【スティーヴィー・サラス interview】噴出感と起爆力たっぷりのギターが炸裂!――豪華ゲストを迎えたカヴァー・アルバム

スティーヴィー・サラス   2010/10/21掲載
はてなブックマークに追加
 噴出感と起爆力たっぷりのギター演奏を核におく、ファンキー・ハイパー・ロック野郎がスティーヴィー・サラスだ。音楽の素敵や自由をあっさり出せちゃう彼には同業者シンパがたくさんいるわけだが、そんな彼の新作『ジャム・パワー』は多様な人が参加したカヴァー・アルバムとなった。そこには、旧知のブラック・ロッカーであるT.M.スティーヴンスアイヴァン・ネヴィルガンズ・アンド・ローゼズスラッシュマット・ソーラムマーズ・ヴォルタのホワン・アルデレーテ、モトリー・クルートミー・リー、元Pファンクアンプ・フィドラーほかが参加し、曲ごとに異なる顔ぶれで、嬉々としてAC/DCデヴィッド・ボウイガービッジ、そしてジョニー・テイラーアース・ウインド&ファイアーヴァーダイン・ホワイトも参加)など、いろんな曲をやっている。さて、好漢サラスはこの絢爛豪華作で何を求めたのか。
――ずばり、どういう経緯でこれを作ろうと思ったのでしょう?
スティーヴィー・サラス(以下、同)「93年に同様の成り立ちを持つ『エレクトリック・パウワウ』を出したんだけど、あのときの制作過程がすごく楽しかった。それで、その思いをまた味わいたくて作ったんだ」
――新作はカヴァー作と聞いたときには何も今さら作らなくても、と実は感じたんです。ところが、仕上がったものを聴き、パーソネルをチェックして、これ意義ありと感服しました。今まであなたが通ってきた音楽嗜好や関わってきた人脈をあっさり伝え、言わば、あなたの音楽半生を凝縮したようなものになっていますから。
 「そう、君が言うとおり。スティーヴィー・サラスはどういう人間か、というのを表現したかった。それから、もう一つ狙いとしてあったのは、参加者の組み合わせと曲との兼ね合い。知り合いにただ入ってもらうのは、いくらでも可能。でも、俺はコンビネーションや編成の妙を追求したかった。誰が、ザック・ワイルドチャカ・カーン(がいたルーファスの)曲をやるなんて思う? カヴァー作は誰でもやっているけど、俺は一筋縄ではいかないカヴァー・アルバムを作りたかったんだ」
――では、この曲にはこの人とこの人を合わせてとか、いろいろ考えたわけですね。


 「まったくもって。関与者といろいろとやりとりをして、曲を決めていった。で、彼らからもアイディアを受けて、ならこういうのもありだな、とか。もう、皆もノリまくりだった」
――選曲は大変じゃなかったんですか? 候補曲はたくさんあったでしょう?
