「昨年世界で起こったことに私が何を思ったか」――英国の気鋭女性ラッパー、スピーチ・デベルの2ndアルバムが完成!

スピーチ・デベル   2012/02/02掲載
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「昨年世界で起こったことに私が何を思ったか」――英国の気鋭女性ラッパー、スピーチ・デベルの2ndアルバムが完成!
 2009年に発表した1stアルバム『スピーチ・セラピー(Speech Therapy)』がイギリスでもっとも権威のある音楽賞、マーキュリー・プライズで〈アルバム・オブ・ザ・イヤー〉を受賞するなど、一躍スターの座に上り詰めたスピーチ・デベル(Speech Debelle)。イギリスのエレクトロニック・ミュージック・シーンにおいてトレンドセッター的活躍を続けるレーベル、ビッグ・ダダの看板アーティストのひとりともなった彼女の新作『フリーダム・オブ・スピーチ(Freedom Of Speech)』は、新進プロデューサーとして注目を集めるクウェズ(Kwes)が全面参加。彼女の強さと優しさ、喜びと苦悩がダイレクトに刻み込まれたその内容について、多忙を極めるスピーチに話を聞くことができた。
――デビュー・アルバム『スピーチ・セラピー』が大きな成功を残した後、あなたの生活は激変したんじゃないですか?
 スピーチ・デベル(以下同)「成功が何を意味するかにもよるけど、もちろん、こうしてあなたとインタヴューしているような変化はあったわ。起こったことすべてに満足してるし、私自身を大きく変えたとも思う。前よりもっと成長したの。年齢を重ねたからっていうのもあるけど、理解力もついたし、ひとつひとつの物事に対してちゃんと考えられるようになったと思うわ」
――ニュー・アルバム『フリーダム・オブ・スピーチ』は、前作に比べてヘヴィな印象があります。このアルバムであなたが訴えようとしたものとは何だったのでしょうか。
 「アルバムがヘヴィに聴こえるのは、進歩の現れだと思う……そうだといいな。1stアルバムよりも前進してるから、もしかしたら前と違う音に聴こえるかもしれないけど、前とやってることは大きく変わらないの。意欲とかフィーリングも同じ。私が大事にしているのは、メッセージというよりはフィーリングなの。1stアルバムも果たしてメッセージを持ってたかどうか、私にはわからない。あのアルバムは、自分が外に出したいと思うフィーリングを表に出した作品って感じ」
――では、今回のアルバムではどんなフィーリングを表現してるのでしょう?
 「去年起こったことについて、私が何を思うか、思ったかを表現してる。2011年はみんなにとって重要な年だったと思う。日本も震災で大変だったでしょ? TVの特集番組を観たんだけど、すごく怖かった。車から降りられないまま流されていく人とか、道路の脇の遺体とか、本当に心が痛んだわ」
――ロンドン暴動の最中、今回のアルバムにも収録された「Blaze Up A Fire」をネット上で公開しましたね。どういう理由からそうしたアクションを起こしたのでしょうか。
 「挑発的になりたかった、というか、ちょっと刺激を与えたかったの。それに自分が何を感じているか表現したかった。そのフィーリングって、みんなが暴動を起こす時に感じてるものと似てるんじゃないかなって思ったの。店に入って物を盗んだり壊したりっていう行動は愚かだと思う。でも、マーク・ダガンが警察に射殺されたことに対しての怒りとか、そういうのは同じなの。みんながそういう状況にフラストレーションを感じてるのは理解できるし、暴動自体、フラストレーションの表現方法だと思う」
――アルバム・タイトルにある“Freedom”とは、あなたにとってどのようなものでしょう?
 「私にとってはスピリチュアルなもの。私は今29歳なんだけど、言いたいことが言えるし、なりたい自分でいられるし、着たいものが着れるし、食べたいものが食べられる。29歳にもなれば自分にも自信を持てるようになるし、発言にも説得力があると思う。だから精神的に解放されているの。それは大切なフリーダムのひとつだと思う」
――今回はクウェズの作風も色濃く出ていますね。
 「クウェズは天才。魔法使いよ(笑)。彼の意見は全部聞いたし、聞きたいって思えるの。最高のプロデューサーよ。彼からは本当にたくさんのことを学んだ。いつかまた彼とコラボしたいわ」
――イギリスに限らず、世界中が混乱と不安に覆われています。そんな世界のなかで、あなたはどんなメッセージを歌っていきたい? 
 「うーん、難しいわね……私、そこまで大きなことは考えてないし、ただハッピーでいたいだけなの。メッセージを語りたいとはあまり思わないし、曲を作るのは自分自身をハッピーにするためだから。だから、リスナーにもただエンジョイしてほしいの」
――では、自分の音楽で世界を変えたいと思いますか?
 「世界を変える? 私の音楽で? ノーよ。私はクラシックなアルバムを作りたいの。私の作品は全部クラシックであってほしいわ」
取材・文/大石 始(2012年1月)
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