今年も
ビートルズの季節がやってきました! 今年は初来日から45年目ということで日本独自の盛り上がりもあるなか、リリースされるのは最新リマスター音源を使用した
『ザ・ビートルズ 1』。オリジナルはビートルズ解散30周年となる2000年にリリースされ、US/UKチャートでNo.1を記録したシングル全27曲を収録したベスト・オブ・ベストといえるアルバムです。本企画ではこのアルバムをあらためて2011年の“いま”聴くことで見えてくるビートルズの魅力を考察してみました。
(1)2011年に『ザ・ビートルズ 1』を聴いて想うこと
文/藤本国彦
2011年はビートルズ来日45周年ということで、日本公演の1曲目に演奏された「ロック・アンド・ロール・ミュージック」の7インチ限定シングルが日本だけで許可されるといううれしいリリースが実現するなど、ちょっとした動きがあった。また、未発表音源集『Anthology 1』
、『Anthology 2』
、『Anthology 3』
の3枚や、その3枚から選曲されたべスト盤的な『Anthology Highlights』
がiTunes限定で配信されるというマニアが喜ぶリリースもあった。
64年秋、ロンドンのハイドパークにて行なわれた『ビートルズ・フォー・セール』のジャケット・フォト・セッション
(C)Apple Corps Ltd.
そして今回、『ザ・ビートルズ 1』(以下『1』)の“何か”が出るという情報が届いたので、もしかして映像集がついに? と一瞬思ったが、蓋を開けてみたら、昨年の『ザ・ビートルズ 1962年〜1966年』(赤盤)、『ザ・ビートルズ 1967年〜1970年』(青盤)と同じく2009年のリマスター音源を使った改装版が登場するということだった。
初めてビートルズのLPを手にした40〜50代の音楽ファンには懐かしい赤盤・青盤を、それよりもずっと若い世代にはビートルズのヒット曲を1枚に凝縮した『1』を、それぞれ新たにリマスター音源で届けようということなのだろう。
66年6月16日、英BBCの番組『トップ・オブ・ザ・ポップス』出演時
(C)Apple Corps Ltd.
あらためて言うまでもなく、『1』は、英米1位を記録したシングル全27曲が収められたベスト盤で、解散30周年となる2000年に発売され、全世界で3,000万枚の売り上げを記録する大ヒットとなった作品だ。
間口の広さはビートルズの普遍的な魅力のひとつだが、『1』はその最適・最良の曲が年代順に収録されているので、頭から通して聴いてみると、ロックンロール・バンドがスタジオ技術向上とともに腕を上げ、サウンドも実験精神豊かに広がっていき、また簡素なサウンドへと集約していくという大きな流れを感じ取ることができる。また、
ジョンと
ポールが仲良く曲を作っていたデビュー後数年から、次第にジョン、そしてポールへとシングルの曲作りの主導権が移っていく過程も見えてくる。
69年8月22日、ティッテンハースト・パークのジョンの自宅にて行なわれた4人の最後のフォト・セッション
(C)Apple Corps Ltd.
