“Animation” 逆さに読んで “noitaminA(ノイタミナ)”。フジテレビにて2005年4月から放送が開始された、アニメの世界に新しい風を送り込む「ノイタミナ」。“映像表現の一つの手段”として製作されているアニメの数々は、キャラクター、ストーリーなどどれをとっても、ドラマや映画と比べても遜色ないクオリティのものばかり。青春アニメ、古典怪談、SFなどさまざまな物語を、従来のアニメ・ファンだけでなく大人や女性も楽しめる作品として送り出す「ノイタミナ」発のアニメを、いくつかご紹介いたします。
「ノイタミナ」の記念すべき第1弾として放映されたのは、
羽海野チカ原作の『ハチミツとクローバー』(2005年4〜9月)。
櫻井翔、
蒼井優主演の
映画版、
成海璃子主演によるドラマ版、
AAAの
伊藤千晃主演の
台湾版と、実写版も製作されたこの大ヒット漫画のアニメ版では、
スピッツと
スガシカオの楽曲を劇中に使用され、オープニング映像(第1シリーズ)を野田凪が手掛けたことでも話題になりました。水彩画のような映像でその世界観を見事に再現するだけでなく、原作が持つかなり濃い目のギャグ・センスもしっかりと盛り込まれ、多くのファンを獲得し、ハチクロ・ブームに火をつけました(後に、第2シリーズ(2006年6〜9月)も製作)。青春スーツを身に着けて自転車で無我夢中に駆け抜けるその世界観に自分を投影しつつ、青春時代の断片をつなぎ合わせた人も多いことでしょう。
2010年に劇場版の公開も決定している、
上野樹里主演の大ヒット・ドラマ
『のだめカンタービレ』。そのアニメ版(2007年1〜6月)も、この「ノイタミナ」発。ドラマ版とのメディア・ミックスも行なわれたアニメ版は、現在までの2シリーズが製作されており、その第2弾となる
「巴里編」(2008年10〜12月)では、過去10年の深夜アニメにおいて、史上最高の視聴率(6.6%)を記録。待望の第3シリーズの放映も決定し、劇場版とともにのだめ旋風はまだまだ続きそうです。ドラマの方は観たけれど……というアニメ未見の方は、のだめの世界をアニメでも味わうことをオススメします。
2001年に
滝沢秀明、
藤木直人主演でドラマ化され(音楽は
Mr.Childrenが担当)、韓国でも2008年に実写映画化(日本でも4月18日から全国公開)された、
よしながふみ原作『西洋骨董洋菓子店〜アンティーク〜』(2008年7〜9月)。イケメンばかりの洋菓子店を舞台にしたこの作品の、ユーモアに溢れながらもどこか影を帯びたキャラクターの設定やストーリー展開に、思わず引き込まれたという人も多いのでは?
