たった一枚のEP
『Life of Leisure』で、チルウェイヴ、あるいはグローファイと称される音楽を一挙に世に広めた男、
ウォッシュト・アウトがついに1stアルバムをリリースする。幾重にも重なるシンセの作り出す深いアンビエンス、シンプルなビート・メイキング、それから気だるいヴォーカルが、白昼夢を見ているかのようなサイケデリアを描き出す。米ジョージア州出身の28歳、ウォッシュト・アウトことアーネスト・グリーン。彼はどのように
『ウィズイン・アンド・ウィズアウト』を生み出したのだろうか。
(C)Will Govus
――ライヴはバンド編成ですが、制作ではプログラミング・ベースの音楽を選んだ理由は何でしょう?
アーネスト・グリーン(以下同)「ヒップホップが好きで、反復の多い曲が好きだったんだ。だからプログラミングのほうがずっと簡単だった。たしかにライヴではバンドで演奏している。一人でライヴをしていた時もあるんだけど、“もっと動きたいな”と思うようになってメンバーを入れることにしたんだ。そのほうが人を楽しませることができるからね。アルバムにはバンドを想定したアイディアも取り入れてみたよ」
――『ウィズイン・アンド・ウィズアウト』はダンス・ミュージックのフォーマットを使用していますが、結果的にはポップスに仕上がっていると思います。『Life Of Leisure』よりもポップ・ソング寄りのものにしようという意志があったのでしょうか?
「このアルバムに関しては、間違いなくダンス・ミュージックの影響が混ざったポップ・レコードを作ることを想定していた。クラブ中心の音楽ではよくあることだけど、ビートをメインするとトラック中のほかのサウンドを押し潰してしまう。そうなると自分が表現したい微かな感情のシグナルが消されてしまうんだよね。僕は自分が受けたすべての影響をこのアルバムにバランスよく取り入れたかった。いわゆるダンス・レコードやヒップホップ・レコードといった偏ったものは作りたくなかったんだ」
――アメリカでは<SubPop>、イギリスでは<Domino>からのリリースとなります。<Mexican Summer>からリリースした時と制作へ臨む思いに違いはありましたか?
「僕はずっと両方のレーベルのファンで、そのどちらもが2010年の2月か3月頃、同時に僕の音楽に興味を示してくれたんだ。でも契約を結ぶより先にアルバムを完成させたいと考えていた。アルバムが完成するまでどちらも我慢強く待ってくれたんだ。2009年にEPをリリースしてからはかなり忙しかった。ツアーも多かったし、アルバムのためのアイディアやいろいろなサウンドを試すのにも沢山の時間を費やしたしね。あの頃を振り返ると、EPの成功で何かを克服できたプラスの気持ちと、次作への不安といったマイナスの気持ちが混在したような状況だった。だからEPのときとは違って、アルバムを作ることへのプレッシャーは少なかったとはいえ確実に感じていた。でも最終的にはそのプレッシャーがベストな作品を作るのに役立ったと思っているよ」
(C)Will Govus
「作業は想像していたよりずっとスムーズに進んだよ。ベンは僕の音楽のファンで、“一緒に作らないか”と彼からアプローチしてきてくれたんだ。だから彼は、僕が何を求めているかを本当によく理解していた。僕が今どんなタイプのサウンドにハマっているかについて沢山話もしたよ。自分がこのレコードを作るのに影響をうけたYouTubeのビデオの長いリストまで送ったりしたんだ」
――仕上がったアルバムをご自身で聴いてみて、どんな感想を持ちましたか?
「ホッとしたね。フルレングスのレコードを作ったことがなかったから、最初の時点では本当に手強い課題だった。曲を書くのが本当に大変だったんだよ。今回の作業で沢山のことを学んだから、次の作品を作るのが楽しみなんだ」
――制作時に聴いていた音楽、最近お気に入りの音楽を教えて下さい。
取材・文/南波一海(2011年6月)
<FUJI ROCK FESTIVAL'11>出演決定!7月29日(金)〜31日(日)
会場:新潟県・苗場スキー場
Washed Outは29日(金)に登場!
詳細:FUJI ROCK FESTIVAL'11[URL]
www.fujirockfestival.com/