2004年の活動休止から5年。遂にSBKが、その名もズバリなタイトルのニュー・アルバム『RETURNS』を引っさげシーンに帰ってきた。まずは、再始動のいきさつとアルバムのテーマについて話を訊いてみよう。
「休止したあと個々の活動をしていたけど、その2年後くらいからShunさんが“SBKをまたやりたい”って言ってくれていたんです。でも、僕らはメンバーが集まって、音出してっていうバンドじゃないので、コンセプトとか、やりたいことが見えないと、なかなか始動に踏み切れなくて。そういうものが見えてきたので今回、再始動することにしたんです。まずコンセプトは、休止直前のアルバムと似通った内容にしないっていうことと、後期にだんだん無くなったShunさんのラップを戻すってこと。2MC、歌、人間っぽい部分を出しながら、ポップスとダンス・ミュージックを共存して成立させるのがテーマでした」(Shigeo)
休止期間中に、Shigeoは
mold、
the samosとテクノやエレクトロなどクラブ・ミュージックを追求し、ShunとShuyaはLOW CUTSでヒップホップ・ユニットとして活動してきた。この復活作で彼らは、個々で培ったものを存分に活かし、雑食性の高いSBKのサウンドをさらに進化させることに成功している。
「これまでの修行は効いてますね(笑)。トラックは、テクノにしろエレクトロにしろ特化したジャンルも好きだけど、SBKでやるときはそこを上手く吸い上げて、どうやってポップスに落とし込めるかということに重きを置きたいんです。昔は自分の中で決め込んでいた制約があったけど、それも外れて、いろんなものを混ぜることが自由だったし楽しかった。今って、マッチングのセンスが良いか悪いか評価されるからSBKには活動しやすい時代だなって。ラップをやるのも久しぶりで戸惑いがありました。ただ、興味は歌うことやトラック制作、プロデュースに向いていたのでメロディやサビは僕が、ラップのベタな部分はShunさんに任せました」(Shigeo)
「休止前は、ある程度、完成したものをデータで渡していくっていう循環作業だったけど、今回は歌詞も2人でコミュケーションを取りながら、方向性を話し合っていたのでやりやすかったです。それに、この4年でShigeoがメロディのある歌を培ったので、曲の中での役割が、すごくはっきりした。今までだと、オレが歌ってShigeoが歌ってサビは2人で合唱って単純なものだったけど、今回そのパターンを極力やめたんです。これは今後も、すごい武器になっていくと思いますね」(Shun)
アルバムは、
m-floの
VERBALをフィーチャーしたアシッド・ハウス、ヒップハウス的な「load the disc featuring VERBAL」、
Dragon Ashの
Kjをフィーチャーしたフィジェット・ハウス、エレクトロの 「episode V featuring Kj」、
片瀬那奈のガーリーなヴォーカルが光るキラキラしたハウス・チューン「bash featuring KATASE NANA」、坂本龍一の「energy flow」をトラックに使った「elegy train」など、今のクラブ・ミュージックのエッジーな部分とポップ・ミュージックが絶妙なバランスで成立した楽曲を存分に聴かせてくれる。ロックやポップスとクラブ・ミュージックの間に、いまだ高く壁が存在するJ-POPシーンにおいて、両者をこれだけいい形で成立させているバンドは、なかなかいない。SBKの活動休止と復活は必然のものだったと、『RETURNS』を聴いているとつくづく思う。見事な成長を見せてくれたSBKが、ここからさらに前進していくことは間違いないだろう。
「休止前の作品よりも、聴き終わったときに、いい映画を見たあとの温かさをみたいなものを感じるアルバムになりましたね」(Shun)
「復活するにあたって中途半端なものにはしたくなかったし、自分のやってきたことをすべて掌握してポップスに叩き込む、音楽のクリエーションを正面から真剣にやれたと思う。アルバムは、レイヤーでいろんな音を中に隠してるので、環境で聴こえる音が違うんです。なので一聴して終わりじゃなく、長く聴いて欲しいっていうのが願いとしてはあります。あとは、この作品を出してからのオーディエンスのフィードバックがSBKがどこに向かうかを決めていくから、そこはがっちりコミットしていきたいですね。次にやりたい構想あるし、今後もがんばります(笑)」(Shigeo)
取材・文/土屋恵介(2008年11月)