東京女子流   2012/03/13掲載
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【東京女子流座談会】
アイドル・ファンのみならず、コアな音楽好きの間でも注目を集めている東京女子流。ここでは、さまざまなメディアで東京女子流をプッシュし、またライヴ現場にも頻繁に足を運んでいる、久保田泰平、高木“JET”晋一郎、土屋恵介、南波一海、宮内健という5人のライターにお集まりいただき、東京女子流にハマった理由から、2ndアルバム『Limited addiction』の聴きどころなどをたっぷり語ってもらった。
※このテキストは2012年3月4日にTOKYO GIRLS' STYLE UST.TVにて配信された座談会を再構成したものです。


「おんなじキモチ」

 望月 「まずは東京女子流に本格的に注目したきっかけから教えてください」
 久保田 「最初に気になったのは2ndシングルの<おんなじキモチ>ですね。今にしてみれば名曲だけど、その時点では、そこまでガツンて感じじゃなかったんですよ。ちょっと気になるな、くらいで」
 望月 「メディアの人間として、こういうことを言うのもアレなんですけど、最初は正直、今ほど期待していなかったというか。ちょっと様子見みたいなところはありましたね」
 久保田 「ツカミがそんなに強いグループではないから。メンバーも比較的低年齢ではあったし……って公表はされていませんが(笑)。曲も“聴け!”みたいな感じではないから」


「ヒマワリと星屑/きっと 忘れない、、、」

 土屋 「やっぱり、みんなが女子流を気にしはじめたのって4thシングルの<ヒマワリと星屑>からじゃないかな」
 久保田 「あそこでガツンときたんだよね」
 土屋 「ファンキーなサウンドでガッと持っていく感じというのが、Folderの<パラシューター>を聴いたときの印象に近くて」
 久保田 「Folderを思い出したというのはちょっとあるかもね。僕も、ひーちゃん(新井ひとみ)を初めて見たときにAKINAを思い出した」
 全員 「あ〜確かに」
 久保田 「歌唱力といい、低めの声といい、顔も若干似ていますね」
 土屋 「あと、<ヒマワリと星屑>はDJとかやっても混ぜられそうだし。そういうところでも気になった」
 高木 「僕は久保田さんと同じで最初に<おんなじキモチ>を聴いたんですけど、正直、全然興味が持てなかったんですよ。“またこういう子たちが出てきたんだな”くらいの印象で。その後、<ヒマワリと星屑>がリリースされたときも、最初はスルーしてたんだけど、Twitterのタイムラインで、“この曲は凄い!”みたいなツイートがどんどん流れてきて」
 久保田 「そうそう。僕もその時のことすごく覚えてる」
 高木 「それで“あの子たち凄いことになったのかな”と思って、<ヒマワリと星屑>を買ったら本当に凄いことになっていて(笑)。そこから他のシングルを遡って聴いたら、それがすごく良くて」
 土屋 「俺も遡って<おんなじキモチ>を聴いて、なんていい曲なんだって思った。オアシスの<Whatever>を聴いたとき、“すげーいい曲じゃん!”ってなって、デビューからの2枚のシングルを遡って聴き直したのを思い出した(笑)」

「キラリ☆」

 望月 「デビュー・シングルの<キラリ☆>も最初は地味な印象があったけど、今にして思えば、逆にあの曲でデビューしたところに女子流チームの本気さを感じますよね。南波さんはどのあたりから気になりはじめましたか?」
 南波 「友達のバンドが渋谷のO-Nestというライヴハウスのブッキングをエイベックスのアイドル・グループと取り合ったっていう話を聞いて、そのときに東京女子流という名前を初めて知ったんです(笑)」
 (全員爆笑)
 南波 「その後、女子流のライヴを観る機会があったんですけど、僕も皆さんと同じで、最初はそんなに印象に残らなくて。気になるようになったのは、<鼓動の秘密>のPVを観たのがきっかけですね。あのPVが本当に格好良くて。それで過去のシングルを遡ってという感じですね。超格好いいと思ったのは、クアトロでライヴをやったときかな」


