ファースト・キスは1回しかないのがいい メンバーの“リアル”を大声で歌うロック・バンド、The MANJI

The MANJI   2017/07/28掲載
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 ROLLY(g, vo)、佐藤研二(b, vo)、高橋ロジャー和久(dr, vo)によって結成された3ピース・バンド、The MANJIが8年ぶりにしてメジャー初、通算3作目となるオリジナル・アルバム『TRIPLED』を発表した。ありとあらゆるロックの快楽を詰め込んだ、まさに「地獄の極楽」という言葉がストレートに響く、パワフルでストレートな、小細工なしの痛快王道ロック・アルバムをリリースした3人に話を訊いた。
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――意外にも初めてのメジャー作なんですね、おめでとうございます。もう活動は10年近くにもなるそうですが、結成のいきさつを教えてください。
ROLLY 「僕が高校生の時に“猟奇納骨堂”という、フラワー・トラベリン・バンド外道のような、暗黒ロックみたいなバンドをやっていたんです。大人になって久しぶりに、トリオでやりまくれる……もろにロック・バンドをやりたいなと思いましてね。佐藤さんに声をかけて、ロジャーさんと演奏してみて、これは絶対この3人がいい、ということになりまして。このバンドを結成しました」
ロジャー 「最初はヘルプみたいな感じで参加したんですよね」
ROLLY 「だけどばっちりハマって、“これだ!”と。ライヴを中心に活動をしておりましたが10周年を前にキングレコードさんから声をかけていただき、メジャー・デビューとなりました」
佐藤 「このアルバムからバンドの表記を“The MANJI”にしたんだけど、音はそのまま。自分たちにとって“積み重ねてきたものがあったんだなあ”って、“バンドだったんだ”と再確認しました」
ROLLY 「“8年を経たこの音は以前にも増して太く・熱く・深い”って言葉通りで」
――このアルバムはサウンドとしては一部の隙もない仕上がりで、最初は日本語が“わかる”のが残念だったなと思ってしまいました。
ROLLY 「洋楽を聴いたときに歌詞がわからない、っていうのと同じようなこと?」
――はい。「地獄の極楽」なんかは歌詞が入ってくると「あれ……?」って。最終的にはそこがむしろ素晴らしいなと。洋楽を聴いて受けるショックの逆を見せられたと思っています。
ROLLY 「今の日本のロック・バンドの歌詞は僕にとってはあんまりそそられないのね。みんな同じ言葉を使っているようで。僕が敬愛するバンドの歌詞の世界観には強烈な“におい”があって。これは特殊だなと思っていただけるのはうれしいですね」
ロジャー 「笑ってもらいたいって気持ちは、わしの中ではあるんですね。オチをつけたいというか。おもしろがっていただいてナンボのもんだって」
――「ユミコとタクシー」は、濃厚な物語性がありますね。
ロジャー 「作り話だったらもっとすごいのかな(笑)。僕には作れませんよ。フィクションであれは無理です、ノン・フィクションです」
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Photo by Mao Yamamoto
――シンプルでオーセンティックな、かっこいいギター・ソロもフィーチャーされていますね。こういうことをやろうとするミュージシャンはいると思うんですが、音楽に対する真面目さがあふれていて。
ROLLY 「あのギターを褒められるのはうれしいね」
佐藤 「一緒にやった感触として、100%実話だからこそ心の在処が全然違っていて、聴く人それぞれの琴線に触れるし、言ってみれば王道の中の王道というか……ものすごくまっとうにやっていること。好きなものを好きっていう感覚に近い純粋さ。言葉にするのはとても難しいんだけど」
