『北斗の拳』で知られる
原哲夫が手掛けた人気漫画『花の慶次〜雲のかなたに〜』の主題歌「傾奇者恋歌(かぶきものこいうた)」、そして、戦国パチンコ『CR花の慶次』のメイン・テーマ曲の第2弾「よっしゃあ漢唄」(おとこうた)を収録したミニ・アルバム
『「よっしゃあ漢唄」c/w「ひとひらの花」日野あずき』がリリースされる。タイトル曲を歌うのは、K-1競技統括プロデューサーにして現役の格闘家である
角田信朗。彼が歌った第1弾シングル
「傾奇者恋歌」は2007年8月のリリース以来、ロング・セールスを継続中。50万ダウンロードを記録する大ヒットとなった。
「もともと原哲夫さんとはお付き合いがあって、直接“主題歌を歌ってよ”と言われたんですよ。けっこう軽いノリで引き受けたんだけど(笑)、『花の慶次』の読者、パチンコのファンの方にもすごく可愛がってもらって、予想を超えたヒットになって。パチンコ・ホールで歌うことも多かったんだけど、一緒に口ずさんでくれる人もいれば、涙してくれる人もいるんですよ。しかも、今年からは『花の慶次』にも登場する武将・直江兼続が大河ドラマになって、私も出演させてもらうことになった。この作品には不思議な縁を感じますね」
「去年1年で“花慶”の世界にさらにのめり込んだ」という角田。その気合いのほどは「よっしゃあ漢唄」の迫力あふれる歌いっぷりからも強く伝わってくる。
「曲のテイストでいうと〈傾奇者恋歌〉のカップリングに収録されていた〈漢花〉に近いんだけど、それをさらにスケール・アップした曲ですね。歌詞も原作の世界観を忠実に再現しているし、歌っていて燃え上がるものを感じます。この作品の主人公である前田慶次は戦国時代一の“かぶきもの”で、権力や体制におもねることなく、奔放に生きた人物。その生き方はいまの時代が求めるヒーロー像でもあると思うんです」
さらに角田は、この曲が放つ熱い感情、聴く者を奮い立たせるような力について、次のように言葉を重ねる。
「不況の影響で新聞を読んでもテレビのニュースを観ても、嫌な話ばっかりじゃないですか。そりゃあ誰でも不安になりますよ。でもね、しっかり地に足をつけて生きていれば、揺らぐことはないんです。確固たる信念があれば、俺は大丈夫っていう気持ちが持てるはずなので。“よっしゃあ!”とケツを叩いていきたいですね、この曲で」
「音楽の力はすごい。生まれ変わって、もし格闘技以外の選択肢があったら、ミュージシャンになりたい」と笑う角田。格闘の世界に身を置きながら、役者、歌手としても強烈な個性を放つ彼だが、そのエネルギーの源はどこにあるのだろうか。
「役者もやってる、歌も歌ってる。でも、“一体、あなたの正体は?”と言われれば、堂々と“空手家です”と答える。それは僕のなかで、一つのヒーロー像なんですよ。僕は格闘技ではチャンピオンになれなかった。NO.1は無理かもしれない、でも、自分にしかできない方法でオンリーワンになることはできる――槙原君の歌みたいに――という思いもあったし。歌唱力、演技力ということでは、その道のプロと勝負できるはずがない。ただ、僕はTAKE 2が許されない世界で生きてきて、そこで培ってきた集中力は誰にも負けません」
「よっしゃあ漢唄」における、戦国の“男”の生き様を現代に伝える表現力は、まさに角田にしか体現できないものだろう。その人にしか描けない世界観を持っている。そういう意味で角田信朗は、正真正銘のアーティストだと思う。
取材・文/森 朋之(2009年2月)