【ベスト・アルバム『VaniBest』発売記念対談】バニラビーンズ×杉作J太郎「バニビだJ」

バニラビーンズ   2010/09/24掲載
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『VaniBest』

 バニビ meets 杉J! バニビ・リサが熱狂的な杉作J太郎ファンであるということを受けて実現した今回の対談。人生の酸いも甘いも噛み分けた杉Jによる、目からウロコなバニビ論とは!? 何げに、いい話連発です。キーワードは“北欧から宇宙へ”。対談の最後にはあっと驚く電撃的展開も!


「現代の男子は杉作さんの『恋と股間』を教科書にすればいいのにと思ったんです」(リサ)
「ふ〜ん、読んでみようかな」(レナ)


リサ 「わたし、杉作さんの大ファンで。こないだ阿佐ヶ谷ロフトAのイベントで初めてお会いできたとき本当に嬉しかったです」
杉作 「ありがとうございます。そもそも僕を知ったきっかけはなんだったんですか? 僕が描いた漫画とか?」 
リサ 「いえ、漫画はまだ読めてないんですけど(笑)。吉田豪さんに、豪さんと杉作さんがロフトプラスワンで一緒にやってるトークショーの映像を観せてもらったのがきっかけです。それで、この人、めちゃくちゃ面白いなと思って。あと、杉作さんが書かれた『恋と股間』という本をファンの方にいただいて、読んだらすごく感動しちゃって。現代の男子はこの本を教科書にすればいいのにと思ったんです」
杉作 「教科書ですか。うれしいですねえ」
レナ 「これってどういう本なんですか?」
杉作 「恋愛というのは相手を求めることではなく、相手を思いやる気持ちだ、と。そんなようなことを書いています」
レナ 「あ、卑猥な本じゃないんですね」
杉作 「違いますよッ(笑)! 非常に真面目な本です」
リサ 「字も大きめだから読みやすいよ」
レナ 「ふ〜ん、読んでみようかな」
リサ 「本当にいいことがたくさん書いてあって。女のコにとっても、恋愛の参考になるんじゃないかな」
レナ 「(唐突に)でも杉作さんって、まだ結婚されてないんですよね」
杉作 「ええ、そうですよ……。でも、おふたりだって、まだ結婚してないでしょう?」
レナ&リサ 「はい、まだ(笑)」
杉作 「じゃあ似たようなもんじゃないですか(笑)! ちなみに、おふたりは今、おいくつなんですか?」
リサ 「北欧年齢で20歳ちょっとです」
レナ 「私たち北欧出身なんです」
杉作 「ええ、もちろん知ってます。今回のCD(『VaniBest』)からも北欧的な雰囲気を感じ取りましたし。爽やかな歌声にすごく心が洗われたというか。最初ビックリしたんですよ。あまりにも歌声が優しくて。素晴らしいんじゃないですか。これは売れますよ! シングルも入ってるんでしょ?」
リサ 「はい。ベスト・アルバムなんで(笑)。新曲も何曲か入ってますけど」
杉作 「あっ、これベスト・アルバムなんですか! そういえばタイトルにも“ベスト”って入ってますね。失礼しましたッ! あの〜、あれも良かったですね、付録で付いてた曲も」
リサ 「百人一首の曲(※注1)ですね」
レナ 「付録というか、ボーナストラックですね(笑)」
杉作 「そうそう、ボーナストラック(笑)。でも、バニラビーンズの歌は聴いてて嫌な気持ちにならない。殺伐とした今の時代、これは大事なことですよ。おふたりの歌声はどうしてこんなに自然で爽やかなんですか」
レナ 「なんでしょう。声量がないからですかね(笑)?」
杉作 「きっとセンスがあるんでしょうね。すごく落ち着いていて、地に足付いてる印象もありますし。アイドルとして、この境地はなかなか難しいでしょう。頑張ってテンション上げてない感じというか」
レナ 「これでも目いっぱい頑張ってるんですけど(笑)」
リサ 「そもそも、わたしたちあんまりテンション高くないんです(笑)」
杉作 「でも、単にワーッてやるのってすごく楽じゃないですか。そこがほかのアイドル・グループとの大きな違いですね。ふたりで喧嘩したりしないんですか?」
リサ 「しないです」
レナ 「セレブと貧乏人が互いを思いやってるんです(笑)」
杉作 「実に素晴らしいじゃないですか。(プロフィールを見て)レナさんはずっとアイドルを目指してたんですよね。モーニング娘。のオーディションを受けてたんでしたっけ?」
レナ 「はい。わたしモーニング娘。の大ファンだったんで。小学6年生の頃からモーニング娘。になりたくて4期から7期まで5回オーディション受けてます(注2)」
杉作 「はぁ〜、長い道のりだったんですね。その頃も北欧に住んでたんですか?」
レナ 「はい(笑)。大きい湖がある場所です」
杉作 「ああ、滋賀県の信楽って紙資料に書いてありましたね(笑)。信楽はタヌキの焼き物で有名なんですか」
レナ 「はい。わたしもバイトでタヌキの焼き物を売ってました」
杉作 「いたいけな子どもが山深い田舎で、タヌキの置物を売りながらアイドルを目指していた──なんか水木しげるさんの漫画みたいですね。いい妖怪が出てくる回ですよ」
レナ 「ははは」
杉作 「でも、どうします? そのときのタヌキがレナさんの夢を叶えるために今、頑張っているとしたら」
レナ 「えっ! あのときのタヌキが(笑)」
杉作 「そうですよ。もしかしたら、あなた今も信楽の森の中にいるのかもしれませんよ」
レナ 「わたしタヌキにばかされてるんですかね(笑)。今、夢の中なのかな……」
杉作 「ここにいる全員タヌキかもしれませんよ。もしくはリサさんがタヌキだったりね。僕は事情をよく知りませんが、最初のメンバーがやめてしまったとき(注3)、リサさんがあなたのことを助けてくれたのも……ね」
レナ 「あ!」
リサ 「私がタヌキだったんだ(笑)」


