アメリカはカリフォルニア州サクラメントの
TRASH TALK(トラッシュ・トーク)。彼らはアンダーグラウンドなハードコア・シーンより現れた正真正銘叩き上げのハードコア・パンク・バンドで、目下世界中でライヴの強烈さが口コミで伝染している。世界的に名の知れた英「Kerrang!」誌が主催する授賞式でベスト・インターナショナル・ニューカマーを受賞し、名実共に大ブレイク中だ。
そんな彼らだが、日本での知名度は決して高いとは言えない。にもかかわらず、3度目の来日にして〈LOUD PARK〉へ出演という凄まじい快挙、いや、もはや事件よ呼べる事象を巻き起こしたのだ。ライヴハウスでのパフォーマンスをそのままさいたまスーパーアリーナの大舞台でぶちかまし、日本のメタル・ヘッズに計り知れない衝撃を与えたのは言うまでもない。今日現在(2010年10月22日)、彼らはまだジャパン・ツアー中なので、ラウド・ミュージックに関心のある人は日程をチェックして会場へ足を運ぶべきだと断言したい。
〈LOUD PARK〉でのライヴ直後、楽屋にてヴォーカリストのLee Spielman、ドラマーのSam Bossonに話を聞いた。これを読めば、等身大のアメリカの若者としての側面、それと同時にバンドとして確固たる信念を持っていることが垣間見られるはずだ。
――いや〜、今日のライヴはほんとに凄かったです。後半にゲスト・ヴォーカルで出てきたのは誰だったんですか? Lee(以下L) 「あいつはAdamってやつで俺たちのツアー・マネージャーだよ。TRASH TALKの5人目のメンバーって感じだね。彼は俺たちのマーチャンダイズのデザインを全部やってて、アルバムのアートワークとかやってて。世界中どこへ行くにもいつもついてきてもらってるんだ。ツアー中のスケジュールを管理してもらったり、モノが壊れないように気を配ってもらったりとか (笑)。他にもALPHA & OMEGAのマーチャンダイズをデザインしたりしてるよ」
――今日、LeeはBASTARDのTシャツ着てますけど、ジャパコアは皆さん好きなんですよね。他にどういうバンドが好きですか?
Sam(以下S) 「DISCLOSEだろ、あとは
envy……」
L 「DSB、○○○○ももちろん好きだよ」
L 「日本のクラスト系とかパワー・ヴァイオレンスのバンドは超クレイジーでやばいよ!」
L 「昔、サクラメントに彼が住んでたときに知り合ったんだよね。俺らの1stアルバムのジャケを書いてるやつがいるんだけど、そいつとH-BOMBが友達でさ。それを通じて知り合ったんだ」
L 「そうなんだよ。前に一緒にツアーして仲良くなったんだ。日本にいる間もハングアウトしたいな」
S 「いろいろなフェスティバルに出演する機会が増えてきてるから、あいつらも俺らと同じ感じのやつらだし、普通に仲良くなったよ」
――「Kerrang!」のベスト・インターナショナル・ニューカマーを受賞したことで、アメリカ以外での知名度と人気も上がってると思います。そういう手応えはありますか?
S 「そうだね。やっぱり特にヨーロッパで(反響が)あったね。おかげで自分たちがまず出られるわけないって思ってたくらいのでかいフェスでもプレイできたし。イギリスのリーズでやったフェスのときは
SPECIALS(ザ・スペシャルズ)とか
M.I.A.とかとやったしね」
L 「Kerrang! の授賞式のときは、“俺たち、パンク・バンドなのになんでこんなとこいるんだろう”って感じだったよ(笑)。すぐそこに
MOTLEY CRUE(モトリー・クルー)とかいるんだぜ。すげークールだったよ」
S 「レッド・カーペットみたいの敷いてあるところだからね」
L 「タダ酒だから興奮して飲みまくってたんだよ。そしたらいきなり俺たちの名前が呼ばれてスポット・ライト当てられてさ。そのときは完全に酔っぱらってたんだけど(笑)」
S 「その会場に行くまでは全く現実味なかったんだけど、着いて飲んでたらいきなり呼ばれたんだ(笑)。とにかくやばかったね」
――大きなフェスに出演することで、ハードコアだけでなく様々なジャンルのバンドとも共演する機会が多いと思います。違ったタイプのバンドから影響を受けることはありますか?