 望月 「2011年5月の1stジャパンツアーですね」
 南波 「そのあと、地方のライヴも観にいくようになって、本当にハマってしまって」
 望月 「確かに、じわじわ好きになるタイプのグループではありますね」
 南波 「ずっとそういう感じで、じわじわが今でも続いている感じです」
 宮内 「僕は女子流にハマったのが全然遅くて、ライヴを観たのは去年の10月の銀河劇場が初めてだったんです。望月君から、“女子流いいですよ!”っていう話をずっと聞いていたんだけど、そもそも僕はアイドルのライヴ自体、行ったことがなくて」
 望月 「でも、あそこからのハマりっぷりが尋常じゃなかったですよね」
 宮内 「銀河劇場で初めてライヴを見て本当に衝撃を受けて。生演奏をバックに歌ったりして、“これはめちゃめちゃ格好いい!”と思って、ライヴが終わってから事務所に戻って一晩中ずっとYouTubeをチェックして。そこから一気にハマりました。僕の場合、皆さんみたいに、じわじわくる感覚というよりも、ある程度完成されたところから見ているから、最初から凄い人たちだという印象があって」
 南波 「でも、銀河劇場って、かなり大きなポイントでしたよね」
 望月 「前々から生バンドと一緒にやったらいいんじゃないかということは言われていたけど、いざ一緒にやったら本当に凄かった」
 宮内 「いいときに見たなと思って(笑)。そこからアイドルのライヴを観にいくこと自体、楽しくなっちゃって。40歳にして(笑)」
 久保田 「女子流はちゃんと本人たちのパフォーマンス能力が高いのもポイントだよね」
 土屋 「毎回、生歌で、しかも全力でダンスして」
 望月 「ひとつポイントなのは、現場に行って生で女子流のメンバーを見て最初に思うのが、“思っていた以上に小さいぞ”っていうことで。そこに、まずインパクトを感じるんですよね」
 高木 「僕は一番最初に女子流のライヴを観たのが日比谷野音でやったアイドル・フェスだったんですけど、メンバーがステージに出てきたら、“うわ! 子どもだ!”って思って。アートワークは大人っぽかったぶん、ビックリしました」
 望月 「それでいて、あのパフォーマンスというのが、また」
 高木 「そこですね。初めに感じたビジュアル的な印象と、その後の動きの違いというのが……このギャップは凄いなと思いました」
 宮内 「初めてライヴを観たとき、メンバーに挨拶させてもらったんですけど、あの凄いステージを観た後だったから、本人たちの小ささにびっくりして」
 久保田 「ガンダム動かしてんのが少年だって知ったときのブライトさんみたいなキモチで(笑)」
 宮内 「なんで、ステージ上ではあんなに大きく見えるんだろうって思いました」
 土屋 「特に最近はそうなってるよね。ステージでデカく見えるという。自信の表れかもしれないけど」
 望月 「女子流はライヴを観るたびに、メンバーの成長が目に見えて分かるのもおもしろいですよね。点じゃなくて、線で追う楽しみがある。歌が上手くなってるのとか如実に分かるじゃないですか」
 宮内 「ライヴで新曲が披露されて、そのときはまだ拙い部分もあったりするけど、次に観にいったら、そこが完全にクリアされているから凄いなと思うんです」
 土屋 「ライヴをやるごとに、どんどん良くなってく」
 宮内 「忍者の修行で葦を飛び越えるやつがあるじゃないですか(笑)。成長するのが早い葦を毎日飛び越えてるうちに日に日にジャンプ力が上がるみたいな。そういう感じですよね」
 望月 「(制作担当の)佐竹さんの考えもあると思うんですけど、あえて未完成のままでも見せて、現場で築き上げていくみたいなところがあるのかなって」
 久保田 「女子流の場合は未完成のレベルもちょっと高いんだけどね。未完成じゃ終わらせないし、発展途上を見せてるって言い方のほうが正しいかな。あと、今回、あぁちゃん(小西彩乃)が怪我で休んじゃったわけだけど、そのことによって、逆に他のメンバーが成長したところもあると思う」
 土屋 「他のメンバーの意識が高まってるのが、ライヴを観ていてよく分かるよね」
 望月 「あぁちゃんが怪我でお休みした直後、一発目のライヴ(2月5日、ベルサール秋葉原で行われた<Girl's Revue>)を観にいったんですけど、そのときは、あぁちゃんの不在を感じてしまうところが正直あったんです。だけど、ライヴを重ねるごとに、どんどん穴が埋まっていって。個人的には、(中江)友梨ちゃんが特に歌の面で伸びた気がします」
 久保田 「もちろんリーダー(山邊未夢)も、めいてぃん(庄司芽生)もね。出来る子なんですね、みんな」
 望月 「バックアップ能力が凄いなと」
 久保田 「メンバーの話をすると、女子流のファンはイイ意味で推しメンという概念が薄いような気がする」
 宮内 「それぞれ魅力があるからメンバー全員好きになっちゃう。とはいえ、『ひとみのひとみぼっち』とか普通に観ちゃうんですけど(笑)。……あれは本当にいいですよ(しみじみ)」
 (全員爆笑)