杉作 「いい話だよね〜。リサさんにとっては、いい話でもなんでもないですけど(笑)」
リサ 「わたしは、どっちかというと、タヌキに騙されて連れてこられたほうなんで(笑)」
杉作 「もともと、アイドルには全然興味なかったんでしたっけ?」
リサ 「はい。もともとモデルになりたくて。社長にモデルの仕事ができるよって連れてこられたんですけど、入ってみたら全然話が違ってて。すごくビックリしました(笑)」
杉作 「でも、今こうして自分の歌とか聴いて、うれしくないですか?」
リサ 「はい。うれしいです。家族も喜んでるし」
レナ 「一時期、リサのお母様がバニラビーンズのCDを全部買い占めちゃってたんですよ。それで店頭からCDがなくなっちゃって。リサの実家はお金持ちなんです」
杉作 「セレブだとは聞いてたけど本当にお金持ちなんですね。そうすると、リサさんはある意味、夢が持ちにくい環境で育ったわけだ。すべてが満たされていて」
リサ 「そうかもしれないです」
杉作 「コンプレックスとかなかったんじゃないですか?」
リサ 「えー、ありますよ全然」
杉作 「じゃあ具体的には?」
リサ 「具体的には……ないですね(笑)。やっぱ、ないかも」
杉作 「今までやりたかったことってモデルぐらいですか?」
リサ 「あとは海外で暮らしたいなとか。小さい頃からお正月を毎年ハワイで過ごしてたんで」
杉作 「アイドルとして売れることと、海外で暮らすことと、今の夢はどっちなんですか?」
リサ 「もちろんアイドルとして売れることです。海外で暮らすことは、いつでもできるかなって。バニラビーンズは今しかできないんで」
杉作 「なるほどねぇ。話がわかってきましたよ。つまりあなたは今、お金で手に入らないものがあることを身をもって実感してるわけですよ。きっと、そこに充実感を見出しているんでしょうね」
リサ 「あ。たしかにそうかもしれない。すごい!」


「おふたりは時代のメッセンジャーですよ。言うならば宇宙からのメッセージです!」(杉作)




