特別企画 LOUDNESSの軌跡〜追悼・樋口宗孝

LOUDNESS   2009/06/11掲載
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常に世界を意識して活動し、1981年の結成から数々の名盤を発表してきた、日本を代表するヘヴィ・メタル・バンド、LOUDNESS。2008年11月には、肝細胞ガンで惜しまれつつ永眠した樋口宗孝(ds)の追悼の意味も込めて、LOUDNESSの代表作を挙げながら、彼らの軌跡を振り返る。
“世界”を意識する規格外のバンド
LOUDNESSの軌跡




 ワールド・ワイドな視点から国内のロック・シーンを見たとき、LOUDNESSの存在は現在においても非常に大きなものがある。まさにアイドルとして人気を博していたレイジーでの活動を経て、高崎晃(g)と樋口宗孝(ds)は、二井原実(vo)と山下昌良(b)を迎えて1981年にLOUDNESSを結成。同年11月にリリースされたデビュー・アルバム『誕生前夜〜THE BIRTHDAY EVE』は、日本のヘヴィ・メタル史の幕開けと言われる重要な作品だ。当時のイギリスで起こっていた新たなハード・ロックのムーヴメント(New Wave Of British Heavy Metal)に呼応するかのようなアグレッシヴな楽曲群。卓越した演奏技術も彼らの評価を高める要素となった。

 そしてLOUDNESSの躍進はレコード会社をも大きく動かした。アースシェイカー44マグナムを筆頭とする若手が次々とデビューを果たし、いわゆるヘヴィ・メタル・ブームの様相を呈していくのである。しかし、4人が当初から目指していたのは、あくまでも世界だった。実際に83年7月には早くもアメリカ西海岸ツアーを敢行。8月にはオランダ公演(その熱狂のパフォーマンスの模様はDVD『EUROBOUNDS』に収録)を経て、初の海外レコーディングを行なうためにイギリスはロンドンへと飛んでいる。そこで完成されたのが初期の名作として名高い4作目『撃剣霊化〜DISILLUSION』(84年/後に英詞ヴァージョンもリリース)。仕上がりは凄まじく、始動から3年にも満たない期間で培われてきたLOUDNESSのスタイルが、完全に集約された内容と言っても過言ではないだろう。「Crazy Doctor」「Esper」「Dream Fantasy」「アレスの嘆き」など、ライヴでの定番的マテリアルになったものも多い。

 一方、この頃にはすでに彼らの名は次第に国外へも知れ渡り始めており、アメリカを代表するメジャー・レーベル“アトランティック”と長期契約を締結。オジー・オズボーンらを手掛けてきたマックス・ノーマンをプロデューサーに起用して制作された5作目『THUNDER IN THE EAST』(85年)で全世界デビューを果たすのである。音楽的には従来よりも削ぎ落とされた楽曲構成が特徴的であり、そのキャッチーさを強めた作風には賛否両論あった。とはいえ、“新人”離れしたクオリティは確実に周囲を驚かせ、ビルボード・チャートでは74位を記録。ヘヴィ・メタルがある種のブームになっていたことも追い風となったが、幾多もの新鋭が群雄割拠する中で、日本のバンドに注目させたこと自体が快挙だった。

現在進行形のバンドのスタンスが読み取れる
最新作『THE EVERLASTING〜魂宗久遠』


 次作『SHADOWS OF WAR』(86年)も名盤に数えられる1枚である。LOUDNESS史上で最もポップに響く「Let It Go」も収録されてはいるものの、全体像としては硬質かつタイトなサウンドと持ち前のテクニカルさを活かしたアプローチだ。前作以降、精力的に北米をツアーしていたバンド自身の勢いは止まらず、『LIGHTNING STRIKES』というタイトルに変更(曲順やミックスも異なっている)されて発売されたアメリカでは、何とチャート64位にランクイン。この実績は現在も日本人アーティストの最高記録である。

 レッド・ツェッペリンの作品でも知られるエディ・クレイマーと組んだ『HURRICANE EYES』(87年)で第一期のラインナップはひとまず終了。以降は数度のメンバー交代を経ることになる。二井原の後任として加入したマイク・ヴェセーラ(vo/元オブセッション)が歌う『SOLDIER OF FORTUNE』(89年)を始め、それぞれの時期で印象深い作品が残されているが、サウンド・アプローチの面から言えば、山田雅樹(vo/元E・Z・O)と沢田泰司(b /元)が合流した『LOUDNESS』(92年)は特に鍵となるアルバムだ。80年代に築き上げた自身の型は、ダウン・チューニングによる重厚感をまとった新たな姿へと変貌していく。

