2009年4月、昨年に続いての再来日を果たした
スパークスに緊急直撃! 最新作
『エキゾチック・クリーチャーズ・オブ・ザ・ディープ』に関しての
インタビューは前回の来日時にバッチリさせていただいたということで、今回はスパークスの大ファンの漫画家・鳩山郁子さんをインタビュアーとして迎えての取材を敢行! 2組をつなぐ漫画や映画、絵画などの質問から好きな卵の食べ方まで(!)どこにも出たことのないであろうロン&ラッセルのヒミツに驚愕しながらお楽しみください!
ロン 「日活ロマン・ポルノが好きで、
神田や神保町でポスターを買っているよ」
鳩山郁子 「このたびは、お会いできて本当にうれしいです! それではまずは日本のマンガ・カルチャーやアニメーションについて、何か抱かれているイメージがありましたら教えてください」
ラッセル・メイル(vo) 「約20年前に手掛けた(日本の漫画を原作にした)ミュージカル『マイ・ザ・サイキック・ガール』を観た
ティム・バートンがとても感動してくれて、当時これの映画を作ろうと言ってくれて。映画のほうも僕らがサウンドトラックを担当する予定だったんだけど、映画化自体、残念ながら実現しなかったんだ。でも半年前にその話がまた再浮上していて、近々実写版のティム・バートン監督の映画ができればと思っているんだ。だからアニメとかマンガの知識というのは、その20年前のミュージカルから始まっているかな」
鳩山 「立ち消えになったと聞いていたので、とてもうれしいです。 もしその話が実現した場合は、ぜひまたお二人にサントラを手掛けていただきたいですね」
ロン・メイル(key) 「私もそうなればいいなと思っているよ。しかもいわゆるただの映画のサントラではなく、サウンドが映画の中の会話と絡み合ったり……サウンド・エフェクトから何から何まで、一からすべてにかかわっていたいね。20年前にやったミュージカルもまさにそのような感じで、映画とミュージカルを混ぜたような感じで、細部にいたるまで私たちが手掛けたんだ。なので今回映画の話が実現したとしても、そういった形でかかわれればいいなと思っているよ」
鳩山 「楽しみにしています! それからそれぞれもし好きなイラストレーター、絵描きがいらっしゃればぜひ教えてください。お父様が画家だと伺いましたが……」
ラッセル 「父が画家だったというのは本当で、(通常の)絵画はもちろん、新聞のコラムのイラストなども描いていたんだ」
ロン 「私はLAのアーティストのJohn Bardessari(ジョン・バルデッサリ)が好きだね。私たちが好きなのは、スパークスと同じポップな感性を持っているもの。日本の文化の中にもあって、鳩山さんの作品にもそのような感性は含まれていると思うし、70年代の日活ロマン・ポルノも好きなんだ。映画のポスターも好きで、東京に来たときには神田や神保町でよく購入しているんだよ」
ラッセル 「ロンはすごいコレクターなんだよ。(日活ロマン・ポルノの)内容はわからないけど、グラフィック的に好きなんだ」
ロン 「なんでこういったものが好きなのかというのは、つまり『SHAFT』や『SPERFLY』みたいな、一見商業性だけを狙って作ったような映画が、じつはアーティスティックな面でもすごく優れていて、むしろアーティスティックなものだけを追求して作った映画よりも、アーティスティックだったりすることもあるっていうことなんだよ」
ラッセル 「僕の家にスタジオがあるから、
ロンは毎日のように自分の運転で来るんだ」
鳩山 「ところでロンとラッセルは、互いの自宅はどのくらい離れているんですか? まさかスープの冷めない距離、ではないですよね(笑)?」
ラッセル 「車で10分の距離かな。LAは東京みたいに交通機関が発達してないから、だいたい時間を計るときには“車で〜”という言い方をするのさ。僕の家にスタジオがあるから、毎日のようにロンがうちに通っているんだ!」
鳩山 「ロンさんがご自身で運転されるんですか?」
ロン 「もちろん(笑)。74年製の“Thing”というモデルのワーゲンで、イギリスからアメリカに戻ってきた75年に買って、それ以来ずっとそれに乗っている。新しい車を求めるのではなく、これ一つにずっとこだわってるんだ。じつは私はカー・デザイナーになるのが夢だったんだよ。デトロイトに行って、車のデザイナーになりたかったんだ」
鳩山 「(ビックリしながら)話は突然変わってしまうのですが、私は以前、『シューメイカー』というマンガの中に去勢歌手(カストラート)を登場させたことがありまして。大昔のイタリア・オペラでは、去勢という肉体的な欠損とひきかえに少年のような高音域の声を手に入れていたそうです。もちろん、ラッセルさんはそんなことをしなくても素晴らしい声をお持ちですが……」
ラッセル 「それはどうかな。僕が何をしているか、知らないでしょう(笑)?」
鳩山 「(笑)これはもしも、の質問なのですが、ラッセルさんが素晴らしい声を与えられたことで、それと引き替えに天があなたに与えなかった才能がひとつ、あるとすればそれはどんな“ギフト(才能)”だったと想像しますか?」
ラッセル 「うーん……そうだな、不死……死なないという才能かな? まぁ、これもまだ分からないけどね(笑)」
鳩山 「ロンさんはいかがですか?」
ロン 「物事をそのまま素直に受け入れる気持ちだね(笑)。どうしてもひねくれて考えてしまうんだ。音楽を作るうえではすごく役に立ってるけれど、普通の生活ではちょっとね。だから、それかな」
鳩山 「それではもしもナマのオーケストラ編成でスパークスの楽曲を収録したい、という申し出があったら、承諾しますか?」
ロン 「おもしろいと思うから、やってみたいと思う。ただ、自分たちのアーティスティックな面を単に正当化するためだけに共演するということはしたくないな。でも、音楽的にはおもしろいことだと思うし、じつは『Lil' Beethoven』から『ハロー・ヤング・ラヴァーズ』そして『エキゾチック・クリーチャーズ・オブ・ザ・ディープ』まで、オーケストラと共演しようかという話もあったんだ。だけど結果的にやめて、逆に、ライヴではシアトリカルな、ヴィジュアル的な面を取り入れてやろうということにしたんだ」
鳩山 「それから音楽の質問でなくて申し訳ないですが……」
2人 「いいね!(笑)」
鳩山 「好きな卵の食べ方を教えてください」
ラッセル 「(笑)生煮えとかがまったくなく、よーく炒めたスクランブル・エッグだね」
ロン 「私は固ゆで卵。卵をヘンに変形させるのではなく、本来の形のままを食べたいから。“ピュア・エッグ”だね」
鳩山 「では最後に、自慢の料理はありますか?」
ロン 「電子レンジを使った……」
ラッセル 「冷凍の野菜の解凍だね(笑)」
取材協力/村尾泰郎
構成/編集部(取材:2009年4月)