大石昌良(vo,g)、川原洋二(ds)、沖 裕志(b)からなる3人組Sound Scheduleは、結成以来20年以上になる息の長いバンドだ。ただ彼らは2006年にいったん解散し、約5年の空白期間を経て2011年に再結成しており、以降は年に1度のライヴ・ツアーを中心にマイペースで活動を続けている。2019年も9月から10月にかけて"PLACE2019"としてツアーを開催したが、10月12日に行なわれるはずだった恵比寿LIQUIDROOM公演が台風19号の影響で延期になってしまう。2020年1月3日に行なわれたのはその振替公演。メンバーにとってもファンにとっても待ちわびたはずの重要なライヴとなった。
大石のMCによると、延期が決まった後にLIQUIDROOMで空いていたのはこの日だけだったそう。それが正月三が日になったわけだが、場内は満員の観客で埋め尽くされ、ライヴへの期待感をうかがわせた。その熱気に応えるようにして、1曲目「IQ兄弟」からダンサブルなビートに乗せてテンションの高い演奏で攻めていく。続く「世直しブッダ」「グッドタイムコミュニケーション」とアッパーでファンキーな曲を連発し、大石や沖はお立ち台に乗って観客を煽り、冒頭から沸点といえるくらいにヒート・アップ状態だ。
前半はいわゆるアゲ曲でたたみかけていくが、その後はクール・ダウンしてじっくり聴かせるコーナーへ突入。ちなみにSound Scheduleの楽曲を書く大石は、“オーイシマサヨシ”の別名義で多くのアニソンなどを手がけるソングライターでもあり、とくにエヴァーグリーンなメロディメイカーとしての才能は非凡なものがある。それだけに彼らの楽曲はアッパーな曲から静かな曲まで幅広く、どの曲もキャッチーで強い吸引力を放っているのが大きな魅力だ。
中盤のミディアム曲が続くパートになると、彼のメロディ・センスがいっそう浮き彫りになる。6曲目の「スペシャルナンバー」で哀愁のメロディを大石が熱く歌った後、「僕の好きな曲を3曲メドレーでやります」と語り、「運命の人へ」「フリーハンド」「わけあり」と、リリカルなメロディが際立ったバラード的な曲を連発し、観客を引きつけていた。
続いてフロントの大石と沖がイスに座り、アコースティック・コーナーへ。「ストリート・ライヴでやっていた」というスウィートなラブ・ソング「愛のかたち」、ドラマーの川原がコーラスを付ける叙情的な曲「シチューが飲みたくなる唄」を、ナチュラルな演奏でしっとりと聴かせていく。
後半のラスト・スパートに入ると怒涛のキラー・チューンで押しまくり、観客の盛り上がりも最高潮に。「君という花」「コンパス」「ピーターパン・シンドローム」あたりでは観客のすさまじい合唱が沸き起こり、大石のヴォーカルもいっそうエモーショナルになり、場内の一体感がすごい。そして本編ラスト、「今ここにあるもの」ではスケール感にあふれた演奏を展開し、最後は大石が圧巻のギター・ソロを聞かせて終了した。
アンコールでは大石が「これからもいろんなことを全力でやっていきたい」「年に1回でも僕らだからできている、自慢のバンドです」と誇らしげに語っていた。マイペースの活動だからこそ、バンドの状態はすこぶる良好なようで「最近はものすごく仲がいい」とも言っている。たしかに3人のアンサンブルの良さやぴったりと合った呼吸感は、そうしたコンディションでなければ成し得ないだろうし、血の滴るような鮮度の高い演奏は現在進行のバンドということを強く感じさせるものだ。
ダブル・アンコールのラスト「ことばさがし」は、エネルギッシュな演奏とファンの熱い愛情とが相まって、とてもポジティヴな空間を生んでいた。あらためて彼らの今後の展開が楽しみになるライヴだった。
また、今回のライヴの模様が映像収録されて、2020年春にバンドとしては初のBlu-ray作品として発売されるとのアナウンスもあった。詳細は後日発表とのこと。こちらも楽しみにしてもらいたい。
Sound Schedule LIVE TOUR“PLACE2019” 東京振替公演
2019年1月3日(金)東京 恵比寿LIQUIDROOM
01. IQ兄弟
02. 世直しブッダ
03. グッドタイムコミュニケーション
04. さらばピニャコラーダ
MC
05. 幼なじみ
06. スペシャルナンバー
MC
07. 運命の人へ
08. フリーハンド
09. わけあり
MC
〈アコースティック・コーナー〉
10. 愛のかたち
11. シチューが飲みたくなる唄
MC
12. 言葉以上に
13. 君という花
14. コンパス
15. ピーターパン・シンドローム
MC
16. 今ここにあるもの
EN01. 吠える犬と君
EN02. アンサー
WEN01. ことばさがし
取材・文/小山 守
撮影/大参久人