2ndアルバム『Limited addiction』

 久保田 「仕事の手が止まる。パッケージ化してほしいですね(笑)」
 土屋 「ひとみちゃんでいえば、ライヴ中の“いくよー!”っていう声が凄くツボで」
 南波 「いいですよね!」
 土屋 「なんか、別の周波数を感じるというか(笑)。南波君とも、こないだ話したんだけど」
 南波 「エモーショナルな何かが高いところから聞こえてくる(笑)」
 土屋 「あれは他で味わったことのない現象だよ(笑)」
 南波 「でも、最近は声が低くなってきて大変ですって言ってましたね。<おんなじキモチ>の“♪大スキナ”のところがちょっとキツくなってきたって。やっぱりこの1年でちょっと声変わりしているんだなって……そろそろ、アルバムの話にいきましょう(笑)」
 望月 「その前にアルバム先行シングルとして<Rock you!>が出るので、まずは、この曲からいきましょうか」
【<Rock you!>が流れる】

「Rock you!/おんなじキモチ-YMCK REMIX-」

 土屋 「この曲は中野サンプラザのクリスマス公演で初披露されましたよね。最初ギターのリフでガーンとくるから、メタルみたいな感じの曲なのかなと思ったらスパッとメロディアスな曲調に変わって。また新しい、違う一面を出してきたなと思いました」
 宮内 「女子流の曲って、イントロで掴まれる感じがありますよね」
 土屋 「ああ。イントロ大事かも」
 宮内 「出だしでハッとさせられて、ガラッと曲調が変わるみたいなパターンが結構ありますよね」
 久保田 「<Rock you!>は、<Limited addiction><Liar>みたいな最近のシングルに比べて比較的メジャー感のある曲だよね」
 南波 「難しくないという点では本当にそうですね」
 土屋 「<Liar>のときはびっくりしたよね。ここまで振り切るのかって。でも3回聴くと、これはアリだって思えたけど」
 宮内 「<Rock you!>は最初に中野で聴いたときは、低音と高音で分かれるパートとか危うい部分があったけど、どんどんライヴで鍛えられて、今や全然安心して聴けるようになって」
 久保田 「この曲は、友梨ちゃんの上パートが聴きどころですよね。友梨ちゃんのヴォーカルって、個人的にすごく好きで。ちょっと鼻にかかった感じの癖のある声だと思うし、決してクリアではないんだけど、そこが彼女の歌声の個性で、今回の曲では、そこが活かされてる感じがする」
 宮内 「そういう意味では、割とリードを採ることが多い、あぁちゃん、ひーちゃんも、それぞれちゃんと声質の違いがありますよね」
 高木 「ちゃんと構成しなかったら、ヴォーカルがバラバラに聴こえてしまうグループだと思うんですよ。下手なバランス構成だと、ガチャガチャに聴こえちゃうんだろうなって。だけど、ちゃんとクオリティ・コントロールされているから、声のキャラも質感も違うのに統一感があって、ぱっと聴きやすいなって。曲を聴きながら、いつも思っていますね」
 久保田 「“ここは誰に歌わせる”というのが、ちゃんと考えられてるんだろうね。単にソロを回していくということじゃなくて」
 南波 「カップリングは、<おんなじキモチ>のYMCKリミックス。このヴァージョンは、2011年5月のクアトロライヴのときに初めて流れたんですね。いつリリースされるんだろうって、ずっと気になっていて。それが遂に音源化されたっていう。ファンにとっては嬉しいことですよね」
 望月 「じゃあ、ぼちぼちアルバムいっちゃいますか」
【<Intro>〜<Sparkle>が流れる】

