特別対談:夢眠ねむ(でんぱ組.inc)×寺嶋由芙

寺嶋由芙   2014/03/11掲載
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逆境と覚悟は、アイドルにとって最大の武器。
そして日本全国に味方のいるゆふちゃんなら、きっとどこまでも飛んでいける!
#ゆーふらいと便、搭乗時間間近です。乗り遅れるなッ
夢眠ねむ(でんぱ組.inc)
寺嶋由芙「#ゆーふらいと」フライヤーより ⇒

 先ごろソロ・アイドルとして再出発した寺嶋由芙と、寺嶋のソロ・デビュー曲「#ゆーふらいと」の作詞を担当したでんぱ組.inc夢眠ねむの対談が実現。「#ゆーふらいと」の作詞についてはもちろん、お互いの印象やアイドルについて、大いに語って頂きました!
「〈#ゆーふらいと〉の歌詞をもらった時に“なんでわかったんだろう?”って思うくらい感動したと同時に、歌って大丈夫なのか心配もして」(由芙)
――まず、ねむちゃんが書いたフライヤーのコメントに感動してしまって。
寺嶋由芙(以下、由芙) 「私もですよ! これで泣いてます!」
――こういう形でスパッと書けるのがすごいなと。
夢眠ねむ(以下、ねむ) 「そう言っていただけて嬉しいです!」
――普通に思ったことを書いた?
ねむ 「そうです。このコメントも、歌詞も」
――そもそも、どういう経緯で作詞することになったんでしょうか。
加茂啓太郎(レーベルA&R / 以下、加茂) 「知り合いのスタッフが、“ねむきゅんにお願いしましょうよ”って言ってて。最初は実現するのかなと思ったんだけど、“〈書きます〉って返ってきました”っていうことで」
ねむ 「デビュー曲を書いてほしいっていう連絡がアツい感じだったんですよね。それで、求めてもらえるならやってみたいなと思って」
由芙 「恐れ多い……」
――由芙ちゃんはオファーするって聞いてどう思ったの?
由芙 「やってもらえるなら、ぜひって思ったんですけど、実現するわけがない、勝手に盛り上がってるだけだと思ってたんです。忙しいだろうしダメだよってオドオドしてたら、すぐに書いてくださって」
――早かった?
ねむ 「締め切り前には書きました」
――おお。期間はどのくらいだったんですか?
加茂 「打診のメールをして、“どんなのがいいですか?”って返事がきて、メタ構造を入れてほしいっていうお願いをしたら、その次が“できました”っていうメールでした」
――そんなにさらっと書けちゃうものなんですか。今まで歌詞を書いたことは?
ねむ 「まるっと全部自分で書いたのは初めてでした。(ソロ曲の)〈魔法少女☆未満〉も〈コズミックメロンソーダマジックラブ〉も作曲家の方と相談しながら一緒に作ったもので。私が送ったキーワードを曲にはめてくださいっていうことしかやったことがなかったので」
――メタ構造という話がありましたけど、ああいう歌詞になったのは?
ねむ 「実は、私とか楽屋で他のアイドルさんとあんまり話さないんです。由芙ちゃんとも1回写メを撮ったくらいで」
由芙 「うなりくん(※成田市のゆるきゃら)の話をして(笑)」
ねむ 「そうそう。“好きなんですね〜”くらい。グループを辞めちゃって、それからソロでやるんだっていうことを知って」
――そこから、ああした踏み込んだ歌詞になるのがすごいなと。
由芙 「うんうん」
ねむ 「でも……作詞した人が語るのは野暮かな(笑)」
――いや、今日はそこを聞きに来てるんです!
