今年で30周年を迎えるモッズの祭典<MODS MAYDAY>。パンク〜ニューウェイブのいちトライブとしてスタートした東京モッズ・シーンの成り立ちと歩みを探るべく、<MODS MAYDAY>初期から関わりシーンを牽引しつづけてきた黒田マナブと、同じく30周年を迎える東京のロックDJイベントの草分け<LONDON NITE>を主宰する大貫憲章との対談をお届け!
80年代前半の<MODS MAYDAY>。第3回目となる83年よ
り黒田がオーガナイザーを務めている。
大貫憲章(以下、大貫)「<MODS MAYDAY>はいつ始まったんだっけ?」
黒田マナブ(以下、黒田)「81年です」
大貫「その頃からお客さんはネオ・モッズみたいな感じだったの?」
黒田「そうですね。パーカ着て、ツートーン・シャツの奴もいれば、ポークパイ・ハットの奴もいれば、ニューウェイブ風の派手なネクタイの奴もいれば……みたいな感じでした。まあ、数十人くらいでしたけど」
大貫「それがモッズの集まりとして認知されるようになったのはいつぐらいなの?」
黒田「82年に新宿ACBでスクーターズを呼んでるんですけど、その1年ぐらいの間でシーンが固まったんですよね。そういえば
ジャムの『IN THE CITY』の日本盤のライナーノート、大貫さんでしたよね?」
大貫「最初はそうだね。77年か78年じゃないかな」
黒田「そこに“モッズ”とか書いてあって、“モッズって何?”って近所の友達が集まった感じでしたね、最初は。それと、79年に公開された映画『さらば青春の光』が大きかった。僕が観に行ったその映画館に、
真島昌利も観にきていたってその後知った。マーシー(真島)はもともとはパンク好きで、原宿にあった<SMASH>っていう洋服屋に通ってたから、ロンドンのモッズ・リバイバルはそこで知ったみたい」
大貫「当時は洋服屋さんなんかが音楽の情報を発信してたよね」
黒田「スタッフが買い付けでロンドンに行ったりしてたから情報も早かったんですよね」
大貫「レコードも売ってたしね。だから、東京にそういうムーヴメントが生まれるのは当然だったかもしれないね」
黒田「85年くらいに稲葉(達哉)が大貫さんのところでDJを始めたじゃないですか。僕らが<GANG STAGE>始めたのと同じくらいの時期なんですよね」
初期・東京モッズ・シーンの“FACE”藤井悟。現在はDJクルー「Caribbean Dandy」のメンバーとして活躍中。
大貫「あとは(藤井)悟か。悟はその頃、モッズっぽい格好してたよね」
黒田「悟は<LONDON NITE>でも人気者でしたよね。当時、遊びに行くところといったらツバキハウス(新宿・テアトルビルにあったディスコ、愛称ツバキ)の<LONDON NITE>、CLiMAX(西麻布にあったニューウェイブ・ディスコ)、玉椿(六本木・スクエアビルにあったツバキハウス姉妹店)……そういう場所に情報が集まるっていうのがあった。服飾系の学校に行ってた悟が、そういう世界とモッズ・カルチャーを結びつけてたんですよ。僕らはライヴハウス系の土着なモッズで(笑)。悟は本当にお洒落だったし、ツバキで疎外されなかったのは彼がいたからっていうのはあった。その後、<GANG STAGE>をスタートさせるのも悟がいたからだし。始まっちゃったら悟は何もしなかったけど(笑)」
──当時、何かの雑誌で「<LONDON NITE>でモッズとロッカーズが喧嘩するから大貫さんが暖簾分けした……」みたいな記事を読んで「東京スゲー!」って思いました(笑)。
大貫「あったっけ? そんなの」
黒田「<ROCKABILLY NITE>と<GANG STAGE>を月イチでやってたじゃないですか、同じツバキで」
大貫「あったあった! たしかに<ROCKABILLY NITE>の連中の格好はロッカーズだね」
黒田「でも<LONDON NITE>では一緒にいる、みたいな(笑)」
大貫「ぜんぜん平和だったよね。喧嘩したことないでしょ?」
黒田「僕らの世代はそういうことはなかったですね」
大貫「同じ音楽好き同士がファッションも含めて徒党を組むっていうのは、若い人達にはよくあることなんで。ツバキのビルの下にスクーターが並んでると、今日はモッズの連中が来てるんだって分かったよね」
現・クロマニヨンズの甲本ヒロト率いるザ・コーツが出演した
<MODS MAYDAY 84>のフライヤー。ゲストは真島昌利
が在籍していたブレイカーズ。
──そんな中からモッズを経由したブルーハーツが出てくるわけですね。
大貫「最初に俺が知ったのは
