PCオーディオからプロレベルの録音までできる
“万能”オーディオインターフェイス
RME Fireface UCX
オープン価格 145,000円前後■対応サンプリング周波数 / ビットレート: 192kHz / 24bit(最大) ■入力端子: 18系統(最大) ■出力端子: 18系統(最大) ■外形寸法: 218W x 44H x 155Dmm ■重量: 1.5kg RMEの「Fireface UCX」は、オーディオインターフェイスで、昔の機器でいえば、テープデッキとミキサーを一体化したような製品だ。あの巨大なテープデッキとミキシングコンソール、しかもLR2チャンネルではなく、マルチチャンネルでの録音再生機能がハーフサイズ1Uのボディに入っている。真面目な話、Fireface一台分の機能を得るために、20年前なら何千万円もかかったことだろう。それが今は実売十数万円で手に入るのだから「タダ同然」、これこそまさにデジタルの恩恵といえる。しかも、ヘッドフォンアンプ機能やS/PDIFのデジタル入出力(同軸 / 光)もあり、Fireface一台あれば、さまざまな用途での活用が考えられるだろう。
私自身は2007年4月に「Fireface 400」を購入して、最初はいわゆるPCオーディオの実践のためMacやPCと組み合わせて音楽再生用に使っていたが、今ではFirefaceなしの音楽生活はあり得ないとさえ考えている。
再生用なら、まずはPCやMacと組み合わせて、CDやハイレゾ音源の再生ということになるだろう。iTunesによる手軽な再生から、VLCメディアプレーヤーなどを使ったDVDの映像(サラウンドもOK)まで、ハイエンドオーディオの機器を使ってきた耳で聴いても骨格のしっかりした大変高音質な再生音を聴くことができる。
録音用に使われる機器は“フラット”な音がよいとされ、無味無臭で味のない音の製品も多いのだが、RMEの音はフラットななかに美しさがある。これが私がFirefaceを使い続ける理由でもあり、単に何でもできて便利な機能を持っているから使っているだけではないのだ。この音に慣れると、逆に一般のオーディオ機器の音は味が濃い印象になったりもする。
Fireface UCXのリアパネル。多彩な入力に対応している。
1977年に発表されLPで大いに楽しんだ
『惑星』は、当時4chのLP(CD-4)も発売されたが、ほとんどの人は2chで聴いていたはず。私も2003年にDVDオーディオ(96kHz / 24bit)として発売された
サラウンド版『惑星』をFirefaceで再生したときに、初めて“本当の冨田 勲の惑星”を体験することができたのだった。
DVDオーディオ再生は、Windowsの場合はfoobar2000やVLC、MacならMacBlu-RayPlayerやVLCなどで再生が可能だ。Firefaceにはアナログ出力が6系統あるので、そのうちの2系統をフロントLRに、2系統をリアLRにして、リア用には余っているプリメインアンプとスピーカーやアクティブスピーカーを使えば、容易にサラウンドを楽しむことができる。同じPCオーディオでも、単なるUSB-DACではLR2チャンネルの再生しかできないので、この点でもFirefaceを使うメリットは大きい。
プロレベルの録音も可能。TotalMixを使いこなせ!
慣れると使いやすく、心強いTotalMixの画面。
正直、私は最初このミキサー画面が苦手で敬遠していた。だが、音が出ない原因を探していたときに、“このミキサー画面に信号が来ていれば、少なくともPCとFirefaceの接続はOKだ”と理解して以来、好きになった。TotalMixは“なんとなくいじる”ことでは扱えるようにならないが、ほんの少しやる気を出して構造や理屈を理解すれば、それほど難しいものではない。私はTotalMixを使って、サラウンド時のセンターチャンネルやサブウーファーの音をフロントLRにダウンミックスして4chで使っているし、Blu-rayディスクプレーヤーの5.1chアナログ出力をFirefaceに入れて、4chにダウンミックスしている。しかも、デジタルミキサーなので音質劣化はほとんどない。
再生に加えてFireface UCXは(弟機のBabyfaceも)、192kHz / 24bitの録音ができるので、LPやカセットテープなどのアナログ音源のデジタルデータ化ができる。しかも、「Studio
OneFree」というDAW(デジタル・オーディオ・ワークステーション)のアプリケーションを使えば、無料でプロレベルの録音も可能だ。細かな設定や操作は、この誌面に書ききれないので、発売中の
CDジャーナル ムック『Macオーディオ2013』を見て、その通りやっていただければと思う。
写真は筆者が6年間使ってきているFireface400(無故障)。常時このようにケーブルが接続されていて、まさにデジタルハブといえる。
Fireface UCXはクラス・コンプライアント・モードで立ち上げれば専用ドライバーを使わずにiPadやMacでの使用ができるようになった。しかも、ファームウエアのアップデートにより、近い将来クラス・コンプライアント・モードでも18chすべてで録音再生が可能になる。このほか、誌面には書ききれない機能もある。私のスタジオでは、不定期だが「Fireface使いこなしセミナー」を行なっているので、ご興味のある方はお気軽にメール(studio.k@mac.com)でお問い合わせ下さい。本機は、これから本格的にPCオーディオをはじめようという初心者にも、十分に使いこなせる製品なので、この機会に是非チャレンジしてもらいたい。
一般のオーディオ機器と異なる点は、RCAの端子がないのでピンケーブルにはフォノ端子の変換プラグが必要なことと、
アナログの入出力はLRがなくアサイン可能なこと、また、基本的には入ってきた音をすべてミックスして出力することなどがある。