平原綾香の「Jupiter」、
絢香の「三日月」、
平井堅の「瞳をとじて」、
秋川雅史の「千の風になって」、
コブクロの「蕾」、
中島美嘉の「雪の華」、
GReeeeNの「愛唄」、
夏川りみの「涙そうそう」、
一青窈の「ハナミズキ」、
中島みゆきの「地上の星」という名曲が、
Dr.Metal Factoryの手によって、ヘヴィメタルのアレンジで生まれ変わったアルバム
『カヴァメタ Now』が6月24日に発売! そして7月29日には、90年代の楽曲をカヴァーした
『カヴァメタ Then』もリリース。
“歌詞を読みながら、落ち着いて聴く”という楽しみ方が真っ先に思い浮かぶラインナップだけに、どんなアレンジになったのかというのも気になるところ。ちなみに、Dr.Metal Factoryは、ヴォーカルにジャパメタ界の重鎮・NoB(
MAKE-UP)、ギターにSHARA(
EARTH SHAKER)、サウンド・プロデュースにHΛLという3人で、“カヴァメタ”シリーズを作るために編成されたユニットだ。彼らの手によって、どのように選曲されて、どのように制作されていったのか? さまざまな楽しみ方ができる本作について、NoBとSHARAに話を訊いた。
「メタルは攻撃的だけど、凄く繊細」(SHARA)
「キャッチーなメロディとハードな演奏が、一度に味わえる」(NoB)
――まずは、Dr.Metal Factoryの結成と、今回の“カヴァメタ”プロジェクトがスタートしたいきさつを教えてください。
SHARA 「NoBとHΛLが“カヴァメタ”の悪巧みを進行中に“ギタリストは誰にしよう? リフもソロもカッコよく弾けて、性格と顔の悪くないヤツ!” “う〜ん、誰だ? SHARAかな?”ってな感じで僕になったんだと勝手に思ってるんだけど(笑)」
NoB 「事の発端はもともと知り合いだったあるディレクターとの再会がきっかけだったんだ。彼も筋金入りのヘヴィメタル、ハードロック・フリークで……僕はここ何年か“OSAMU METAL 80's”という文字通り80年代のメタルをカヴァーするというバンドで活動していて、ときどき日本の古い曲もロック・アレンジをして演奏してたんだ。そんなときにそのディレクターとの再会、おまけに“OSAMU METAL 80's”にはSHARAさんも在籍していて……条件揃いすぎじゃない? で、そのディレクターにHΛLさんを紹介してもらって。実は以前から共通の知り合いがいたりして気にはなってたので。最近、カヴァー・ブームでいろんなCDが出てるでしょ? もちろん、みんなそれぞれの持ち味があって素敵なんだけど、“俺だったらこうするのになぁ”っていう気持ちが常にあって。それなら“作るしかないでしょ”ってことだよね。デモを作ったらメーカーも大ノリになってくれて。もうあとは“行けぇーっ!”でしょう」
――J-POPの名曲をヘヴィメタルのアレンジで聴いたり、演奏する楽しさって言葉にするとどんな感じでしょうか?
SHARA 「メタルを聴かない人は“メタルはうるさいだけの音楽”って思ってる人も多いと思う。けど、メタルは攻撃的でいて、なおかつ凄く繊細。名曲のハードな部分はより魂の叫びに近く、静かな部分はより切なく聴かせられるのがメタルだと思う。J-POPとヘヴィメタルの相性はメチャいい。メタルをちゃんと演奏するには凄くテクニックがいるから相当難しいけど、みんな命賭けてやってる。けど、普通に聴くとぜんぜん難しく聴こえないでしょう? それがプロジェクトの凄さです」
NoB 「正直、僕って昔から歌謡曲とか大好きだった。もちろん今のJーPOPはかなり進化していて、歌謡曲なんてひとくくりの言い方しちゃうと語弊があるんだろうけど……。とにかく、日本語でしかもキャッチーなメロディとか大好きなわけ。それでいて、ハードな演奏も大好き。その2つの大好物を一度に味わえるのが今回のアレンジの美味しいところ。ヘヴィメタルって言い方しても、自分のスタイル的にシャウトのオンパレードってのは最初から考えられなかった。というか無理だしね。ヘヴィメタルっていってもシッカリとメロディを唄いあげるスタイル。その方が原曲の持ち味も生かせて、なおかつロックの醍醐味も味わえるかなって。今回は、自分の歌唱力のすべてを注ぎこめた気がする。イントロでは誰も何の曲かわからないのに歌が始まると“おぉ、あの曲だったのかぁ”って。そういうのワクワクするでしょう? デモの段階でもいろんな人に聴いてもらったとき、イントロが終わって歌が始まった瞬間にビックリした顔を見れるとゾクゾクしたね(笑)」
――選曲はどのようにされたのでしょうか?
