昨年秋、約1ヵ月で全国17ヵ所を廻る全国ツアーを決行したTHA BLUE HERB(以下TBH)。そのライヴは、運営会社などが絡むのではなく、彼らの会社である“THA BLUE HERB RECORDINGS(以下TBHR)”が主体となって企画し行動するという、彼らの全責任の下に行なわれた。
「俺らはライヴのクオリティには自信があるけど、その次のステップに行くには、それを自分たちで企画できる能力もこれからは必要だと感じていて。だから、TBHRとしてライヴを企画する能力、運営する能力、実行する能力を養うための全国ツアーだったんだ」
そして、その模様を収録したDVD『STRAIGHT DAYS / AUTUMN BRIGHTNESS TOUR'08』は、各地で行なわれたライヴのシーンに加え、その道中で行なわれたインタビュー、起こった事実を全て映像に収め、ドキュメントとして成立させたDisc1、そしてツアーの最終日であるリキッドルームでのライヴを収録したDisc2の2枚から成り立っている。
「1つはライヴの質、もう1つはライヴに至るまでのプロセス。その2つを最上の状態で残しておきたかったから、1枚に混ぜるよりも2枚に分けてパックしようと思ったんだよね」
Disc1には、ライヴに至るまでのシリアスなストラグルとともに、森田貴宏監督とTBHの距離の近さから生まれたであろう、彼らの日常的な部分である“笑い”がふんだんに込められているのが印象深い。
「“俺たちは開かれているんだ”ってことの表われだね。日常の俺たちを見せても、俺たちがオーディエンスと過ごしてきた今までの夜や、提示してきたメッセージや姿勢は揺るがない。俺らに対していろんなレッテルだったり、偶像を抱いてる人にとっては、Disc1はかなり驚きだと思う。ただ、所詮は“前座”よ。どう捉えられようと、Disc2での2時間のライヴで“どっちみちハメてやるから”って自信がある。そしてDisc2を観れば、Disc1の行動が不可欠だったことが分かるだろうし、この2枚は相互に作用しているんだよね」
日常と非日常、ライヴとそのための仕込みなどを“種明かし”することで、“TBHのライヴ論”を表現することになった本作。それはDisc2のあまりにドラマチックなライヴの光景で、真実として表われる。
「ライヴは俺らの生きている場所だね。俺らが今現在、何を考えているかをリアルタイムで伝えられる場所であり、日常や心の揺れをそのまま表現できるのはライヴだけ。だけど、ライヴっていうのは流れていってしまうだけだから、DVDでそれを確認してほしいって感情もある。でも、ぶっちゃけ100年後だよ。100年後、21世紀の初頭にTBHは存在していたんだ、そしてああいう(ライヴの)空間があったんだってことを残しておきたいって気持ちがあるんだ。だから映像にして収めたかったし、それをリスナーに届けることができて嬉しく思うよ」
取材・文/高木晋一郎(2009年2月)