花火が“2倍楽しくなる”秘訣と理屈、笑い飯・哲夫の『おもしろ花火講座』がBlu-ray&DVDで登場

哲夫(笑い飯)   2015/06/19掲載
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近年では、オリジナル訳の般若心経本『えてこでもわかる 笑い飯哲夫訳 般若心経』(2009年)、奈良のお寺を独自に紹介したDVD『見たら必ず行きたくなる 笑い飯哲夫のお寺案内DVD〜修学旅行でなかなか行けない奈良のお寺編〜』(2010年)、そして自身の作によるエロ小説を収めた『花びらに寄る性記』(2011年)と、自身の持つ深い趣味嗜好を世間へと発表してきた、笑い飯哲夫。2015年に満を持して登場するのは、そんな彼が幼いころより親しんできた“花火”を題材としたBlu-rayDVD『花火が2倍楽しくなる 笑い飯哲夫のおもしろ花火講座』。頭に入れておきたい基礎知識から、実際に現地へと赴いた検証映像まで、花火が“2倍楽しくなる”秘訣と理屈を明快に解説した、充実の内容となっている。
――今回はDVDとBlu-rayが発売されるということで。
「吉本興業には、まあシビアでおかたい、よしもとアール・アンド・シーという部署があるんですけど、僕のお笑い活動の“ふち”の部分である、仏教であったりとか、花火だったり、そういうところには案外GOサイン出してくれはりますね(笑)」
――哲夫さんの趣味である“花火”を取り上げています。
「ええ。僕はいろんなことが好きなんですけど、お寺の方は(『見たら必ず行きたくなる 笑い飯哲夫のお寺案内DVD〜修学旅行でなかなか行けない奈良のお寺編〜』)、売れてるとは聞いてないんですが……(笑)。今回はそれを挽回するぐらいに売れて欲しいなと(笑)。花火も趣味のひとつで、ほんのちょっと人より詳しくなったってことでね、案内させてもらったんです」
――講座形式なのも非常に分かりやすくて。
「今、僕は全国で仏教講座というのをちょいちょいやってまして、“講座慣れ”してる(笑)。花火も講座でやったら、うまいことしゃべれるんちゃうかって」
――壇上のお姿もバッチリ決まってました(笑)。
「そうですね、白衣でね(笑)。もう、その辺の講師みたいな感じで出てこれるようになりました」
――そもそも花火を好きになったきっかけというのは?
「僕の地元に『関西ウォーカー』とかに載るぐらいの規模の花火大会(奈良県桜井市・おんぱら祭奉納花火大会)があるんですけど、そこへ子どものころから連れて行ってもらってたんですね。また、関係者に知り合いの人がおったんで、けっこう近くで見させてもらったり。でも、すごい近くやったんで、花火がバーン!って開いたときに“うわーっ”て、“くぐんのんちゃうん? 火の玉が。危ない危ない”と思ってて。でも、くぐりそうやけど、くぐらないんですよね毎回。迫ってくるようで実は、襲うことはそうないんやな。そんな花火に、だんだん痺れてきましてね。気がついたらもう、小学校高学年ぐらいには“やばいな、普通の人よりも好きやな”っていう感じになってました。(地元の花火大会は)毎年、7月31日にあるんですけど、それが終わるともう、寂しくて寂しくて」
――なるほど。
「高校ぐらいのときには“花火あるから見にきいや〜”なんて友達を呼んだりしてました。あるとき友達の家でしゃべってて、何気なくテレビが点いてたんですけど、着物のCMでバックに花火が上がったら僕、話もそぞろにテレビをパッと見たんですよ。そしたら友達が“おまえどんだけ花火好きやねん、そんなとこの花火も見逃さへんのかい”(笑)」
――もう、友達の間でも知れ渡っていて(笑)。
「“あいつは花火やりすぎとんな”と(笑)。それから車の免許を取って、いろいろと各地の花火大会へ行くようになりました」
――行くときはお一人ですか?
