日本のケルト音楽ファンにとって年の瀬の風物詩となっている一大イべント〈ケルティック・クリスマス〉。12月5日に東京・すみだトリフォニーホールでおこなわれる今回は、いつもにも増してアイリッシュ三昧だ。名実ともにシーンの頂点に立つ
アルタン と、最強ライヴ・バンドの評価も堅い
ダーヴィッシュ 、そして、ここ数年もっとも熱い注目を集めてきた若手グループ、
ウィ・バンジョー・スリー (以下 WB3)という鉄壁のラインナップである。とくに、日本ではまだあまり知られていないWB3のパフォーマンスは、観客の度胆を抜くこと必至か。
WB3は、欧米メディアで“バンジョーの魔術師”と謳われるエンダ・スカヒルが中心になり、ゴールウェイを拠点に2009年から活動してきた4人組(2組の兄弟という珍しい編成)だ。曲によっては4人中3人がバンジョーを弾くなど、つねにバンジョーがアコースティック・アンサンブルの主役になっている。ブルーグラスやアパラチア系オールドタイミー・ミュージックとアイリッシュ・トラッドを巧妙に掛け合わせた、いわゆる“ケルトグラス”の手法を今もっともポップな形で追究しているのが、このWB3だと言っていいだろう。以下、エンダとのインタビューから。
――ゴールウェイ郊外の出身ですが、家庭内及び地域の文化的環境はどんな感じだったんですか。
「僕ら兄弟の育った村ではアイリッシュ音楽はそんなに盛んじゃなかったけど、亡き父は伝統音楽に強い関心を持ち、村で初めてアイルランド音楽家協会の支部を設立したんだ(アイルランド音楽家協会は同国伝統音楽の推進や保存を目的とする国家団体)。父は楽器演奏のレッスンや我が家でのセッション、全国大会へのグループの出場などをオーガナイズし、素晴らしい演奏家をたくさん輩出した」
――あなた自身は?
「5歳で入った地元の小学校では、生徒全員にティンホイッスルをくれて、伝統音楽の基礎を教えてくれた。その後8歳でバンジョーを始めた。父は、いい先生を探して僕ら兄弟をあちこちのレッスンに連れて行ってくれたよ」
――なぜフィドルやアコーディオンではなく、バンジョーだったんですか。
「学校の音楽の先生がある日、こう訊いたんだ。“誰かバンジョーを弾いてみたい子はいる?”って。僕はすぐに手を挙げた。あの時先生が“バグパイプを吹きたい子はいる?”じゃなくてよかったよ。僕は手に取った瞬間からバンジョーを大好きになったし、いつも練習を楽しんでいた。11歳からは、演奏でギャラももらうようになり、18歳までの間に大きな大会で4回優勝した。でも、変な話だけど、僕は優勝するたびに資格を失っていたようにも思う。なぜなら、僕はどんどん伝統音楽の境界を押し拡げることに強く惹かれていったから。1998年に大学を卒業し、2000年にソロ・デビュー・アルバム
『Pick It Up』 を発表した」
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――WB3結成当初のバンド・コンセプトは?
「ソロ・アルバム発表後の約10年間、ブロック・マクガイア・バンドの一員として活動していた頃に米国南部をツアーして、初めてブルーグラスと出会った。すぐにその魅力にとりつかれ、バンジョーを使ったサウンドの可能性をもっともっと広げてゆきたいと思った。それがWB3の結成につながったんだ。バンジョーはミンストレル・ショウ、オールドタイミー、ディキシーランド、ラグタイム、スウィング・ジャズ、ブルーグラス、そして今やアイリッシュ音楽にまで大きな影響を及ぼしている。僕はそれらの音楽すべてを開拓したいんだ」
――バンジョーは、近年のケルト音楽シーンにおいて、どのような貢献をしてきたと思いますか。
「アイルランドでは、バンジョーは長い間、純粋な伝統音楽に完全に受け入れられていたわけじゃなかった。いい指導方法や教師が足りなかったせいもあり、貧相な演奏が多かったんだ。バンジョーは音が大きく、パーカッシヴな楽器だ。だから下手に弾くとセッションの邪魔になるんだよ。でも、ここ20年くらいは全体的な演奏水準が著しく上がった。たくさんのバンドがバンジョーを使い、より広い音楽コミュニティの中で認知されるようになった。今では伝統音楽シーンでもかなり尊重されている」
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――パンチ・ブラザーズやキャロライナ・チョコレート・ドロップス、 サム・アミドン など、米国でも近年バンジョーを使った新しいフォークが活性化していますよね。 「多くの人々にとって、バンジョーのサウンドは、もっと生活がシンプルで幸せだった時代のエッセンスを感じさせるんじゃないかな。テレビCMなどでも、よく、バンジョーの音楽をBGMに幸せな人々の田舎のシンプルな生活が描かれていたりする。ルーツ・ミュージックは今ではとてもポピュラーだし、バンジョーは究極のルーツ楽器でもある。また、聴く者に
