洒脱で洗練された英国的ポップネス――幸せと悲しみのコントラストを描いたワークシャイのニュー・アルバム

ワークシャイ   2011/02/22掲載
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洒脱で洗練された英国的ポップネス――幸せと悲しみのコントラストを描いたワークシャイのニュー・アルバム
 すうっとわき上がる英国的なポップネスやソウルネス。洒脱とか洗練とかいった形容が冠されることも多い、そんな都会的表現を送り出すワークシャイはヴォーカルのクリスタ・ジョーンズとサウンド作り担当のマイケル・マクダーモットからなるデュオ・ユニットだ。彼女たちは3年ぶりとなる新作『Bittersweet』を発表し、4月には来日も決定。今回、質問に答えてくれたのはクリスタ・ジョーンズ。彼女によれば、新作は大きな転換期を経ての新規蒔き直し作であるようだ。
――今年で結成25年目となりますが、そもそも結成当初はどういう音楽をやりたかったのでしょう?
クリスタ・ジョーンズ(以下、同)「お互い、好きなものと嫌いなものの趣味が共通していたので、好きなものを集めて、好きでないものを排除していったの。私たちはソウル、ファンク、ジャズ、(バート・)バカラックといったものが共通して好きだったので、それを私たちなりのやり方でハイブリッドにやりたかった」
――これまでで、ターニング・ポイントと思えることはあったりするのでしょうか?
 「マイケルが(『スマイル・アゲイン』のレコーディングを終えたその日に)事故に遭ったことをご存知かしら? かなりの大事故で、大怪我をしたのよ。だから、あれが間違いなくターニング・ポイントだったと思うわ。生きているのがどんなに大事なことかが判ったんですもの。今作はその事故以来初めてのアルバムなので、前作よりも考えさせられる内容、もっとずっと深くて、少しダークでコントラストの強い作品になっているわね。幸せと悲しみ、生と死、苦々しさ(bitterness)と甘さ(sweetness)との対比が多い。アルバム・タイトルの『Bittersweet』は、人生そのものを表わしている。苦いと同時に甘くもあるということね」
(C)Photo by Euan Danks
――今作は3曲も他者の曲を取り上げています。そうなった理由は?
 「どれも、それぞれに違うわよね。ラヴァーズ・ロック(レゲエ)の〈シリー・ゲームズ〉、ビョークの〈ヴィーナス・アズ・ア・ボーイ〉、それから〈ウィル・キープ・ストライヴィング〉(米国R&B歌手、ララの87年曲)と、どれもとても傾向が違うわ。ジャンルの違う曲をところどころに入れて、私たちのスタイルをちょっとお休みさせたかったのよ。私たちはカヴァー曲をやるのが好きなので、選曲には苦労した。できれば(候補に挙げた曲を)全部やりたかったんですもの!(笑)」
――それらの原典はどれも女性が歌った曲ですが、やはり女性が歌った曲の方がカヴァーしやすいですか?
 「そうだと思うわ。考えたこともなかったけど、女性の曲の方に共感できるんでしょうね。でも、お風呂の中でデヴィッド・ボウイの曲を歌うのは好きよ(笑)」
――オリジナル曲の方は、近年書かれたものですか?
 「そうよ。私たちは何曲か一気に書き上げるの。昔は、それぞれ曲を書いてそれを持ち寄っていた。でも最近は、とくに私には子供たち(11歳と9歳)がいるし、マイケルはスタジオで作業することが多いので、彼がコード・パターンを考え、私がメロディを考えることが多いわね。歌詞は、2人で一緒に考えるの」
――英国人らしさ、ということに、音楽を作っていて留意することはありますか?
 「自然とそうなっているんでしょうね。私たちはアメリカの音楽に影響を受けているけど、イギリス英語のアクセントで歌っているので、何をやっても、英国らしさが出てしまうんでしょう。それに、礼儀をわきまえているところが洗練されていて、ある意味控えめなの。ドタバタやっているのではなくて、テーブルに穏やかに座っている感じ(笑)。それが英国らしさに繋がっているのかもしれないわね」
――ポップ・ミュージック界の喧騒から少し離れ、じっくりと自分たちの表現を作り、アルバムを出したいときに出す。そんなあなたたちに触れて、うらやましいスタンスで音楽活動をしている、と感じる人は少なくないと思います。それについての感想は?
 「ありがとう。でも、私たちはこのやり方でしかやれないのよ。いいものを作り続けるには、つねに自分たちが本当にやりたいことをやるしかないの。どうすればお金持ちになれるか、どうすればヒットするか、とかいうことではなくね。私たちはこういうやり方でやってきたかったのよ」
取材・文/佐藤英輔(2010年12月)


ワークシャイ ジャパン・ツアー2011

4月8日(金)9日(土)
ビルボードライブ東京
お問い合わせ:03-3405-1133

4月11日(月)
ビルボードライブ大阪
06-6342-7722

※チケット予約はビルボードライブの公式サイト(http://www.billboard-live.com/pg/shop/show/index.php?mode=detail1&event=7614&shop=1)まで。
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