さて、それにしても、なぜいま『1』のリマスター盤なのか。昨年
メリー・ホプキンや
バッドフィンガーなどアップル・レーベル所属アーティストの作品がまとめて新装発売されたのは、ビートルズ以外のアーカイヴをきっちり残そうというアップルの意志を感じさせるものだった。だが、ことビートルズに関しては、2009年のリマスター化以降のここ数年の動きをみてみると、そのときの一大事業の成果を元に、幅広い世代にあまねく伝えやすいベスト盤は通常版としてパッケージ化して発売し、『Anthology』のようなマニア向けの作品は配信のみでの販売でというような振り分け作業がついに開始されたという印象だ。個人的にはすべてパッケージ化してほしいと思っているし、今回の『1』に関しても、どうせなら全27曲の映像集にリマスター音源を使ったCDを加えたセット売りにしてほしかったが……。まあ、昨年の『LOVE』の配信化
の際にも「ガール」と「ザ・フール・オン・ザ・ヒル」の“LOVEヴァージョン”が配信のみの販売として加えられていたから、今後は販売形態だけでなく、販売対象も幅広い層とマニア層とに向けての二極化が進むのだろう。
2012年はビートルズのデビュー50周年。一向に出る気配のない映画『レット・イット・ビー』のDVDやライヴ・アンソロジーのようなアーカイヴ作品は、その記念の年の大仕事としての発売を期待しつつ、『1』の最新リマスター盤を、まずは “前哨戦”として楽しみたいと思う。
文/藤本国彦
ジョン・レノンとポール・マッカートニーがふたりで顔を突き合わせて曲を作っていたのは63年の「抱きしめたい」までで、それ以降はほぼ、どちらかが主導で書いた曲にもう一人がアイディアを付け加えていったり、それぞれが持ち寄った曲を合わせたり、ほとんどすべてをどちらか一人で書いたりしていた。そんなジョンとポールの純然たる共作曲も含め、ジョン、ポール、
ジョージ、
リンゴの持ち味をとらえた曲を『ザ・ビートルズ 1』収録の27曲の中から計5曲、独断で選んでみた。
●ジョン&ポールのベスト・コンビネーション! 「シー・ラヴズ・ユー」(63年)
『1』収録曲の中では「抱きしめたい」のほかに「フロム・ミー・トゥ・ユー」「シー・ラヴズ・ユー」「エイト・デイズ・ア・ウィーク」「恋を抱きしめよう」がふたりのコンビネーションが冴えわたった曲だが、そんな中で、ここでは初期のこの傑作を選んでみた。いきなりサビから始まるイントロ(リンゴのドラムが決め手)と、“yeah yeah”コーラスで聴き手の心をぐいっとつかむ。“I love you”ではなく“She loves you”と三人称で書かれている斬新なアイディアはポールによるもの。仲良く歌うジョンとポールのはつらつとしたヴォーカルもいいが、なによりエレキの音を実感できるのが個人的にいま推したいポイントだ。
●ジョン・レノンならコレ! 「オール・ユー・ニード・イズ・ラヴ(愛こそはすべて)」(67年)
ジョン主導の曲では、「ア・ハード・デイズ・ナイト」「アイ・フィール・ファイン」「涙の乗車券」「ヘルプ」「カム・トゥゲザー」などが『1』に収められているが、ここでは世界31ヵ国での衛星生中継番組『アワ・ワールド』のためにジョンが作ったメッセージ・ソングを直感的に選んでみた。理由は、この曲をジョンのように歌える人はいないから。ディランに匹敵するこの難曲、カラオケでも聴いたことがない。
●ポール・マッカートニーならコレ! 「ハロー・グッドバイ」(67年)
『1』にはポール主導の曲が多く、「キャント・バイ・ミー・ラヴ」「イエスタデイ」「ペイパーバック・ライター」「ペニー・レイン」「ヘイ・ジュード」「ゲット・バック」「レット・イット・ビー」ほか約半分を占める13曲もある。ジョンの「愛こそはすべて」とは対照的に、だれもがすんなり口ずさめる覚えやすい歌詞とわかりやすいメロディをいとも簡単に生み出してしまえる(と思わせる)ポール・マジックが凝縮されている。
●ジョージ・ハリスンならコレ! 「サムシング」(69年)
ジョンとポールの2大巨頭に隠れていたジョージも後期には頭角を現わし、この曲では初めてシングルA面と全米1位を勝ち取った。今や「イエスタデイ」に匹敵するスタンダード曲だが、こんなにいい曲を他人にあげるつもりで書いたというのだから恐れ入る。本当はシタールがらみの曲を挙げたいところだが、さすがに『1』には入っていないか。というか、ジョージの曲はこれしかなかった。
●リンゴ・スターならコレ! 「イエロー・サブマリン」(66年)
