アイドルイベントはもちろん、ロックフェスであろうと、いつでもどこでも絶対的にアツいライヴ空間にしてしまう最強のアイドルとして、日々スキルとマッスルを鍛えまくる
アップアップガールズ(仮)。8月には、富士山頂上に自力で登り〈アップアップガールズ(仮)富士山 山頂頂上決戦(仮)〉を敢行。登山客を巻き込むライヴを富士山のてっぺんで繰り広げたのも記憶に新しい。そんなアプガとプロレス団体
DDTのコラボレーションイベント第2弾〈アップアップDDT(仮)〜アイドル vs プロレス異種対バン戦Vol.2〜工場ライブプロレス〉が、さる10月29日、東京・昭和島の宮地鉄工所で行なわれた。
ここで、DDTとアプガのコラボの道のりをおさらい。まずは、DDTについて触れていこう。DDTは、プロレスとエンタテインメントをミックスさせた、いわゆるベーシックな プロレス団体とはひと味違うスタンスで活動してきたインディ団体。1997年の旗揚げ当初は、
北沢タウンホール、クラブなど小さな会場で試合を行ない、プロレス専門誌にも掲載されないという状態だった。しかし、アイディアを活かした試合、ユニークなストーリーラインなど、常に外に視野を向けた発想を持ち、プロレスファン以外の層も取り込んで徐々に団体の規模を拡大。2008年には両国国技館大会を行ない、旗揚げ15周年目の2012年には日本武道館へ進出。来年2月15日にはさいたまスーパーアリーナ・コミュニティアリーナでの大会開催も決定している。自由度の高い独自のブランド性を確立し、もはやメジャー団体にも引けを取らないほどの存在感を放っている。
アプガとDDTのつながりは、2012年9月の夏フェス『夏の魔物』のDDT路上プロレスに
仙石みなみが急遽参戦したのがファーストコンタクト。2013年8月に両国国技館で行われた『DDT万博〜プロレスの進歩と調和〜』では、“アイドルランバージャック4WAY”という試合に、
LinQ、
しず風&
絆〜KIZUNA〜、元
おニャン子クラブの
新田恵利(!!)とともに出場(他の試合では
BiSも参戦)。アプガ推しのレスラー、木高イサミのセコンドとして、7人はリング下に落ちた他のアイドル推しの選手にハリセン攻撃、
佐保明梨はリング上で
高木三四郎に得意の空手をお見舞いするシーンも見られた。
その試合からの発展形として開催されたのが、今年2月19日、新宿FACEでの『アップアップDDT(仮)〜アップアップガールズ(仮)vs ほもいろクローバーZ、アイドルvsプロレス異種対バン戦Vol.1〜』。そこでは、勢いづくアプガのライヴを阻止するために立ちふさがった
男色ディーノ率いる“ほもいろクローバーZ”と、木高イサミなどによるアプガサイドのレスラー軍(ディーノ軍の大石真翔も、実は
新井愛瞳推しでいきなりの寝返り加入)との抗争が勃発。新井愛瞳が黒いハットにメガホン姿の“将軍KYまぁな”となってアップアップマシン(仮)を操ったり、アンコールでは「アッパーカット!」を歌うアプガの前で、飯伏幸太が打点の高い場外ケブラーダを放つなど、出場全選手が入り乱れての大乱闘。この日限りの夢の空間が繰り広げられた。
そして、8月17日、DDT両国国技館大会〈両国ピーターパン2014〜人生変えちゃう夏かもね!〜〉(アプガも大石と「チョッパー☆チョッパー」を披露)で、アプガとDDTのコラボ第2弾、アイドル初の“工場ライブプロレス”が発表されたのである。
DDTは、これまでも商店街、書店、キャンプ場など、リングのない場所での路上プロレスを行なっており、宮地鉄工所での大会も今回で5回目。闇夜にライトで照らされる工場内は、鉄の塊、重機、溶鉱炉と、シチュエーションはもう完璧。すぐにでも
チャック・ノリスが銃撃戦を始めそうな雰囲気にゾクゾクさせられる。
アプガファン、DDTファンが詰めかけ満員となった会場に、アプガの「overture(仮)」が流れると、フォークリフトで高々と上昇したメンバーが入場。この日のステージとなるトラックの荷台(!)に飛び降りるのだった。「アップアップガールズ(仮)が立つ場所は、どんなときでもどんなところでも、すべてライヴハウスに変えてみせます!」と