「いやいや、絶対何人かで行きます。僕が、やいやい解説して。中にはまあ“うるさいな、静かに見さしてや”っていうのもいますけど、ほとんどの人は“へー、そうなんや”ってなってね。僕が花火の弟子を作って、その弟子がまた弟子を作って……花火知識を蔓延させていってます。あと、知ってるとやっぱ言いたくなるしね。知ってて見るほうが楽しいんですよ。“菊”だ、“牡丹”だ、“千輪”だ、なんやらかんやら言いながら見てますね」
――みなさんと出かける中で、花火大会の会場からの理想的な行き方、帰り方も、自然と身についてきた。
「そうですね。地方でタクシーに乗って、僕が運転手さんに“ここ右行ってください”“左行ってください”“まっすぐです”って具合に渋滞を抜けたときは、“えっ、地元の人ですよね?”なんて言われて“いえ、違います”と。“違うんだったら、あなた天才ですよ”なんて言われましてね」
――(笑)
「プロに天才よばわりされるとは相当、僕は通やなと自分で思いました」
――先の見越し方が怖いですよね、地元じゃなかったら(笑)。
「地元の人より、抜け道知ってる。だいたいもう、行きまくってたら分かってくるんですよ。花火大会の日の抜け道はこうだっていうのは。なにゆえに渋滞が起きているのかということをまず、把握して。地理感のない人はここに集中するから……っていうね。渋滞を抜ける理屈があるんですよ。その理屈通りに行くと、誰よりも早く家に帰れますね」
――ちょっと“渋滞の抜け方”への熱量が高い気もしましたが……。
「“そこかい”ってなもんですけども。でも、導入部分で“花火は好きだけど混むのが嫌だ”でも“混むことを恐れずに花火大会に行けるようにしますよ”と宣言して、実際にすっと抜けるさまを見せるとやっぱりね、みんな僕のことを教祖やと思いますよね」
――“花火教祖”ですね(笑)。
「まあ、“花火教祖”と言うたら花火師さんに怒られるんで、“花火の見かた教祖”ですね、ええ。見かたの教祖ですわ、はい」
――今回、実際の花火大会にも出かけてらっしゃるわけですが、熊野(三重県熊野市七里御浜海岸・熊野大花火大会)と、片貝(新潟県小千谷市片貝町・浅原神社秋季例大祭奉納大煙火 / 片貝まつり)を選んだのは哲夫さんが。
「そうです。全国屈指の花火大会でもありますし、海(熊野)と、山(片貝)というバランスもいいですし、ほかではあまり見ることが出来ないような特徴もありますんで。僕が“いいな”と思う花火大会から二つ、絞らせてもらった感じですね」
――熊野の“海上自爆”は初めて拝見させて頂いたんですが、他の地域でこれをやっているところはあるんですか?
「船と花火の追いかけ合いっていうのは、他では聞かないですね」
――火の点いた花火を船から海にガンガン投げ込んで、爆発する前に逃げる。あの光景を生で見るとやっぱり……。
「あれはいいですよ、めっちゃおもろいです。あほなことしてんなーって思いますもん。憧れの花火会場でした。やっぱり奈良県からしたら、三重県ってね、地球の裏ぐらい遠いイメージなんですよ。伊勢までは近いんですけど、熊野まで行くとほんまにブラジルぐらい遠いイメージがあって(笑)。それでいてみんな言うんですよ、“あそこは混むから行かんほうがましや”とか。ただ、めっちゃ綺麗やっていうのも、うちの地元でもおばあちゃんがよく話してたんですね。“混むけどなあ、あれはええわ”なんて。ただ、僕が案内してるのは“混まずに行ける”。覆しました」
――お見事です(笑)。新潟の片貝は、M-1で優勝した際にはご自身で花火を奉納されていらっしゃいますし、昔から通ってらしたんですか。
ムーディ勝山がばーっと人気出て……やや下火になったぐらいのころ、ムーディと二人で行きましたね。それぐらいからはずっと行っています」
――片貝では最後、世界一の“四尺玉”(一尺:約30cm)が打ち上げられますが、やはり格が違うというか。画角に入りきらないような大きさと迫力は、撮影された映像でも伝わってきます。
「めちゃめちゃ上までいくんですよね、光のでかい玉が。ぼーっと。要は時速0kmになったとき開くように設計されてるんですけども、“もわっ”って開くんですよ。飛行機が遅く見えるのと一緒の原理で、めちゃめちゃ上やからね。もう、開き方も“もわっ”なんですよ、お化けみたいに。遠いから音もだいぶ遅れて届くんで、なんやなんやなんやって思ってたら、めちゃめちゃでかい音が“ぶわーーーん”いうんですよ。うわっ!てなったらもう、だんだんだんだん火の光がいっぱい落ちてくる、あっちゅう間に夜空一面が花火で覆われている。最初見たときはほんまにもう、音が怖かったですね。心構えをしてないから」
――上げる前にサイレンを鳴らすっていうのも……。
「気いつけてくださいね、ひときわでかい音がしますよっていう(笑)」
――花火を奉納されているのは地元の方が多いんですか?
