬉しかったです。だからこそ、これからもちゃんとぶつけよう、核は濃くしようと思いました。そこから人によってどう捉えるのかが広がっていくので」
――そこが言葉を歌にすることもよさですよね。思い切って自分を出してもすんなりと耳に入ってくるし、聴き込めば深く刺さるという。
 「そう思えたのは自分にとっては重大なことで、自分を出すのに躊躇することは減りました」
――1曲ずつうかがっていきたいと思います。「Go-by」は考えごとをしていて夜眠れないことを描写しています。そういう時期がありましたか。
 「そういう時期もあったし、いまも日によってはある、というのが私の夜なんです(笑)。先が不安とか過去はああだったこうだったとかよく考えがちなんですけど、そういう前後の心配をするわりに、いまのことを見てなくない?ってことあると思うんですよ。私はいまを見失いがちになることがあるなと思っていて」
――ああ、自分もわかります。
 「私は話すのが上手じゃないので、次に友達に会ったらこの話で笑わせようと思ったときに、どういう話の組み立て方をしたらオチに繋げられるんだろうって考えるんですね(笑)。ラジオで喋るときもそうですけど、言いたい順番を考えるんです。練習するときも、こういうふうに歌えるようになりたい、だったらこういう練習をすればいいんじゃないかと考える。ただこうしたいと思うだけではそこに辿り着けないので、だったらコツコツと練習を積み重ねるのが一番の近道なのに、ああなりたい、でも歌えない、みたいなサイクルをぐるぐるしちゃうんです(笑)。前後のことばかり見て、いまの自分に言い訳しているのがよくないなと。歌とかトークだけじゃなくて、人生での人との関わり方や自分の仕事のなかでも、いまできることをしなきゃっていうのはあると思うんです。〈Go-by〉は見て見ぬふりをするとか無視するという意味があるんですね。見て見ぬフリをして時間が過ぎていくというのを、タイトルの〈Go-by〉と歌詞の“Time goes by”にかけてます」
――コラム連載でも「夜が来ることに怯え、朝を迎えることを恐れたこともあったな」と書いていましたよね。
 「あれも読んでいただいてるんですね(笑)。悩みのループにハマってしまうときはベッドに入る前から始まったりして。なにか糖分を摂取しないと眠れないというときもありましたよ」
――夜に考え過ぎてしまうのは昔からなんですよね。
 「以前、子供の頃の話もしたことあると思うんですけど、この宇宙の外はどうなってるんだろうとか、いま親がいなくなったらどうしようとか」
――自分は死んだあとはどこにいくのだろうとか。よく考えてました。
 「みんなあると思うんです。明日のプレゼンについて考えるところから大きな悩みにいったり、どうでもよくなったり(笑)。大小いろいろあると思うんですけど、私もそんな感じです。振り入れ大丈夫かな、レコーディング明日だ〜とか考えて、寝たほうが絶対喉にいいのに心配になって眠れないみたいな(笑)」
――そういうことが「Go-by」に限らずいろんな曲のどこかしらに滲んでいて、現時点での鞘師さんの詞の特徴になっているのかなと思います。
 「滲んじゃってますかね(笑)。〈Go-by〉はダンスを意識した曲なので、どこを日本語にしてどこを英語にして、というリズムについても考えました。詞を共作するときはお互い別々の場所で書くことが多いんですけど、今回は一緒のスタジオで書き始めて」
――一緒に書き進めていったんですね。話題が出たので共作についてもうかがいたいのですが、どうやって完成していくのでしょうか。
 「本当に人それぞれなんですけど、〈Take a Breath〉は宮野(弦士)さんとの共作になっていて、作曲してもらう前にまず話し合いをするんですね。こういうテーマを歌いたいですとか、どういうふうにしましょうとか。私が紙にまとめた提案書みたいなものを見せながら一緒に話します。宮野さんの場合は、そこからトラックが上がってきて、そこに英語っぽい仮歌が入ってるんです」
――メロディがラララとかではなく歌っぽく入ってるんですね。
 「そうです。“I want to take a breath”は宮野さんが仮に入れてた歌詞だったりするんです。私も、ひと息つきたいというアイディアを出して、じゃあということで宮野さんがここにフレーズを入れて、そこに入ったんだったら私はこういう歌詞にしようというふうに〈Take a Breath〉を作っていきました。〈Go-by〉も最初に提案はするんですけど、一緒にスタジオに集まって、では書きましょうという感じで相談しながら書きました。Akira (Sunset)さんに“ここ英語にできる?”と言われて英語で書いたり、こっちから“ここ考えていただいていいですか?”と話したりしながらやりました」
――「Take a Breath」でいうと、音楽的に響きがハマる言葉を宮野さんが書いたりしているのかなと。
 「まさにそういう感じです。前回の〈Find Me Out〉も共作になっていて、基本的には私が詞先で書いたものを組み替えていただいたんですけど、“Can You Find Me Out?”というところは私が書いた日本語を宮野さんが英語にしてあのフレーズになりました。本当に曲によってスタイルが違いますね」