NoB 「選曲は大変だったなぁ。まずは僕がやりたい曲、スタッフがやりたい曲を持ち寄ってミーティングから。ぶっちゃけ、割といろんなところでカヴァーされてる曲は避けたいという思いもあったんだけど、結局かなり被っちゃった。被るのには被るなりの理由があるってことなんだね。とにかくロックっぽいのをヘヴィ・アレンジしてもそんなに代わり映えしないだろって、意識的に元は静かな曲を選んだ気がする。でも、間違いのない選曲になったと思ってるんだ。正直カヴァーする許諾が下りなかった曲もあって、ちょいとばかし悔しい思いもしたけどね(笑) 。今となっては頭の中にたっぷり膨らんだイメージをバッチリ反映できる“曲たち”が、逆に僕たちを選んでくれた気さえしてるんだ。だってもう原曲の名残がほとんどないくらいになってるでしょう? オリジナルの作家の方々ごめんなさい(笑)。最初の『カヴァメタ Now』の方は2000年代の曲という縛りで。7月にリリースされる『カヴァメタ Then』は90年代っていう縛り。いっぱい聴いてきたはずの90年代の方が逆に難しかったかも……」
「やっぱり楽曲ってメロディなんだって、再確認した。
それは、リアルに感じられたよ。けっこう凄いよ、J-POP」(NoB)
――楽曲が決まって、制作前では、具体的にどのようにアレンジしていこうと思われてましたか? 実際にサウンド面で心掛けていたことなどがあれば教えてください。
SHARA 「デモのアレンジはHΛLなんだけど、そこにみんなの個性と情熱が加わり、より色鮮やかな音楽に仕上がったよ」
NoB 「実は今回の曲の楽しみ方で1つあるのが、隠れたモチーフ当てクイズ……とでも申しましょうか。僕やSHARAさんがこれまで聴いてきたヘヴィメタル、ハードロックのイメージをモチーフにしてアレンジした曲が多く……。わざとなんだけどね。とにかくロック好きな人が聴いて“あっ、これあの曲をイメージしてアレンジしたんだ”って当ててもらう、クイズ的要素の楽しみ付きっていう。もちろんドクメタ独自の個性がメインなのであくまでもイメージっていうか雰囲気に留まる範囲だけど。こうやって本人たちも楽しんでやってるから満足いく出来になったんだと思う。点数? 90点かな。100点取っちゃったら次を作りたい意欲がなくなっちゃうもん(笑)」
――今回、制作中に楽曲に対することなどで、新たな発見はありましたか?