1stアルバム『鼓動の秘密』

 土屋 「<Sparkle>はプリンスの<Controversy>とかマイケル・ジャクソンの<Wanna Be Starting Something>を彷彿とさせられるところがあるよね」
 南波 「<Intro>は1stアルバムの<Outro>のヴァージョンというか、続きなんですね。ここで1枚目と2枚目のアルバムが繋がってる感じがします。ちなみに、<Intro>はベースラインとか、もろにシックの<Good Times>ですよね」
 土屋 「いわゆる、ディスコの定番」
 宮内 「<Intro>から<Sparkle>への繋がりはめちゃめちゃ格好いい」
 南波 「最初に聴いたとき、格好よすぎて爆笑しました(笑)」
 高木 「僕は岡村靖幸『禁じられた生きがい』のオープニングを思い出しました。ファンキーなインストの<あばれ太鼓>から始まって、ヴォーカルの入った<青年14歳>に入るみたいな。そういうファンク・アルバム的な入り口から歌にもっていく導入の仕方が素晴らしいなって。あのオープニングって全然、女子流を知らない人が聴いても引っ掛かるじゃないですか。そこから女子流のヴォーカルに引っ張っていく上手さを感じました。このアルバム、頭から聞いたら絶対、引っ掛かりますよね」
 南波 「<Sparkle>は単純にシングル切れる曲ですよね。歌詞も攻めてる感じでいいし」
 久保田 「攻めてるけど、ヘンに粋がって歌ってないところもイイ!」
 土屋 「“♪渾身の一撃はどうですか?”って、たぶん1年前に歌ってたら説得力なかったと思うんだけど、今これ歌われたら、素直に“ハイ”って感じでしょ(笑)」
【<Regret.>が流れる】
 全員 「う〜ん」
 土屋 「いい曲すぎて唸るしかない(笑)」
 久保田 「歌いだしの“ねぇ”から掴まれる。これ、めいてぃんですよね」
 南波 「歌の順番もいいですよね。芽生ちゃんから、ひとみちゃんに移って、あぁちゃんがBメロで出てくるっていう」
 高木 「 “♪どんなときだって” っていうサビの前に一拍空くところが、また黒いんですよね」
 宮内 「曲の展開は、山下達郎的な爽快な気持ち良さがありますよね」
 久保田 「しかもRCA/AIR時代の達郎さん的な(笑)」
 望月 「爽やかな曲調に切ない歌詞が乗ってるというのもフックになってますよね。これ、すごいトーチ・ソングじゃないですか」
 久保田 「サビの頭の言葉が濁音で来るところがすごく格好いいなと」
 宮内 「“♪どんなときだって”とか」
 久保田 「ここポイントだと思うんです。ドスが効いた感じというか」
 南波 「あぁちゃんが1オクターブ下で歌うところは本当にカッコいいですね」
 土屋 「<Liar>あたりからだよね。低いところを歌うようになったのは」
 南波 「あれ、相当スキルフルだと思うんです。なかなかアイドル・ソングではないですよね。しかもライヴでちゃんとやるんですよね。それも凄いなと」
 土屋 「しかし、ライヴで踊りながらこの曲を歌うのは大変だよ」
 宮内 「制作陣はパフォーマンスも込みで考えて、こういう曲を作ってるわけじゃないですか。よくこんな難しい曲を歌わせるよなって思っちゃう(笑)」
 土屋 「大人の悪巧み(笑)。それに応えてやろうという、メンバーの意地みたいなものも、最近の女子流からは感じるよね」
【<眩暈 feat.バニラビーンズ>が流れる】
 土屋 「女子流に北欧の風が吹いた」
 南波 「北欧なんですか、これ(笑)」
 土屋 「大ざっぱに言うと、寒い感じ(笑)。ツンドラ地帯(笑)」
 南波 「バニビっぽくもないですよね。でも明らかにこれまでになかったタイプの曲で、これ賛否分かれるんじゃないですか」
 宮内 「僕は昔の歌謡曲とか、そういう感じがしましたね」
 南波 「特にサビのメロディなんてそういう感じですよね」
 久保田 「僕が最初に思い出したのは、ポール・ウェラーの2ndアルバム」
 望月 「『Wild Wood』ですね」
 久保田 「うん。イギリス人視点のアメリカン・ロックっぽい」
 南波 「ロックっぽいですね、確かに」
 土屋 「アコギ始まりなのも新鮮だよね」
 南波 「そもそもこのコラボの経緯はどういう感じだったんですか?」
 エイベックス佐竹氏 「バニビさんといろんな現場でお会いする中で、メンバー同士が、一緒に“北欧女子流”とか言いながら写真撮ってたりしていたんです。それで“北欧女子流か〜”と思って(笑)。言葉尻から(笑)」
 南波 「もともとバニビのレナちゃんは女子流大好きですからね」
 久保田 「広報部長(笑)」
 土屋 「声の混ざり具合もいいよね。大人の感じと、ちょっと背伸びした女子のバランスが上手くハマってる」
 南波 「女子流は本当に大人になりたい人たちですからね。大人っぽい曲を歌いたいというのはインタビューでしょっちゅう聞いている感じがする。以前、インタビューで、“大人になりたいですか?”って質問したんです。そしたら、ひとみちゃんが“なりたい”って答えて。“どうしてですか?”って聞いたら、“今は通いで(宮城から)東京に来てるけど、大人になったら、こっちに住んで下校時間にみんなで遊べるから”って言っていて(笑)。大人の設定が低い!みたいな」
 (全員爆笑)
 南波 「“大人になりたい”っていつも言っているのに、具体的に聞くとそこだったんだっていう(笑)」