ねむ 「ですか(笑)。由芙ちゃんって、パッと見はほんわかしてるイメージがあると思うんですけど、私はすごい芯があって、めっちゃ意見を持ってて、ゴリゴリ行く子だなって思ってるんです」
由芙 「ふふふ」
ねむ 「それって、アイドルですって言ってる子が自分では言えないことだと思うんです。滲み出ちゃってはいるけど(笑)。言わなくていいこともあるんだけど、“メタ構造”っていうオファーもあったので、これは、周りが言わせるじゃないけど、言わなきゃいけないタイミングなのかなって。ドキュメンタリー的というか。正直に言ったとしてもファンが受け入れてくれるし、それを見てきた方も聴いてくれるよなというところで、由芙ちゃんから過去を乗り越えますっていう宣言をしてもらった方がいいなと」
由芙 「はい」
ねむ 「だからキーワードとして、“覚悟”とか“理不尽”を乗り越えるみたいなことだったりとかをサビに入れて、自分に言い聞かせるというか。ちょっと強がりに聞こえるかもしれないけど、そう宣言して、ファンの人に安心してもらうことができないかなと思って」
由芙 「ありがたい……。最初、歌詞をもらった時に“なんでわかったんだろう?”って思うくらい感動したと同時に、歌って大丈夫なのか心配もして。言いたかったことをピシッと言ってくれてるから。聴いてくれた人が変にいろいろ思い出しちゃったりとか、怒りとかが湧いてきたらどうしようと思ったけど(笑)、同じアイドルとしてやっていて、他のグループから見てくれていた人にはこういうふうに見えてたんだって知れたのも嬉しかったです。ファンの人の気持ちもわかって書いてくれてるとわかったので、ぜひ歌わせてもらおうと」
――アイドルの歌の中に「理不尽」とかが入ってるのがすごくて。
由芙 「そう! “嫌すぎた”とか。もう、その通り! みたいな(笑)」
一同 「あはは!」
ねむ 「“理不尽”は完全にさだまさしの影響です(〈理・不・尽〉)。あの歌を保育園の頃から聴いてて」
由芙 「保育園の時から理不尽って言葉を(笑)」
――ねむちゃんが自分のことも重ねてるのかな、なんて思いました。
ねむ 「自分かぁ。自分というよりは、私、先日ディアステージのイベントがあって、〈#ゆーふらいと〉の発売を勝手にお祝いさせてもらったんですね」
――歌ったんですよね。
由芙 「そのお話聞きました、ありがとうございます」
ねむ 「それで、ワンフレーズ歌った時に泣いちゃって。歌う前は、悲しいというよりおめでとうって気持ちが強かったんですけど。歌詞を書かせてもらったり、アイドル番組をやらせてもらったりして、悩んでるアイドルの子と触れ合う機会が増えてるんですね。アイドルの人間らしい側面を見ることが多くなって、それで泣いちゃったんですね」
由芙 「うんうん」
ねむ 「みんな戦ってるというか。アイドルって今でこそそういうイメージが出てきてますけど、本当はかわいく、キラキラしたものでないといけないじゃないですか。でも実はこういう気持ちでやってるところだとか、出てくるアイドルもいれば消えるアイドルもいるし、グループだったらまだ楽だけど一人でやっていく恐さとか、いろいろ考えたら、泣いちゃって。それでもみんなは何かを伝えたかったり、誰かを助けたかったりしてアイドルやってるから、みんなマジ応援してね、みたいなことを言って締めたんですけど(笑)」
由芙 「あはは」
――でんぱ組のお母さん的存在だったのが……。
由芙 「アイドル界のお母さんに! アイドルの母」
ねむ 「でんぱ組がいただく歌も、私たちが歌いながら勇気づけられる曲が多くて。歌詞ってそうあるべきなのかなって体感してたので、歌っててそう思えるようには書いたつもりです」
――由芙ちゃんのための歌だけど、多くの人が勇気づけられるようになっていて。
ねむ 「ホントですか? よかった〜」
「アイドルやってていいのか悩んだ時期もあったけど、最近は頼ってくれる子が多くなってきたのが嬉しい。アイドル界のためになれたらなって思うんです。恩があるので」(ねむ)
――しかし、1枚目のシングルから意味があり過ぎですよ。
ねむ 「意味を詰め込みすぎっていう(笑)。でもカップリングの〈ぜんぜん〉はかわいくて、普段の由芙ちゃんのほわーっていうよさがあるから、ここでキリっとしててもいいのかなって」
――由芙ちゃん的には歌っていた曲の歌詞が途中から変わったわけですが。
ねむ 「そう、そのくだりを聞きたくて。あんまり知らないまま作ったんですよ。作詞する時はガイドメロだけだったので。〈サクラノート〉の歌詞が変わったって聞いて、“〈サクラノート〉っていう歌だったの?”って。ごめん」
由芙 「いや、全然!」
ねむ 「それもまたすごい意味ついちゃいますよね」
由芙 「つきましたね(笑)」
――いろいろなものを背負っちゃった。
由芙 「私はどっちも好きです。CDをリリースしますって12月23日に発表したタイミングで、〈サクラノート〉だったものが別のものになって。〈サクラノート〉が〈#ゆーふらいと〉になりましたっていうのを追ってくれていた人は、そこにまたドラマを感じてくれて」
ねむ 「俺たちの物語みたいな」
由芙 「〈サクラノート〉から始まって、ねむきゅんが参加してくれて〈#ゆーふらいと〉になって、竹中(夏海)先生が振りをつけてくれて、うなりくんが来て(笑)。ちょっとずつ完成していって、それをみんなが追ってくれたのはよかったなって思います」
――最初の振りは由芙ちゃんが考えたの?
