多和田えみ、アルバム『SINGS』発売記念ロング・インタビュー

多和田えみ   2009/11/04掲載
はてなブックマークに追加
 “魂のこもった歌”ともいえる、類い稀な表現力を持つシンガー・ソングライターの多和田えみ。彼女の1stフル・アルバムがついにリリース! 映画『築城せよ!』の主題歌「時の空」や、シングル・カットされる珠玉のバラード「涙ノ音」大沢伸一が手掛けたライヴでも最高潮に盛り上がる「FLOWERS」など全16曲が収録され、充実度120%の作品に仕上がっている本作。10,000セット限定の初回限定盤には、インタビューやビデオ・クリップ、貴重なライヴ映像も収録された全68分のスペシャルDVDも付きます。そこで、聴きどころ満載の本作の全貌をここで紹介しよう。



――1stフル・アルバム『SINGS』を完成させて、今はどんな気持ちですか?
 「ミニ・アルバム『∞infinity』でメジャー・デビューしてから1年半ぐらい経って、1stフル・アルバムを出したってことで、毎回そう言っているかもしれないですけど、本当にたくさんの人に聴いてもらえたらいいなと思います」
――アルバムの冒頭のア・カペラ・コーラスの「Overture-theme of SINGS-」に続く、「Baby Come Close To Me」は言葉にするとどんな曲ですか?


