「“わざわざ苦労せんでもええがな”みたいな。そういうことを伝えたい」──明快なメッセージが詰まったYO-KINGのフル・アルバムが登場!

YO-KING   2010/10/21掲載
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 7月に発表したミニ・アルバム『スペース〜拝啓、ジェリー・ガルシア〜』に続けて、YO-KINGが久々となるソロ・フル・アルバム『楽しい人は世界を救う』を発表! 沖山優司(b)、小松シゲル(ds)、奥野真哉(key)という腕利きのミュージシャンと共に作り上げられた今作は聴けば聴くほどに味わいを増していくような、シンプルなれど滋味豊かなフォーク・ロック・アルバムに。また、そこで歌われているのは、日々の生活を健やかで素晴らしいものにするための『養生訓』ならぬ『YO生訓』ともいえる、YO-KING流メッセージ。本人いわく「リスナーを念頭に置いて作った初めてのアルバム」だという今作について話を訊いた。
――前作、『スペース〜拝啓、ジェリー・ガルシア〜』取材時には、“次のアルバムはボブ・ディランの『ブロンド・オン・ブロンド』みたいな人間臭い作品になると思う”っておっしゃってましたけど、そういう作品を作ろうと思ったのは、やっぱりディランのライヴを生で観たのが大きかったんですか?
YO-KING(以下、同) 「うん。ディランのライヴは大きかった。アルバム・タイトルの“楽しい人”には、ディランも含まれてますから」
――あ、そうだったんですか。
「うん。絶対、このおじさん毎日楽しいんだろうなと思ったんですよ。世界中ツアーで回って、ワーキャー言われるのが大好きなんだろうなって。それがすごく素敵だったんです。そもそも最低限の健康がないと絶対にそんな暮らしできないから。ほぼ70歳なのに健康だもんね」
――いわゆるセックスドラッグ&ロックンロール的な感じではないという。
「そうそう。健康って快楽なんだよね」
――健康は快楽?
「そう。僕は早い段階からそれに気付いてたんだよ。とにかく、いつも早いんで(笑)。それで数年後にみんな僕が言ってたことに気付くっていうね」
――なるほど(笑)。でも、リアルタイムで理解されない寂しさみたいなものもあるんじゃないですか。
「ありますね〜。そこを埋めるために今回、このアルバムを作ったわけです。今回のアルバムでは実践的なヒントも曲に込めてるんです。それをいろんな人に伝えたいなと思って」
――そういう意味でいえば今回は完全なメッセージアルバムなわけですよね。
「そうですね。リスナーを念頭に置いて作った初めてのアルバムだから」
――遅すぎないですか(笑)。
「遅いよね(笑)」


――今まではリスナーに対してどういう気持ちで作ってたんですか?
「今までのプロダクツは“俺って凄いだろ?”っていう主張の方が強かったんだよね。でも今回は初めてこういうことを伝えたら助かる人がたくさんいるのかなと思って作ったんです。要するに考え方次第ってことなんだけどね。考え方一つで、すごく健康で幸せな人生を過ごせるんだよ」




