“好きだから、簡単には言えない”――。最新シングル
「簡単に言えたなら」は、そんな女性なら一度は経験したことがあるであろう想いを綴ったナンバーだ。切ないラブ・ソングにも定評のあるシンガー・ソングライター
古内東子が曲を提供したことでも注目を集めている。また、カップリングの「moment」も
中島美嘉の「桜色舞うころ」などを作詞作曲したことで知られる
川江美奈子が書き下ろした1曲。大人の女性たちが等身大の女目線で描き、それを
島谷ひとみが表現力豊かに歌い上げた、女性フレイバーあふれるシングルだ。
――最新シングルは、“女性クリエイターたちの力を結集した1枚”という感じがしました。シンガー・ソングライターの古内東子さんと川江美奈子さんの提供曲が収録されていて、それを歌うのが島谷さん……というね。
島谷ひとみ(以下、同)「そうなんです。今回は本当に女性目線の曲がそろっていて、〈簡単に言えたなら〉が悲しい夜で、〈moment〉がその夜が明けたとき……というか」
――ああ、そうやって聴くと2曲は繋がっているようにも思えますね。
「はい。女の子の気持ちって、すごく変化するじゃないですか? 前日はあんなに泣いていたのに、次の日は意外とスッキリしてたり(笑)。今回の2曲は、そういう女の子の日々の感情を等身大で描いてくださってるなと思います」
――そもそも、「簡単に言えたなら」を古内さんに楽曲オファーしたいきさつは?
「私は去年から女性限定のライヴを開催したりしてるんですが、現在30歳になったこともあり、等身大の女目線で、もっと女性たちと身近なコミュニケーションを取っていきたいと考えているんです。一般的な30歳の女性って、きっと良いことだけじゃなく、悲しい別れとかいろいろな経験をしてきてるじゃないですか? 私自身ももちろんそうですし、スタッフと話をしてても、今後の島谷はそういたった切なく悲しい感情を表現していけたらいいんじゃないかって。そんな中で、古内さんのお名前が上がり、ぜひ楽曲をお願いしたいということになったんです」
――そこでOKをもらえたと。
「はい。快諾していただけたときは、すごくうれしかったですね。古内さんの〈誰より好きなのに〉は私も大好きですし、古内さんの曲には、すごく都会的な大人の女性のイメージがあって。そんな楽曲を作っていただけるのかなとワクワクしました」
――「簡単に言えたなら」が最初に聴いたときの印象はどうでしたか?
「最初は古内さんの弾き語り音源を聴かせていただいたんですが、鳥肌が立つほど感動しました。シンプルに“すごくいい曲!”って。綺麗な言葉だけを連ねるんじゃなく、人間が必ず持っている感情というか、みにくい部分とかも素敵に描いてくださってるなって」
――リアリティのある心理描写はとても切なかったです。あと、ちょっと大人な世界観ですよね。
「そうなんです。やっぱり大人になると言えないことも増えたり、昔はもっと気持ちをぶつけられてたのに……ってことがよくあって。男女の交わりあえない切なさを描いた、なんとも言えない切なさを持った曲ですね」
――カップリングの「moment」は、先ほどおっしゃったように、「簡単に言えたなら」から一夜明けて少しケロッとしたような女性のイメージの曲ですね。
「はい。女性の強さだったり、自分で立ち直ろうとする気持ちが描かれていると思います。女の子ならきっと共感できそうな、主人公のかわいくて茶目っ気のある感じが私もお気に入りです」
――歌詞の“時には寂しがってみたり 傷つく自分も気持ちいい”なんて想いは、きっと男性には分からないでしょうね(笑)。
「どうなんでしょうね(笑)。でも女の子って本当に不思議で、恋が終わったときってもう“この世の終わり!”ってくらい落ち込むのに、なんだかんだみんな立ち直って新しい恋をしていて。そのへんの感じもこの曲で楽しんでもらえたらと思いますね」
――改めて、今回のようなコンセプト・シングルとも言える作品を作ってみていかがでしたか?
「こういう100%女性目線の歌って、意外と男性にも響くみたいなんですよね。周りの男性スタッフたちも、“切ないなぁ”なんて言いながらじーっと聴いてくれてて。もちろん男性だって切ない想いはしてるだろうし、そこは共感してもらえるのかなって思います。女性が女目線の歌をストレートに歌うと、男性にも意外と伝わるんだなってことが今回の発見でしたね」
取材・文/川倉由起子(2011年2月)