由芙 「習ってたスクールの先生です。サクラの振り付けだから、花びらが落ちてくるような感じだったんですよ。それじゃあ飛行機落ちちゃうよって感じだったので(笑)、竹中先生が飛び立てるようにつけてくれました」
ねむ 「途中で歌詞が変わることなんて滅多にないし、よく歌えるなーって。私だったら前の歌詞が出てきちゃうかも。サビだけ〈サクラノート〉が出てきたりしない?」
由芙 「最初だけ混乱しましたけど、振りも違うし、気持ちが全然違うから、そこは大丈夫です」
加茂 「〈サクラノート〉も暫定的な歌詞だったんです。とりあえずオリジナル曲をやらなきゃいけないということで。桜がテーマだと、CDにした時に限定的になっちゃうっていうのがありました」
――桜だと季節ものですもんね。ソロ曲としては「ツンデレシンドローム」以来ですよね。
由芙 「出世しました(笑)」
――「ツンデレ〜」もいい曲ですよ!
由芙 「オリジナル曲を歌いますって言ったら、ファンの人は〈ツンデレシンドローム〉のことを想像したと思うんですよ。“あの路線に戻るのかー”っていう不安みたいなものをみんなから感じていて(笑)。でも、その路線ともグループでやっていたのとも違う雰囲気の曲になって」
――「ツンデレ〜」路線じゃなくてよかった?
由芙 「よかった!」
ねむ 「じゃあそれはシングル3枚目くらいで(笑)」
由芙 「やめて〜(笑)! YouTubeに上がったままになってるんですよ! 本当にやめてほしい(笑)。でもあれがあったから今の私があるんですよね。感謝しないと」
――ともかく「#ゆーふらいと」でよかったですね。
ねむ 「沁み込む感じで、いい歌だなって思います」
由芙 「歌詞のお陰です」
ねむ 「いや、曲のお陰ですよ。って謎の褒め合い(笑)」
由芙 「でも、〈#ゆーふらいと〉が他のアイドルさんの気持ちも、っていうお話でしたけど、私のことと重ねて感動してくれてる人もいるし、それぞれの境遇を考えて泣いちゃったって言ってくれる人もいるんです。今から新しい環境に行くよっていう気持ちに寄り添う歌詞になっていて。みんなで再出発っていう気持ちになれてよかったです」
――そして何と言っても#(ハッシュタグ)ですよね。Twitter上で#を使ってツッコミを入れたりするのは由芙ちゃんがパイオニアだと思ってるんですけど、それを曲に取り込んだのもすごい発明ですよ。
由芙 「本当にすごい!」
ねむ 「褒めてくださいよ。加茂さん、最初は#を外したんですよ(笑)!」
加茂 「すみません。意図が汲み取りにくいかなと思ったんです。他が完璧だったから、一個くらい文句つけないと仕事してないと思われるし(笑)」
一同 「あはは!」
ねむ 「由芙ちゃんのイメージとして#が必要だと思ったし、由芙ちゃんという#を辿ってねっていうところでつけて。全部まとまるじゃないですか。ランキングだったり、感想だったり」
由芙 「曲名をつぶやいてくれるたびに辿って感想を見つけられる」
――これ、1回しかできないですよね。他の誰かがやったら真似になっちゃうから。
ねむ 「でしょ? これをトイズでやらずに(笑)」
――太っ腹! 自分たちでやればよかったのに! しかしすごいアイディアだと思いました。
ねむ 「一応メディアを勉強してたので(笑)。あと、由芙って漢字は最初読めない人がいるかもな?って思って。だから曲名を平仮名にして。“ゆー”は“You”でもいいし。いろいろかかってるんです」
――そういう意図の説明とかはあったんですか?