レナ 「わたし、杉作さんにぜひともお聞きしたいことがあって」
杉作 「ええ、なんでしょうか」
レナ 「こないだ、とあるトークイベントに出演したんですが、そのときのトークテーマに “20代と40代の恋愛”というのがあって。そのことについて杉作さんにお話してもらいたいんですよ。今、若い女のコが若い男のコにときめかなくなってるみたいで」
杉作 「まあ40代の男性が20代の女性にときめくっていうのは、これは昔からあることです。我々、60になろうが80になろうが20代の女性にはときめくわけでね」
レナ 「20代と30代の女性は全然違いますか?」
杉作 「全然違いますよ。やっぱり20代っていうのは人生でいうと夏休みが始まった直後ぐらいなんですよ。ところが40代になると夏休みがそろそろ終わりそうな気分になってくる。で、夏休みの終わりそうな男が、夏休みが始まったばかりの女性に恋をするんでしょう」
レナ&リサ  「あ〜」
杉作 「だから、どことなくチグハグしてるんですよ。男はもう時間がないし、女はまだ時間がたっぷりあるから。なんとなくチグハグしてるんだけど、僕が思うに40代の男性と20代の女性の恋愛が流行るっていうのは、今の時代において、そのチグハグ感が楽しいんでしょうね。同い年同士の男女が“僕たち何から何まで気が合うね”って惹かれあう時代もたしかにあった。でも今は世の中自体がチグハグしてるから男女の恋愛だって、雰囲気もリズムも全然違うぐらいの方が燃えるんじゃないですか」
レナ&リサ 「なるほど〜」
杉作 「バニラビーンズのおふたりもね、先ほどお話ししてもらったとおり、キャラクターも育ってきた環境も全然違うわけでしょう。昔は共感の時代だったのが、今は、まったく違う価値観を持つ人間同士が思いやりをもって惹かれあう時代なんです。つまりね、あなたたちバニラビーンズの時代が来たというわけですよッ!」
レナ&リサ 「お〜! パチパチパチ(拍手)」
杉作 「上手くまとまりましたね」
レナ 「すごい」
リサ 「感動しました!」
杉作 「今はまったくそういう時代ですよ。お金持ちと貧乏人が喧嘩をする時代は終わった。ちょうど今公開されてる映画『機動戦士ガンダム00』もそういうストーリーになっているんです」
レナ 「は〜、そうなんですか」
杉作 「今までのガンダム・シリーズは地球人同士、持つ者 / 持たざる者の争いが繰り広げられてきましたけど、今回ついに『ガンダム00』では敵が宇宙人になりましたから。地球人同士、力を合わせて宇宙人と戦うっていう。お金持ちだとか貧乏人だとか、そんなことはどうでもいいじゃないかっていうね。だから、おふたりは時代のメッセンジャーですよ。言うならば宇宙からのメッセージです!」
リサ 「壮大すぎる(笑)」
杉作 「すいません。自分で言っときながら、まったく意味がわからないですけど(笑)」
(ここで杉作の携帯からメールの着信音が鳴る)
レナ 「宇宙からのメッセージだ(笑)」
杉作 「ええ、そうです。宇宙からのお告げが届きました」
レナ&リサ 「(爆笑!)」
杉作「あなたたちの歌は、宇宙からの、未来からの、過去からの、あらゆるもののメッセージなんですよ。それを多くの人たちに伝えていく義務があるんじゃないですかね。今日お話して、なんだかそんな気がしてきました。そして僕は頑張って長生きして、ふたりの歌声をいつか宇宙で聴いてみたいですね。“宇宙でバニラビーンズに会おう”とか、将来的にそういうキャンペーンはどうですか?」
リサ 「いいですね〜」
レナ 「宇宙でビンタ会とか(笑)」
杉作 「だって宇宙が似合うアイドルなんてめったにいませんよ。全盛期のモーニング娘。とバニラビーンズぐらいなんじゃないですか。キーワードは“北欧から宇宙へ”ですよ」
レナ 「せっかくなんで、キャンペーンでこんなことやったらいいんじゃないかみたいなアイディアとか、ほかにいただけないですか? 今までわたしたちビンタ会とか完全防護ハグ会とかいろいろやってきたんですけど」
杉作 「そうですねえ。キャンペーンとはちょっと違いますけど、ちょうど今、僕が主宰してる男の墓場プロダクションで映画を作ってるんですけど、ゆくゆくアニメも作りたいんで、その主題歌とかね」
レナ 「え〜、うれしい! 新曲歌います」
リサ 「ていうか、わたしたちも墓場プロに入れてください」
杉作 「え! 入ります?」
レナ&リサ 「入りた〜い」
杉作 「(マネージャーC葉女史に)いいんですか?」
マネージャーC葉 「はい(笑)」
杉作 「今入ったら、女性で墓場プロの名刺持ってるの2組目ですよ。1組目は原紗央莉さん。でも名刺作るのに千円必要なんですけど」
レナ 「千円ぐらいだったら大丈夫です(笑)。わたしお芝居の仕事もしたいんですよ」
杉作「そうしたら今、撮ってる映画に出ます?」
レナ 「出る出る!」
杉作「こないだも下町映画祭で予告編を流したんですけど、すごく評判がよくて。出てくださいよ。女性はまだ3人しか出てないから目立ちますよ。誰の役でもいいです。もちろんバニラビーンズの役でもいいですし」
リサ 「役が選べるんですか?」
杉作「選べます(即答)。吾妻ひでおさんの『チョコレート・デリンジャー』という漫画が原作で、何が起きてもおかしくないようなストーリーなんで。だからどんな役でも全然違和感ないです」
レナ 「じゃあ、できるだけおいしい役をお願いします」
杉作「わかりました。今度、正式にオファーしますんで。いや〜、今日はおふたりにお会いできて本当によかった」
レナ&リサ 「私たちもです!」




取材・文/望月哲(2010年9月)
イラスト/杉作J太郎
撮影/相澤心也


【注釈】
注1:百人一首にメロディを付けたau by KDDIのラジオCM曲。『VaniBest』にボーナストラックとして4ヴァージョンが収録されている。

注2:モーニング娘。7期オーディションは2回開催されている。

注3:初代メンバー・リカがデビュー約半年後の2008年3月に脱退している。


【杉作J太郎 Profile】
1961年、愛媛県生まれ。82年に漫画家としてデビュー。その後、雑誌『平凡パンチ』編集者などを経て漫画を筆頭に文筆、俳優、テレビのコメンテーターと多彩な活動を展開。2003年には“L.L. COOL J太郎”名義でヒップホップCD『プッチRADIO』をリリース。また同年、映画制作プロダクション“男の墓場プロダクション”を設立。『任侠秘録人間狩り』『怪奇!!幽霊スナック殴り込み!』の脚本・監督にあたる。現在、吾妻ひでおの名作漫画『チョコレート・デリンジャー』の完全実写化を目指し鋭意制作中! 

■男の墓場プロダクション オフィシャル・サイト
http://www.otokonohakaba.com/


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