2000年代、ヴァイオリンをフィーチャーしたメロディック・パンク・スタイルでシーン最前線を走り続けた
イエローカード。本国アメリカだけで200万枚以上を売り上げた
『オーシャン・アヴェニュー』(2003年)以降、ヒット作を出し続け、日本にも熱狂的なファンの多い彼らだけに、2008年4月に発表された無期限の活動休止は少なからず衝撃的であり、また“なぜ今”といった疑問が渦巻いた。そんなこともあって2010年8月の活動再開に続き、7枚目として届けられたニュー・アルバム
『When You're Through Thinking,Say Yes』の完全復活をアピールする充実ぶりがうれしい限り。2月の来日公演の際、ショーン・マッキン(vn、vo)に活動休止の理由や新作について率直な質問をぶつけてみた。
――ウェルカム・バック!
ショーン・マッキン(以下、同)「ありがとう。今はバンド活動をキャンプ生活のように楽しんでいるし、音楽をプレイできることを自分に与えられた特別な贈り物のように感じているんだ」
――その言葉を物語るように『When You're Through Thinking, Say Yes』には、ブランニューな意気込みとともにイエローカード節が息づき、そしてナチュラルな形でバンドとしての進&深化が刻み付けられていますよね。それこそオープニングを飾る「The Sound of You And Me」の歌詞からは、新たな決意が読み取れます。それだけに、活動休止の理由が気になってしかたないのですが。
「うん。2008年当時というのは、音楽業界全体に大きな変化があって、CDセールスがガクッと落ちたり、ライヴのチケットが売れなくなった時期だった。それでバンドとして決定しなければならない問題が山積みになってしまったんだ。そんな状況だったから、(活動を休止し)家族や友だちと過ごすといったプレイヴェートな幸せに立ち返ったほうがいいんじゃないか、それぞれが一度リフレッシュしたほうが再びイエローカードにエネルギーを注げるようになるんじゃないか、そう考えたんだ。正直、2007年の時点で経済的にかなりキツかったしね(笑)。毎日、これが最後のショウになるんじゃないかって思っていたぐらい。あの頃は音楽を楽しむ余裕なんてなかったよ」
――イエローカード・クラスのバンドが、そんなヘヴィな状況にあったなんて。まさか一時は活動休止のまま解散なんて可能性も?
「そうだね。こうして活動を再開するのと同じぐらいのパーセンテージで(笑)」
――ええ!
「だけど活動再開はとくにきっかけがあったわけじゃなく、ごく自然なこととしてそっちに向かっていったんだよね。たしかにLP(ロンギニュー・パーソンズIII/ds)が“そろそろ新作を作る時期なんじゃないか”と言い出して、そのひと言がスイッチになった部分はあったと思う。バンドのエネルギーが、再びいい方向へと流れだしたとでも言うのかな。実際、彼の言葉によってそれまでバラバラの生活を送っていたメンバー間で、新曲のアイディアのやり取りも始まったわけだし」
――活動再開と前後してショーン・オドネル(b)が新加入しましたよね。新作に関する彼の貢献度についても教えてください。
「今、ちょうど僕らの横に立っているから何ともねぇ(“正直に答えろよ”と壁際にいたショーン・オドネル)。彼は以前
リーヴ・オリヴァーというバンドにいたんだ。それで新メンバーを探す段階になって、神の光がパッと当たったんだ。もちろんベーシストとしてもソングライターとしても最高だよ。イエローカードは今、ベストの状態にあるんじゃないかな(ショーン・オドネルが“ホメてくれてありがとう”とばかりにお金を渡すフリ)」
――なるほど(笑)。
「ソングライターとして言わせてもらうならば、曲作りって個人的な時間や経験を切り取るようなところがあって、そういった時間や経験を楽曲化することで、それをよりリスナーと共有できるような感覚があるんだ。とはいえ新作に関しては僕らの時間や経験だけじゃなく、エキサイティングなイエローカードも感じてほしかった。(『オーシャン・アヴェニュー』以降のイエローカードの全アルバムを手がける)ニール・アヴァロンをプロデューサーに迎えたのもそういった理由からで、彼は自分たちのやりたかったことを的確にとらえてくれたと思う」
――今作にはキャッチーな疾走感が印象的な「The Sound of You And Me」や、瑞々しいメロディが軽快に響く「With You Around」もあれば、ルーツ・ロック・フィーリングの「Hang You Up」、メランコリックでUKロック・ライクな「Sing For Me」もありますものね。
「(出世作『オーシャン・アヴェニュー』に続く)
『ライツ・アンド・サウンズ』を作った時は評価に対して野心的だったこともあり、メンバー間の関係が濃密になりすぎていた気がするんだ。今回はメールなんかで実際の距離は離れていたのかもしれないけど、それぞれの考えを自由に話し合える雰囲気があったし、イエローカード自体を楽しむことができた。新作は今までのアルバムから学んだことをベストな形で反映させられた一枚だと思うよ!」
取材・文/兒玉常利(2011年2月)