少女マンガ原作のアニメでありながらも、大人のファンや男性ファンが多く存在するこれら作品。ストーリーやキャラクターの面白さはもちろん、原作の持つ世界観を壊すことなく作り上げられた繊細な映像美も魅力となって、多くのファンをひきつけているのではないでしょうか?(余談ですが、この3作品は講談社漫画賞少女部門を受賞しています)。
少女マンガ原作の人気作品だけでなく、より幅広い作風のアニメを生み出しているのも「ノイタミナ」の特色。2006年1〜3月に放映された『怪〜ayakashi〜』は、
『四谷怪談』 『天守物語』 『化猫』といった日本の古典怪談を元にオムニバス形式で製作されたホラー・アニメ。和紙のテクスチャーを用いた独特の色彩感による映像は、アニメ業界以外からも大きな注目を集めました。後に、『化猫』に登場した薬売りの男を主人公にしたスピンオフ作品『モノノ怪』(2007年7〜9月)も「ノイタミナ」で放送。『化猫』のスタッフが再集結し、
『座敷童子』 『のっぺらぼう』などを題材に描いた『モノノ怪』でも、和の香り漂う世界観はしっかりと引き継がれました。
『ゲゲゲの鬼太郎』以前に製作された貸本版を原作にした『墓場鬼太郎』(2008年1〜3月)は、昭和時代の怪奇アニメといった趣。風刺漫画としての面白さも残しつつ、勧善懲悪な『ゲゲゲの鬼太郎』とは違った世界観で描かれた今作は、まさに“大人のため”の鬼太郎。深夜枠という環境だからこそできたブラックかつダークなその世界観に、毎週釘付けになっていた人も多いことでしょう。 ちなみにDVD版には、テレビでは放映できなかった未修正カットも収録。全部テレビ録画したという方もチェックは忘れずに。
深夜ならではという点では、4月28日より待望のDVD化が開始される『源氏物語』をモチーフにしたオリジナル・ストーリー『源氏物語千年紀 Genji』(2009年1〜3月)も外せません。『源氏物語』という古典の世界を甘美かつ幻想的に描き、放送コードギリギリの描写でつづられた今作は、深夜だから生み出された、まさに“大人のため”のアニメです。
そんな「ノイタミナ」の新作は、原作・脚本・監督を
神山健治(『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』など)、キャラクターを
羽海野チカ(『ハチミツとクローバー』)、音楽を
川井憲次(『スカイ・クロラ』など)が手掛けた『東のエデン』(4月9日放映開始)。2010年に起きた謎のテロ事件から3ヵ月。拳銃と82億円の電子マネーがチャージされた携帯電話を持つ記憶を失った謎の男・滝沢と、彼に助けられた少女・咲の物語となる今作は、「ノイタミナ」初となる完全オリジナル・アニメ。そのオープニング・テーマを手掛けるのが、なんと、英国を代表する人気ロック・バンド、
オアシス(写真は
『ディグ・アウト・ユア・ソウル』)! また、テレビ・シリーズのその後を描く劇場版の公開も決定しており、今冬公開予定となっています。豪華なメンバーが集まり作り上げられる今作は、アニメ・ファンでなくとも要注目です。
少女漫画を軸におきながらも、ホラー、SF、歴史物とさまざまな作風のアニメを送り出してきた「ノイタミナ」。原作が持つ世界観をさまざまな映像表現を駆使して描き出し、普段アニメを見ない大人のファン層を掘り起こすことにも成功した深夜アニメの革命児といっても過言ではないはず。普通のアニメでしょ? なんて思っている人は、先入観を捨てて一度ご覧になってみてはいかがでしょうか? アニメが持つ従来のイメージをくつがえす、映像作品としてのアニメーションが「ノイタミナ」には揃っています。
<ノイタミナ最新作 『東のエデン』>
●4月9日(木) 24:45 フジテレビほかにてスタート
【あらすじ】
2010年、日本各地で犠牲者が一人も出ない謎のテロ事件が起きる。それから3ヵ月。卒業旅行でアメリカを訪れた少女・咲はトラブルに巻き込まれ、滝沢という日本人に助けられる。記憶を失っていた滝沢は、拳銃と82億円もの電子マネーがチャージされた携帯電話を握り締めていた……。
【原作・脚本・監督】神山健治 (『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』『精霊の守り人』)
【キャラクター原案】 羽海野チカ (『ハチミツとクローバー』『3月のライオン』)
【音楽】川井憲次 (『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』)
【キャラクターデザイン】 森川聡子
【副監督】 吉原正行
【総作画監督】 中村 悟
【美術監督】 竹田悠介
【色彩設計】 片山由美子
【CGI監督】 遠藤 誠
【撮影監督】 田中宏侍
【アニメーション制作】 プロダクション I.G
【オープニング・テーマ】 オアシス「FALLING DOWN」
【エンディングテーマ】 SCHOOL FOOD PUNISHMENT 「futuristic imagination」