 「これはですね。いくつかの魂が集まって、繋がって……、その次は肉体も近くなるというか。人って仲良くなると最初は心を通してうち解けていくじゃないですか、そしたら今度は、肩とか組んだり、手を繋いだりっていう。そういう相手に触れていくまでのストーリーですね。恋人同士のあたたかなシチュエーションですね。何かが始まるときのすごくエキサイティングな感じだったり、スリルだったり、高揚感だったり、この曲はそんな感じを持っているような気がしてて」
――「Naturally」(2008年4月リリースのデビュー・ミニ・アルバム『∞Infinity∞』に収録)を自身のバンド〈The Soul Infinity〉と新録してどうでしたか?
 「そうっすねー。原曲もすごくタイトですごくクールでかっこいいんですけど、The Soul Infinityとのヴァージョンは、熱くて、とってもグルーヴィな感じのものになったなと思ってて。デビューの前からThe Soul Infinityのみんなでずっとライヴ活動してきて、ライヴをやりながらいろんな変更点とかも出てきてて、The Soul Infinityなりのアレンジみたいなのも確立されてきました。今回すごくライヴ感のあるヴァージョンが録れたと思いますし、私的には思い出深い曲ですね」
――「MUSING」はどんな作品ですか?
 「第一印象として、すごくスピリチュアルな感じで、気持ちいい音だなと。メロディとか、リズムの感じも気持ちいいというか。自然に乗れるし。だから歌詞を書くときも、ある意味『∞infinity∞』の時からのルーツをもう一回たどって、宇宙の存在とかを意識して。自分の体や魂が宇宙と交信できるぐらいのイメージで歌詞も作りました」
――「Only Need A Little Light」はどんな作品ですか?
 「自分たちの身の回りって、すごく素敵なものがいろいろあって。私の場合はやっぱり音楽が好きだから、自分の好きな音楽の心地よさとか……、そこからイメージできる世界だったりとか、夜になったら星が輝く様子とか、月とか……、あとは愛する誰かの温もりっていうか。そういうものがあるときって、本当に微かな灯りの中だからこそ、良いものって濃く深く、感じられるときがあるんじゃないかなって思ってて。それで、実際の世の中も見えないほうがいいものもやっぱり明るみに出てきてしまうってこともあるし。ほんのりとした灯りの中で過ごすことによって、人って敏感になる瞬間があるのかもなっていうことで、そういう気持ちがいろいろ詰まった作品ですね」
――「愛音色」はどんな気持ちが込められた新曲ですか?
 「これは、沖縄で歌い始めたばかりのときに作った曲で。歌詞もそのときの気持ちをまんま、とにかくストレートに書いた感じですねぇ。好きな人と、ずっと一緒にいられなくなったんだけども、ちょっと好きって気持ちがあるときって、なんか揺れるじゃないですか? 乙女心って! だから、“もうやめてよ!!”みたいな、“もうちょっとほっといてよ!”みたいな気持ちもあるんだけど、でも“本当はまだ好き”みたいな」
――実は失恋ソング??実体験??
 「もう、完全な失恋ソングですね。実体験です! もうその日の夜ぐらいに書きました。大丈夫なんですかね?こんな生々しく語って(笑)」
――「eternity」には、どんな思い出がありますか?
 「この曲をレコーディングしたときから、自分の表現の仕方が変わったっていうか、いろんな意味で広がったっていうか。そういう発見のあったレコーディングだったんですよ。歌入れが。だからこの曲を経て、ライヴとかでも、歌にちょっとずつ感情がこもりやすくなったっていうか。詞的には、やっぱり夏の歌っていうことで、冬に聴くとすごく夏を愛おしむ感じがあって、この寂しさがなんか気持ちいいみたいな(笑)」
――「時の空」はどんな作品ですか?
 「暖かい気持ちで、お別れをするっていうか。もともと私がsaigenjiさんの大ファンで、“彼の書くメロディってやばいなぁ”と思ってて。歌詞とかも素晴らしくって、すごく想像をかきたたせてくれる部分も持ってて。だけど、とってもリアル。4曲目の〈MUSING〉と一緒にこの〈時の空〉のメロディもそのとき同時に作ってくれて。それで、いざ“レコーディングしよう!”ってなってるときに、たまたま映画の『築城せよ!』の主題歌のお話をいただいて、じゃあsaigenjiさんが書いてくれたメロディに、えみが映画を観てインスピレーションで歌詞を書こうということになって、この歌が完成しました。目に映るものって、いつか滅びるときがくるし、そういう宿命なんですけど。でも、そんななかでも大事なのは、魂とか、目に見えない想いだったり。そういうものが宇宙にはずっと、ずーっと存在しているんじゃないかと。だから例えば、さよならの瞬間も人間って目の前から大事な人がいなくなったり、さっきまで一緒だった人が急にいなくなるとすごく寂しいし、切ない気持ちはあるんだけど。だけど絶対にその人の魂とか、その人が残していった想いとか、あと音楽やってる人だったら、その人が残した音楽だったり歌だったり、作品っていうものもそうだし。想いって、ずっと生き続けるものなんだなぁと思って」
――「月のうた」はどんな気持ちが込められた新曲ですか?
 「これもお別れの歌なんですけど。実は歌詞を書く前に私の知人のすごく親しい人が若くして天国に行ってしまって。そのときに人の命ってすごく儚いものだなぁと思ったんです。同時に自分がどういう励ましの言葉をかけていいのか……。こういう肝心なときに、どう言ってあげたらいいのか分からないという気持ちになったんです。口ではいろいろ励ませても、その寂しさとかを埋めることってすごく難しい場合があるから。そういうときに、歌で励ますことができたらなぁっと思って作りました。たとえばこの〈月のうた〉の内容だと、秋ごろの月が綺麗なときになると、空に行ったあの人を思い出して。別れを経て自分も強くなっていくから、“次に会ったときは、またいい形で出会いたいね”っていう気持ちかな。そういう意味でポジティヴな言葉をかけたいなって思いながら、歌詞を書いていきました」
――「涙ノ音」はどんな気持ちが込められた新曲ですか?
 「葛谷葉子さんが作詞作曲をしてくださった楽曲なんですが、まず最初に歌詞を読んでるときに思ったのが、寂しい感じというか、離れ離れになるような情景も浮かぶんだけど、でも、なんかとても温かくて希望にも満ちてる。ある意味、とても女性的な“包み込んでくれるような力のある歌詞だなぁ”っていうのはすごく思って。ちょっと落ち込んでたりする人とか、あと、これから何かの旅に出たり、新しいことにチャレンジする人とか、迷ったり悩んだりする時期もあると思うんですけど、そういう時にきっとこの曲って力になってくれるんだろうなって思います」
――「ネガイノソラ」は1番最初に歌ったオリジナル曲ですよね?
 「沖縄で2006年に音楽活動をスタートして最初はもう歌うことだけでホント楽しかった。それだけで、音楽を通して、人と繋がっていきたいっていう、そういう気持ちがすごく強かった時期なんですが、でも“じゃあ、どうしたら繋がっていけるのか”って、すごく悩んでる時期でもあって。音楽とか歌ってすごいパワーを持っていると思うけど、それは人間の力っていうか、その歌だけの力、音楽だけの力じゃなくて、きっとそれを発する人間のパワーっていうのもすごく大事なんだなっていうのを思い始めた時期で。そのときに本当に悩みながら、いろんなことをこの曲を通して経験してきたんですね。〈ネガイノソラ〉を通して、いろんなことに気づいていったというか。私の原点となる、大事な曲でもあります」