由芙 「LINEでちょっとだけ。でも、“これ以上作詞家が言うのはよくないよね”みたいな感じで」
――かっこつけちゃって。照れくさかったりしたんだ。
ねむ 「“野暮だ”って(笑)。本人が気持ちを込めて歌うのに、私の気持ちを言ってどうするんだみたいな。今だから言うと、“散らばってた気持ち”はゆるキャラだったり、ファンのことだったりします。あとこれ、飛行機乗ってる時に書きました」
由芙 「インドでしたっけ?」
ねむ 「そう。飛行機の往復でずっと書いてて。空港にうなりくんもいるし、飛躍的な意味も込められるしと思ってメキメキ書けました。キーワードはぶわーって出てきたから、書きやすかったと思う。2番の歌詞に私が抱いている由芙ちゃんのイメージが結構書かれてます」
由芙 「“毒”とか」
ねむ 「“爪”とか。うなりくんに対して彼女とか言ってて、でも他のゆるキャラが来たら“こっちも好きだし”みたいな、うっすら悪女感が好きで」
由芙 「Twitterで“ゆるキャラビッチ”って書かれました(笑)」
ねむ 「いい子でいるだけじゃないところを出してるのもいいなって思ってます。逆境でもやられっぱなしじゃなくて。大和撫子ってそういうところもあるじゃないですか。楠木正成の妻が好きなんですけど、凛としているところが日本の女の子の強いところで」
――由芙ちゃんはタフなんですよね。
由芙 「そうですか?」
ねむ 「あと全部自分で切り開いてる感じがする。その辺、起死回生系では抜きん出ていると思います」
――起死回生系(笑)。
ねむ 「ソロになるって大変だと思うんですけど、いい感じにできたらそれは希望だと思う。ソロは気楽っていう意見もあるけど、全部が全部自分に振りかかってくるじゃないですか。振りも忘れられないし、歌もごまかせない。だから歌詞を書くにあたって、一人になったっていうのは考えました。甘えてたものがなくなっちゃうかもしれないけど、それでも先に行かないと後がないんだぞって」
――もう、ねむちゃんの話がありがたくて。
由芙 「この対談を読んでゆふぃすとが泣くんですよ。“ねむきゅんありがとう〜”って」
ねむ 「ありがとうって言われすぎてて申し訳ないんですよ! でも宣伝もしたいし、複雑な思いが(笑)。でんぱ組.incの握手会にもゆふぃすとさんがお礼を言いに来てくれるんです。優しい方が多いんですよ。私、いただいた言葉で“ファンは自分の鏡”っていうのを大事にしてるんです。こういうファンの人が由芙ちゃんについてきてくれるなら大丈夫だなって感じました」
由芙 「ありがとうございます」
――由芙ちゃんってものすごく頑固なんですよ。
ねむ 「でしょうね」
――それこそ毒みたいなものを持っていても、意地でも表に出そうとしないんですよ。
ねむ 「そこがアイドルですよね。ファンの人は、いろいろ我慢して、あえて言わないで頑張ってるっていうのを察してくれてるんでしょうね。本人とファンが似てるんですよ」
由芙 「本当にみんな怒ったりもしないし、私が置かれている環境についても、私が何も言わない時は一緒に言わないでいてくれるから、それがありがたいなって。喜ぶ時は一緒に喜んでくれるし」
ねむ 「素晴らしい。私と真逆ですよね。私、すぐ怒るし(笑)。さっき、みんなのお母さんっていう話がチラッと出ましたけど、私のできることがこういうことになってきたのかなってほんのり思って。アイドルやってていいのか悩んだ時期もあったけど、最近は頼ってくれる子が多くなってきたのがすごく嬉しい。アイドル界のためになれたらなって思うんです。恩があるので」
――もっと聴いてみたいなと思いましたよ。二人の組み合わせで。
ねむ 「いやー、もう恐い恐い」
由芙 「次出せるかわからないですよ! でも、この曲がいい曲だから戻ってきたっていう人は多いですね」