 高木 「歌詞でいうと、この曲は“行間系”というか。女子流の他の曲って、シチュエーションを説明する歌詞が多いじゃないですか。そこまで具体的じゃなくても結構状況説明が細かくて。でもこの曲だけ、抽象性が高くて、すごく、ふわふわとイメージを投げかける感じで。それをどういう気持ちで彼女たちが歌ったのか、というのは知りたいですね。どういう思いこめたのか」
 久保田 「それ取材で訊くの忘れた(笑)」
 高木 「“♪夜が怖くなる”っていうのは、実はお化けが出る怖さとか(笑)」
 久保田 「そういう怖さ(笑)」
 宮内 「でも、もうちょっと年を重ねてから歌ったらまた違う印象になると思うし」
 高木 「そうそう。女子流の曲ってあと何年か後に歌ったら、また違う印象になるんだろうなって思うことがよくあります」
 久保田 「今回のアルバムは、そういう曲が特に多いかもしれない」
 宮内 「しかし、ここまで可愛い感じの曲で行かないっていうところが、潔いというか、凄いですよね(笑)」
 久保田 「最高の意味でトレンドの逆を行っていますからね、いろんなところで。女子流さんは」
【<追憶>が流れる】
 南波 「<サヨナラ、ありがとう。>以来のバラードですね」
 久保田 「<追憶>って、アイドルらしからぬタイトルだな(笑)」
 宮内 「ここまでずっとファンクやら黒っぽい楽曲で攻めてきて、最後がヒップホップ・ソウルのバラードみたいな感じになっていないというのが興味深いですよね」
 久保田 「一番予想外の曲だと思う」
 南波 「まず、歌うめー!って思いましたね(笑)。この曲ではっきり分かりましたね」
 土屋 「バラードだからこそ、歌の上手さが一番見える」
 久保田 「これは相当難しかったみたい。ビートがないから」
 土屋 「ひとみちゃんは、レコーディングに5時間くらいかかったみたいですね」
 望月 「1回メロディを見失うと、歌えなくなっちゃうくらい難しいみたいで」
 宮内 「この曲をライヴで聴くのがすごく楽しみです。どういうふうにやるのか」
 南波 「歌詞もまた、大人っぽすぎる」
 望月 「リーダーはこの歌詞みたいな女性になりたいって言っていましたね」
 南波 「恋人と別れても追いかけないみたいな」
 望月 「傷をちゃんと忘れないで前に進んでいくっていう」
 南波 「でも、リーダーはこういう人になりたいって言っていたけど、友梨ちゃんは、“でもそんなの本当に恋したら分からないよ”って言っていました(笑)」
 (全員爆笑)
 久保田 「さすが自称ハタチ(笑)」
 宮内 「曲順的にいうと、最後のほうは<Liar><Rock you!><眩暈 feat.バニラビーンズ><Limited adicction>ときて、最後にこの曲。アルバム後半の畳みかける感じというか、それは本当に凄いなと」
 土屋 「アルバムの流れで考えると、ここでこういうのがハマってくるんだという驚きもあって」
 久保田 「アルバムに入って、これだけシングル曲の印象変わるんだというのは、今回すごく思った」
 土屋 「あと、<Outro>もいいんだよね」
【<Outro>が流れる】
 宮内 「『11PM』のエンディングみたいな(笑)」
 望月 「すごくラウンジ―な曲調ですよね」
 土屋 「EGO-WRAPPIN'始まります、みたいな(笑)」
 宮内 「本当そうだよね」
 土屋 「でも突然、ハードなギターが入ってきて、一筋縄じゃいかないよみたいな。短い時間の中で女子流らしさを表現してるよね」
【<Sparkle-Royal Mirrorball Mix->が流れる】
 宮内 「これが超かっこいいんですよ」
 土屋 「完全にハウス。でもちょっとニュー・オーダーっぽくもあって」
 宮内 「このリミックスのほうが、もしかしたらオリジナルよりキャッチーなんじゃないかと思うけど、あえてあっちをオリジナルにしているのが凄い」
 久保田 「このリミックスでアナログ切ってほしいね(笑)。そうそう、さっき言いかけたんだけど、シングルの曲がアルバムの中に入って、すごく印象が変わってるんだよね。シングル曲が多めで、物足りないと思う人もいるかもしれないけど、そんなことないですと僕は言いたい」
 高木 「曲の輝き方が変わりますよね。たとえば<Sparkle>の次に来ることで<W.M.A.D>がより光る曲になったと思うし」
 南波 「傑作です!」
 望月 「ホントに一人でも多くの人に聴いてほしいなと思わせられるアルバムですよ」
 土屋 「1stの『鼓動の秘密』で、あそこまで行って凄いと思っていたけど、また、ここまで来ちゃったか、みたいな。リスナーに合わせるんじゃなくて引っ張っていく感じ。それが今回のアルバムでさらに強まった気がする」
 久保田 「アルバム感は、1stより全然あるよね」
 宮内 「ある種、覚悟が決まった感じというか。アーティスト側もスタッフ側もそうかもしれないけど、この路線で行くぞという気概が感じられますね」
 エイベックス佐竹氏 「せっかくなのでシングル曲も流しましょう」
【<Liar>が流れる】
 土屋 「<Liar>は最初聴いたとき、驚いた。“いいのか、佐竹さん!?”って思った(笑)」
 南波 「ていうか、佐竹さんも“いいのかな?”って言ってましたよね(笑)。最初に聴いたときサビがまったく掴めなくて、何という曲だと思った。結構ショッキングだったんです」
 土屋 「PVもあんなになっちゃって。ゴスぽい感じで、黒い血が出ちゃってるし」
【<Limited addiction>が流れる】

