『ロック・オブ・ブラス・クインテット#01』
『ロック・オブ・ブラス・クインテット#02』
「ほかには真似のできないものを作りたかったので、たとえば『タルカス』の鶴見さんには、とにかく精緻で、エクストリームなブラス・アンサンブルの作品にしてほしい、とだけお願いしました。アンサンブル・モデルンによるザッパ作品みたいなものをイメージして」 ブラス・エクストリーム・トウキョウを構成する曽我部と
佐藤友紀(トランペット)、堂山敦史(ホルン)、
村田厚生(トロンボーン)、渡辺功(チューバ)の5人は、いずれも現代音楽のスペシャリストとして、国内外で数多くのライヴやレコーディングを経験してきたつわものだが、今回のプロジェクトでは、その感覚のシャープさと技能の確かさが、いちだんと際立っている感じだ。そしてもちろん、“ロックのカヴァー”という視点も忘れてはいない。
「ロックに限ったことではないでしょうが、カヴァー・ワークの場合、単なるコピーでは意味がない。原曲のよさを殺すことなく、独自の新しい視点による価値づけをして、リスナーに原曲のよさを再発見、新発見してもらうことが大事だと思います。あと、ロックの場合、ドラムなしでグルーヴ感を出すのが大変です。その意味では、チューバの比重がとても重いのですが、今回はよりいっそう素晴らしい演奏をしてくれました。結果的に、ブラス・ミュージック・ファン、現代音楽ファン、ロック・ファン、どの層にもアピールする仕上がりになったと思っています。もちろん、自分たちの専門は現代音楽なので、現代音楽ファンには、ロックやブラスを聴くきっかけになってくれればよいし、ブラスやロックのファンには、現代音楽を聴くきっかけになってくれればよいなと思っています」
Rock of Brass Quintet:Brass Extreme Tokyo - Promotional Video
『#02』で、ボーカロイドの
巡音ルカを使っているのも型破りだ。
「キース・エマーソンが、今『タルカス』を作曲するとしたら、きっとボーカロイドを使ったと思うんですよね。今回、巡音ルカは、1970年代と21世紀の間を、時空を超えて繋げる巫女としての役割を果たしてくれたんじゃないかな。
一方、現代音楽の演奏家として“楽器でしゃべる/歌う”というのは、これもまた、究極の試みでもあるわけです。私はこれまで、川島素晴さんやフォルマント兄弟(三輪眞弘+佐近田展康)の作品などで、しゃべるように演奏する作品も経験してきましたし」(曽我部のソロ・アルバム
『トキノコダマ2』には、フォルマント兄弟編の「インターナショナル」が収録されている)
じつは今回は、計9人の作曲家から、アレンジ参加の希望が出ていたというが、結果的に3人だけの参加となった。
「だから、続編、続々編と出していければと思っています。また、現代作曲家の中にも、ロックに深い関心と造詣を持った方がたくさんいると思うので、そういう人たちのオリジナル作品もとり上げていきたい。弦楽器や木管楽器と比べて、金管楽器は、表現力において、20世紀に大きく飛躍したと思うんです。そのことをもっとリスナーにアピールしたいですね」
そう、きっと、続編はあるはずだ。
取材・文/松山晋也(2012年6月)
[ブラス・エクストリーム・トウキョウ オフィシャル・サイト]http://www.sonata.jp/extreme/ブラス・エクストリーム・トウキョウ
『ロック・オブ・ブラス・クインテット#01』 (EZMS-50001)
01. ジミ・ヘンドリックス:紫のけむり(山路敦司編)
02. レッド・ツェッペリン:移民の歌(一ノ瀬響編)
03. エマーソン、レイク&パーマー:『タルカス』より「噴火」(鶴見幸代編)
ブラス・エクストリーム・トウキョウ feat. 巡音ルカ
『ロック・オブ・ブラス・クインテット#02』 (EZMS-50002)
01. 『タルカス』組曲〜1.噴火
02. 『タルカス』組曲〜2.ストーンズ・オブ・イヤーズ−ミサ聖祭−戦場
03. 『タルカス』組曲〜3.マンティコア−アクアタルカス
(すべて鶴見幸代編)
[村田厚生(tb)&河村泰子(p)ニュー・アルバム]
『Just Sing〜うたうだけ』(EZCD-10020)
『Fruhlingslied(Classical Songs for Trombone and Piano) - EP』 『Think of me (Pop songs by trombone and piano)』 ※iTuneでも配信中