リンゴと言えばこれ、と言ってもいいほど今ではリンゴの代名詞となったポール作のメルヘン調の行進曲。鼻にかかったおとぼけ声で黄色い潜水艦で航海を続けるリンゴ船長は、ビートルズ解散間際にタコの庭で余生を送ることになるのだが、それはまた別の話。
●
『ザ・ビートルズ 1』2011年9月2日(金)世界同時発売
(TOCP-71000 税込み2,600円)
32ページ・オリジナル・ブックレット、日本語ブックレット『ビートルズ小辞典』(全曲歌詞・対訳/最新楽曲解説/ヒストリー&記録)
[収録曲]全英・全米No.1記録データ・( )内はNo.1獲得週01. ラヴ・ミー・ドゥ [US 64年5月30日(1week)]
02. フロム・ミー・トゥ・ユー [UK 63年5月2日(7weeks)]
03. シー・ラヴズ・ユー[UK 63年9月12日(4weeks)、63年11月28日(2weeks)/US 64年3月21日(2weeks)]
04. 抱きしめたい [UK 63年12月12日(5weeks)/US 64年2月1日(7weeks)]
05. キャント・バイ・ミー・ラヴ [UK 64年4月2日(3weeks)/US 64年4月4日(5weeks)]
06. ア・ハード・デイズ・ナイト [UK 64年7月23日(3weeks)/US 64年8月1日(2weeks)]
07. アイ・フィール・ファイン [UK 64年12月10日(5weeks)/US 64年12月26日(3weeks)]
08. エイト・デイズ・ア・ウィーク [US 65年3月13日(2weeks)
09. 涙の乗車券(ティケット・トゥ・ライド)[UK 65年4月22日(3weeks)/US 65年5月22日(1week)]
10. ヘルプ [UK 65年8月5日(3weeks)/US 65年9月4日(3weeks)]
11. イエスタデイ [US 65年10月9日(4weeks)]
12. デイ・トリッパー [UK 65年12月16日(5weeks)]
13. 恋を抱きしめよう[UK 65年12月16日(5weeks)/US 66年1月8日(2weeks)、66年1月29日(1week)]
14. ペイパーバック・ライター[UK 66年6月23日(2weeks)/US 66年6月25日(1week)、66年7月9日(1week)]
15. イエロー・サブマリン [UK 66年8月18日(4weeks)]
16. エリナー・リグビー [UK 66年8月18日(4weeks)]
17. ペニー・レイン [US 67年3月18日(1week)]
18. 愛こそはすべて(オール・ユー・ニード・イズ・ラヴ)[UK 67年7月19日(3weeks)/US 67年8月19日(1week)]
19. ハロー・グッドバイ [UK 67年12月6日(7weeks)/US 67年12月30日(3weeks)]
20. レディ・マドンナ [UK 68年3月27日(2weeks)]
21. ヘイ・ジュード [UK 68年9月11日(2weeks)/US 68年9月28日(9weeks)]
22. ゲット・バック [UK 69年4月23日(6weeks)/US 69年5月24日(5weeks)]
23. ジョンとヨーコのバラード [UK 69年6月11日(3weeks)]
24. サムシング [US 69年11月29日(1week)]
25. カム・トゥゲザー [US 69年11月29日(1week)]
26. レット・イット・ビー [US 70年4月11日(2weeks)]
27. ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード [US 70年6月13日(2weeks)]
●EMIミュージック・ジャパン ザ・ビートルズ公式サイト
http://www.emimusic.jp/beatles/最新リマスター『ザ・ビートルズ 1』発売記念プレゼント
『ザ・ビートルズ 1』Tシャツ 3名様
(提供:EMIミュージック・ジャパン)
応募締め切り:2011年10月2日まで
応募は
プレゼント・ページへ
●ザ・ビートルズ 来日45周年記念キャンペーン 第2弾実施!
全国主要CDショップおよびECサイトにて、ザ・ビートルズのアルバム・DVD全作品(9月2日発売『ザ・ビートルズ 1』を含む)をご購入の方に先着で、「ザ・ビートルズ・ポスター」(第1弾とは別の新柄)をプレゼント!
キャンペーン期間:2011年9月2日(金)〜ポスターがなくなり次第終了
対象店舗、対象商品など、詳しくはEMIミュージック・ジャパンのビートルズ・サイト(
http://www.emimusic.jp/beatles/)へ。