語りかけるような表情豊かな音楽の説得力と、可憐な容姿を併せ持つ美しきミューズ
寺下真理子(ヴァイオリン)が、ニュー・アルバム『
ロマンス』をリリースした。2015年のメジャー・デビュー・アルバム『
アヴェ・マリア』に続く2ndアルバムだ。
ラフマニノフの「ヴォカリーズ」や
ポンセの「エストレリータ」など、ヴァイオリンのレパートリーとしておなじみの小品や、
モリコーネの「ニュー・シネマ・パラダイス」や
マンシーニの「ひまわり」などの美しい映画音楽の旋律。そして
ストラヴィンスキーの「イタリア組曲」などの正統派クラシック・ナンバーが並ぶ。広い視野で選んだのは「どれも大好きな曲ばかり」(寺下)。全体をつなぐテーマはさまざまな“愛”の形だという。そこには自分の演奏をできるだけ多くの人の耳に届けたいという願いとともに、音楽家としての彼女の、作品に対するナチュラルなこだわりも込められている。
――まずは選曲のコンセプトを。
「前作の『アヴェ・マリア』では“祈り”をテーマにしていましたが、今回は恋愛だったり、もう少し人間くささを出したくって。たとえばタイトル曲のシューマンの〈ロマンス〉op.94はもともとオーボエの曲ですが、愛する妻の
クララにプレゼントした作品です。いろんな愛を描いた映画音楽や、あとはわたしが恋した作品という意味も含めて、さまざまな形の“愛”に因んだ曲の中から、より多くの人に共感してもらえるような曲を選んだつもりです。わたし自身が大好きな曲ばかりなんですが、クラシックを聴いたことがないという方もきっとどこかで聴いたことがある名曲が半分。あとはコアなファンも楽しめる本格的なクラシックの名曲。たとえばストラヴィンスキーの〈イタリア組曲〉とか、
ファリャの〈スペイン舞曲〉(歌劇『はかなき人生』)とか。もしかしたら初めて聴く方もいるかもしれないけど、聴けば魅力が伝わる曲を、半分ずつ入れてみました」
――個々の作品についていくつか紹介してください。
「『ひまわり』は、今まで観た映画の中でいちばん悲しい作品でした。こんな運命いやだな(笑)と思いながらも(※戦争で引き裂かれた夫婦の運命の物語)、こんな愛の形もあるんだと、すごくずっしりくるものがあって。音楽がとても印象的です。ファリャの〈スペイン舞曲〉は、自分のレパートリーとしてかなり弾き込んでいる曲のひとつなので、ぜひ聴いていただきたいです。この曲でアルバムのミュージック・ビデオも撮りました。
ブラームスの〈コンテンプレーション〉も昔から好んで弾いている曲なんです。歌曲が原曲のすごく美しい旋律で、誰が聴いてもすっと、“ああ、いいな”と感じていただける曲だと思います。ブラームスはもう、好きすぎるぐらい大好きなんです」
――ブログで、愛読書として、アーサーM.アーベルの『我、汝に為すべきことを教えん - 作曲家が霊感を得るとき』(アメリカ人音楽ジャーナリストによる、ブラームスを含む19世紀末から20世紀初頭の作曲家たちとの対話)を挙げていました。
「あの本、大好き! とても感銘を受けました。貴重な記録だと思うんです。ブラームスやヨアヒムと話している中身がすごくディープで。自分で演奏していても、あそこに書かれているような作曲家の心境を感じることがあります。ブラームスはどんな曲を聴いても、深いし、濃いし、感動的ですよね。崇拝してます」
――作曲家や作品のバックグラウンドを調べるのは好きなほう?