――ライヴでもすごく盛り上がる曲ですが、「FLOWERS」にはどんな思い出がありますか?
 「大沢伸一さんの楽曲を歌えるなんて本当にもう夢のようなことだったので、レコーディングはガチガチだったのを覚えています。歌詞の件とかもいろいろ打ち合わせて、キーをどうしようかとか。私的には“ちょっとキーを下げたいっす”とお願いしたところ、“いやっ!こっちのほうがええで。絶対こっちのほうがええって”って大沢さんは言ってたんです。それで“じゃあ頑張ります!”ということで。歌入れのときも、やっぱり“高いっすよ”という話になりつつも、なんとか歌を録れたんです。しかしやれば出来るもんだなぁと自分の事ながらビックリしました(笑)。歌詞は、やっぱり、ある意味、衝動的な歌詞ですね。今の時代、いろんな場所で何が起きているのかっていうことが、WEBやテレビでリアルタイムに一目でわかっちゃうじゃないですか。いろんな人の気持ちがいろんな場所で混ざり合って、ぶつかって、その中で誰かが脚光を浴びて誰かが犠牲になっていくもんなんだなぁと痛感して。それで、そういう気持ちの反動が歌詞として衝動的に出てきたんです。“FLOWERS”っていうタイトルは〈ウッドストック〉や60年代のフラワームーヴメントからで。ウッドストックのなかでさえ、LOVE&PEACEというメッセージのもとでみんなが純粋に音楽を楽しむだけじゃなくて、ドラッグとか揉め事とかもあって。すべてがピースなものだけじゃなかったっていうか、楽しんでいるところの影で、悲惨なことも実際にあったっていう。今でも日々、あらゆるところに、光と影は存在しているものなんだなぁっていう気持ちもこめられた作品です」
――今回のアルバムには、「Dance To The Music / Joy To The World」のカヴァーも収録されてますね。
 「これもウッドストックと同じ頃で、まさに60年代後半の曲なんですけど。「Joy To The World」はSUZUKIのSPLASHっていう車のCMソングとして歌わせていただいて。CMの話があったおかげで、The Soul Infinityとライヴでもやるようになって、こんなアレンジに仕上がっていきました」
――最後に収録された新曲「ONE LOVE」にはどんな気持ちが込められてますか?
 「これは川口大輔さんが作曲と作詞をしてくださった曲なんですが、自分では照れてしまうのであまり言えそうにない愛の言葉たちを、大輔さんが“えみはこういうピュアなものを歌ったらきっといいよ”ってことで書いてくださって。で、拝見したら、とっても愛らしい乙女心が描かれていて、すごい繊細な気持ちで歌いたくなるような感じっていうか。歌詞から見える状況もそうなんですけど、添い寝してる感じというか。すごい近いところで話しているというか、お互いの存在を感じあっているような内容なんです。“あなたと一緒にいれて幸せだわ、私”みたいな、やわらかい気持ちで歌っていきました。ピュアな乙女心をすごく感じる素敵な作品に仕上がりましたね」
――改めて振り返ると、『SINGS』というアルバムは多和田えみにとってどんな作品ですか?
 「歌うことが今は日常の中で……特別なことではなくなったんですが。でも本当は特別なことなんですけど、スタジオで歌ったりライヴで歌ったりすること自体が日常の自然体の行為になってきたんですよ。そんななかで生まれてきた曲たちなので“日常集”というか……、日常集って言うと日常の臭いみたいですけど(笑)。顔洗うこと、歯磨くこと、呼吸すること、歌うことみたいな。そういう感じですね。それこそ、心を無にして聴いてもらえたら嬉しいなというのはありますね。それぞれの曲がサウンドもそうなんですけど、メッセージもかなりこもってるので、心と心で感じあえる何かっていうのがきっとあるんじゃないかなっと思うので」
――アルバム発表後の全国ツアーはどんなライヴにしようと思ってますか?
 「まさに、日常。自然体で、だけどすごく笑えて、切ない気持ちにもなって……日々のドラマのようなライヴにしたいなと思うんですけど。豊かな感情になれるライヴっていうか。アルバムは出したけど、アルバムのまんまじゃないライヴがいいですね。何か面白いことしたいです。皆さんがちょっと驚くような何かしらを、チェケラッチョしていきたいなっていうのもあります。中身はシー! 今から考えます(笑)」
インタビュー/SINGS-Soulgraphy2006-2009VTR素材-より