「Limited addiction/We Will Win!-ココロのバトンでポ・ポンのポ〜ン☆」

 南波 「ああ、すでにクラシック感がある(笑)」
 宮内 「本当ですね」
 久保田 「これがアルバムの後半に来るというのがタマらないですよね」
 土屋 「80's感とかもない? 哀愁感なのかな」
 久保田 「確かに女子流の曲には、センチメンタルとか、メランコリックみたいなのがあるんだけど、その辺を得意とするつんく♂さんのテイストとは全然違うんだよね。Berryz工房<ああ、夜が明ける>とはまた違う。どっちも好きなんですけど」
 宮内 「ニューミュージックのエッセンスが歌謡曲に取り入れられた時代の“都会感”みたいな感じと、ちょっと近いんですかね」
 久保田 「女子流はアーバンなんだよね。アーバン・アイドル(笑)」
 宮内 「そういうとなんかアレですけど(笑)」
 土屋 「ちなみに、なんで、この曲のタイトルをアルバム・タイトルにしたんですか?」
 エイベックス佐竹氏 「一番いい曲をアルバム・タイトルにしようと思ったんです。1stアルバムも<鼓動の秘密>が一番良かったから、アルバム・タイトルにしたいなと」
 久保田 「洋楽っぽいですね。一番ラジオでオンエアしてほしい曲、みたいな」
 エイベックス佐竹氏 「やっぱり作品のタイトルが一番世に広まるんで」
 宮内 「そういうことなんですね。でもやっぱり、10曲目に<Limited addiction>が来るときの、待ってました感は凄い。高揚するよね」
 南波 「今ライヴで、友梨ちゃんが、あぁちゃんのパートを結構歌っていますけど、すごく難しいって言っていたから、これでまた歌唱力が伸びたりしたらいいですね。そういうメンバー同士のせめぎ合いとか欲しいじゃないですか」
 宮内 「そこはすごく楽しみです」
【<We Will Win−ココロのバトンでポ・ポンのポ〜ン☆−>が流れる】
 南波 「自分はこういう可愛い曲は好きですね」
 宮内 「いい曲、本当にいい曲」
 土屋 「完全に、<頑張って いつだって 信じてる>とかの路線だよね」
 久保田 「女子流は、歌とか踊りとかスキルが高いんだけど、まだキッズ・グループという範疇にある感じがいいんだよね。妙にこなれた大人のグループっぽくアダルトなラインに振り切らず、拙さやハツラツさとか、そういう部分があるところが面白いなと思う」
 望月 「でも、やっぱりメンバーも日々成長しているので、そのへんを今後どう残していくのか、すごく気になるんですよ」
 南波 「メンバーもすっげー気にしてると思いますよ。この曲で“Say Go!!!”って歌うのも、恥ずかしかったって言ってましたもん。大人になっていく過程で、そのあたりの感覚が、どうなっていくのか気になるところではありますよね」
 久保田 「無理して大人にさせてほしくないよね。ある程度、時間をかけてというか、そのくらいの余裕をメーカーサイドにどこまで持ってもらえるのか分からないけど」
 土屋 「俺は最低10年はやってほしい」
 宮内 「そうだね」
 土屋 「これは本当に思ってるんですけど。そうしたら完全に歌詞の世界観ともハマる」
 南波 「特にこのアルバムの曲なんかは将来歌っても全然違和感ないですから」
 高木 「大人っぽい内容の曲を10年後に歌ったらまたそこで新たな魅力が生まれるだろうし、また、今歌うからこそのアンバランス感もいいですし」
 南波 「どのアイドル・グループもそうですけど、大人になっていくのは本当難しいですよね。でも、女子流はすごく将来が見えやすいから楽しみではありますけど」
 土屋 「佐竹さんは腹くくっていると思うんですけど(笑)」
 エイベックス佐竹氏 「なるべく長く活動してもらいたいなと思います」
 南波 「本当そうですよね」
 土屋 「攻めの姿勢でずっといってほしいなと」
 久保田 「女子流は、いい意味で、攻め方が控えめだと思うんです。意図的にブレイクポイントを持ってこようと思ったら、今回のタイミングとか、今年中にとか、例えばオリコンでトップ3に入る曲を作ってドーンというのができるんだろうと思うけど、もうちょっと先に、ピークポイントを見据えてるというか、ちゃんと受け手に委ねてる感じがするね」
 土屋 「この間の取材でも、リーダーが“3年目なので勝負の年だと思うんです”って言ってて。そこらへんの意地が見えて。またさらにここからの3年が楽しみになってくるなと思った」
