“平成生まれ昭和育ち”のロックンローラー、山下大悟がソロとして始動

山下大悟   2016/12/15掲載
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 “平成生まれ昭和育ち”という触れ込みで、自身が結成したJEANAをはじめロックンロール界隈を中心に広くバンド活動をしてきたJOHNNYが、本名である“山下大悟”としてソロ・デビュー・アルバム『JOHNNY』を12月7日(水)にリリース。王道のロックンロールを鳴らし続けるプロジェクト=“JOHNNY”として今なお海外ツアーなども敢行する彼がこのアルバムで挑んだのは、ビートロックの影響も色濃くうかがえる、現代的ともいえる骨太なロック。どのようにして今回のアルバムが作り出されたのか、12月16日(金)に渋谷GARRETで行なわれるレコ発ライヴを目前に控えた彼に話を聞きました。
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――2011年にJEANAのフロントマンとして『Jeana For Young』でデビューされていますが、そこにいたるまではどういう活動をされていたんですか?
 「高校のときはベーシストとしてコピー・バンドやったりとかしてましたね。18、19くらいで東京に出てきて、そこから歌い始めて、JEANAの形になった」
――ロックンロールをやるようになったルーツみたいなものはどこにあるんですか?
 「BOØWYとかキャロルとか。矢沢永吉さん、氷室京介さん、布袋寅泰さん……日本のロックを代表する人たちに憧れて、それを追いかける一心ですね」
――中高生くらいから、そういう音楽に触れて?
 「はい。たまたま出会って、雷に打たれたような感じで。それからずっとです」
――楽器を手にしたのは?
 「高校入ってからですね。当時もBOØWYとかはやってたんですけど、最初はパンクやったりいろいろやってましたね」
――いわゆるロックンローラーみたいな人への憧れがありながら、最初に手にしたのがベースっていうのがおもしろいですね。ギターに行くのが普通ではあるような。
 「基本的にひねくれてるんですよね(笑)。正攻法ではいかないというか。布袋さんにはギターでは叶わないかなって思って、あわよくばベースで隣に並ぶ、くらいのことを考えてました。あとはベースってなんか派手だし、大きいから」
――ははは(笑)。JEANAとしてデビューして以降は、BLACK SHADOWをはじめいろんなバンドに参加されてましたよね。
 「JEANAのときにいろんな先輩に面倒みていただいたりして、そこから広がっていった感じですね。修行のために、というか」
――ロックンロール界隈を中心にかなり多彩な活動をしてきて、そこから今回ソロとしてデビューするきっかけになったのはどういう部分なんでしょうか?
 「きっかけは……いちばんは氷室さんがライヴ活動を引退したことですね」
――これまでのキャリアから考えると、やっぱりキャロル〜マックショウのようなスタイルをイメージしてしまうのですが、骨太のビートロックを中心に挑んだ今回の作品はその影響が大きいんですね
 「本当に自分がやりたいことをあらためて考えたんです。ずっとロックンロールをやってきたけど、もともとはBOØWYとかにも影響を受けているので。ちゃんと自分の音楽を出したい、隠してる必要もないかなと思って」
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――別にロックンロール自体が嫌になったわけではなく。
 「縛られてた部分はあるかもしれないですけどね。どっちも自分なので、それを出せないのは嫌だな、と。だから今回は、これからに向けて全部を出した感じです。そこから方向性が定まるかなって。ロックンロールをやっている“JOHNNY”から“山下大悟”への過程の作品のような」
――なるほど。Twitterのタグ“#私を構成する9枚”をブログで公開していたときは、レッド・ホット・チリ・ペッパーズ『BY THE WAY』をあげたりしていましたよね。
 「そうなんですよ。いろいろな音楽に触れてはきていて、フリーのベースも弾けます(笑)。意外みたいなことは言われるんですけど。今回は裸の状態から始まるので、いろんな世代の人にヒットする曲を作って、広く知ってもらうのがいちばんかなと思って」
――とくにロックンロールをやっている/聴いている人は、言い方はあまり良くないですが、新しいものを求めてない部分もあると思うんですよね。おなじみのリフとか進行とか、そういうベタなフレーズにこそ魅力があるわけで。
 「もともとは自分もそうだったんですよ。でも、それだとどこまでいっても現状維持だし、おもしろくないなって。いい意味でも悪い意味でも反面教師の人が多いかもしれない。そういう部分も含めて、ジャパニーズ・ロックンロールっていうカルチャーを少しでも盛り上げて、新しくしていきたいですね。いろんな人にお世話になったので、カルチャーを盛り上げることで、その人たちに恩返ししたい」
――横浜銀蝿のTAKUさんがアルバムにコメントしていましたが、新しいアプローチをしていることに関しては、これまで一緒にやってきた方々からも好意的に受け取られているみたいですね。
 「TAKUさんは作曲とかもやっているので、すごく柔軟な人だっていうこともあるかもしれないですけどね。でも、いろんな方からこのまま頑張れとは言ってもらえます」
――それは嬉しいですよね。
 「やっぱり、コテコテなロックンローラーの人には叩かれたりするんだろうなとも思うんです。でも、このアルバムを聴いてくれた人が、そこから掘り下げていったら、ロックンロールにも広がっていくじゃないですか。そのきっかけになればいいかなと思っていて。おれも“JOHNNY”としてコテコテのロックンロールを今もやって、ヨーロッパに行ったりしてる。そういう意味でも筋は通してると思ってます」
――作曲/編曲に関しては、ベースも担当している柏木利哉さんと共同なんですよね?