 「ああ、苦戦した。それで、完成していないものも含めると、20曲録ったんだ。これはやっぱり違うなというのも出てきて、ちゃんと完成形に至った曲をアルバムに入れた。最初はグレン・ヒューズ(元ディープ・パープル)に歌ってもらったけどうまくいかなくて、別のシンガーになった曲もあったしね。ザ・クラッシュの〈ディス・イズ・レディオ・クラッシュ〉もコーシ(B'z稲葉浩志)と盛り上がって録りだしたけど、違うザ・クラッシュ曲(〈ポリス・オン・マイ・バック〉)を歌ったほうがいいとなった。でも、トラックの完成度が高かったので、そちらはバーナード・ファウラーに歌ってもらった」
――だから、ザ・クラッシュの曲だけ、2曲収められているんですね。
 「うん。〈ディス・イズ・レディオ・クラッシュ〉はリッチー・コッツェンロニー・ジェイムス・ディオ風に歌ってもらうという話もあったんだけどね。とか、いろいろ紆余曲折があって、ここでの形に落ち着いたんだ」
――シンガーもいろんな人が参加していて、あなたがリード・ヴォーカルを取っているのはザ・ビートルズの曲だけですよね。
 「自分のバンド、カラーコードでは歌っているので、今回は世界のトップ・ヴォーカリストたちに参加してもらって、彼らに自由にやってもらい、俺はその様を横でじっくり聴いて、感動したかったのさ」
――とにかく皆、素で楽しんでいるのがわかります。気の合う仲間同士で、童心に帰ってかつて熱くなった思いを反芻するようなキブンも充満しています。
 「参加してくれた奴らとは長い友だち付き合い、それを持てた俺はとてもラッキーだと思う。ガンズ・アンド・ローゼズの面々なんかは貧乏な頃からハリウッドで一緒に野球をやっていた間柄なんだよ。そういう奴らと思い出を語り合いながら、俺たちの血や肉になっている曲をやるのがうれしくてたまらなかった」
――それから、枠を超えようとする力や自由がここにはありますよね。ファンクもロックも区別なんかない、エモーショナルでグっとくる音楽として楽しめば吉なんだという思いにもあふれていますし。
 「俺は変わったキャリアを持っているからねえ。ロックもやれば、ファンクもやるし、ビル・ラズウェルのよう人ともつるんでいる。でも、誰だってガキの頃なんて、そんなもんじゃないのかい。音楽のスタイルなんか気に留めず、耳に入る曲をただただ楽しんでいただろ?」
取材・文/佐藤英輔(2010年10月)
最新 CDJ PUSH
※ 掲載情報に間違い、不足がございますか?
└ 間違い、不足等がございましたら、こちらからお知らせください。
※ 当サイトに掲載している記事や情報はご提供可能です。
└ ニュースやレビュー等の記事、あるいはCD・DVD等のカタログ情報、いずれもご提供可能です。
   詳しくはこちらをご覧ください。
[インタビュー] 人気ピアノYouTuberふたりによる ピアノ女子対談! 朝香智子×kiki ピアノ[インタビュー] ジャック・アントノフ   テイラー・スウィフト、サブリナ・カーペンターらを手がける人気プロデューサーに訊く
[インタビュー] 松井秀太郎  トランペットで歌うニューヨーク録音のアルバムが完成! 2025年にはホール・ツアーも[インタビュー] 90年代愛がとまらない! 平成リバイバルアーティストTnaka×短冊CD専門DJディスク百合おん
[インタビュー] ろう者の両親と、コーダの一人息子— 呉美保監督×吉沢亮のタッグによる “普遍的な家族の物語”[インタビュー] 田中彩子  デビュー10周年を迎え「これまでの私のベスト」な選曲のリサイタルを開催
[インタビュー] 宮本笑里  “ヴァイオリンで愛を奏でる”11年ぶりのベスト・アルバムを発表[インタビュー] YOYOKA    世界が注目する14歳のドラマーが語る、アメリカでの音楽活動と「Layfic Tone®」のヘッドフォン
[インタビュー] 松尾清憲 ソロ・デビュー40周年 めくるめくポップ・ワールド全開の新作[インタビュー] AATA  過去と現在の自分を全肯定してあげたい 10年間の集大成となる自信の一枚が完成
[インタビュー] ソウル&ファンク・ユニットMen Spyder 初のEPを発表[インタビュー] KMC 全曲O.N.Oによるビート THA BLUE HERBプロデュースの新作
https://www.cdjournal.com/main/cdjpush/tamagawa-daifuku/2000000812
https://www.cdjournal.com/main/special/showa_shonen/798/f
e-onkyo musicではじめる ハイカラ ハイレゾ生活
Kaede 深夜のつぶやき
弊社サイトでは、CD、DVD、楽曲ダウンロード、グッズの販売は行っておりません。
JASRAC許諾番号:9009376005Y31015