(甲本)ヒロトがいたザ・コーツだった。ヒロトは踊りが上手くて、“何やってるの?”って聞いたら“バンドやってます!”って。それであるとき、うちのDJが“これ、いつも来てるアイツらですよ”って
ブルーハーツの<人にやさしく>のシングルをかけて、それがカッコよかったんだよね。独特の世界観があって」
黒田「85年くらいにブルーハーツで初期の<GANG STAGE>に出てるんですよ」
黒田「へえ。第三倉庫(新宿・花園神社横にあったクラブ)ですか?」
大貫「そう、ツバキの<LONDON NITE>が終わる87年頃だよね。彼らが“日本のモッズ・シーンから出てきた”みたいに言われていたことは確かだよね」
黒田「<MODS MAYDAY>も小さな会場から大きな会場に移っていった時期ですね。スカともリンクして、それこそ
ギャズ(・メイオール)の初来日も<MODS MAYDAY>だったし」
最近の<MODS MAYDAY>。今では日本のストリート・カル
チャーを代表する恒例のイベントに。
大貫「そういえばモッズ・シーンは女のコが多くいる印象があった。<LONDON NITE>は男ばっかりだから、モッズのイベントに行くと可愛い女のコが多くてうらやましかったよ(笑)」
黒田「ポップな文化なんで女のコも楽しめるシーンではあるんですよね」
大貫「パンクスのカップルは東京でもあんまりいなかったけど、モッズのカップルはたくさんいるもんね」
黒田「みんなファッションや音楽をカップルで楽しんでますよね」
大貫「現場で知り合う場合が多いの?」
黒田「多いですね。昔は今と違ってネットとかないので、そこに行かなきゃ手に入れられない情報がたくさんあったんですよ。現場に行くことから始めないといけない時代だったので」
大貫「だからこそ薄まらないでいたのかもしれないな」
黒田「そうですよね。目の前で動いてることなんで、写真で見るよりもっとリアルに伝わるというか」
大貫「そうだね。ところで、<MODS MAYDAY>の客層って変わってるの? <LONDON NITE>もよく聞かれるんだけどさ」
黒田「変わってますよ、時代時代で」
大貫「最近、女の子でもお洒落しないで来るコもいるよね」
黒田「そうですね。やっぱりクラブというか遊び場自体が特別な場所じゃなくなったというか」
大貫「年に1回なのにね。でも今、最近のロックに触発されてDJを始めたりする若いコがちょっとずつ増えてて、そういうパーティに時々行くんだ。そうすると、友達のバンド連中がいたり、お洒落した女のコたちがいたりで<LONDON NITE>を始めたときのような雰囲気があって面白いんだよね。スキルに関しては稚拙なんだけど、エンジョイするってことに関してはヘタに上手ぶってやってるDJよりは面白い。俺らがやりたいことは“音楽を楽しむ”ってことだから。そこに自分なりにお洒落して来るっていう文化がまた広がりつつあるよね」
──そんな<MODS MAYDAY>もいよいよ30周年を迎えます。
黒田「今回は原点回帰というか、80年代初期の雰囲気を“あの頃は良かったね”って回顧するんじゃなくて、あの頃に良かったものを今見せてあげられると面白いなと思ってて、80年代にシーンにいた人も出演します」
大貫「16時間もやるんでしょ? マナブが倒れた、なんてなったら大変じゃない! だから気をつけてくださいよ」
黒田「わかりました! ありがとうございます!」
取材・文/フミヤマウチ(2010年4月)
対談撮影/相澤心也
黒田マナブ“K. Dove” Profile:1980年代初頭より、モッズ・バンドで演奏する傍ら、<MARCH OF THE MODS>や<MODS MAYDAY>といったライヴ中心のモッズ・イベントのオーガナイズを始める。1984年、東京初のモッズ・レーベル「RADIATE RECORDS」をスタート。コレクターズの前身グループ、ザ・バイクや、ザ・ヘアの作品のリリース、モッジン『HEAR TODAY』(ミニコミ誌)の発行を手がけ、80年代の東京モッズシーンのスポークスマン的役割を果たす。1992年よりレーベル「Lovin' Circle」をスタート、プロデューサーとして活躍、その他、デイオフ・クラブや60's パーティ<GANG STAGE>でのDJプレイ、イベントの企画など東京モッズシーンのオーガナイザーとして活動。現在もDJ、プロデューサー、オーガナイザーとして活躍中。また渋谷clubasiaのマネージャーという別の顔も持つ。