――今回のアルバムって、ある意味、YO-KING版の『養生訓』みたいな作品だと思うんですよ。
「なるほどね。ああ。“YO生訓”ってこと(笑)?」
――そうともいえます(笑)。『養生訓』には、いかにして日々を健やかに過ごすことが大切なのかということが説かれていて、そういう意味でも近いですよね。
「腹八分目で医者要らずとかね。俺、そういうの大好き。やっぱりラクで楽しいっていうのが大事なんですよ。わざわざ苦労せんでもええがなみたいな。そういうことを伝えたい」
――そこはYO-KINGさん常に一貫してますよね。
「うん。常に一貫してる。本当のことをみんなに気付かせるためのアルバムなんですよ。“わざわざ、いらない苦労とかする必要ないですよ”って」
――それをあくまでもサラっと歌ってるところがキモだったりするんですかね。
「そう。やっぱ真面目な顔しちゃうと、説教臭くなっちゃうからね。カッコよくほどほどにお洒落にやらないと俺の流儀じゃない」
――サウンドの話に移ると今作はすごくシンプルなフォーク・ロック・サウンドが基調になっていて、ある意味、聴き手を選ばないポピュラリティのあるサウンドですよね。
「すごいシンプルでベーシックなサウンド。でも実は、もっとラフなアルバムにしようと思ってたんですよ。これでも、ちょっとアレンジをしてるんだよね。思っていた以上に」
――それは弦を重ねたりとか、そういう部分ですか?
「弦はまあ1曲ぐらいあってもいいかなと思ったけど、最初はもっと4人で出してるバンドの音を生々しく録ろうと思っていて。それこそ、さっき話に挙がったディランの『ブロンド・オン・ブロンド』みたいなアルバム目指してたから。あれ、すごいセッション・アルバムでしょ。すごい演奏間違ってるんだよ、あのアルバム。最初はああいう感じにしたかったんだよね。でも、僕ら演奏上手いんで、そうならなかったんですよ(笑)」
――鉄壁なメンバーですもんね。
「そう。それで、誰かがアイディアを出してきたら僕はそれを無下に断らないんだよね。絶対試すの。試して、なるほどと思えば採用するし、いらないと思えばいらないと言うし。それを繰り返してるうちにやっぱり少しずつ洗練されていくのね。でも、今回はそれでよかったと思う」
――あえて自然な流れに任せたわけですね。
「最初に設定した目的地にしか向かわないんだったらレコーディングする意味もないし、そもそも楽しくないしね。途中で、“あ、こんなおもしろい道もあるんだ!”みたいなことに気付いて、そっちに行けたりするのが楽しいんだよね。自由で柔軟な感じでさ。流れに身を任せるというか」
――それってキャリアを重ねてきたがゆえの余裕なんですかね。
「そうねえ。でも、俺は若い頃からそうだったかな。だって真心ブラザーズってバンド自体がそうだから(笑)。初期は僕の楽曲を桜井がアレンジするっていう形だったから。自分の曲を他人に任せることができるミュージシャンってそんなにいないからね。ある意味、自由だったし柔軟だったし、その頃から遊び半分でやってたんだよ」
――遊び半分(笑)。
「お金はいただくけれど趣味でもあるっていうスタンス。趣味だからそんな苦労とか努力とかしませんよってスタンスは前から取ってる。病に倒れるようなレコーディングは絶対にしませんよっていう。徹夜もしないし。帰ってお風呂入ってちゃんと寝ますよっていう」
――常にど真ん中にあるのは“楽しく”っていう思いで。
「そうですね。楽しくやるのがファンへのメッセージだとも思うし。みんなも僕みたいに楽しくやっていいんだよっていう。……もはやこれ以外できないけどね(笑)」
――(笑)。
「“これからは厳しくいく!”とか、もう絶対に無理だから。これからも、今までどおり楽しくやってくしかないよね」
取材・文/望月哲(2010年9月)


<YO-KING LIFE WORK TOUR『一瞬の夢』>

vol.33 
●日程:10月22日(金)
●会場:札幌・cube garden  
●時間:開場18:30 / 開演19:00

vol.34
●日程:10月24日(日)
●会場:仙台・darwin
●時間:開場17:00 / 開演17:30

vol.35
●日程:11月4日(木)
●会場:広島・CLUB QUATTRO
●時間:開場18:00 / 開演19:00

vol.36
●日程:11月6日(土)
●会場:福岡・DRUM Be-1
●時間:開場17:30 / 開演18:00

vol.37
●日程:11月19日(金)
●会場:名古屋・CLUB QUATTRO
●時間:開場18:00 / 開演19:00

vol.38
●日程:11月21日(日)
●会場:京都・磔磔
●時間:開場17:00 / 開演17:30

vol.39
●日程:11月23日(火・祝)
●会場:心斎橋・CLUB QUATTRO
●時間:開場17:00 / 開演18:00

vol.40
●日程:12月 9日(木)
●会場:東京・赤坂BLITZ
●時間:開場18:00 / 開演19:00
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