 望月 「東京女子流は存在が刹那的じゃないんですよね。“今、盛り上がっちゃおう!”みたいな刹那的な感じじゃなくて、未来に思いを馳せられるグループだと僕は思っていて。先が楽しみだなというのを常に感じるんですよ」
 土屋 「アルバム曲にしても、今後歌っていったら、どんどん良くなっていくだろうし」
 久保田 「さっきトレンドと逆を行っていると言ったけど、東京女子流は本当にトレンディーなことをあまりやっていないんです。いまどきのアイドルがやっているようなトレンディーな仕掛けとか」
 南波 「すごく早い曲とかないですね。いわゆる“打ちやすい”曲とか」
 土屋 「飛び道具的なものも使っていないじゃん。正攻法の音楽的なところで勝負してますよね」
【<僕の手紙>が流れる】
 南波 「ZONEのカヴァーですね。(注:2011年8月にリリースされた『ZONEトリビュート〜君がくれたもの〜』に収録)」
 土屋 「なんで、この曲を選んだんですか? 向こうからのオーダー?」
 エイベックス佐竹氏 「こっちからですね。一番女子流の路線にハメやすい曲ということで。<花火>にするかこの曲にするかで考えて」
 久保田 「アレンジで遊んでるよね。確か渋谷gladの定期ライヴで初めて聴いて、なんだこれ?って思ったもん」
【<Don't Be Cruel>が流れる】
 高木 「この曲の甘酸っぱいメロディ、素晴らしいですね」
 望月 「最近のライヴはこの曲で始まることが多いですよね?」
 エイベックス佐竹氏 「今回のアルバムで、シングルのカップリング曲ってこれだけなんですよ。あとは両A面なので。格好いい曲なので、アルバムに向けてアピールしたいなと思って。あと、あぁちゃんが抜けたときに、残ったメンバーでカヴァーできる曲とできない曲があって。これは、あぁちゃんが抜けたときに、未夢が歌わなきゃいけなくなることになりまして、それがちょっと面白いなと」
 全員 「面白いなって(笑)!」
 久保田 「あえて高いハードルを課す」
 エイベックス佐竹氏 「AメロBメロのあぁちゃんのパートを歌ってます」
 土屋 「リーダー試練の曲だ(笑)」
 南波 「歌詞もちょっとツンデレ感があっておもしろいですよね」
 高木 「でも何となく子供感があるじゃないですか。男の子への攻め方が分かりやすい(笑)。大人になって、この曲を歌ったらどういう感じになるのか気になります。でも、いい歌詞ですね、本当に」
 久保田 「結局、アルバム全曲、聴いちゃいました」
 南波 「本当いいアルバムですね」
 土屋 「そこに尽きちゃう」
 南波 「“苦言は呈さないんですか“みたいな意見がちょこちょこタイムラインに寄せられてるんだけど、だって否定しようがないんだよな〜っていう(笑)」
 宮内 「あえて苦言を呈するならば、<Rock you!>のPVで、顔を汚し過ぎなんじゃないか?ってぐらいで(笑)」
 望月 「じゃあ苦言というか、ここが伸びたらさらに良くなるみたいなところはありますか? 今後の伸びしろというか」
 南波 「間違いなく、全員の歌唱力が上がるのが一番の課題だと思いますよ」
 久保田 「特にコーラスね。完璧なコーラスを身につけたら本当に完璧なグループになっちゃうと思う」
 土屋 「いわゆるユニゾンでのハモりじゃなくて、メロディのラインを分けてのコーラスだよね」
 久保田 「うん、そのへんがレベルアップされたあとで、SPEEDの<White Love>のカヴァーを聴いてみたい」
 南波 「たまたまですけど、あぁちゃんが、今回、怪我でお休みしたことも、結果的にはヴォーカルのスキルアップに繋がったんじゃないかなって思うんです」
 宮内 「ちゃんとそれをプラスに変えている感じがしますよね」
 望月 「あとはMCとか?」
 南波 「いや、でも確実にMCのスキルは上がりましたよ。絶対Ustとかの影響だと思います。面白いです、普通に」
 土屋 「数こなした結果みたいな。わちゃわちゃって喋って終わりじゃなくて、一応オチもつくようになったから(笑)」
 宮内 「曲名にかけてみたりとか」
 土屋 「でも、その曲やらなかったり(笑)。隙のある感じもまた面白いなと」
 宮内 「MCがこなれているとか、そういうのは、あまり求めていないかもしれないですね」