 「今までは自分だけでやってたんですけど、初めて人の力を借りました。新しいものを作っていくためにいろんな意見を出し合って、コテコテに作った曲を崩したりするような感じでしたね。たとえば〈WORK'N ROLL ALL NIGHT〉のドラムは打ち込みなんですよ。もともとはほんとに踊れるようなロックンロールを作って、それを電子的にしたので、おもしろいかなと思ってますね。自分の意図してたものができたかなって」
――打ち込みだけど、ツイストが踊れるような曲ですよね。さらにギターは布袋さんを思わせるリフで。
 「そういう部分を脈々と受け継いでいけたらなっていうのは思ってますね。若いやつでビート系の音楽をやってるやつって本当にいないんですよ。GLAYとかLUNA SEAとかで止まっちゃってる気がしてて」
――そういう意味では、「LAUGH & RUN」とかはしっかりビートを利かせながら現代的にうまく昇華させていますよね。
 「やっぱり8ビートでバシバシくる感じ、それで踊れるっていうのがいちばんですよね。そこから噛み砕いて、自分のカラーを入れていくような感じです」
――先ほども少し話が出ましたが、パリ〜ロンドンでツアーをやってきたんですよね。
 「そうですね。でも、それは完全にロックンロール中心のJOHNNYというプロジェクトとしてですが」
――そこはしっかりと分けてるんですね。
 「そうですね。向こうはロックンロールへの熱も高くて、日本だと“うわっ”て思われるような感じも、クールって受け入れられる。路上ライヴもやったんですけど、エンタテインメント性があるとおもしろがってくれるんですよ。最初はエルヴィス・プレスリーをうまく歌ってみたり、まじめにやってたんですけど、全然反応してくれなくて。それで頭にきて、思いっきりツイスト踊りながらわかりやすいことやったら、すごく反応してくれて」
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――コミカルに吹っ切るというか、ショーとして成立させる。
 「そうです。うまく、丁寧に、カチッと音楽をやるよりは、エネルギーをもらいにライヴに来てるような人が多いので」
――路上ライヴでツイスト踊るなんて日本では考えられないですけどね。
 「まぁ向こうにもいなかったと思いますよ(笑)」
――ははは(笑)。ロッカーズの聖地ともいわれるロンドンの「ACE CAFE」でのステージも経験して。
 「感慨深かったですね。防音もないし鏡張りだからガンガンしちゃって、音とか最悪なんですよ。電圧も違うから、経験したことがないような、バズーカみたいな音が出る。もう会場全体が鳴ってる感じなんですけど、やれることが嬉しいというか」
――そのツアーはクラウドファンディングで資金を募っていったんですよね?
 「そうですね。そこはちゃんと現代的にやろうかなと(笑)」
――活動の姿勢や考え方として、そのことがすごく象徴的だなと思いました。アルバムのなかでも、極端にわかりやすいロックンロールの「MY SWEET HONDA」を不意に入れたり、すごく現実的に、論理的に物事を考えているような。
 「結果的に広がってくれればいいわけですからね」
――ロッカーではあるんですけど、すごく企業家的な側面がある気がします。
 「よく言われますね(笑)。JEANAのときから自分で全部やってたので、好きなんですよね。大変ではあるんですけど」
――10月にはデビュー・パーティが行なわれましたが、12月16日(金)には渋谷GARRETでレコ発ワンマンが控えてます。繰り返しになってしまいますが、これまでのキャリアでついてきたお客さんの反応というのも変わってきますよね。
 「一回切り捨てる部分もあるとは思います。そういう意味で、アルバムでは髪を下ろした写真をジャケットに使ったんですよ。これで離れる人は離れるだろう、と。そこでついてきてくれる人に、しっかりいいものを見せていこうと思います」
――このジャケットはそういう意味が。……16日のライヴは、どっちでいくんですか?
 「中間くらいですね」
――中間(笑)。
 「衣装も含めてですけど、がっつりリーゼントって感じではなく」
――いろんな音が入っているので、バンドで再現するという意味では大変な曲もありますよね。
 「同期も使いますよ。そのためにホーンとかは最初から電子的な感じにして、80年代っぽい音で作ってあるので」
――いい意味でチープな作りですからね。
 「そうそう。それが80'sの良さだと思うんですよ。ゲートリヴァーブがかかったドラムとかも含めて。ヨーロッパでつんできた経験でかなり肝が据わったので、そのまま16日にぶつけられたらいいかなと思います」
――来年以降の活動については考えてますか?
 「意識的にいろんなものを取り入れた今回のアルバムを作ったことで、次にやりたいことがしっかり見えてきた部分があるので、ここからさらに絞っていくようなイメージですね。音のテイストとか歌い方とか、すべて統一した質感になるように」
――さらにその先、という意味では?
 「やっぱりロックンロールを代表する顔ぶれに並びたい、っていう夢は持っているので、ベタですけど武道館ですよね」
――いいですね。「キャロル解散の日(4月13日)に野音でライヴをやること」をテーマとしていたマックショウみたいに、わかりやすい目標ってストーリーが生まれますよね。単純に、武道館を最大目標に据えるロッカーも減っているような気もしますし。
 「好きな人を追いかけてるだけなんですよ。それが原動力というか。単純なんです」
取材・文 / 木村健太(2016年11月)
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2016年12月16日(金)
東京 渋谷 GARRET
開場 18:15 / 開演 18:45
前売 2,500円(税込 / 別途ドリンク代)

[出演]
DAIGO YAMASHITA
lead g 小山将平
rhythm g 加藤 悟
b 柏木 利哉
key. 服部 ヒロ
dr 山内“massioi”優

gulizly
ミルマナコ


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