関根 梓が言い放つと、まさにアプガは1曲目の「チョッパー☆チョッパー」から全力パフォーマンスで工場をライヴハウス化していく。佐保のハードなヘッドバンギングに合わせてトラックの荷台がグラングラン揺れたのは、彼女の破壊的すぎるパフォーマンスの凄みを伝えるのに充分な説得力があった。そして新井が、「私は群馬在住なんですけど、実は今日、群馬のおじさんが来てるんです。いつもより気合入ってるので、みなさんも大きな声を聞かせてください!」と語り、観客も大きな声で応えていく。ライヴが進む中で特に衝撃だったのは「ジャンパー!」。7人がジャンプを連発する振りで、荷台の揺れがまったく止まらないのだ。
佐藤綾乃はキャーキャー悲鳴を上げながらのパフォーマンス。しかもジャンプしすぎて落下寸前に恐怖の表情を浮かべる。これまでも、酸欠ライヴや野外の熱い鉄板のようなステージなど、過酷な状況でのライヴを行なってきたアプガだが、トラックのサスペンションがぶっ壊れる勢いの“揺れるステージ”で、新たな領域のパフォーマンス力を高めたことは間違いないだろう。
アプガのライヴもいよいよ最後の曲、といういい流れを分断するように男色ディーノらが乱入。だが、新井推しの大石真翔がアプガを守るためにまたもや寝返り。しかし無惨にも叩きのめされてしまう。そこに高木三四郎らが加わって、アプガ軍の高木、大石、平田一喜、DJニラ組 VS ディーノ、アントーニオ本多、諸橋晴也、伊橋剛太組の試合がスタート。8人の選手が入り乱れる、工場全体を使ってのエニウェアフォールデスマッチ状態となった。
会場の至るところで戦いが繰り広げられるグチャグチャな状況にも関わらず、メンバーもアプガ軍の選手を応援するべく駆け寄る。だが、非道リミットを外したディーノ軍は、ついにメンバーにも手を出す。関根はヘッドロックされ、
古川小夏はチョークスリーパー気味にがっちりホールドされる。そして、鉄の冷却に使われる表面温度200℃の石灰がたっぷり乗ったスコップを、ディーノと高木が奪い合う。2人のもみ合いのはずみで宙に舞った石灰が、佐保の頭から全身にドサッと直撃!! 怒り狂った佐保は、倒れたディーノをスコップでメッタ打ち。周りの選手、メンバーも止めに入るほどの狂気っぷり。その姿は、往年のイス大王・
栗栖正伸や、中牧昭二をイスでフルスウィングで叩き続けるケンドー・ナガサキを彷彿とさせる恐ろしさに溢れていた。
その後もメンバーは、アントーニオ本多が口から発射する水攻撃をくらったりと散々な目に。工場から飛び出し、リアルに路上で戦う状態になだれ込むと、今度は、高木の炭素ガス噴射がメンバーに誤爆。メンバーも選手も観客もドロドロになりながら試合は進む。佐保が諸橋に怒りの正拳をぶち込んだかと思えば、7人がトラックの荷台から水風船を選手に投げまくったりと、ますます状況は混沌としていく。だが、大石の「ギブ・ミー“アッパーカット!”!!」の声から、アプガがキラー・チューン「アッパーカット!」をパフォーマンス。関根がディーノにイス攻撃を加えたりと、戦況はアプガ軍に傾いていった。だがしかし、本気モードに突入したディーノが仙石みなみを捕まえ、フォークリフトを使っての男色ナイトメア(※自らの臀部を相手の顔面に押し付ける拷問技)を敢行。ディーノのケツのエジキになってしまうのか!? 絶体絶命状態の仙石。そのときマイクを握った新井が、「お前ら丸こげにしてやる! 助けて、群馬のおじさーん!!」と叫ぶと、なんと姿を現したのは、群馬出身、デスマッチの帝王、
ミスター・ポーゴ。ポーゴは、伊橋に狙いを定めると、豪快なビッグファイヤー! 会場全体から「ウォーーッ!!」という声が上がる中、すかさず大石が伊橋から3カウントを奪い、見事、アプガ軍が勝利を収めたのだ。
アプガのピンチを救ってくれた、“群馬のおじさん”ミスター・ポーゴは、アプガの戦う姿勢に共感し、ドキュメント・フォトブック『RUN! アプガ RUN!(仮)』にコメントを寄せてくれたこともある。アプガは、ポーゴにリスペクトを込めて「Burn the fire!!」をパフォーマンス。曲のラストには、ポーゴが曲に華を添えるように、再びのビッグファイヤーをメンバーの間近で放って、〈工場ライブプロレス〉は無事(!?)フィニッシュとなった。