【Information】
New Album
『SINGS』

New Single
「涙ノ音」

11月4日に待望の1stフル・アルバム『SINGS』を発売するソウル・ディーヴァ、多和田えみが、アルバム発売を記念しての全国ワンマン・ライヴ・ツアー「SINGS OF SOULS live 2010」を、来たる2010年1〜2月、東京・大阪・仙台・名古屋・福岡・沖縄の全国6都市で開催します!!
ライヴ・バンド〈多和田えみ & The Soul Infinity〉として昇華してゆく魂の歌声がここに!

多和田えみ & The Soul Infinity
〈SINGS OF SOULS live 2010〉

プレイガイド発売:2009年11月21日(土) 
チケット料金:4200円(税込・ドリンク代別)

公演日程:

2010年1月15日(金)
東京・渋谷O-EAST
OPEN:19:00 START:19:30
問)キョードー東京 TEL:03-3498-9999

2010年1月21日(木)
大阪・アメ村BIGCAT
OPEN:19:00 START:19:30
問)夢番地 大阪 TEL:06-6341-3525

2010年1月29日(金)
仙台・darwin
OPEN:19:00 START:19:30
問)G.I.P. TEL:022-222-9999

2010年2月5日(金)
名古屋・APOLLO THEATER
OPEN:19:00 START:19:30
問)サンデーフォーク TEL:052-320-9100

2010年2月14日(日)
福岡・DRUM Be-1
OPEN:17:30 START:18:00
問)BEA TEL:092-712-4221

2010年2月20日(土)
沖縄・桜坂セントラル
OPEN:19:00 START:19:30
問)ピーエムエージェンシー TEL:098-898-1331
■Total Information:www.techesko.com
最新 CDJ PUSH
※ 掲載情報に間違い、不足がございますか?
└ 間違い、不足等がございましたら、こちらからお知らせください。
※ 当サイトに掲載している記事や情報はご提供可能です。
└ ニュースやレビュー等の記事、あるいはCD・DVD等のカタログ情報、いずれもご提供可能です。
   詳しくはこちらをご覧ください。
[インタビュー] 中国のプログレッシヴ・メタル・バンド 精神幻象(Mentism)、日本デビュー盤[インタビュー] シネマティックな115分のマインドトリップ 井出靖のリミックス・アルバム
[インタビュー] 人気ピアノYouTuberふたりによる ピアノ女子対談! 朝香智子×kiki ピアノ[インタビュー] ジャック・アントノフ   テイラー・スウィフト、サブリナ・カーペンターらを手がける人気プロデューサーに訊く
[インタビュー] 松井秀太郎  トランペットで歌うニューヨーク録音のアルバムが完成! 2025年にはホール・ツアーも[インタビュー] 90年代愛がとまらない! 平成リバイバルアーティストTnaka×短冊CD専門DJディスク百合おん
[インタビュー] ろう者の両親と、コーダの一人息子— 呉美保監督×吉沢亮のタッグによる “普遍的な家族の物語”[インタビュー] 田中彩子  デビュー10周年を迎え「これまでの私のベスト」な選曲のリサイタルを開催
[インタビュー] 宮本笑里  “ヴァイオリンで愛を奏でる”11年ぶりのベスト・アルバムを発表[インタビュー] YOYOKA    世界が注目する14歳のドラマーが語る、アメリカでの音楽活動と「Layfic Tone®」のヘッドフォン
[インタビュー] 松尾清憲 ソロ・デビュー40周年 めくるめくポップ・ワールド全開の新作[インタビュー] AATA  過去と現在の自分を全肯定してあげたい 10年間の集大成となる自信の一枚が完成
https://www.cdjournal.com/main/cdjpush/tamagawa-daifuku/2000000812
https://www.cdjournal.com/main/special/showa_shonen/798/f
e-onkyo musicではじめる ハイカラ ハイレゾ生活
Kaede 深夜のつぶやき
弊社サイトでは、CD、DVD、楽曲ダウンロード、グッズの販売は行っておりません。
JASRAC許諾番号:9009376005Y31015