2008年にシングル
「汽車に乗って」と配信限定シングル「メッセージ」を発表した
YUKI。自身の原点を見つめ直して制作されたこれらの楽曲に続いて、さらに進化を感じさせるニュー・シングル
「ランデヴー」が3月4日にリリースされた。本作は、恋のキラキラとした始まりをYUKIならではの世界観で表現された楽曲。彼女に話を訊いた。
昨年リリースされたシングル「汽車に乗って」から、およそ1年。自身初のクリスマス・ソングとなる配信限定シングル「メッセージ」を間に挟み、さらにYUKIの進化を見せるニュー・シングル「ランデヴー」が完成した。
「これから出していく曲はもっと自分の原点を見つめて、自分と向き合った曲を作りたくなったんです。その第1弾が、2008年にシングルとして出した「汽車に乗って」でした。あの時、“今の自分を曲で表現すると、この曲になるんだ”ということを知らせておく必要があったんです。そうしないと、私は歌手として、もしも自分が聴き手だったとしたらあまり面白さを感じないなと思ったんです。それからは“自分は今、何を歌いたいんだろう。どんな曲を世間の人に聴いてもらいたいんだろう”ということばかりを探していました。それで、どうしても自分で納得がいくものじゃないとシングルとして出したくないと、以前より強く思うようになったんです」
そんな決意のもと生まれたのは、初々しさと恋のドキドキが妖しくもキュートに詰め込まれたアップ・チューンのラブ・ソング。打ち込みではなく生音での録音にこだわった結果、畳み込むように展開していくメロディは、恋に落ちたふたりの物語を一層加速させることになった。
「今、私が欲しいなと思うリズムは人の音で、生の音だけでもいいなと思えるものなんです。そのためには生音でやりたくなる曲があればいいんだと思って、そういう曲をずっと探していました。それで、「ランデヴー」と出会ったんです。この曲は、サビが進むにつれて、ノリが全部違っていて、それがすごく気に入っています。やっぱり人にしか出せないものというのはあって、人のタイム感はコンピュータではかなわないな、というところは今回すごく感じました」
2曲目の「ミス・イエスタデイ」は、映画『インスタント沼』の主題歌。跳ねるリズムと揺れるように漂うメロディが優しく流れるこの曲は、“昨日=過去”というネガティヴになりがちなキーワードを、YUKIにしかできない前向きな解釈で、強く、希望溢れる曲に仕上げている。
「私は昔のことを思い出すと、今の自分に繋がっているなと思うことで元気が出るというか、やる気が出るんです。それはネガティヴな感じではなくて、「ミス・イエスタデイ」なんだけど、「ミス・ナウ」でもあるというか。「ミス・イエスタデイ」は、昨日を捨てていくのではなくて、昨日の繰り返しで生きているんです。だから、後ろ向きではなく前を向いて大きな声で歌っている感じはあって、それは歌っていてもすごくいいなと思いました。やっぱり、歌っていてつらくならない歌を作りたいんです。いい歌だな、切なくて胸がじーんとくるな、と思う歌は、ただ楽しいだけの歌ではできないので、その加減が難しいんですけど、そこを作っていくのは面白いですね」
そんなふうに自分を楽しみながら、自分を面白がりながら、また新たな自分の歌を求めて、YUKIの歌作りは続いていく。
「自分に対しても聴いてくれる人に対しても、誠実に曲を作っていくことが大事だと思っています。今は、わかってほしいという気持ちよりも、曲を作っていられることの満足感でいっぱいなんです。だから、曲が出ていくことはすごく楽しみなんですけど、私はまだまだやっている途中なんだという感じが強いですね。だから、まだまだ期待はしていてほしいなと思います」
取材・文/矢隈和恵(2009年1月)