――ロジャーさん、この曲をそんなに語られても、みたいな顔はしないでください(笑)。
ロジャー 「(笑)」
ROLLY 「いやでもこの曲にみなさん、すごく衝撃を受けているよ」
佐藤 「僕はこのアルバムのハイライトのひとつだと思ってる」
ROLLY 「そうね、クイーンでいうところの〈ボヘミアン・ラプソディ〉のいちばんすごいとこくらいの」
佐藤 「20代の子、学校を卒業して4、5年の人がこの歌を歌っても、“はあっ?”ってなるでしょ。下心ばかりになっちゃうし。50代も半ばの人の感触ですから。演出したものではなく、その生きざま、そういう歌を歌っているってこと自体がすごいことだと思ってます。こういうことができているっていうのが、このアルバムのハイライトだと自分では思うんだけれども」
ROLLY 「話の展開が映画のように浮かんでくる。歌詞の物語性っていうことを僕はいつも意識するけれど、ものすごく身近に成し遂げた人がいるなあって。今回〈ユミコとタクシー〉がすごいから僕の歌詞がとてもあっさりしている様に聴こえるかもしれませんね」
――とはいえ「MANJIパワーMANJIドリンコ」にはすごい破壊力がありますが。
ROLLY 「それはまさに“アホみたい”ってことですね(笑)。最初はドリンコじゃなかった、けどやっぱりドリンコで正解だったね」
佐藤 「これはROLLY独特のポップ・センスで、我々2人は逆立ちしても出てこない」
――その一方で「Let's get FUNKY」は佐藤さんならではの曲でした。
ROLLY 「このギターのカッティングは練習しましたね。今までのバンドではやったことがなかったから」
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Photo by Mao Yamamoto
――アルバム全体でみなさんの個性がからみあって。すごくファンキーで渋い曲の中で“カモンロジャー!”って呼びかけに応えるようにかっこいいドラムを披露されたその次には「フィフティーショルダー」が控えているというすごい構図になっています。
佐藤 「五十肩だって、自分たちにとってはすごいリアルなことであって。20代の子たちが恋愛のことを歌うのとそんなにかわらないよ。自分にとってリアルなことを大声で歌う、これがロックだと思うし、やっていることには何も違いはないんだよ。10代と50代で同じことに興味を持ってるはずがないわけで。この年になって同窓会でまだドキドキしてる、ユミコさんには孫がいてもおかしくないのに(笑)。それに10代で五十肩をテーマにする人はいないでしょ(笑)」
ロジャー 「この前に〈難聴〉って曲があって。次は五十肩だ、と思っていたんだけれど“フィフティーショルダー!”って言ったら“お、かっこええやん、これや!”って。かっこええロックのイメージで。次は老眼やから〈ザ・ローガン〉ってのを考えていたら、そんなタイトルの映画があって“取られたー!”って」
佐藤 「取られてないですよ(笑)」
ロジャー 「歌詞聞いたらちょっと苦笑いしちゃう感じが好きなんですよ」
佐藤 「僕が思うにこの感じは関西独特の泣き笑い……藤山寛美からの系譜というか、そういうものが骨身に入ってる。名古屋の人や東北の人は、その感覚は違いますよ。五十肩をフィフティーショルダーって言ってかっこいいわけないじゃない(笑)。でもそこが大げさな言い方をすると、泣き笑いのペーソス。実にロジャーさんの人柄が入ってる」
ROLLY 「自分が作ったものだけれども、このアルバムは大人ならではの、そこはかとないギャグ感と人情味があふれていますので、ぜひ初老の方に聴いていただきたい。サウンド的には往年のロックを痛いほど磨き上げてきた我々がやっているわけですから、間違いない作品です」
――これだけ違うタイプの曲でそれぞれの個性を出しながら、バンドとしてまとめられるのはなかなか難しいかと思います。
ROLLY 「今回は佐藤さんがプロデューサーです」