SHARA 「曲は演奏すると、よりいっそうその曲のことを深く理解できる。名曲をコピーすると“こんないい曲は流行って当たり前”といつも思う」
NoB 「やっぱり楽曲ってメロディなんだって、再確認したかも。そんなこと昔から言われてきてたけど、今回はまさにど真ん中体験っていうか……それは、リアルに感じられたよ。どんなにアレンジをハードに変えても、メロディが演奏に負けない。それってヤッパリ、もともとそのメロディが持つ地力ってやつでしょう。あと、こんなにJ-POPを飽きるほど聴いたのは初めてかもしれない。いくら歌謡曲好きの僕でもね(笑)。聴けば聴くほど“へぇ、これってこんな歌詞だったんだ”とか“こんなに微妙な音階だったっけ、ここのメロディ……”とか“えぇっ、このバックってこんな複雑なコード進行だったの!”とかさ。発見っていうより、今までの自分が知らなすぎただけのお話なんですが。いい勉強させてもらいました。けっこう凄いよJ-POP」
――今回のレコーディング中のエピソードなどを教えてください。
SHARA 「いつもギターダビングのときは、必要最小限の人しかいないんだけど、今回はいろんな人が遊びに来てて常に賑やかで“これもいいかも”と思った」
NoB 「今回はかなりタイトな……というよりヘヴィなスケジュールでレコーディングをしたので、何を隠そう実はヴォーカルダビング、2回も飛ばしちゃいました……。風邪なのか、単純に疲労なのか、熱は出るわ喉は荒れまくってるわ……。タイミング的に“新型インフルエンザだったらどうしよ?”ってビビっちゃったくらい。長いレコーディング生活でレコーディング自体のスケジュールを飛ばしちゃったのは初めてっすよ! 二日酔いでレコーディングしたことはしょっちゅうだけどね(笑)。スタッフの皆さんごめんなさい。最初の頃は口内炎が爆発で、しゃべるのもカツゼツ悪いくらいだったし、よく頑張れたなって。誰か褒めてください(笑)」
――今後、他にカヴァーしてみたい曲はどんな曲ですか?
SHARA 「個人的にはグループサウンズをメタルでやりたい」
NoB 「今回痛感したのは、“新しいモノへのクリエイティヴな気持ち”っていうか、“可能性”に対しての今までの自分のネガティヴさ、曖昧さ……。だからそこが見えた瞬間に、いろんなアイディアっていうか、イメージが湧いてきたんだ。まずは日本の心、演歌。かなりの割合でマイナー調だし、ヘヴィメタルにアレンジしたらハマること請け合いなんだよね。“熱さ”って部分でも通じるものがあるし。後はフォーク・ソング。これもハマるだろうな。いろんな絡みがあって実現できるかどうかはわからないけど。お願い、僕たちが出すまでこのアイディア、誰もパクらないでね(笑)。それと今までは90年代までを踏襲してきたので当然、80、70年代と行きたいところですよね」
――最後に、今回のアルバムを完成させた感想をお願いします。
NoB 「ヤッパリ大事なのは“縁”ですよね! 今回、こうやって“Dr. Metal Factory”ってユニットを結成できたのも、それがスタッフたちとつながって2ヵ月連続発売につながって行ったのも。こんなに楽しい仕事はないよ。だから自信持ってオーディエンスに薦められる。自分自身でね。僕なりに“奇跡のアルバム”だよ。これからもヨロシク!」
■「カヴァメタ」オフィシャルMySpace
http://www.myspace.com/covermeta取材・文/清水 隆(2009年6月)
※発売中
Dr. Metal Factory 『カヴァメタNow』
(CRCP-40240 税込2,800円)
[収録曲]
01. Jupiter
(作詞:吉元由美 作曲:HOLST GUSTAV)
02. 三日月
(作詞:絢香 作曲:西尾芳彦、絢香)
03. 瞳をとじて
(作詞:平井堅 作曲:平井堅)
04. 千の風になって
(訳詞:新井満 作詞:不明 作曲:新井満)
05. 蕾
(作詞:小渕健太郎 作曲:小渕健太郎)
06. 雪の華
(作詞:SATOMI 作曲:松本良喜)
07. 愛唄
(作詞:GReeeeN 作曲:GReeeeN)
08. 涙そうそう
(作詞:森山良子 作曲:BEGIN
09. ハナミズキ
(作詞:一青窈 作曲:マシコタツロウ)
10. 地上の星
(作詞:中島みゆき 作曲:中島みゆき)
※7月29日発売
Dr. Metal Factory 『カヴァメタ Then』
(CRCP-40240 税込2,800円)
【収録予定曲】
01. 恋しさとせつなさと心強さと
(作詞、作曲:小室哲哉)
02. M
(作詞:富田京子 作曲:奥居香)
03. ラブストーリーは突然に
(作詞、作曲:小田和正)
04. もう恋なんてしない
(作詞、作曲:槇原敬之)
05. SAY YES
(作詞、作曲:飛鳥涼)
※他、全10曲収録