 土屋 「喋る内容をがっちり決めてくるグループもいるけど、女子流は本当に素で喋る感じがいいんだよね。で、曲を紹介するときに、全員低い声になって、世界が変わっていく、あの流れがいい(笑)」
 南波 「あとやっぱり、可愛い曲を僕はもっと聴きたいですね。<おんなじキモチ>みたいな曲が、ずっと並行してあるといいなとは思いますけど。いつか歌えなくなるというか、歌いにくく感じる時期が来ると思うんですよ、きっと。そこは、ちょっと気になりますけどね。でも、僕は聴きたいと思っています」
 土屋 「定期ライヴで少女時代の<Kissing You>をカヴァーしたときも、すごくハマっていたから、ああいう感じで、今までと違う形で可愛らしさを表現するやり方もあるのかなって」
 宮内 「確かに、女子流ならではの可愛らしさを提示するやり方がありそうな気はしますね」
 土屋 「KARAの<ジェットコースターラブ>のカヴァーとか、ああいうところに今後のヒントがあるのかなと思ったり。完全に個人的な意見だけど(笑)」
 南波 「あとやっぱり売れてほしいですね」
 久保田 「そこと、どう折り合いをつけるんだろうかと。この間やった<Pop'nアイドル>を観て感じたんだけど、曲のアグレッシヴさやあざとさということだけで言うと、SUPER☆GiRLSスマイレージとかには絶対負けると思うんですよ。音圧とか、力押しの部分で。そことは違うところで、どうにか食い込めないかと。同じことやったらつまらないし、同じことをやらないところに女子流の面白さを感じているから。“ああしないと売れないのか?”という話になるじゃないですか。アイドルって、ああいうパワフルな感じじゃないと売れないのかって。そうじゃない方法論で、どうやってメジャー感を出していくのかというのが今後の女子流に期待したいところかな」
 土屋 「ホントそうだよ。他にいないもんね、こういうグループ」
久保田泰平
女子流メンバーが生まれた頃に編集キャリアをスタート。某音楽フリーマガジン編集部を経て、メンバーがランドセルを背負い始めた頃からフリーライター / 編集者に。もうすぐ小学生に上がる娘と共に東京女子流を応援しています。リーダーと同じ場所にホクロあり。東京女子流のフェイヴァリット・ソングは「ヒマワリと星屑」「鼓動の秘密」「W.M.A.D」。
高木“JET”晋一郎
スポーツ新聞、音楽雑誌などを経てフリーへ。ヒップホップ / ブラック・ミュージック / アイドル / オカルトなど執筆。杉作J太郎率いる「男の墓場プロダクション」及び、音楽裏方「ONBU」所属。東京女子流のフェイヴァリット・ソングは「Attack Hyper Beat POP」「W.M.A.D」……全部!
土屋恵介(INAZZMA☆K)
渋谷・宇田川町にあった輸入レコード店、ZESTスタッフからフリー・ライター活動をスタート。洋邦アジア問わず、ロック、クラブ・ミュージックといった音楽を中心に、プロレス、格闘技など、さまざまな媒体で執筆中。東京女子流のフェイヴァリット・ソングは「ヒマワリと星屑」「鼓動の秘密」「Sparkle」「Regret.」「Liar -Royal Mirrorball Mix- 」。
南波一海
音楽ライター。エクストリームな音楽が好き。アイドル音楽については『CDジャーナル』と『CDジャーナルWEB』でそれぞれ連載を執筆中。東京女子流のフェイヴァリット・ソングは……悩む……。「Limited addiction」で!
宮内健
フリーランスのエディター / ライター。『CDジャーナル』編集部、『bounce』編集長などを経て、2009年にフリー・マガジン『ramblin'』を創刊。並行してイベントのオーガナイズ、FM番組構成/出演など、さまざまな形で音楽とその周辺にあるカルチャーの楽しさを伝えている。東京女子流のフェイヴァリット・ソングは「Limited addiction」。
望月哲(編集部)
CDジャーナルWEB編集部J-POP担当。青年娯楽誌、カルチャー誌などを経て現在に至る。南波一海のアイドル作家連載「ヒロインたちのうた。」(https://www.cdjournal.com/main/special/song_of_the_heroines/645)を担当。東京女子流のフェイヴァリット・ソングは「鼓動の秘密」。


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