佐藤 「たとえば〈ユミコとタクシー〉〈MANJIパワーMANJIドリンコ〉〈Let's get FUNKY〉と、それぞれの曲が世界感を持っていて、作曲者の想いをもちろん大事に生かしてるんだけど、ライヴでこの3人で再現できる音を作りました。バンド感をだす具体的な方法でいうと、ほぼ全て“せーの”で一緒に録ってます。本当は全て同じ部屋で、チャンネルもクロス・トークにして、ライヴと同じようにしたかったんだけど。でも、歌以外にダビングしたものはほとんど無いですね。重ねたのはピアノが2曲、チェロ、〈ユミコとタクシー〉のギター・ソロくらいかな」
ROLLY 「MVは〈地獄の極楽〉を選んだのですが、レコーディングした音源に当て振りをしたのではなく、カメラを入れてMVのために生演奏しました」
佐藤 「スタジオだからできることっていうのはもちろんあるんですが、それは3人ともいっぱいやってきたから。あえてトリオのロック・バンドができることを、うんと濃くしてやることを意識しましたね。たとえばファンクな曲だから、ラッパいれようかっていうようなアレンジの楽しさはあるけれど、それをやったらThe MANJIじゃない。3人でタイトにやろうよ、って。だからはるかにロックな曲になっていると思います。ファンクをやってるミュージシャンにとってはこんなのはファンクじゃないって思うかもしれないし、ロックやってる人は“だってロック・ミュージシャンでしょっ”って、いい意味で思ってくれると思いますよ」
――一発でレコーディングするのは緊張感があるんではないかと思いますが、いかがでしょうか?
ロジャー 「ミスったとしても、自分がオッケーを出せるクオリティであればそのままで」
佐藤 「ほとんどが1個目か2個目のテイクで。欲が出てやっても、やっぱり最初のがよかったのかなって思うから。ファースト・キスは1回しかないのがいいのと一緒で、回数を重ねたところでドキドキしないというか、集中力がそこにあるっていうのを3人とも知ってるから。やればうまくいくとしても、ドキドキが減ってしまう」
――では制作期間としては短かったんですね。
佐藤 「レコーディングで3日間、ミックスするのに2日間でしたね。時間とお金ばかりをかけたって必ずしもいいものができるわけじゃないから。ありえないくらい短期間だけどすごくいいものができたと思っています」
ロジャー 「昔は、よくなかったところを“もっとこうしたかった”と録り直しをすることがあったけど。一発目の方が、たいがいよかったりするのもわかってる。大きな間違いがなかったら、それでいい」
佐藤 「できる以上のことを出そうとして、もがいたりしたこともあったんだけど、三人三様これまでやってきたことがあるから。自分のことをよく知っているからこそ、昔とは違うんでしょうね」
ROLLY 「1曲歌うのに1日以上かけたりしていたけれど、今のほうがずいぶんよくなっているしね。昔は全然あかんかったんですよ。年を取るごとに衰えるどころか今のほうがよくなってます」
佐藤 「ROLLYは今、1回歌うとほぼ完成形に近い状態ですね。自分を省みても若いころは“俺はこんなもんじゃない”って、何回でも指が取れるまで弾く、それが若さで。たとえばジャック・ブルースみたいなベースを弾きたい、とか思っていたけれども、今はそんなことは望まなくなった。目指すところが自分らしい演奏ってところに変わってきてるんじゃないのかなあ」
ROLLY 「できないことをスタジオのテクニックとかでごまかして、っていうのはなくなったよね。この年になって“己が何者であるか”っていうことがちゃんと確立されているんだと思いますよ」
取材・文 / 服部真由子(2017年6月)
The MANJI『TRIPLED』RELEASE TOUR
www.rollynet.com/
2017年8月3日(木)
三重 松阪 M'AXA
出演: The MANJI / monk no sakebi!
開場 18:00 / 開演 19:00
前売 4,500円 / 当日 5,000円(D別)