http://www.myspace.com/modsmayday1981 大貫憲章 Profile:音楽評論家 / DJ / プロデューサー。大学在学時の1971年から音楽評論家としてキャリアをスタート。当時、無名のクイーンを日本でいち早く紹介したり、セックス・ピストルズ、クラッシュなどのロンドン・パンクを現地取材するなど、時代の節目節目でのキーを握る。1980年、日本初のロックDJイベント<LONDON NITE>を新宿のディスコ、ツバキハウスでスタート。ビートルズ、ベンチャーズを原点とする音楽体験は、その後の多くの交流人脈を導き、ユーミン、内田裕也、忌野清志郎、鮎川誠(シーナ&ロケッツ)らのベテランからモッズ、ラフィン・ノーズ、ブルーハーツら日本のパンクのオリジネーター、さらにはハイ・スタンダード、ブラフマン、ミッシェルガン・エレファント、ブランキー・ジェット・シティ、川村カオリら近年のシーン盛り上げたミュージシャンらまで多岐にわたり、加えて藤原ヒロシ、小西康陽ら多くのDJとも強い繋がリを持つ。
http://www.kenrocks.net/ <MODS MAYDAY>30周年によせて
mito(clammbon)
僕が初めて行ったMAYDAYは15周年のとき。
モッド・シーンがまた盛り上がってきて、ギムラさんの追悼でお祭り騒ぎになっていて、その狂騒たるや凄まじいものだった!!
あれから15年、まさに倍の年月をかけて、いまだに僕らをドキドキさせてくれることが本当に素晴らしくて、その想いはどうしても言葉にはみ出てしまいます!
マナブさん!! やっぱり貴方は最高です!! Keep the“Face”!!!!
Profile:クラムボンのベーシスト。10代の頃には愛車ランブレッタを駆り、都内モッズ・イベントに夜な夜な繰り出していた模様。クラムボン8枚目のオリジナル・アルバム『2010』が5月19日にリリース。iTunesSTORE限定にて『JAPANESE MANNER e.p.』配信中!
www.clammbon.com 松田 “CHABE” 岳二 (Cubismo Grafico)
僕がマナブさんに最初に会ったのは93年くらいだろうか。最初に会った時から今までずっと目障りでヤンチャな後輩でいる僕にマナブさんは変わらぬ優しい態度で接してくれています。本当にDOVEな方だと思います。そしてそういう方だからこれだけ続けてこれたのだと。相棒である稲葉さんもいつ会っても赤ワインを片手にイジってくれます。とても素敵な先輩2人ですね。<MODS MAYDAY>30周年、本当におめでとうございます! またDJでもバンドでも誘ってくださいませ。
Profile:ミュージシャン / DJ。1995年にキーボーディスト、堀江博久とユニット、NEIL&IRAIZAを結成。1998年よりソロ・ユニット“Cubismo Grafico”をスタート。2003年からはバンド・スタイルの“Cubismo Grafico”としても活動を展開している。5月8日、原宿アストロホールにて久々にNEIL&IRAIZAのライヴを予定。
http://www.cbsmgrfc.net/ ダーリンハニー・長嶋智彦
(ダーリンハニー / 芸人) 人間の半分は水分で構成されています。バファリンの半分はやさしさ、COCOの2ndシングルは「はんぶん不思議」です。そして僕の半分は「モッズ」で構成されています。これは揺るぎない事実であります。
僕とモッズというムーヴメントの出会いは、高校時代に遡ります。最も多感な時期にさまざまな音楽・映画・パーティに出会い、その格好良さに傾倒していきました。そして、それは今でも僕の本質で在り続けています。中でも<MODS MAYDAY>は僕にとって、現在進行形で「モッズであること」を喚起してくれる最高のパーティです。高校時代の僕自身に自慢してあげたい。僕はまだモッズのままだし、メイデイに関われているんだと。ありがとうございます、師匠である黒田マナブさん。おめでとうございます<MODS MAYDAY 30th Anniversary>!!
Profile:長嶋智彦(脚本担当:左)と吉川正洋(七変化役者:右)からなるコント・デュオ。2000年2月14日プロ・デビュー。長嶋は知る人ぞ知るコアな音楽ファンにして生粋のモッズ。DJとしても活動している。2004年より<SUMMER SONIC>にも連続出演中!
http://dhweb.mods.jp/ 菅沼志乃(スタイリスト) まなぶさん! 30周年おめでとうございまっす☆
30年! ヒューヒュー!!!!!!!!
