リヴァプール出身の5人組ロック・バンド、ザ・ズートンズが、前作『Tired Of Hanging Around』から約2年ぶりの3rdアルバム『You Can Do Anything』をリリースした。この2年の間には、ギターのボーヤンが脱退するというバンドの危機もあった。しかし、彼らは止まることなく、同じリヴァプール出身のギタリスト、ポールを新メンバーに迎え、ロスでのレコーディングを敢行し、新作を完成させたのだ。ではメンバーを代表し、ドラマーのショーンとサックスのアビ、そしてギターのポールに話を聞いていこう。
「ボーヤンとは音楽性の違いから、別々の道を進むことになったんだ。しばらく4人で活動するか決め兼ねたけど、すごく腕の良いギタリストのポールが入ってくれたんだ。メンバーが新しくなったことで、バンドのサウンドはもちろん、他のメンバーの演奏も明らかに前とは変わったんだ。ボーヤンが抜けたことは残念だったけど、バンドとしては、すごく成長できたんだよ。それで、今までと違うことをやりたいと思い、プロデューサーに(プライマル・スクリーム、ブラック・クロウズなどを手掛けた)ジョージ・ドラキュリアスを迎えて、彼の提案でロスのサンセット・サウンド・スタジオ(
ドアーズ、
レッド・ツェッペリンなどが使った歴史あるスタジオ)でレコーディングしたんだ」
(ショーン) アルバムは、
AC/DCや
ローリング・ストーンズを彷彿させるパワフルなロックンロール「Harder and Harder」、ポールのスライド・ギターが冴えまくる、楽しさ全開の70'sロック・フレイヴァーな「Always Right Behind You」、
フランク・ザッパやPファンク感もたっぷりの「Family Of Leeches」など、バンドの新たな一面を垣間見せつつ、ズートンズならではのポップさ、親しみやすいメロディ・センスにさらに磨きをかけたナンバーがずらりと並んでいる。
「今回、僕らは自然にプレイすることに心がけたんだ。以前は、このフレーズは何かっぽいなと思ったら、あえて避けるようにしてた。だけど“別にツェッペリンっぽく聴こえようと、何に聴こえても構うもんか”って、とにかく自然に沸いてくるものを大事にしたんだ」 (ショーン)
「僕は、ズートンズで初めてのレコーディングだったけど、とにかく楽しんで演奏できたよ。良い機材も使わせてもらったしね(笑)」 (ポール)
「レコーディングは、プロデューサーのジョージが良い雰囲気を作ってくれて、緊張感もありつつリラックスもしてる、とても良い環境で進められたわ。彼は1つ1つの音作りに時間かけて、エッジの効いた生っぽいサウンドに仕上げてくれたの。あと、自分たちでアルバムの音を聴くと、ロスで過ごした時間を感じる。もしかしたら音の方にもロスの街から影響された部分が入ってるのかもね」 (アビ)
これまでも彼らは、ソウル、ファンク、ブルース、サイケといったルーツを昇華した音を聴かせてきたが、新作では、そこからさらにダイナミックで躍動感溢れるサウンドを作り上げたのだ。そんな、前進し続ける彼らの姿勢は、『You Can Do Anything』というタイトルからもバッチリ伝わってくる。
「“夢は絶対叶うんだ”といった、アメリカ的なポジティヴさとは違うんだ。ほら、他人は自分に対して、そこまで気を使ったり思いやりを持ってないだろ。だったら“自分たちのやりたいことをやっちまいな”って感じでこのタイトルにしたんだ。うん、たしかに今の僕らの思いを反映したタイトルではあるね(笑)」 (ショーン)
取材・文/土屋恵介(2008年7月)