【スクリーム interview】ダブステップ界の寵児、スクリームが待望の2ndアルバム『アウトサイド・ザ・ボックス』をリリース!

スクリーム   2010/10/04掲載
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【スクリーム interview】ダブステップ界の寵児、スクリームが待望の2ndアルバム『アウトサイド・ザ・ボックス』をリリース!
 ダブステップ界の寵児、スクリームの活動が旺盛である。世界中を飛び回るDJ活動や自主レーベル、Disfigured Dubzの運営に並行して、盟友ベンガとアートワークとの新プロジェクト、マグネティック・マンを始動させるなど、かなり多忙を極めるその最中に、本当にひさびさの新作、ソロとしては2nd(そう、まだたったの2作目なのだ)にあたる『アウトサイド・ザ・ボックス』が届けられた。新作について、そしてダブステップというムーヴメントについて。彼の思いをつぶさに語ってもらった。
――UKのダブステップ・フォーラムで未発表音源のトラックリストを見ました。非常にたくさんの曲を作られていますが、新作はそこからどのようにまとめたのでしょう?
スクリーム(以下、同)「そういうトラックは、基本は自分がDJをやる時のツールとして使っている曲だね。このアルバムに収録されている曲は、作曲の部分をもっと考えている、だから種類として違うものなんだ。DJ用のツールとしての曲だったら、1日2曲とかそのくらいのペースで作ってる。そういうトラックだったら年に400曲とか余裕で作っているよ(笑)。今回のアルバム用の曲には40曲くらい作ったけど、その40曲を作るのには1年がかかった。曲の構成からサウンドのミキシングまですごく考えて作っているんだ」
――前作から4年かかったのはなぜ? 4年の間に、グライムやダブステップを取り巻く環境は大きく変わりましたが。
 「単にアルバムを出す気がなかった。なぜ作る気が起こらなかったかと言えば、君が言うように環境も変わり、ツアーにもたくさん行くようになって、1年の間ほとんど家にいないという状況で、家に戻ったとしても、疲労で思考能力のない状態だった。制作という面では、もっとDJ向けの“Skreamism”のシリーズに集中している状態でもあったからね。だからとくにアルバムを作ろうとは思っていなかった。ところが2009年の1月頃に、自分の方向性に疑問を持ち始めたんだ。何かが必要だと思っていた。その時に手がけたのがラ・ルー「イン・フォー・ザ・キル」のリミックスで、それが予想を超えてヒットした。その時から制作に対する自分の意識も変わったんだ。アルバムを作ろうと思って、方向性やカラーを徐々に考えていった。そこからは集中してアルバムに取り組んだ。だから4年もかかったのは単に忙しかったのと、作る気がなかったからさ」
――もっとヴォーカルを入れるとか、ハイプな方向にいくこともできたと思うんです。でも、あえてそういう方向にいかなかったように思えます。アルバムを作る上で留意した点は?
 「今回は20曲くらい使わなかった曲があるけど、その中にはヴォーカル入りの曲もある。プロデューサーとして“物足りないな”とか“この曲はヤバいから絶対入れたい”というのは、ヴォーカル入りかインストかは関係ない。そういう選曲をしている。全部の曲を作った上で入れる曲を判断したんだ。今まではヴォーカルをダブステップに載せるということはそこまで自分でも想像できなかったんだけど、ベンガのトラックのEveの曲(「Me N My」)を聴いた時に“こういうのもアリだな”と耳が開いたよ。だから今回はそういう曲も入っている。アルバムをさらにハードにすることももちろん可能だったけど、僕は毎日ハードなものを作ったりDJセットをやっている。ハードなものはそっちですでに追求しているから、アルバムに関してはもっと音楽的なバランスを考えたんだ。“音楽的な旅”だね。テレビのチャンネルを変えればいろんな番組がやっているだろ?」
――実は先週Kode9とMartynにインタビューしてきたんですけど、彼らはダブステップという言葉にすごく違和感を感じていたんです。自身がダブステップ・アーティストと呼ばれることについてどう思いますか?
 「スティーヴ(Kode9)とはすごく仲がいいけど、彼は今はDJでダブステップをかけていないよ。4つ打ちのハウスとかUKのベース・ミュージックをかけているというところもあるし、Martynは今は“Martynの音楽”をやっていると思うよ、ちょっとテクノよりなね。彼らがダブステップという言葉に違和感を感じるのはすごくよくわかる。でも、そもそもの最初に僕やKode9が、今ダブステップと呼ばれているようなジャンルをやりだした頃にも定義はなかった。それは最初からそうだったんだ。今もとくに定義があるような音楽だとは思っていない。だけど人気が出てきて、こういう音楽がダブステップという一つの箱の中に押し込められてしまった。だから彼らの違和感はわかる。だけど僕は、自分の音楽がなんと呼ばれても構わないよ。それがダブステップという言葉でもなんでもね。名前なんてなんでも付けてもらってかまわない。ダブステップはメディアが付けた言葉だから、メディアが騒いでいるから嫌だという気持ちは僕にはないよ。最後に、もしダブステップを定義するとするなら、“BPMが140のベース・ミュージック”ということ、ただそれだけさ」
取材・文/南波一海(2010年7月)
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