2017年8月4日(金)
兵庫 神戸 VARIT.
出演: The MANJI / 八十八ヶ所巡礼
開場 18:30 / 開演 19:00
前売 4,320円 / 当日 5,000円(D別: 600円)



2017年8月5日(土)
京都 MOJO
出演: The MANJI / フレイマーブルリキッド
開場 17:00 / 開演 17:30
前売 4,320円 / 当日 5,000円(D別)



2017年8月11日(金)
千葉 Look
出演: The MANJI / 和嶋愼治(人間椅子 / 弾語り)
開場 17:00 / 開演 17:30
前売 4,320円 / 当日 5,000円(D別)



2017年8月12日(土)
山梨 甲府 Kazoo Hall
出演: The MANJI / 和嶋愼治(人間椅子 / 弾語り)
開場 17:00 / 開演 17:30
前売 4,320円 / 当日 5,000円(D別)



2017年8月13日(日)
茨城 水戸 LIGHT HOUSE
出演: The MANJI / 和嶋愼治(人間椅子 / 弾語り)
開場 17:00 / 開演 17:30
前売 4,320円 / 当日 5,000円(D別)



2017年8月17日(木)
群馬 高崎 Club Fleez
※ワンマン
開場 18:30 / 開演 19:00
前売 4,500円 / 当日 5,000円(D別)



2017年8月18日(金)
新潟 Golden Pigs
※ワンマン
開場 18:30 / 開演 19:00
前売 4,500円 / 当日 5,000円(D別)



2017年8月19日(土)
石川 金沢 GOLD CREEK
※ワンマン
開場 17:00 / 開演 17:30
前売 4,500円 / 当日 5,000円(全席自由 / 整理NOアリ / D別)



2017年8月20日(日)
長野 The venue
※ワンマン
開場 17:00 / 開演 17:30
前売 4,500円 / 当日 5,000円(スタンディング / D別)



2017年8月22日(火)
神奈川 横浜 F.A.D
出演: The MANJI / チリヌルヲワカ
開場 18:30 / 開演 19:00
前売 4,320円 / 当日 5,000円(D別: 600円)



2017年8月25日(金)
熊本 B.9 V2
※ワンマン
開場 18:30 / 開演 19:00
前売 4,800円 / 当日 5,500円(整理NO付 / D別)
※6歳未満のお客様のご入場はお断りいたします。駐車場がございません。お車でのご来場はご遠慮下さい。




2017年8月26日(土)
福岡 博多 Drum sun
※ワンマン
開場 17:00 / 開演 17:30
前売 4,800円 / 当日 5,500円(スタンディング / D別)



2017年8月27日(日)
鹿児島 SR HALL
出演: The MANJI / TISSUE
開場 17:00 / 開演 17:30
前売 4,320円 / 当日 5,000円(スタンディング / D別)



2017年8月30日(水)
東京 吉祥寺 ROCK JOINT GB
出演: The MANJI / Zun-Doco Machine(水戸華之介 + 内田雄一郎)
開場 19:00 / 開演 18:30
前売 4,000円 / 当日 4,500円(スタンディング / D別: 600円)



2017年9月3日(日)
静岡 Sunash
出演: The MANJI / ザ・キャプテンズ
開場 17:00 / 開演 17:30
前売 4,320円 / 当日 5,000円(D別)



2017年9月9日(土)
宮城 仙台 LIVEHOUSE enn 2nd
出演: The MANJI / キノコホテル
開場 18:00 / 開演 18:30
前売 4,320円 / 当日 5,000円(スタンディング / D別)



2017年9月14日(木)
広島 Cave-be
※ワンマン
開場 19:00 / 開演 19:30
前売 4,500円 / 当日 5,000円(D別)



2017年9月15日(金)
岡山 Desperado
※ワンマン
開場 19:00 / 開演 19:30
前売 4,500円 / 当日 5,000円(D別)



2017年9月23日(土)
北海道 札幌 COLONY
※ワンマン
開場 17:00 / 開演 17:30
前売 4,800円 / 当日 5,500円(スタンディング / D別)



2017年9月27日(水)
東京 渋谷 CLUB QUATTRO
※ワンマン
開場 18:45 / 開演 19:30
前売 4,800円 / 当日 5,500円(全席自由 / 整理NOアリ / D別)



2017年9月29日(金)
大阪 心斎橋 JANUS
※ワンマン
開場 18:30 / 開演 19:00
前売 4,800円 / 当日 5,500円(全席自由 / 入場整理No付 / 小学生以上チケット必要 / D別)



2017年9月30日(土)
愛知 名古屋 TOKUZO
※ワンマン
開場 17:00 / 開演 17:30
前売 4,800円 / 当日 5,500円(全自由 / 整理付き / 客席後方一部立ち見 / D別)




Information
・ROLLY www.rollynet.com/
・Kenji Sato hw001.spaaqs.ne.jp/marshall1992/
・Kazuhisa“Roger”Takahashi www.k5.dion.ne.jp/~roger/
・Sony Music Artists www.sma.co.jp/
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