日本人のピアニストとして最年少(12歳)でユニバーサル・ミュージックよりCDデビューを果たし、現在も世界的に演奏活動を展開するピアニストの
牛田智大。世界中を飛び回る多忙な日々のなか、2018年に開催された〈第10回浜松国際ピアノコンクール〉に参加し第2位を獲得、あわせてワルシャワ市長賞、聴衆賞を受賞し、さらに注目を浴びる存在となった。そんな彼が、2019年3月に最新アルバム『
ショパン: バラード第1番、24の前奏曲』をリリースした。
――牛田さんにとって7枚目のオリジナル・アルバムとなりますが、一人の作曲家にフォーカスしたものは初めてですね。
「まず
ショパンの『24の前奏曲』に取り組みたかったんです。この24曲のなかにはいろいろなスタイルやイメージ、要素が含まれています。それらの対比と、
ショパンの天才性に注目していただきたいという想いがあり、ほかの作曲家の作品との対比という要素は今回は入れませんでした」
――「バラード第1番」をカップリングされたのはなぜですか?
「『24の前奏曲』はショパンの人生そのものを描写するような比較的重いテーマをもつ作品なので、聴いてくださるかたをその世界に導いていけるような作品を置きたくて……。〈バラード第1番〉はまさにそれにふさわしい曲だと思いました」
――バラードは〈浜松国際ピアノコンクール〉の第2次予選でもお弾きになりましたね。コンクールで“超有名曲”を弾くというのは、かなりハードルが高かったかと思うのですが、いかがでしたか?
「そうですね。曲目提出の10分前まで悩みました(笑)。この作品は、聴き手の皆さんそれぞれの“理想形”があるので、それに合わないものを弾くとどうしても拒否反応がでてしまいますからね……。大変でしたが、やはり選んでよかったと思っています。今回の2次予選の課題となった佐々木冬彦さんの委嘱作品〈SACRIFICE〉が非常に悲劇的な作品なので、それにつながる、レチタティーヴォふうの、語り掛ける曲を入れたかったんです」
――牛田さんはコンクールに出場しているというよりも、各ラウンドを演奏家として、リサイタルを開くように臨まれているように感じましたが、やはり選曲へのお考えにもそれは表れていますね。ところで、牛田さんは〈ショパン国際ピアノコンクールin ASIA〉で5年連続優勝という快挙を成し遂げられているなど、ショパンとは長く、深く付き合っていらっしゃいますよね。
「ショパンの作品を通してフレージング、音色の作り方といったことを学びましたし、音楽観や感性にも大きな影響を与えてくれました。ピアノ演奏の基礎の部分をショパンで構築してきた感覚があります。もちろん、まだまだ克服すべき点がたくさんあるので、一生かけて取り組んでいきたいです」
――ショパンは多くの人に愛されるぶん、本当に多くの“理想像”がありますよね。牛田さんはどんな演奏を理想だと感じますか?
「ショパンの音楽には、二つの矛盾したものが存在すると思っています。明暗が同時進行したり、理知的な部分と即興的な部分が同居していたり……。バランスをとるのにすごく神経を使います。
シューマンほど即興的に弾けないですし、
ブラームスや
ベートーヴェンのようにカッチリと弾きすぎてもスタイルが失われてしまうのです。そのバランスのコントロールがピアニストの個性の見せどころになるんじゃないかなと思います」
©Ariga Terasawa
――演奏者の自由度が高くはないショパンの作品で個性を出していくには“音色”も重要になってくると思うのですが、牛田さんはショパン演奏に理想的とも思える美しい音色をどのように作られてきたのでしょうか? やはりロシアのピアニズムを習得されたことは大きいのでしょうか。
「ロシアのピアニズムでは、もちろんタッチも重要なのですが、じつはいちばん大切なのは“響きのバランスをどうとるか”なんです。もっとも大切なメロディと、それを色づける対旋律やハーモニー、それぞれをどの程度際立たせるとよいバランスができるか、そしてそのバランスをどう変えていくかによって、演奏の雰囲気が大きく変わります」
――それは意外でした。ロシアのピアニズムといえば、いかにタッチを工夫して音を作るか、だと思っていたので……。
「もちろんタッチによって大きく変わるのですが、ショパン作品の演奏では使えるタッチは非常に限られているんです。
ラフマニノフで使うようなタッチはけっして使えないですし、
ドビュッシーを弾くような柔らかいタッチを多用するのも違う。どちらかといえば古典派の作品を演奏するような感覚に近いです」
――メロディの歌わせ方も難しいですよね。
「そうですね。声楽的なフレージングが通用しないところが結構あります。病弱だったことも関係しているのか、あまり息の長いフレーズは出てこないですし、あった場合でも、そのなかで短いスラーによって分かれていたりします。また、同じメロディでも違う箇所で出てくると、この短いスラーの区切りが変わっていたり……。細かいイントネーションの変化は重要になってきますね」
――これだけショパンを深く愛し、理解されている牛田さんなので、ファンとしてはやはり、いずれは〈ショパン国際ピアノコンクール〉への期待が高まってしまいます!
「もちろんすべてのピアニストにとって重要なコンクールですし、視野には入れたいと思っていますが、現時点ではまだ考えられません。レパートリーを広げなくてはなりませんし、テクニックも磨かなくては……! いずれにしても、これからもショパンには集中的に取り組み、解釈を深めていくつもりです」
――これからもさまざまな場で牛田さんの演奏をお聴きできると思いますが、今後取り組んでいきたい作曲家はいらっしゃいますか?
「いままであまり弾いてこれなかったのですが、
シューベルトが大好きなので、ぜひいつかソナタなども含めていろいろと弾いていきたいと思っています」
取材・文 / 長井進之介(2019年3月)
■牛田智大ピアノ・リサイタルhttp://www.japanarts.co.jp/concert/concert_detail.php?id=7012019年3月21日(木・祝)
神奈川 横浜みなとみらいホール大ホール
開演 13:30
■ニューアルバム『ショパン: バラード第1番、24の前奏曲』発売記念
牛田智大 ミニコンサート&サイン会https://www.universal-music.co.jp/ushida-tomoharu/news/2019-03-13-event/2019年4月11日(木)18:30〜
東京 銀座山野楽器 本店7F イベントスペースJamSpot
対象商品: 2019年3月20日(水)発売『ショパン: バラード第1番、24の前奏曲』(UCCY-1096)
[ イベント参加方法 ]
上記対象商品を山野楽器CD / DVD取扱各店、オンラインショップにて、ご予約およびご購入いただいた方の中から、抽選でご招待券を差し上げます。
- 対象商品をご購入の際に「専用応募ハガキ」を差し上げます。(ご予約の場合、対象商品をお渡しの際に差し上げます。)ミニコンサート終了後、サイン会にご参加いただけます。サインはご購入のCDジャケットに直接させていただきます。当日忘れずにお持ちください。
応募締切日: 2019年3月31日(日)※当日消印有効 - ご当選者の発表は、ご招待状の発送をもって代えさせていただきます。
[ 注意事項 ]
- ご招待券1枚につき1名さまのご入場となります。
- 小学生以上からご招待券が必要となります。未就学児のご入場はご遠慮ください。
- 専用応募ハガキ、ご招待状を紛失、盗難、破損などいかなる場合でも再発行はいたしません。ご注意ください。
- 「専用応募ハガキ」の転売、譲渡は禁止とさせていただきます。
- 抽選の結果についてのお問い合わせにはお答えできませんのでご了承ください。
- やむを得ない事情で、開始時間やイベント内容は変更/中止となる場合がございます。