「同じ曲を何度も弾いていると、もっと深く知りたいなって。なんでこんな楽譜を書けるんだろうなとか思って。前作では自分自身で作曲した曲を弾いているので、作曲家の気持ちが0.1mmくらいはわかるというか。作曲してみて初めて、作曲家の頭の中を、本当にちょっとですけど見たような気がして。それで最近、余計に興味が湧いているかもしれません。だから、今回は曲に対しての愛情をより大切に。作曲家がどういう気持ちで書いたのかを、より汲むように取り組みました」
――アルバムの中心は、全6曲を弾いているストラヴィンスキーの「イタリア組曲」です。
「最近、近現代の曲にハマっていて。去年はそれがストラヴィンスキーだったんです。いろいろ聴いたり弾いたりして、自分の中でちょっとブーム(笑)だったんです。だって『春の祭典』と『プルチネッラ』は全然違うじゃないですか。同じ人の作品と思えない。それはロマン派の作曲家にはない魅力で、すごく面白くて。もし人生の転機を迎えて自分も変わりたい、変わらなければと思った時に、ストラヴィンスキーみたいに、こんなに変われるっていうのが勇気になるっていうか、なにか殻を打ち破るパワーをもらえるような気がします。ストラヴィンスキーの中では新古典主義時代の作品が好きです。ベースにあるのは古典的な要素だけれども、それだけじゃない発展的要素があって、その融合がすごく楽しくて、わくわくするんですよね」
――今回、ブレスの音も聞こえるようなオンな音像の録音で、そのぶん気持ちもダイレクトに伝わってくるように感じます。
「CDってやっぱりミスしてはいけないとか、すごく神経質になるんですね。コンサートだと気にならないことが、録音だとどうしても気になったり。そうすると音楽がどんどん小さくなってしまいがちなんです。だから、勢いみたいなものを忘れないように、そういう強さがないと聴いていてもつまらないものになると思って、そこは気をつけました。安全運転になりすぎないように。前作から2年空いているので、演奏的にも変わるというか、もちろんいつも、テクニックなども含めて研究していますので、上達していればいいなと思います」
――このアルバムを買おうかどうか迷っている人に対してひとことお願いします。
「うーん、迷ってる方にですか。ぜひ買って聴いてみてください(爆笑)。アルバム・タイトルのとおりロマンチックな美しい曲を集めました。そして、今のわたしの世界観、音楽を堪能していただけると思うので、それを感じ取ってもらえたらうれしいです」
2017年6月2日(金)
東京 虎ノ門 JTアートホール アフィニス寺下真理子(vn) / 須関裕子(p)開演 19:00
前売 3,500円 / 当日 4,000円(税込 / 全席指定)
主催: ジェイ・ツー
協力: オスカープロモーション / キングレコード
※お問い合わせ: ジェイ・ツー 03-5474-5733(平日 11:00〜17:00) 2017年4月2日(日) 大阪 サンケイホールブリーゼ 開演 14:30
※お問い合わせ: サウンドクリエーター 06-6357-44002017年4月9日(日) 東京 渋谷 Bunkamuraオーチャードホール 開演 14:30
※お問い合わせ: ネクストロード 03-5114-74442017年4月23日(日) 熊本県立劇場コンサートホール 開演 14:30
※お問い合わせ: BEA 092-712-42212017年4月30日(日) 宮城 仙台 東北大学百周年記念会館 川内萩ホール 開演 14:30
※お問い合わせ: GIP 022-222-99992017年5月28日(日) 福島 郡山市民文化センター大ホール 開演 15:30
※お問い合わせ: GIP 022-222-9999[第1部]
オーケストラ・アカデミー
クラシックの名曲を気軽に楽しく
ビゼー: 歌劇「カルメン」より前奏曲(闘牛士)
J.S.バッハ: G線上のアリア
ウィリアム・クロール: バンジョーとフィドル
モンティ: チャルダーシュ
[第2部]
映像を観ながら楽しむ 名作!アニメ・コンチェルト!!
映像付きコンサート
ディズニー「ファンタジア」組曲くるみ割り人形より
チャイコフスキー: 花のワルツ、中国の踊り、アラビアの踊り、トレパック
バッグスバニー「ラビット狂騒曲」
リスト: ハンガリー狂詩曲第2番
トムとジェリー「ネズミ取り必勝法」
ケイパー&ジュアマン: 神の子はみな踊る
ほか
※曲目は変更になる場合がございます。
※4歳未満のご入場はお断りいたします。