 その音像は恒常的に進化を遂げ、本間大嗣(ds/元E・Z・O)と柴田直人(b/アンセム)を迎えた編成時に生み出された、通称“3部作”と言われる『GHETTO MACHINE』(97年)、『DRAGON』(98年)、『ENGINE』(99年)では、オリエンタリズムを感じさせるメロディと独特のグルーヴが押し出された作風となった。

 2000年にはオリジナル・メンバーが再集結。その第一作『SPIRITUAL CANOE〜輪廻転生』(2001年)からはアルバムによって振り幅の違いはあるものの、高崎が紡いできた往時の個性的な音楽性を引き継ぎつつ、80年代を想起させる楽曲も明らかに増えていった。最新作『THE EVERLASTING〜魂宗久遠』(2009年)は近作と同系統にありながら、より初期の色合いを強く感じさせる内容で、なかにはかつての楽曲との近似性をかなり具体的に例示できるものもある。また、昨年末に急逝した樋口が過去数年間に残した膨大なドラム・テイクをエディットするという、特殊な制作過程も特徴だ。その点では追悼盤の意味合いも見えるが、後任の鈴木政行のプレイを収めた楽曲もある。現在進行形であり続けるLOUDNESSの未来を、ここからさまざまに予感してみるのも面白いだろう。


文/土屋京輔



New Album
LOUDNESS『THE EVERLASTING 魂宗久遠』
(TKCA-73431)
[収録曲]
01. HIT THE RAILS
02. FLAME OF ROCK
03. I WONDER
04. THE EVERLANSTING
05. LIFE GOES ON
06. LET IT ROCK
07. CRYSTAL MOON
08. CHANGE
09. ROCK INTO THE NIGHT
10. I'M IN PAIN
11. THUNDER BURN
12. DESPERATE RELIGION



Column
追悼・樋口宗孝〜世界に影響を与えたドラム・ヒーロー



 2008年11月、肝細胞ガンで闘病していた樋口宗孝の訃報は瞬く間に世界を駆け巡った。国内はもちろん、かつて共演した各国のミュージシャンたちまでが悲しみのコメントを寄せていたのも記憶に新しいが、それほどさまざまな影響を与えてきた人物なのである。

 逸話は数多い。たとえば80年代初頭、世界中のドラマーが憧れたヤマハがモニター契約していたのは、特にジャズ・シーンで著名なスティーヴ・ガッドと樋口だけだった(後にパールのエンドーサーとなる)。常に一目を置かれていた、高度な技術と個性的なプレイ。たとえば、ワンバスにこだわったリズム・ワークや数々のフィル・イン・フレーズ、パワフルなストロークは、一聴しただけで彼の音だとわかるほどだ。

 “魅せる”ことも忘れなかった。派手な仕掛けが施される時期もあったが、ライヴにおける彼のドラム・ソロは、プレイそのものが観客を自然と参加させてしまう勢いを醸し出す。86年の東京・代々木オリンピックプール公演を収めたアルバム『8186 LIVE』やDVD『LIVE IN TOKYO〜LIGHTNING STRIKES』を筆頭に、彼の稀有な存在感は作品にも色濃く表われている。敏腕ドラマーであり、ロック・スターでもあった。

 今年2月14日に渋谷公会堂で行なわれた追悼公演の模様も、この6月24日に『MUNETAKA HIGUCHI FOREVER OUR HERO』なるタイトルでDVDがリリースされる。時に樋口の音や映像も交えた構成で進んでいくライヴ。そこに本人の姿はないにもかかわらず、いかに彼が偉大なドラマーだったのか、誰しもが改めて思わされるだろう。“MUNETAKA HIGUCHI”が遺したものをどう継承し、発展させていくのか。日本の音楽文化にも世界的な関心が寄せられている昨今だからこそ、後続が果たすべき使命は大きい。



文/土屋京輔



New DVD
MUNETAKA HIGUCHI FOREVER OUR HERO
(TKBA-1127/2009年6月24日発売)
[収録曲]
01. FIRE OF SPIRIT(INST)
02. HELLRIDER
03. SOLDIER OF FORTUNE
04. METAL MAD
05. CAN'T FIND MY WAY
06. EXULTATION
07. CRAZY SAMURAI
08. BREAKING THE TABOO
09. The Battleship MUSASHI
10. NEVER CHANGE YOUR MIND
11. CRAZY DOCTOR
12. IN THE MIRROR
13. CRAZY NIGHT

[ENCORE 1]
14. SO LONELY
15. THE END OF EARTH(メドレー)〜
16. 〜STAY WIND

[ENCORE 2]
17. S.D.I
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