「地元が大半ですね。ほかには、あの花火に魅せられた方だったりとか、企業であったりとか。Blu-rayの特典映像では、花火に惹かれて片貝の女性と結婚して、片貝にやって来た旦那さんもいる……みたいなドキュメントも入っています。(奉納した花火が打ち上げられる際に読まれる)“メッセージ”に込められた想いと裏側みたいなんもちょっと撮ってるんです」
――あのメッセージは、奉納された方のものは必ず読み上げられるんですね。
「そうです。毎年、独特な声のおばちゃんが」
――独特でした。
「片貝は『おにいちゃんのハナビ』(2010年公開、監督: 国本雅広、出演: 高良健吾 / 谷村美月)っていう映画の舞台になったところで、この映画の中でも、同じおばちゃんがメッセージを読み上げているんです。だから、片貝に通っている人間からしたら、ストーリーについつい入り込んでしまう。涙なしには見れないですね」
――哲夫さんも片貝に奉納されたときは感慨深いものが。
「僕ね、見れなかったんですよ。仕事終わりに上越新幹線で駆けつけたんですけど……。生中継みたいなやつ? 携帯で見れるのがあって、“うわっ、次の次ぐらいちゃうんかい”なんて慌ててたら長いトンネルへ入ってしまって、やっと出たら先に行ってた後輩からメールが届いて“無事上がりました”……。やかましわ、しかもそれ花火師さんの目線やないかい。なに言ってんねんこいつと」
――ごもっともです(笑)。
「それで、やっと会場に着いたと思ったらもう終盤ぐらい。まあ、最後の四尺玉には間に合ったんですけども。“どうやった? 俺の花火”って後輩に聞いたら、“やーあのー、哲夫さんの花火の前にすごくいい花火があったんで、あんまり盛り上がってませんでしたね”なんて言われて、こいつ殺したろかなと思って(笑)。僕が交通費払ってね、行かしてた後輩ですよ、そんなこと言われて(笑)」
――意味がない(笑)。
「ほかの後輩が録画してくれてたんで確認したらけっこう盛り上がってたんですよ。“盛り上がってるやん、どういうことやねん”ってなってね。“その一個前よりはちょっとなんか、あんまりやったんで……”とかブツブツ言うてましたけど。このDVDを出すことになって、そのロケをさせてくださいというお願いで、また奉納もさせてもらって。特典映像に入ってるんですけど、シークレット的な花火も上げてもらったんです」
――提供というか、クレジット的に出資した企業の名前が読まれることは多いと思うんですが、奉納した方のメッセージが披露されるのはすごく素敵でした。
「ロマンですね。また、メッセージである程度時間を空けてくれることによって、花火の煙がはけるんです。やっぱり片貝はぜんぶ尺玉なので。一発一発にすごい見応えがあって、煙がはける時間もちゃんとあって。で、たまに、成人式とか、還暦の方とかが奉納されてて、とてつもないスターマインを上げてくれるんで、連発も楽しめるしっていう。言うことないですね」
――収録されていた成人式のメッセージがまたグッとくる内容で。
「おもろいでしょ、やっぱり。祭を一生懸命やってる町って多少はやっぱりやんちゃでないとね、せっかく今まで祭囃子と共に大きくなってるのに、第一ボタンまで留めてるような学生時代を過ごしてきてたら、ちょっとがっかりしますね。ある程度はやんちゃだった子が成人して、大人になっていく過程で、やや真面目になった文面があんな感じだと思うんですけど。そこがなんか僕はね、いいなあと思いますね。今後もずっと同級生で仲良く続いていくんだと思いますしね。また還暦になったときにはみんなで大金をはたいて、とんでもないスターマインを上げはるわけですから。すごい文化ですね」
――今回は“花火講座”ということですが、地元の方だけじゃなくて、やはり多くの方に花火大会へ出かけて欲しいなという気持ちも。
「いろんなところから見に来てもらって、その地域にお金を落としてもらって、それで振興していくわけですから。どこの花火大会も、他府県から来てもらいたいと思ってはるはずなんですよ。だからね、この講座も地域活性の一端を担えたらええなと。実際、花火っていうのは肉眼で見てもらいたいものなんです。花火師さんが一生懸命、一年かけて作ったもの、これを写真とか映像で見るよりは、やっぱり肉眼で見てもらいたい……というメッセージを、僕のこのDVDとBlu-rayでご覧頂きたい(笑)、買ってください、ということなんですよ(笑)」
取材・文 / 星 隆行(2015年6月)
『花火が2倍楽しくなる 笑い飯哲夫のおもしろ花火講座』
Blu-ray&DVD発売記念・花火ツアーが開催決定

2015年8月8日(土)「東京湾大華火祭屋形船ツアー」(日帰り)
2015年9月10日(木)〜11日(金)「新潟片貝まつり花火ツアー」(一泊二日)

※詳しくは、JTBオフィシャル・サイト(www.jtbbwt.com/entertainmenttour/)をご覧ください。
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