『イーハトーヴ交響曲』のライヴ映像を
Blu-rayの“高音質”で味わい尽くす!!絵と文 / 牧野良幸
近年、ブルーレイディスク・オーディオという、あらたな高音質ソフトがオーディオ・ファンの注目をあつめているが、もともとのブルーレイ自体が高音質ソフトであることも忘れてはならないだろう。映像がフル・ハイビジョンでありながら、音声もSA-CDやハイレゾ配信並みの高音質なのだ。オーディオ・ファンならブルーレイで高音質に舌鼓をうつこともしてみたい。
そのブルーレイで、
冨田勲の
『イーハトーヴ交響曲』がリリースされた。これは2012年の初演にひきつづき、2013年に東京・Bunkamura オーチャードホールで行なわれた再公演の模様を収めたブルーレイだ。収録音源は2.0chがLPCM、サラウンドがDTS-HD 5.0ch。ともに96KHz / 24bitで、44.1KHz / 16bitのCDよりも高音質である。
ブルーレイの高音質といえども、視覚の情報量はすごいものがあり、どうしても映像のほうに気を奪われてしまいがちである。しかしこの『イーハトーヴ交響曲』では、演奏者や合唱団の人たちから目が離せないけれど、同時に、耳もちゃんと高音質を味わっているのがわかる。
まず「オープニング」の合唱で、透明で混濁のない音にハッとさせられてしまう。サラウンドも同様に透明な空間だ。つづく「岩手山の大鷲」では、弦楽器のシルキーな音に舌鼓をうち、「剣舞 / 星めぐりの歌」では打楽器の躍動的な(でも、とても柔らかい)音にウットリする。
初音ミクの起用など話題の多い作品であるが、個人的には『イーハトーヴ交響曲』のオーディオ的聴きどころは合唱だと思っている。96KHz / 24bitの高音質だと、「雨にもまけず」での男性合唱の地をはうような声、女声合唱の清楚な響きも美しい。
そして「銀河鉄道の夜」での少年少女合唱団の無垢な歌声がたまらない。最後のほうの「ジョバンニ〜!」「カムパネルラ〜!」という歌声には、心が洗われるようで、いいオッサンの僕としては涙が出そうになるのである。アンコールの「青い地球は誰のもの」でも、少年少女合唱団の元気がでてくる歌声を堪能できる。
このように“目にも快感、耳にも快感”というブルーレイ・ソフトは、正直に言ってなかなかないと思う。適度な演奏時間も集中力を持って聴きやすい。そしてなにより、冨田勲の作曲、編曲の素晴らしさが、聴いていて飽きさせないのだ。『イーハトーヴ交響曲』は21世紀に生まれた名曲だと思う。何度も味わいたいブルーレイであることはまちがいない。