公開されている情報はバンドのロゴのみ。メディアへの露出はほとんどなく、1stアルバム
『anew』(2009年12月リリース)、2ndアルバム
『note』(2010年4月リリース)という2作品とわずかな本数のライヴだけで――つまり、純粋に音楽の魅力だけによって――音楽ファンの間で大きな話題を集めてきた
androp。昨年の夏にはSUMMER SONICに出演(DANCE STAGEのトップバッター)、さらにSky Jamboree 2010(長崎)、RockDaze!2010(福岡)にも参加、数多くのオーディエンスとの1stコンタクトを果たし、その存在は急激にクローズ・アップされることになった。
10月23日には、東京・恵比寿LIQUIDROOMで2度目のワンマン・ライヴ〈angstrom 0.2 pm〉を敢行。当然のようにチケットは即ソールドアウト、会場を埋め尽くした観客の前で彼らは、ライヴ・バンドとしての高いポテンシャルをしっかりと見せつけた。ハッとするようなアイディアに満ちたアンサンブルと自由度の高いヴォーカル・ライン、そして、最新鋭のダンス・ミュージックにも繋がるリズム・アレンジを含んだ自らの音楽性をメンバーは、ライヴという場所で開放的なダイナミックとともに体現してみせたのだ。このときの模様はYouTubeでも観ることができるが、その演奏能力はかなり高い。特に芯の太さとしなやかさを併せ持ったリズム・セクション(「Colorful」のイントロにおけるスラップ・ベースがめちゃくちゃカッコいい!)はこの先も、andropの大きな武器として機能していくと思う。
『door』
そして2011年、andropはついにメジャー・シーンへと進出する。その最初のアクションは、ニュー・アルバム
『door』のリリース。全国のFM局やCS局でヘビー・ローテーションが決定しているこの作品によって彼らは、さらに進化したandropを示すとともに、その音楽的な評価を決定づけることになるだろう。
まずはアルバムのリード曲「MirrorDance」に触れてみてほしい。確かな強度をたたえたバンド・アンサンブルを軸にしながら、軽やかな高揚感とともに上昇していくこの曲には、“ここから2010年代の新しいロックの〈扉〉を開いていく”と確信させるに十分なクオリティが備わっている。モダン・ロックとダンス・ミュージックとポップスがこれほど美しいバランスで融合している楽曲は、本当に稀だと思う。
また、エレクトロニカの要素を大胆に取り入れたギターレスのナンバー「Q.E.D.」、ドラマティックなメロディ・ラインに心を揺さぶられるミディアム・チューン「Clover」など、音楽性そのものも大きな広がりを見せている。
そのサウンド・フォーミュラーはまさに変幻自在。古今東西の音楽のアーカイヴが進んだ2000年代を終えて、僕らはいま、新しいポップ・ミュージックのスタイルを手にしようとしている。このアルバムを聴いていると、そんなワクワクした気持ちに包まれてしまうのだ。
サウンドの進化と重なるように、歌の世界観もさらなる奥行きを獲得しつつある。そのことを象徴しているのは「Puppet」だろう。操り人形を主人公にしたこの曲で彼らは、現代における人と人と関係性――危うくて脆く、きわめて切実な――をリリカルに描き出す。シリアスな現実にしっかりと向き合いことで生まれる世界観を、できるだけ多くの人が共有できる表現として提示していく。それこそがポップ・ミュージックの役割であることを、おそらく彼らは自覚し始めているのではないだろうか。
5月3日の大阪BIG CATを皮切りに、ファイナルを5月28日の東京SHIBUYA-AXで行なう、初の全国ワンマン・ライヴ・ツアー〈angstrom 0.3 pm〉の開催も決定。ここでも彼らは、音響、照明、映像が一体となった質の高いステージを見せてくれるはず。このタイミングでも雑誌、テレビなどへの露出はほとんどなく、相変わらずバンドの全貌は見えていない(メンバーの人数、年齢すら、公式には明らかにされていない)。しかし、“たくさんの人に聴いてほしい。その入り口的な作品にしたい”“新しい世界への扉を開け放つ”といった意思が込められたという『door』によって、andropの存在はさらに拡がっていくことになるだろう。“音楽がすべて”というあまりにも真っ当なスタンスをしっかりと貫いていくる彼ら。余計な情報や先入観に惑わされることなく、より多くのリスナーがその作品/ライヴに触れ、そのピュアな感性ときわめて自由度の高いサウンドが共有されていく。そんな幸せな光景が、すぐそこまで迫ってきている。
文/森 朋之
andropワンマン・ライヴ・ツアー
<angstrom 0.3 pm>●5月3日(火)@大阪 BIGCAT
※INFO:キョードーインフォメーション(06-7732-8888)
●5月7日(sat)@仙台 darwin
※INFO:キョードー東北 (022-217-7788)
●5月14日(sat)@福岡 DRUM Be-1
※INFO:キョードー西日本 (092-714-0159)
●5月22日(sun)@名古屋 CLUB QUATTRO
※INFO:サンデーフォークプロモーション (052-320-9100)
●5月28日(sat)@東京 SHIBUYA-AX
※INFO:サンライズプロモーション東京 (0570-00-3337)
【全公演共通】
チケット:¥3,500(DRINK代別)
OPEN17:00/START 18:00
チケット一般発売日:2011/3/26(sat)
■androp オフィシャル・サイト
http://www.androp.jp/