S 「俺たちみんなほんとにいろんなタイプの音楽を聴くんだよね。だからもちろんライヴを観てから、スタジオでのソングライティングにおいて影響を受けることは多いよ」
L 「ツアーに出ると俺たちと全くタイプの違うバンドとよく一緒に回ったりするけど、ツアー・バンドである以上はどんなジャンルのバンドでも状況は一緒だからね。お互い刺激し合って助け合ってやって行きたいと思ってる」
――アメリカと比べてカナダ、ヨーロッパやオーストラリアのシーンはどういう印象ですか?
L 「カリフォルニアのシーンは大好きで、プレイするのも楽しくてしょうがないんだけど、アメリカだと今週はこのショウ、来週はあのショウって感じでしょっちゅうプレイできるし、俺たちの置かれてる状況は恵まれちゃってる部分があると思うんだ。それに対して例えばポーランドの小さい街に行ったときとかは、(オーディエンスが)“ほんとに来てくれてありがとう!”っていう感じで迎えてくれるんだよね。俺たちが何時間もかけて来てることもわかってくれて、逆に感謝の気持ちが伝わってくるし」
S 「オーストラリアのパースなんか俺んちから世界で一番遠いところで、行くだけで大変だけど、そこでもやっぱ“よく来たな!”って感じで感謝されてることが実感できたよ」
――それらの国と比べて日本のシーンはどう感じてますか?
L 「やばいよ、まじでサイコーだ。さっきも言ったけど日本のファンはクレイジーになるためにライヴに来てる感じするし、今日がほんとにいい例だけど。前の来日でDOGGY HOOD$やAS WE LET GOと一緒にプレイしたときもほんとに楽しかった」
S 「俺たちが日本でツアーするときは、普通の旅行者と違ってこっちのバンドの友達もいるしさ、みんなと飯食ったり飲んだりできるからね。仲間がたくさんいるから楽しいよ」
――バンドとしてこういうことはやりたくない、みたいのはありますか?
L 「すかしたカッコでポスターに映ってるバンドとかはクソだよ(笑)。俺たちはありのままの感じでやっていきたい」
S 「メンバー全員がやりたいことをやるっていうのが一番大事かな。誰かのためにやるんじゃなくて、自分がやりたいからやるんだ」
L 「例えば明日みんながテクノやりたいと思えばやるしね。今はパンクとハードコアがほんとに好きだから、それが俺たちのやりたいことだよ」
――最近うれしかったこととむかついたことについてそれぞれ教えてください。 S 「友達の結婚式があって、そのときいろんな奴らに会えたのは楽しかったな」
L 「こないだのチリであった鉱山の落盤事故、みんな大変な思いをしただろうけど助かってほんと良かったよ」
S 「むかついたことだけど、オークランドであった事件のことだな。電車の中でケンカがあったんだよね。で、みんな警察に捕まったんだけど、その中の手錠をかけられた男の子の頭を後ろから警察官が銃で撃ったんだよ。周りにみんながいて見られてる中でね。もちろん即死だったよ。もう完全な殺人だったにもかかわらずたったの懲役3年だったんだ」
L 「無抵抗のやつだよ? 実はそいつ、Garrettのガキの頃からの友達だったんだ。終身刑とか死刑になってもおかしくないことをやったわけだし、抗議もめちゃくちゃあって暴動になったよ。その警察官は異動になってどっか行っちゃったけどね。俺たちは殺されたやつの家族のためにベネフィット・ショウをやったんだ」
L 「ギルマン(924 Gilman, カリフォルニア州バークレーのライヴ・スペース)もお金はいらないって言ってくれてさ、10ドルのチケットはソールドアウトになったんだ。だから(被害者家族に)けっこうお金もあげることできて、ニュースとかになる前に俺たちの手で、シーンのやつらで何かしてあげられたのはすごい良かったと思う。あとむかついてるのは(隣り合ってる某バンドの楽屋の方を指差し)こいつらの音楽を聴かなきゃいけないことだね(笑)」
取材・文/Dr. Doom(DOOM PATROL FOUNDATION)
通訳/Kengo Kawamura(
FOR A REASON / AS WE LET GO)
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