――「Take a Breath」はひと息つきたいというアイディアがあったということですが、それも鞘師さんらしいと言いますか。
 「どの曲もシチュエーションは違うんですけど、心境は近いんですよね(笑)」
――“用意された居場所なんて release it”というフレーズは、前作の「Simply Me」の“待って得るものに感動できるのか”と通じるものがありますよね。敷かれたレールに対する自分の意志表明という点で一貫していて。
 「ですね……いいんだか悪いんだか(笑)。自分の居場所を自分で作りたくなっちゃうんです。とはいえ、いまの居場所もたくさんの人が構築してくれた上でいるというのももちろんわかっているんですけど。ただ、そこに辿り着くのに、自分が舵を切っていなきゃなとは常に思っていて。楽しければ全然どっちでもよくて、私の場合は自分で居場所を作ったほうが楽しいんです。でも、なにかの一員でいることが用意された場所なわけでもないし、そのなかでも自分で掴み取るのであればそれも自分で作った居場所ですよね。〈Take a Breath〉の歌詞は同じ毎日が続いていて、息が詰まってきて、みたいな始まり方になっているとは思うんですけど、それは規則正しいことを否定しているわけではなくて。自分ってだらしないなというループにハマってる、みたいなことから抜け出すという意味でも捉えてほしいなと思います。歌詞はそれを言いたいというより、それから派生してなにかになってほしいと思っています」
――ファンキーでダンサブルな曲になりましたが、やはり作る前からダンスを想定しているんですか?
 「打ち合わせの段階ではダンス・ナンバーにならない可能性もあったんですけど、結果的にはそうなりました。Aメロに書いたような行き詰まってる感じは最初の時点からあったんですけど、もうちょっと到達点が明るいところにある曲にしたいと宮野さんとも話していたので、それがこういう曲調に繋がったり、最後の英語の歌詞にも繋がったりしてると思います。私は基本的にファンキーな曲が大好きなので、上がってきたときはとても嬉しかったです。今度のライヴはダンサーが増えるので構成がよりフレキシブルになるんですね。曲の出したい賑やかさや明るさを表現できるし、すごくかっこよくなっているので、これは早くライヴで見てほしいなと思います」
鞘師里保
鞘師里保
――「melt」はさきほども少し話題に出ましたが、これまでの鞘師さんの曲になかった世界ですよね。
 「共作したさらささんは女性のシンガー・ソングライターの方で、私と同世代なんです。今回初めてorigami PRODUCTIONS関係の方と一緒にやらせていただくことになって、Michael Kanekoさんの作品を拝聴して、私が一緒にやれる曲はどんなのだろうって考えたんですよ。トラックの雰囲気もほかとは違ってくると思うので、せっかくの機会だから歌詞も思い切りたいなというのがありました。そこでさらささんと書かせてもらえることになったので、ロマンス的なものにできないかなと相談させてもらいました。原案みたいなことを言うと、これも私の話になってしまうんですけど、人との間にどうしても薄い壁を作ってしまいがちなところがあるんです。でも、この人だと思ったらそれがなくなる。それは友情でも恋愛でもそういう性質なのかなと思っていて。あなただと見つけた人に対して、叫んでいる心のうちを歌詞にしてできあがった曲です」
――こうした表現に落とし込めたのは同年代の同性の方と書けたことも大きかったのでしょうか。
 「こういうテイストは自分だけでは出せなかったので。やりとりさせていただくなかで、私の過去の作品は率直な歌詞が多いから、逆に抽象的な表現にしてみたいんですと提案させていただきました。前作の私では歌えなかったと思うし、いまの私に合っていて、チャレンジングな曲だなと思います」
――ジャジーなトラックもこれまでにないアプローチで。すごくいい曲ですね。
 「ありがとうございます、私もよく聴いてます(笑)。トラックがきたときはびっくりしました。メロに余裕がありましたし、こういう素敵な曲を歌えるなんて、って思いました。でも、最初に〈Find Me Out〉をリリースしたときもみなさんびっくりしたと思うんですけど、いまでは自分のひとつの型みたいなものとして受け入れていただいていると思っていて。だからこの曲もそうなればいいなと思っています。私自身もそうだし、まわりの人たちも一緒になって新しい私を探しにいっている感じですよね。それをちゃんと自分に密着した形で表現できているのかなと個人的には思っています」
――「Baby Me」は聴き手に想像の余地を残す歌だと感じます。かつてピュアだった自分を大人になった自分が守るというか。
 「伝えたいことが伝わるといいなと思っている曲です(笑)。自分のことを卑下してしまう人は少なからずいると思うんですけど、それって、人から悪口を言われて傷つくのと同じで、自分のことをいじめてるのと同じだなと思うんです。“自分なんて……”って言うのは、遠回しに自分に悪口を言うのと同じだし、それを2歳とか3歳のときの自分の顔を見ながら言えるの?というようなことが書いてあって。私も似たようなことをしてるなと思って、自分を改めないとなと。そこから生まれた曲です」