ピート・シーガー みたいな人を思い起こさせたりもする。彼は世界にたくさんの幸せを振りまいたよね」
――WB3の表現の、ほかのバンドにない魅力は何だと思いますか。
「僕らは、音楽的技巧とエネルギッシュで楽しいパフォーマンスを結びつけることを強く意識してきた。素晴らしい演奏技術を持っていても、時としてエンターテインすることを忘れてしまうバンドは少なくない。あるいは、ものすごいエンタテイナーなのに演奏はイマイチだったりというバンドもある。僕らは、優れた演奏家であることと優れたエンタテイナーであることを両立させたいんだ。実際、それが僕らがほかと違う最大のポイントだと言ってくれる人は多い。僕らのサウンドはとことんアコースティックだけど、同時にとても力強く、リズミカルでもある。いまだにドラムを使わないけど、強いビートを持ち、歌とサウンドを一体化している。アイリッシュ・ミュージックとアメリカン・ルーツ・ミュージックの結びつけ方にも、僕ら独自のスタイルと手法があると自負しているんだ」
■ 2015年12月2日(水)セッション・パーティ 東京 青山
CAY 開場 18:00 / 開演 19:00 前売 5,500円(税込 / 別途ドリンク代) 出演: アルタン / ダーヴィッシュ / ウィ・バンジョー・スリー / ジョン・ピラツキ&キャラ・バトラー ※お問い合わせ: プランクトン 03-3498-2881 ■ 2015年12月3日(木)ケルティック・クリスマス in 兵庫 兵庫
兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール 開場 18:00 / 開演 19:00 前売 A席 3,000円 / B席 1,000円(税込) 出演: ダーヴィッシュ / ウィ・バンジョー・スリー / ジョン・ピラツキ&キャラ・バトラー ※お問い合わせ: 兵庫県立芸術文化センター 0798-68-0255 ■ 2015年12月5日(土)ケルティック・クリスマス2015 東京
すみだトリフォニーホール 大ホール 開場 16:30 / 開演 17:15 前売 S席 6,500円 / A席 5,000円 / B席 4,000円(税込) 出演: アルタン / ダーヴィッシュ / ウィ・バンジョー・スリー / ジョン・ピラツキ&キャラ・バトラー ※お問い合わせ: プランクトン 03-3498-2881 ■ 2015年12月10日(木)ウィ・バンジョー・スリー特別公演〜バンジョーと三味線の出会い〜 東京
三鷹市公会堂 光のホール 開場 18:30 / 開演 19:00 前売 4,500円 / マークル会員 4,050円 / 23歳以下 3,500円(税込 / 未就学児入場不可) ゲスト: 上妻宏光 ※お問い合わせ: 三鷹市芸術文化センター 0422-47-5122(10:00〜19:00 / 月休) ■ 2015年12月13日(日)「We Banjo 3」単独公演 福岡
住吉神社 能楽殿 開場 16:30 / 開演 17:00 前売 5,000円 / 当日 6,000円(税込) ※お問い合わせ: 日本ケルト協会www.celtic.or.jp ■ 「ウィ・バンジョー・スリー x ハンバートハンバート」 〜うたとバンジョーとバイオリン〜 ・ 2015年12月8日(火) 大阪 梅田
CLUB QUATTRO 開場 18:00 / 開演 19:00 前売 4,800円(税込 / 別途ドリンク代) 出演: ウィ・バンジョー・スリー / ハンバートハンバート ※お問い合わせ: プランクトン 03-3498-2881 ・ 2015年12月9日(水) 愛知 名古屋
CLUB QUATTRO 開場 18:00 / 開演 19:00 前売 4,800円(税込 / 別途ドリンク代) 出演: ウィ・バンジョー・スリー / ハンバートハンバート ※お問い合わせ: プランクトン 03-3498-2881 ・ 2015年12月11日(金) 東京 渋谷
CLUB QUATTRO 開場 18:00 / 開演 19:00 前売 4,800円(税込 / 別途ドリンク代) 出演: ウィ・バンジョー・スリー / ハンバートハンバート ※お問い合わせ: プランクトン 03-3498-2881 ・ 2015年12月12日(土) 埼玉
所沢市民文化センター ミューズ マーキーホール 開場 14:30 / 開演 15:00 前売 4,300円 / ミューズメンバー 3,800円(税込 / 全席指定 / 未就学児入場不可) 出演: ウィ・バンジョー・スリー / ハンバートハンバート ※お問い合わせ: ミューズチケットカウンター 04-2998-7777