ねむ 「それって最高じゃん」
由芙 「しばらく、ゆるキャラと仲良く楽しくやってるだけの人と思われてたから」
――そこは(笑)。
ねむ 「二人とも何も言えない(笑)」
由芙 「間違ってはいないんですけど(笑)。ただのゆるキャラオタクと思ってたら、いい曲歌ってるねって。こないだの新宿のインストアイベントはファンの方の同窓会みたいになってました」
ねむ 「素敵だよー。真剣だっていうのが伝わったんだろうなって思う」
――グループから出るとスケールダウンして見えることって多いと思うんだけど、そうは見えないしね。
ねむ 「私もそれがすごいと思う。ちゃんと別物に見えることって普通ないから」
由芙 「そういう状況に行っちゃったから、そこでやるしかっていう。一人になっちゃったのもそういう話だし」
――まさに逆境だ。
ねむ 「それをちゃんと力にしてるから、一人でやっていく資格があるんじゃないですか。私は、本当はアイドルになるべくしてなってるわけじゃなくて。劣等感があって、こんな子なのに応援してくれてありがとうって、自分をマイナスに見てる時期が長かったんですけど、由芙ちゃんはそういうことがないというか」
由芙 「いやいやいや」
ねむ 「ピュアに応援できる。でも、それだけだとそれで終わっちゃうけど、見せたかったかどうかは別として、人間らしさだったり影が見えちゃったから、それはもう、より応援するしかないじゃないですか(笑)。自分の意識でアイドルを貫こうとしてるのにそれが難しくなる状況に置かれるっていうのは他にないし、みんなその誠実さをわかってるので、これからも頑張ってほしいです」
「自分を剥き出しにしたりするのが恐くて。だからグループにいた時もあんまりそういうのを見せないようにやりたかったんです。まぁボロは出てましたけど(笑)」(由芙)
――逆に由芙ちゃんはアイドルとしての夢眠ねむをどう見てるんですか?
ねむ 「ええ、やだ(笑)。私は近所の占いおばあちゃんみたいな感じでいいです。“あなた売れる!”って」
由芙 「あはは。でんぱさんの中でもまわりを見ている人だなっていうのはなんとなく思っていて。ファンの人も見てるし、メンバーのことも見てる。観察眼があって、温かい眼差しを感じていて、それが今回の歌詞を書いてもらったことで確信に変わりました。アイドルとしてもそうだし、人としても尊敬してます。あんなちょっとのやりとりだったのに、よくぞと思って。だって、うなりくんの話しかしてないんですよ!」
ねむ 「“私も好きなんです”とか言って」
由芙 「“バッグ持ってるんです”みたいな。そんな話だったのに、ここまで書いてくれたのが嬉しかった。私はモーニング娘。が好きでアイドルになりたかったんですけど、当時は小学生だったから、裏でどれだけ大変だったかなんて知らなかったんです。ただステージでキラキラしていて、それになりたいって思ってたから、自分がなりたいアイドルっていうのはそれだったんです。見てる人が楽しくなる。それ以上でも以下でもなくていいと思ってるんです」
ねむ 「未鈴ちゃんタイプだ。“かっこいい”アイドルタイプ!」
由芙 「自分を剥き出しにしたりするのが恐くて。だからグループにいた時もあんまりそういうのを見せないようにやりたかったんです。まぁボロは出てましたけど(笑)。そういえば、私、でんぱ組.incのダイバーシティーでやったライヴ観て、すごい感動してボロボロ泣いたんです」
ねむ 「わー、ありがとう!」
由芙 「“こういうアイドルあるな!”と思ったんです」
――「あるな!」(笑)。
由芙 「“んん、いいっ”って思ったんです! それまでのハロプロ命みたいな自分とは全然違うところでキラキラしているのを見せてもらったから、素敵だなって」
ねむ 「影の屑が光るみたいな(笑)」
