さらなるピーク・ポイントへ向けて紡ぎ出すビート──“ダンス・ミュージック界のゴッドファーザー”、高橋透がミックスCDで試みる新たなチャレンジ

高橋透   2008/05/15掲載
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さらなるピーク・ポイントへ向けて紡ぎ出すビート──“ダンス・ミュージック界のゴッドファーザー”、高橋透がミックスCDで試みる新たなチャレンジ
 2000年以降のオルタナティヴなダンス・ミュージック・シーンを牽引してきた名物パーティ〈GODFATHER〉。そのレジデントDJとして、日本各地のパーティ・ピープルを興奮の坩堝に巻き込んでいるのが今年で活動33年目を迎える高橋透

 〈GODFATHER〉10周年を記念したミックスCDの発表にあわせて、“ダンス・ミュージック界のゴッドファーザー”、高橋透に話を訊いた。


 ダンス・ミュージック界のゴッドファーザー。高橋透というDJを一言で語るなら、そんな形容が相応しいのではないかと思う。キャリア33年、今年51歳という彼の伝説に彩られた足跡は、昨年、刊行された自伝『DJバカ一代』(リットーミュージック)に詳しいが、1975年のディスコ最盛期にトレンドの移り変わりが激しいDJの世界に身を投じた彼は、その道を追求するべく渡米。そこでDJ界のジミ・ヘンドリックスことラリー・レヴァンがDJを務めていたパラダイス・ガラージやDJと照明が一体となった4000人規模のメガ・ディスコ、ザ・セイントといったニューヨークでの強烈な音楽体験を重ねてきた。そして、黎明期のハウス・ミュージックを携えて帰国すると、89年に東京は芝浦に誕生した伝説のクラブ、GOLDのレジデントDJ兼音楽監督に就任。そして、そのGOLDに通い、彼のプレイに大きな影響を受けたのが、若き日のDJ、MOODMANとVJの宇川直宏だ。
 

 「10年前の僕は青山の(クラブ)LOOPくらいでしかDJをやってなかったんだけど、当時のガラージ解釈って、BODY&SOULだったり、SHELTERみたいな一部のパーティやクラブの解釈が主流になっていたの。でも、僕が実際に体験したパラダイス・ガラージ、ラリー(・レヴァン)のプレイって幅があって、“狂気の日”って言われる、とんでもないことだったり、くだらないことがいっぱい行われていて、ゲイの黒人たちの面白おかしいパーティ・グルーヴが渦巻いていたのに、その解釈性が偏ってて、違和感があったのね。そう思っていた時にMOODMANと宇川くんに出会ったんだけど、彼らは世代が違うのに同じ違和感を感じていて、“ガラージの一番尖った部分、狂った部分を表現するパーティが出来たらいいよね”ってことで意気投合したんだ。あの頃はね、世の中がどんどん移り変わって、新しいDJが出てきている感触があって、MOODMANのプレイ、宇川君の狂ったVJはまさにそんな感じだった。〈GODFATHER〉はそうやって始まったんですよ」




 かくして、98年にスタートしたパーティ〈GODFATHER〉は、都内を拠点に不定期で全国巡業を開始。点在するローカルなシーンを線で繋ぎながら、2000年以降のオルタナティヴなダンス・ミュージック・シーンを牽引し、気が付けば、10年の歳月が経過していた。高橋透のミックスCD『GODFATHER 10th anniversary Vol.1 / deathcovery mix - Mixed by TOHRU TAKAHASHI』は、その軌跡を振り返ることなく、黒光りするテクノを懐に引き寄せた12曲、73分で伝える〈GODFATHER〉の最新/最深レポートと言える一枚だ。

 「今までのミックスCDは自分が持ってるレコードを選曲して1枚にまとめたんですけど、今回は手元のレコードを使わずに新しい曲を(有料ダウンロード・サイト)BEATPORTからダウンロードして、CDに焼いたものをCDJでミックスしたもの。アナログに比べると、データ・トラックはまだまだ音質的に不安定なので、最終的にマスタリングで綿密に音の調整をしたんです。だから、音質的には聴きやすくなってると思いますよ」

 世界的な現象として、インターネット環境が整備されるに伴い、レコード・ショップが淘汰されつつある昨今、DJは徐々にではあるが、PCやCDJでのプレイに移行しつつある。しかし、選曲やプレイの仕方はもちろんのこと、音の鳴りがすべてといっていいクラブ・シーンにおいて、PCやCDJのプレイ・スタイルはまだまだ確立したというにはほど遠い状況だ。そうであるからこそ、日本におけるダンス・ミュージック・シーンのパイオニアである高橋透は荒野を目指す。キャリア33年にしてパーティ〈GODFATHER〉を始めて10年という51歳のDJが、さらなるピーク・ポイントへ向けて紡ぎ出すビートに、まだまだ止まる気配はない。


取材・文/小野田雄(2008年4月)



GODFATHER 10th ANNIVERSARY Vol.1 DEATHCOVERY MIX MIXED by TOHRU TAKAHASHI RELEASE PARTY

2008.5.16(FRI)
at UNIT (Daikanyama, Tokyo)、http://www.unit-tokyo.com/
open/start 23:30
adv: ¥3,000 door: ¥3,500
!!Attention!! You must be 20 and over with photo ID to enter.
※20歳未満の方のご入場はお断りさせて頂いております。全てのお客様のご入場時、写真付き身分証明書の確認を行っております。実年齢に関わらず、写真付き身分証明書をお持ちでない方はご入場できませんので、お忘れの無いよう必ずご持参ください。

<UNIT>
GODFATHER DEATHCOVERY SET
DJ:高橋透/MOODMAN
VJ:宇川直宏
Special Guest DJ:DISCO TWINS[DJ TASAKA & KAGAMI]

<SALOON>
MOODMAN Presents
TRIBUTE to TOHRU TAKAHASHI -DJ 33th anniversary Bash-
supported by Mixrooffice
DJ:DJ WADA (CO-FUSION)/瀧見憲司 (CRUE-L)/二見裕志 (World Famous)/KABUTO & RYOSUKE (FUTURE TERROR)/Dr. Nishimura (Discossession)/UNIVERSAL INDIANN (濡れ牧場)/1DRINK (JAYPEG)/CRYSTAL (TRAKS BOYS)/KLO (ポテ恋DISCO)/DJ NORI (Gallery)/MOODMAN (GODFATHER)
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