カオティックでありながら、楽しさに溢れ、魅せるところはしっかりと魅せた〈工場ライブプロレス〉。どんな状況でも、エンタテインメントとして成立させることができるということを、今回の試合を通じてしっかりと身をもって学んだアプガ。最強かつ最凶のアイドルとして、11月30日から東名阪で開催される、〈アップアップガールズ(仮)ライブハウスツアー2014 ハイスパートキングダム〉への新しい武器をグンと増したことだろう。
DDTもアプガも、プロレス、アイドルのシーンで、下から這い上がってここまできたという経緯がある。アプガから見れば、DDTは一歩先を行くとてもいいお手本のような存在だ。お互いにシンクロする部分、シンパシーを覚えるところは多いだろう。このイベントが成功したのも、アプガとDDTの、オーディエンスを全力で楽しませる、ショーをしっかり魅せることへの姿勢が絶妙に合致しているからこそ、というのは強く感じた(もちろん、両者のファン、そして宮地鉄工所の関係者の理解もとても大きい)。
音楽のライヴにしろプロレスにしろ、非日常空間を体感することがたまらないエキサイトメントを呼ぶわけだが、通常のライヴやプロレスにさらにひとひねり加え、しかも両者の融合が想像以上のケミストリーを生んでしまう〈アップアップDDT(仮)〉。最高すぎる両者のコラボが、次はどんなものを見せてくれるのか。早くも期待してしまう!!
■ DDTプロレスリング高木三四郎大社長ミニ・インタビュー
――〈アップアップDDT(仮)VOL.2〉は、ものすごい展開でしたね。今回アプガと〈工場ライブプロレス〉を行なおうと思った経緯を聞かせてください。
高木 「アイドルとの路上プロレスは、6月にBiSさんと浅草花やしきで一緒にやらせてもらったのが最初なんですが、今回ご縁があってアプガさんとご一緒できることになって。花やしきも、宮地鉄工所もDDTの聖地みたいな場所なので、せっかくアプガさんとご一緒させていただくのであれば、聖地でやりたいなと思って。そうするとアプガさんは工場かなって思ったんです。彼女たちのムードと、工場の世紀末的なムードが思った以上にピッタリ合って、なかなかいい感じでスウィングしたんじゃないかと思います」
――最後にはサプライズでミスター・ポーゴ選手も登場しました。
高木 「新井さんのおじさんがポーゴ大王様だったなんて、僕も初めて知りました(笑)。でも、おじさんはさすがに強かったですね」
――全体通して内容の詰まったいい興行でした。『アップアップDDT(仮)』は、ぜひまた観たいコラボイベントだと思っています。
高木 「今回VOL.2なので、ぜひVOL.3もやりたいですね。アプガさんさえ問題なければ今後も続けていきたいです。次こそ地方に行きたいですね。ゆくゆくは〈アップアップDDT(仮)〉で7大都市ツアーをやりたいです」
――おぉ! 全国ツアーは面白そうですね。では、高木選手から見て、アプガというグループの魅力は、どういうところにあると思いますか?
高木 「彼女たちはすごく苦労してここまで来てるというのがあって、すごくDDTとリンクする部分があるんですよね。僕らも最初は100人ぐらいの小さな会場からスタートしたんですけど、彼女たちもハロプロエッグをクビになって、そこから這い上がってきてるわけですから。彼女たちからは“成り上がりたい!”という気持ちをリアルに感じますし、明らかに他のアイドルよりも貪欲ですよ。あと、お客さんをすごく大事にしていて、そこも僕らと共通してるところだと思うんですね。ビッグになっても彼女たちはお客さんのことを第一に考えて活動していくでしょうし、そういったところがアプガさんの魅力ですよね」
――これだけいろんなことに挑戦してるアイドルもいないと思うんです。今日も佐保さんが頭から石灰かぶったりして(笑)。
高木 「いや、あれは不可抗力ですから(笑)! 決してわざとじゃないですよ(笑)。今日は僕らも本当に楽しかったんで、次もぜひご一緒したいです」
取材・文・ライヴ撮影 / 土屋恵介(2014年10月)