――鞘師さんもそうかもしれないですけど、どうしても自己評価が低くなってしまうというのは誰にでも思い当たることで。
 「難しいんですけど、なんでもハッピーで生きてるとそれで人を傷つけることもあるし、だからこそこういうことで悩む人が多いんだと思うんです。でも、悩むということは自分の人生のことをしっかり考える意欲があるということだとも思うので、そこに気づいてあげたいって気持ちの一部が〈Baby Me〉に入ってます」
――そういうところまで踏み込んで書いて歌っているからこそ、リアリティをもって響くんだなと思いました。
 「そうだといいな(笑)。綺麗な夕陽のなかで、赤ちゃんの自分に“この先も大丈夫だよ!”って笑顔で手を振ってるイメージの曲です」
――ラストの「Winding Road」は本作を締めくくるのにふさわしいスケールの大きな曲ですよね。
 「〈LAZER〉でご一緒させていただいたTAKAROTさんに、次はこういうことがやりたんですと話し始めたときに、この5曲のなかでは一番メッセージが強い曲になるのかなと思ったんです。また新たな表現方法を手伝ってくださる方と作れたらなということで、岡嶋(かな多)さんとご一緒させていだたくことになりました。岡嶋さんは私の伝えたいことに寄り添って歌詞を詰めてくださる方なので、私の心を美しく詞に表現にしていただいたなと思っています」
――さまざまなタイプの作家さんと作業していくことは貴重な経験ですよね。
 「美学みたいなものがそれぞれ違うので、かなり勉強になります。TAKAROTさんのトラックも、ミックスの感じで音の空間がすごく広くて。素敵に仕上げていただきました」
――サビの歌い出しの“答えは今日も出ない”が印象的です。つまりはずっと探し続けるという。
 「そうなんですよ。きっと人生の終わりまで答えが完成しない(笑)」
――EPを通して聴くと、いろんなことを考えたり悩んだりしながら進んできた鞘師さんが、最後に“答えは今日も出ない きっとそれも良くて”と結んでいるのがドラマチックです。
 「おお、それでもいいのか!みたいな感じですよね。それでいいんです(笑)。そのときそのときの私が反映されていて、前作から引き続いて綺麗な日記みたいだなって自分でも感じてます」
鞘師里保
鞘師里保
――今作を作ったことで変化したことはありますか?
 「この曲はこれを書くんだ!と全力を注いでやってきてますけど、範囲を絞って作るので、使わなかったテーマや言葉がたくさん生まれたりしてきていて。それはまた重心を変えて表現することができるな、まだまだやりたいことがあるなと感じています。最初はゼロから考えてたので大変なところもあったんですけど、マインドマップみたいに繋がって広がってきた感じがしてます。自分の手で形にしていくことで見えるものがたくさんありますね。その意味では、いまの時点で自分のやらなきゃいけないことのなかにまだ霧がかかってるものがあったりするんですけど、それは振付師さんや衣装さん、みなさんと一緒に作っていくなかで明確にしていきたいなと思ってます。ライヴに関しても、私がこの方とやりたいなという振付師さんを自分で探してきて、それを実現できたりしているので、いい関係性を築いていけるいまの環境はありがたいことだなと思います」
――世の中の状況次第だとは思いますが、2022年はライヴが増えるといいなと思っています。
 「やっぱり私は歌を伝えていきたいので、できるだけ早いペースでお届けできるように頑張っているところです。いまはSNSで感想を見たりすることもできますけど、実際に顔を見ることで得られる感覚もあるので、会いに行きたい、届けたいというのはすごく思っています。ライヴに来てよかったなと思ってもらわなきゃいけないのでプレッシャーは感じつつも、ですけどね(笑)。でも、やろうとしていることはかっこいいと思っているので、あとはどう仕上げていくかという感じですね」
取材・文/南波一海
撮影/品田裕美
衣装協力/ADELLY(Office surprise)、CHARLES & KEITH、yee
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「RIHO SAYASHI 1st LIVE TOUR 2022 Reflection」
2022年1月15日(土)東京 中野サンプラザホール
昼 開場14:00 / 開演15:00
夜 開場17:30 / 開演18:30

2022年1月16日(日) 大阪 Zepp Osaka Bayside
開場17:00 / 開演18:00

2022年1月23日(日)広島 BLUE LIVE HIROSHIMA
昼 開場13:45 / 開演14:30
夜 開場17:15 / 開演18:00

チケット料金:6,800円(税込)

問い合わせ
東京公演:ホットスタッフ・プロモーション
03-5720-9999(平日12:00〜15:00)

大阪公演:サウンドクリエーター
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