2月にデビュー5周年を記念したベスト・アルバム『Jupiter〜平原綾香ベスト〜』がリリースされた平原綾香。一つの節目を経て、彼女がリリースするニュー・シングルはNHKのドラマ『トップセールス』の主題歌となる「孤独の向こう」。表題曲では今までの彼女の作品にはなかった“孤独”という言葉が使われ、カップリングの「一番星」では初めて編曲に挑戦。次のステージに向けて動き出した彼女の心境とともに、聴きどころ満載の本作について話を訊いた。 平原綾香は
「Jupiter」でデビューしてからの5年間、まっすぐに音楽と向き合い、良質な楽曲を歌い続けてきた。その道のりは決して楽ではなく、学業と並行しながらも大きなプレッシャーと闘う日々だった。大きな節目を期に自身の活動を振り返りつつ、彼女が4月16日に発表する新曲は「孤独の向こう」というタイトル。言葉と歌の力強さ、さらにそれを彩るピアノとストリングスの美しい音色が印象的なバラードだ。
「『トップセールス』というドラマは女性のセールスマンのお話で。いろいろあった曲の中で一番ストーリーにぴったりだったのが
川江美奈子さんの作った〈孤独の向こう〉だったんです。働いている女性たちに共感を持ってもらえるようにと思って」
この「孤独の向こう」は、孤独と向き合った女性の“自立した心の強さ”が表現されている一方で、その強い意識の裏にある葛藤も垣間見える。力強く繊細なヴォーカルと言葉の協調から織り成す奥深い情感が感動を呼ぶ。
「“大人っぽい歌詞”というのが第一印象ですね。自立してるという意味で、女性としての強さを感じたり。それを感じたのが、歌詞にある“寂しさ 悔しさ 哀しさ いとしさ それは自分で選ぶもの”という部分で。ここが人間の本質をよく見てるなあと。私もよく考えることがあって……、哀しいとか、悔しいとか思うことって、自分の心が勝手に決めていることであって。自分の心がブレていなければ、制御できるんですよね。だからこの歌詞のとおり、進む道は自分で決めることだから、その道で思いっきり楽しもうとか、思いっきり悔しがろうとか……。自分の意志で決められる人生があって将来があるのかなって感じました」
“今”感じている悦びが“時”によって流されてしまう瞬間、そのときの喪失感が孤独な気持ちを生む。しかし、その瞬間に冷静に自分自身を見つめ直し、孤独の向こうにある悦びをイメージできれば孤独にはならないと想像させてくれる本作――“運命は性格の中にある”と。平原綾香自身、“孤独”というものをどのように捉えているのだろうか?
「学生時代、一緒に音楽で表現していこうって思っていた人たちと離れて、夢を語り合う時間がなくなったときは孤独を感じましたけど、同じ志を持つ人たちが周りからいなくなったから孤独だと感じたのかな? でも、いまは孤独になっている人がいたら、私が音楽を通して元気づけられる……。この曲に出会って改めてそう思いましたね」
カップリングの「一番星」は、平原綾香本人が作詞・作曲だけでなく、編曲までを手掛けた作品。彼女ならではの至純な情景描写とともに、夢に向かって邁進する人の日常にある葛藤がドラマティックな言葉とサウンドによって描かれた楽曲。聴き手は物語の主人公に感情移入しながら聴き入ってしまうだろう。
「〈一番星〉はドラマの主人公になったつもりでいろいろ想像して書いたんですけど、作っていて面白かったですよ。今まではオブラートに包んだような歌詞で、大きな、宇宙的な愛をテーマにしたものが多くて。身近な出来事を歌うのは、私のシングルとしてはめずらしいですね。あと、編曲までやったのは今回が初めてなんですけど、こういう曲が出来たらいいなって思ってMacで作ってたら、“これ、いいじゃん”ってスタッフに言われて。効果音も雑踏と車の音をサンプリングしてみたり。一度経験してみると世界が広がりますね」
溢れる創作意欲をあらわにして制作中のエピソードを語りつつ、新たな世界を切り拓こうとしている平原綾香。彼女にとって“孤独の向こう”にある“夢”とは?
「今の夢は、もっと日本で有名になって、その後は世界に出たい。まだまだ知らないこともあるし、もっともっと視野を広くしないといけないなと思います」
取材・文/清水 隆(2008年3月)
【平原綾香ライヴ情報】
“FM OSAKA LIVE SPRING 2008”【日程】 5/3(土・祝)
【会場】 大阪城野外音楽堂
【開場/開演】 12:00/13:00
【チケット】 2,000円
【出演】
・平原綾香
・中 孝介
・orange pekoe
・河口恭吾
・CHERRY LYDER
・ヨースケ@HOME ...and more
※FM OSAKA オフィシャル・サイト/
www.fmosaka.net