由芙 「いやいや、でも影じゃないですけど、そういうのをまとってるのにキラキラしてるのがよくて。普通はイヤなものになると思うんです。例えば私がもっと剥き出しにしちゃったら、誰もついて来ないと思う。そこを糧にしている感がすごいなと思うんです」
――でんぱ組.incの新曲「サクラあっぱれーしょん」の歌詞で“♪君の未来を明るく照らすなんてお茶の子さいさいさーい!”と言っていて。
由芙 「そこがすごいかっこいい」
――でんぱ組.incみたいな人がこういうことを言ってるのが泣けてくるんですよね。
ねむ 「よく、歌詞の力って思うんですけど、言わせてもらってるっていう側面がすごくあって。尊敬する作詞家の畑 亜貴さんだったり、今回は玉屋2060%さんの作詞なんですけど、自分たちが思ってても言えないことを言わせてもらって、有言実行できている感がすごくあって。“♪世界中に連れてっちゃう”っていうふうに歌って(〈でんでんぱっしょん〉)、本当に海外でたくさんライヴができたり。そういうのってすごいなって思うんです。〈W.W.D II〉で、私は必要ないから辞めた方がいいって曲の中で言わされて、結構お腹痛かったんですけど(笑)、サビでそんなことないって言わせていただいて、また前に進めたし。今回は一周回ってただただ明るい曲なんですけど(笑)」
――これをオフでは暗い人が歌ってるわけですからね。
ねむ 「もう、オンのギリギリまで暗い(笑)」
――「#ゆーふらいと」もそうですけど、「サクラあっぱれーしょん」も歌詞で聴かせる曲だなと。実はしみじみ聴いてしまう曲です。
ねむ 「でしょ? 明るい曲はじっと聴いた時に刺さる」
――能天気を頑張ってやってる。
ねむ 「頑張ってる! 〈#ゆーふらいと〉も強がってるけど、そういうのが女の子のかわいいところだなって思います」
加茂 「〈#ゆーふらいと〉の“やわらかい君の窓”っていのがいいですよね」
ねむ 「嬉しい! 加茂さんがTwitterで褒めてくださったんです」
加茂 「作詞家が求められるセオリーが全部入ってるから」
ねむ 「でも私セオリー何も知らんと思って」
加茂 「Aメロが心象描写、風景描写で、Bメロがそれを受けての気持ちの動きで、サビがメッセージ、アクション。あと、使われない言葉をだったり、性とか死をイメージさせる言葉をチラっと入れる。全部入ってるんですよ。作詞家いけるんじゃないですか?」
ねむ 「わあ!」
由芙 「そんな歌詞なのに、ちゃんと印刷されてなくてすいません(※歌詞カードに不備があった)」
ねむ 「ちょっと加茂さん!(笑)」
――でもそれがまた逆境としてうまく作用したと思うんですよ。手書きの歌詞カードを作ってPDFにして、ごめんなさいの動画を作って、お店も回って。そこでも物語ができたじゃないですか。
ねむ 「トラブルに真摯に向き合う由芙ちゃんのイメージだったり、人となりがそのまま写し込まれていましたね」
――だからもう、面倒が降りかかって来ちゃう人なんですよ。
由芙 「幸薄いんです(笑)」
ねむ 「次もガンバ!」
由芙 「ねむきゅんにホントにごめんなさいって連絡したら、ちょっと笑ってる感じの返事なんですよ」
ねむ 「“ウケる!”みたいな」
由芙 「その返事に救われました」
――これからもこういうことが何度も起きるんじゃないかと(笑)。
ねむ 「かわいそー」
――そして乗り越えていくんですよ、きっと。
ねむ 「だと思う。不幸は起きるかもしれないけど、ゆふぃすとに支えてもらいましょう!」
由芙 「が、頑張ります。みんな覚悟しといてね(笑)」


取材・文 / 南波一海(2014年2月)
撮影 / 相澤心也
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