【UNKLE interview】サイケなバンド・サウンドとアグレッシヴなデジタル・グルーヴを融合――ビート・カルチャーのカリスマ、その思惑は?

UNKLE   2010/05/06掲載
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【UNKLE interview】サイケなバンド・サウンドとアグレッシヴなデジタル・グルーヴを融合――ビート・カルチャーのカリスマ、その思惑は?
 前作『ウォー・ストーリーズ』から3年、待望の最新作『ホエア・ディド・ザ・ナイト・フォール』がついに完成した。サイケデリックなバンド・サウンドと、アグレッシヴなデジタル・グルーヴが濃厚に融合した本作は、収録曲の約9割がフィーチャリング・トラックであることでも話題を呼んでいる。2000年代、ビート・カルチャーのカリスマとして君臨した彼らの展望とは? 来日したUNKLEの首謀者=ジェームス・ラヴェルに話を聞いた。
――UNKLEのジェームス・ラヴェルにとって、今もっともクリエイティヴな感性を刺激してくれるものは何ですか?
ジェームス・ラヴェル(以下、同) 「内に秘めているものを表現しなければならない……という葛藤はつねに抱えているけど、外的な刺激について考えることってあまりないな。ただ、僕の周りにいるギャビン・クラークといった優れたアーティストとのよい摩擦が刺激になり、音楽に反映されることはよくあるね」
――『ホエア・ディド・ザ・ナイト・フォール』のコンセプトは?
 「とくにはないんだけど、最近ひたすらに音楽を作り続けてきた中で、方向性みたいなものは自然と導き出された感じではある。やっぱり、パブロ(・クレメンツ)とのパートナーシップによって生まれた作品であることは間違いないね。だからこのアルバムは、オーガニックなテイストやアナログ感が出ていると思うんだ。前作はかなりきっちりとプロデュースされたアルバムだったけど、今回はよりラフで、バンド・サウンドをフィーチャーした作りになった。あと、女性ヴォーカルをかなり入れたのもポイントかな」



――今回はサイケデリックな要素もかなり前面に出ていますよね?
 「パブロも僕も、ここ数年はサイケデリック色が濃い音楽をよく聴いていたんだ。前作『ウォー・ストーリーズ』の続編を作ろうとしたわけではないし、何か新しい要素を取り入れたい、という思いからサイケなサウンドに接近したんだと思うな。僕は、前作でようやく『Psyence Fiction』の殻を打ち破ることができたと考えているんだけど、今回はその前作の殻を打ち破る音楽を作りたいという、その一心で取り組んだアルバムだね。あと、今まではアルバムに必要な分だけの曲を作っていたんだけど、今回はとにかくたくさん作って、その中からとりわけよいものばかりを選んで構成しているんだよ。だから、どの曲も独立した、濃い魅力を持っているんだ。サイケって、確実に今の社会的な背景にもハマる刺激がある。だから、最近の若いバンドも自然と取り入れているんだと思うよ」
――マーク・ラネガンや元サウスのジョエル・カドバリー、そしてオートラックスら豪華なゲストが多数参加していますが、中でも興味深かったのは、ドローンやストーナーロック・シーンで活躍するスリーピー・サンやブラック・エンジェルズといった、濃厚なアーティストが参加しているところでした。
 「まず重要なのは、僕が彼らを本当に愛しているということ。そしてチャレンジとして、まだファンベースを確立していないアーティストたちを、UNKLEを通じて世に知らしめたいということ。その2点から今回は彼らに参加してもらったんだ。最高のコラボレーションになったと思っているよ」
――『ホエア・ディド・ザ・ナイト・フォール』(訳:夜はどこへ落ちた?)というタイトルの真意は? 2000年代を経て感じる、何かしらの喪失感の表われなのでしょうか?
 「これは、“僕の過去”と“かつてのナイトライフ”はどこへ行った? という意味で、昔のワイルドな生活から、より生産性を上げて時間を大切にするようになった現在の僕の状況のことでもあるんだ。2003年くらいから、僕でも分からないくらい音楽業界がグチャグチャになった。ネットを通じてわずかな情報を通すだけで人が有名になれることで、セレブリティ・カルチャーが混乱していったんだ。ただいいこともたくさんあって、若い才能を持ったミュージシャンがリアルにインディペンデントな活動がしやすくなったよね。僕だってレーベルやスタジオを持って活動できる時代なんだから(苦笑)、悪いことばかりではない。ただ、複雑になりすぎてしまった状況から距離を置く、という自分の立ち位置を明確にしたようなタイトルでもある。みんなが思っているより僕は古いタイプの人間で、シンプルかつアナログなものが好きなんだよ(笑)。その意味では、このアルバムはまさにそういう作品だと思うね。それはつまり、音楽としてとにかくいいものが詰まっているってことだよ」
取材・文/冨田明宏(2010年3月)
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