15年位前の私たち(THE CLOVERS)はMODS MAYDAYに出るのを目標にがんばってましたよ〜。AaaaaなつかCccccccチッタのステージでれた時は嬉しかったなぁ(照。。)
なんかどこで洋服をオーダーする??とか、誰のスクーターの後ろに乗る??とかあの曲のダンス覚えた??とかメーデーの前は DOKIDOKIでWAKUWAKUでした。mmmmm〜青春☆楽しかったなぁすっごく!!!
ふふふ♥また行きたいのだ! ずっと続けてくださいまし!
Profile:スタイリスト。90年代中盤よりカメラマンHIROMIXらとともに組んだガールズ・バンドTHE CLOVERSの一員として活動。<MODS MAYDAY>にも出演経験あり。1998年よりスタイリスト、MORIYASUに師事。2000年独立。現在、雑誌、広告、ミュージシャンのスタイリングなどで幅広く活躍中。
<30th anniversary special party MODS MAYDAY '10>
●日時:5月15日(土)
●会場:神奈川・川崎クラブチッタ
●時間:開場&開演 14:00
(オール・ナイト)
●料金:前売り 3,800円 / 当日 4,200円
【LIVE】
ザ・ネアンデルタールズ、THE COLLECTORS、the hair、THE FAVE RAVES、High Style、the 5,6,7,8's,、THE HAMMOND CONNECTION、WACK WACK RHYTHM BAND with Lemon、The eskargot miles、SCOTT GOES FOR、Backdoor Men、THE TICKETS、The Clovers、Little Soul Drip,、the mammals、THE BETS、THE MOONLIGHTS、headphone 01、EMILY LETTUCE、SNACH+、FURS and more
【DJ】
黒田マナブ、稲葉達哉、松田憲明、堀井康、加藤直樹、Jaga B
【ゲストDJ】
大貫憲章、小西康陽、藤井悟、松岡徹、Morrie Morissette、佐藤志朗、KACHIN'、INAMI
【ATTIC' DJ】
HAJIME、big bamboo MASA、Arai/Bucci、福田俊介、青山比呂紀、Yone-Pa-Cino、田中シンゴ、末續哲玄、Oguri、後藤"Shima"ヒロシ、Jimmy、Kaneta、OSAMU、菅野克哉 a.k.a.Tequila.Pro、Caori a.k.a.peco
■MODS MAYDAY オフィシャルMySpace
http://www.myspace.com/modsmayday1981
■this is modern world
http://thisismodernworld.com/モッズ・レーベル『LOVIN' CIRCLE』の全音源が
4月28日よりレコチョクにて配信開始!
黒田マナブが1990年に立ち上げたレーベル『LOVIN’ CIRCLE』。その全作品(トータル200曲ジャスト!)が4月28日よりレコチョクにて一斉配信されます。90年代以降の東京モッズ・シーンを彩った名作の数々がここに!
●『LOVIN’ CIRCLE』作品5選FAVE RAVES / FAVE RAVES(1994年)1990年に結成されたソウル・バンドの1stフル・アルバム。現在もライヴ活動を展開中。サザン・ソウル・マナーに則った演奏とヴォーカリスト青山のパワフルな歌声は見事に健在。
COOL SPOON / TWO MOHICANS(1995年)SLY MONGOOSEのべーシスト、笹沼位吉が在籍。R&B、ファンク、ジャズ、ヒップホップなど、さまざまなグルーヴ・ミュージックを取り込んだハイブリッドなサウンドは今聴いても新鮮。
V.A. / Topping Up(1996年)ザ・コレクターズの前身バンド、THE BIKEや、伝説のMOD、杉村ルイ在籍時のTHE HAIRなど、80年代の東京モッズ・シーンを代表するバンドの貴重な音源を収録したコンピレーション。
V.A. / Do The Bowling- for modern bowlers(1998年)ボウリングをテーマにしたコンピレーション。ワック・ワック・リズム・バンド、ブルービート・プレイヤーズなど90年代中盤の東京モッズ・シーンで活躍していたバンドの音源を収録。
Dubarcanoid Trim / DUBARCHANOID(2001年)DJ / サウンド・クリエイターとして国内外で活躍している岩城健太郎によるソロ・ユニット。現在、岩城はchari chariこと井上薫と共に人気パーティ<FLOATRIBE>をオーガナイズしている。